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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>神の地に滅びは謳う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●メギドの後に
「これ、は」
 ジル・フラヴィニーは流石に驚いたような顔を隠せなかった。
 ファウ・レムル。天義の東、海にもほど近いその場所は、『既に存在しなかった』。
 ほんの数日前まで、ここは安っぽい破滅伝説を看板に観光地商売でにぎわっていた地であったはずだ。
 神の落としたメギドの火。それによって一度滅んだと謳っていた平穏な地は、今まさに新たなるメギドによって滅びを迎えていた――。
「この地の下手人は、不明だ」
 と、派遣された聖騎士団部隊リーダーが言う。
「……旅人(ウォーカー)のような男と、幻想種にも似た女がいたという話も聞いているが、それもあやふやだ。現地が滅んだ瞬間については――見てのとおり、生存者を探すことも難しい」
「はい」
 新たに『聖騎士』の称号を戴いたばかりの少年、ジルは、ゆっくりとうなづいた。
「どうおもう、ジル?」
 と、隊長は解り切ったことを聞く。愚かなのでも嫌がらせなのでもなく、ジルに現実をしっかりとみて、理解してほしいという思いからだった。
「間違いなく……滅びの影響、です」
 しっかりとそういうジルに、隊長はうなづいた。
「そうだ。これから私たちが戦わねばならない、恐るべき敵だ」
 それは、ジルだけではなく、部下の仲間たちに伝えるように。
「……とはいえ、私たちだけでは無理だろう。
 多くの力を借りなければなるまい……」
 そのような言葉に、皆はうなづいた。天義だけで、この危機に立ち向かうことは困難だろう。いや、一国の危機、という状況はとうに過ぎ去ったのだ。世界全体を襲う危機。それが、絶対的破滅であるのだ――。
「よし、偵察は完了だ。ひとまず周囲状況を確認し、調査隊を内部に送る……いや、まて!」
 隊長が声を上げた瞬間、空から何かが降り注いだ。それは、地に落着した瞬間、まるでカニのような姿をさらし、その恐るべきはさみのようなものをがちがちと鳴らして見せたのだ。
「星海獣か!?」
「その通り」
 と、声が響いた。見れば、何やら大仰な鎧を着こんだ、粗野な女の姿が見える。
「アタシはロゼッタ。全剣王に使える不毀の軍勢最強の剣士!」
 ぎらり、と輝く双剣を構え、ロゼッタは笑う。
「加えて、アタシは全剣王様から『破鎧』を賜った破鎧闘士! この鎧がある限り、アタシは無敵だ!」
「ちっ、Bad End8の配下か……!」
 隊長が刃を構える。
「無駄なことをするなよ、天義のへなちょこ騎士ども!
 破鎧は、全剣王の塔からエネルギーを送られる無敵の鎧!
 アタシの攻撃力をうわまるほどの強力な攻撃なくば破壊できない無敵の鎧だ!
 だが、アタシが最強の剣士! つまりこの鎧は破壊できない!」
「アイツはアホなのか!?」
 騎士の一人が叫ぶのへ、ジルが「えぇ……」って顔をした。
「きゅ、急に自分の能力と対処法をしゃべり始めた……?」
「鉄帝の連中らしいな……」
 ジルの言葉に、隊長が言う。下手したら国際問題になりかねないがさておき。
「とはいえ、あのロゼッタってやつを倒すのは厄介だ。奴の言葉が確かならば、強烈な一撃を与えなければ倒せない……となると、我々には骨だ。
 ローレットの力を借りるか……」
「で、では、縁のある方に連絡を入れます!」
 ジルが叫ぶのへ、隊長はうなづいた。
「魔法兵、遠距離通信術式で近くのローレット支部に連絡を。ジル、連絡と、ローレットイレギュラーズの直掩についてサポートをしてやってくれ。
 ほかのものは、周囲の雑魚星海獣を少しでも押しとどめろ! あのアホには手を出すなよ、けん制する程度でいい!」
 隊長が叫び、刃を抜き放つ。合わせるように、部下たちも刃を抜き放った。
「神よ、我らの献身に加護を――総員抜刀、行くぞ!」
 果たして、その雄たけびとともに、滅びの地にて戦いは始まった――。


 さて、緊急の依頼との連絡をうけた『あなた』たちローレット・イレギュラーズが現地へと向かうと、そこにはジル・フラヴィニーの姿があった。
「皆様、到着早々申し訳ないのですが……!」
「状況は解ってる! 全剣王の部下が相手か!」
 仲間の一人が叫ぶのへ、『あなた』もまた、武器を抜き放って駆けだした。
「周辺の星海獣は、騎士団が請け負っています。そちらは大丈夫です!
 ただ、ロゼッタと名乗る不毀の軍勢と、周辺の星海獣は、みんなの手には負えないのです!」
「はい、そのための私たちです……!」
 仲間がうなづくのへ、『あなた』もうなづく。果たして現場は、すでに剣戟と怒号の飛び交う激しい戦場と化している。『あなた』たちが飛び込めば、まるで歓迎するかのような女の声が聞こえた。
「ローレットか! 少しは骨のあるやつなんだろうな!?」
「なんですか、あなたは」
 そういう仲間に、『あなた』は身構える。
「アタシは不毀の軍勢、破鎧闘士のロゼッタだ!
 最強の剣士!」
 獰猛に笑うロゼッタに、『あなた』たちは油断なく構える。アホそうだが、なるほど、確かに実力はありそうである。
「あれが『破鎧』だね。全剣王の塔からエネルギーを送られているとかいう」
「はい。逆に、亜の鎧を破壊すれば、エネルギーが逆流して、全剣王の塔にダメージを与えられるはずです……!」
「……破壊されない自信があるのか、アホなのか……」
 仲間が言うのへ、『あなた』も苦笑する。いずれにしても、敵を倒すことに変わりはない。
「さぁ、勝負と行こうか!」
 ロゼッタが構える――果たしてはねだすように飛び出した彼女を、あなたたちは迎撃すべく飛び出した――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 天義での激闘。

●成功条件
 すべての敵の撃破。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 天義の消滅都市ファウ・レムルを調査していた、ジル・フラヴィニーと仲間たち。
 彼らはそこで、無数の星海獣と、全剣王の部下である『破鎧闘士・ロゼッタ』に遭遇します。
 破鎧闘士とは、全剣王の塔からエネルギーを供給されている特別な武装で、様々な個性を持った装備です。ロゼッタはこれに『最強の防御力』を与えており、強力な攻撃なければ破壊できない、と豪語します。
 天義聖騎士たちは周りの星海獣の対処に手いっぱいであり、ロゼッタの相手をするのは至難。
 というところで、皆さんに声がかかりました。
 皆さんは、ジルと協力して、ロゼッタ、および直掩の星海獣を撃破してください。
 作戦決行タイミングは昼。作戦エリアは草原となっています。
 特にペナルティや、特別なギミックは存在しません。

●エネミーデータ
 破鎧闘士・ロゼッタ
  全剣王の配下である『不毀の軍勢』のうち、『破鎧』と呼ばれる特別な装備を与えられたものが『破鎧闘士』です。『破鎧』は全剣王の塔からエネルギーを供給されており、持ち主の望むパワーを発揮します。
  ロゼッタが付与したのは、最強の防御力。というわけで、非常に高い防技を誇る装備です。生中な攻撃でダメージを与えられないでしょうが、最強の防御力を上回るような強烈な『ダメージ』を与えられれば、あっという間に粉砕されるでしょう。『ダメージ』で構いません。
 破鎧が破壊されれば、エネルギーが逆流して全剣王の塔にダメージを与えることもできます。壊し得です。壊しましょう。
 ロゼッタ自体は、高い攻撃力を誇る双剣士です。連続攻撃をメインに強烈な一撃を与えてくるでしょう。半面、防御面は破鎧に頼り切っているため、破鎧さえ壊してしまえば割と柔らかいです。

 星海獣・星蟹 ×5
  星海獣の内、蟹のような姿をした異形の怪物たちです。鋭いはさみを用いた攻撃には、出血系列を付与する能力があります。
  見た目通りに防技は高めです。反応速度は遅めなので、しっかり誘引して攻撃をひきつけ、確実に倒してしまいましょう。

●味方NPC
 ジル・フラヴィニー
 かつてセレスタン・オリオールという聖騎士の従者だった少年。
 今は正式な聖騎士となり、新米ながらも主の夢をかなえるために、世界を守るための戦いに身を投じています。
 基本的には、サポートユニットになっています。簡易な治療術式を使えますので、戦える傷薬、くらいに頼っていただけるとよいかと思います。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <グレート・カタストロフ>神の地に滅びは謳う完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
彼方への祈り
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女

サポートNPC一覧(1人)

ジル・フラヴィニー(p3n000364)
大人へ

リプレイ

●滅びの地の最強
「は――ッ!」
 破鎧闘士、ロゼッタは笑う。
「なるほど――確かにアンタたちは強い。
 なぜならアタシは最強だから、相手の力量もちゃんとわかるのさ!」
 かちゃり、と双剣を構える。装着した派手めな鎧は、破鎧――全剣王の力を込められた、不毀の軍勢に与えられた特別な装備である。
「……その、口が悪いのですが、あまり、お勉強などは得意ではないみたいに見えますけれど」
 一生懸命言葉を選びながら、ジルが言う。
「それでも、確かに――強いのです。騎士団の仲間たちも、けん制での攻撃は行いましたが、それでもろくにダメージを与えることはできませんでしたし、損害が増えるばかり」
「あー、まぁ、気持ちはわかる。
 そのうえで、奴が強いってことくらいもわかるさ」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が苦笑するのへ、「あら」と『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は声を上げる。
「私、ああいうタイプは嫌いではありませんわよ。
 ふふ、今日は気持ちよく暴れられそう!」
「ええ、私もああいうタイプは嫌いではありませんよ。
 解らせ甲斐があります」
 ふふ、と『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)も笑った。二者、それぞれ違うタイプの笑みである。
「……ええと。引かないでくださいね、ジルさん」
 『未来への陽を浴びた花』隠岐奈 朝顔(p3p008750)がそういうのへ、ジルはうなづいた。
「はい! 皆さん、正義の方だと知っています!」
「ううっ、まぶしい……!」
 朝顔が思わず顔を覆った。この笑顔に耐えていたのか、セレスタン……確かに心苦しくもなる。
「……ロザリエイルといいこのロゼッタといい、不毀の軍勢って「濃い」敵が多くないですか?」
 『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)がそう言ってから、嘆息した。
「……と思っていたのですけれど。もしかして、俺たちも相当『濃い』のですかね……」
「ノーコメントで」
 『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が目をそらしながら言った。
「スティアちゃん? ちゃんと目を合わせて?」
 『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)がちょっと不安そうに声を上げた。
「まぁ、良いではありませんか。
 あれほどの濃さです。こちらも濃くなければ負けてしまいますよ」
 ふふ、と『想光を紡ぐ』マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)がほほ笑む。
「さて。さっそくではありますが、ロゼッタさん? 退いてはいただけませんよね?」
「退くわけないだろ! なんでそんなことを聞く?」
「ええ、一応念のため。こう言っておけば、こちらも覚悟が決まるというもの。
 それに、わたくし、ヴァレーリヤさんと、あなたの鉄帝対決、結構楽しみにしているのですよ?」
「あら、私に賭けていただければ大儲けさせてあげますわよ?」
 ヴァレーリヤがケタケタと笑う。
「へぇ、大丈夫ですか? かけ金をもって逃げたりしません?」
 マリエッタがそういうのへ、ヴァレーリヤが憤慨した。
「まぁ。私『絶対に嘘をつかない信用できる女』と評判ですのよ?」
「ほんとにー?」
 余裕を見せながらも、イレギュラーズたちは決して油断はしない。ロゼッタは感心したように笑った。
「ハッ! アタシもそういうノリは好きだぜ。せっかくだ、楽しまなきゃなぁ。
 だが、勝つのはアタシだ。そろそろ始めようぜ。うずうずしてきた」
「ふふ、その実力が本物なら、私だってそうだよ」
 サクラが剣を抜き放つ。合わせるように、まずスティアが構え、そして隣に立った。
「このまま滅びの道を進む訳にはいかない!
 Bad End8達にどんな思惑があるかはわからないけど、全力で止めてみせる!
 いくよ、サクラちゃん!」
「いこう、スティアちゃん!」
 二人が戦闘態勢に入るのへ、仲間たちも続いた。
「この地は、彼が傷つけられ、それでも生きようとした場所です」
 朝顔が言う。
「滅ぼさせはしません。彼の、新しい夢のためにも」
「ま、縁のできちまった場所だからな。
 俺にとっても、守るべき場所だ」
 ゴリョウが、にぃ、と笑う。
「というわけです、ロゼッタさん。
 ここで潰えてもらいます」
 マグタレーナが、くすりと笑って構える。
 なれば、あとは行くだけ。
「おう……さあて、始めようか!」
 ロゼッタがその手をふるうと、直掩の星蟹がうごうごと動き出した。
「ジル! 俺の背中は任せるぜ!」
 ゴリョウが叫ぶのへ、ジルがうなづく。
「はい! 僕に聖盾はありませんけれど、その心は負けない気持ちです!」
「よく言った――いくぞ!」
 その言葉に――。
 両者は、一気に踏み出した!

●滅びの地での激突
 さて、敵の戦力は、破鎧闘士であるロゼッタと、星蟹が5体である。見た目通りの性能を誇る蟹のバケモノは、比較的数も多い。ロゼッタこそが最重要にして最も注意すべき相手ではあるのだが、星蟹をフリーにしていては、こちらもいいようにやられてしまうだろう。
「ということは、だ。俺とジルが蟹を押さえる」
 ゴリョウが叫ぶのへ、ジルがその意図を理解して頷いた。
「ジルさん、お気をつけて……!」
 朝顔が言うのへ、ジルがうなづく。
「はい、朝顔さんも!」
 ゴリョウとジルが戦場へと飛び出し、
「おぅ蟹ども! 食いでのある豚がいるぜぇ! かかってきなぁ!」
 蟹どもをひきつける! 一方で、星蟹へ攻撃を仕掛けるのは、聖騎士――サクラだ!
「天義の聖騎士、サクラ・ロウライト。推して参る!」
 ふっ、と一息、同時に踏み込むは赤き疾風がごとし。サクラはまず、その斬撃によって星蟹の、まさに蟹足のような個所を狙う。さん、と静けさすら感じるような音とともに切り払われた刃は氷華を描き、星蟹の足を切り裂いた! その体勢を大きく崩す!
「ゴリョウさん、蟹ってどうやって締めるのかな?」
「おう、腹の方から針金を刺すんだ」
「なるほど――こうかな?」
 す、と、重さを感じさせぬほどの鋭い一撃。サクラの刃は竜を墜とす其れである。ならば星の化け物とはいえ、蟹如き墜とせぬはずはない。ぎゅうう、と絞めるような音を上げて、星蟹がサクラの刃に倒れた。
「ナイス、サクラちゃん!」
 スティアが笑うのへ、サクラもうなづく。
「……でも、さすがに食べられないよね、これ!」
「あら、今日はバーベキューで蟹焼きを一杯、と思っておりましたのに!
 マグタレーナに用意してもらったソースが無駄になってしまいますわね?」
 ヴァレーリヤが不敵に笑い、そのメイスを掲げて聖句を唱える。すると、巻き上がった炎が、星蟹たちをまとめて飲み込み、いささか香ばしいにおいを上げ始めた。
「……ごくり。ワンチャン食べられませんこと?」
「ぜったい、おなか壊しますよ……?」
 朝顔が思わず突っ込む。
「豪胆なのは気に入った! でも、勝てるとは思うなよな!」
 ロゼッタが吠え、その双剣とともに突撃する。立ちはだかるのは、スティアだ!
「いらっしゃい、天義へようこそ。
 天義の聖女がお相手するよ!」
 スティアが身構え、聖杖をふるう。銀の翼。そして祈り。スティアの展開する結界が、その一撃を押しとどめた。
「……!!」
 さすがのロゼッタも驚きに目を見開いた。ロゼッタの一撃は、最強を自称するものだ。それが防がれたとなれば――!
「自分の力に圧倒的な自信を持ってるんだよね?
 じゃあ私がちょっと強くなった所で平気かな?
 もし自信がないなら私の強化魔法を解除しようとしてもいいけど……。
 私の挑戦は受ける? それとも受けない?」
 不敵に笑って見せるスティアに、ロゼッタは獰猛に笑った。
「その挑戦受けて立つ!」
 たたきつけるように振るわれた双剣。それをスティアが受け止める。なるほど、頭に血の昇りやすいタイプのようだ。
「おっと、一方的に攻撃できるだけとは思わないでくださいね」
 ルーキスが言葉とともに飛び込む。
「自分と同じ二刀流の剣士、しかも『最強』を謳う相手と戦えるとは僥倖。存分に楽しみましょう」
 二振りの刀が躍る! ロゼッタは、その刃を自身の双剣によって受け止めた。ルーキスが、わずかに目を細める。
「……本人より先に、刃が反応している」
「破鎧の力って奴だ! そう簡単に突破できると思うな!」
 得意げに言うロゼッタに、ルーキスは再び踏み込んだ。か、かん、と小気味よく振るわれる刃を、オートマチックのようにロゼッタの刃が受け止める。
「なるほど、厄介ではありますが――」
「其れって、誇るようなものですか?」
 挑発するように、マリエッタが言う。
「誰かの手助けがなければ防げないのならば、ええ、ええ。
 あなたの首など、本来ならばルーキスさんに二度三度跳ねられていてもおかしくはないでしょう?
 最強の防御力とはよく言ったものです。絶対に破られない、自分は安全だと思っている──あはっ、可愛らしい子!」
 その手を振るえば、無数の血が武器を創造し、杭を穿つ如く襲い掛かる! ロゼッタは鼻で笑いながら、それを受け止めて見せた。
「なんとでもいいな。負け犬の遠吠えだ!」
「言われちゃってますよ、魔女」
 ふふ、と心の中の魔女に笑いかけながら、マリエッタは攻撃を続行する。さて、視点を再び星蟹討伐に向ければ、鋭いハサミによる斬撃を受け止めながら、豪快に笑うゴリョウの活躍が目に付くだろう。
「蟹を調理するときは、大体氷水で気絶させてから締めるもんだが」
 ぶはははっ、と笑う。
「それでもたまには、ハサミで挟まれちまうこともある!
 だがな、それに比べりゃあ、オメェさんたちのなんざ軽いもんよ!」
「星の怪物か、なにかは知りませんが」
 朝顔が言う。
「私は、あなたたちに負けるつもりも、この世界を明け渡すつもりもありません。
 ここは、あの人との、約束の世界なのですから!」
 魔刀が、星蟹の内一匹を断裂する。決意と、約束と、恋心。乙女は無敵だ。
「まぁ、まぁ。では、わたくし母なれば。皆様の想いを、力を、応援せずにはいられません」
 マグタレーナがほほ笑み、その手を爪弾く。母の言葉が力となりて、支援の術式を編み上げて子らの背中を押す。
「さぁ、相手が最強ならば、わたくしも、そして皆様も最強。
 最強と最強がぶつかるのは何とするか。矛盾? いいえ、いいえ。わたくしたちは、すべてを貫きすべてを守る、一体の最強。
 そこに矛盾はありません」
「やっぱり、すごい……!」
 マグタレーナの、そしてイレギュラーズたちの活躍に負けじと、おいていかれじと、ジルは必死に食らいつく。
「でも、憧れるだけじゃダメなんだ……僕が、支えられるようにならないと!」
 学んだことは、約束は、胸に。共に尊重し、支えあい、時に弱さすら見せあう。それが、彼の望んだ『対等』であったはずなのだから――。
 星蟹は、確実に、その姿を減じていった。多少の攻撃ならば、今のイレギュラーズたちを止めることはできまい。
「――フッ!」
 呼気とともに、サクラが居合のごとく刃を振りぬく。さん、と切り払われた星蟹がバランスを崩すのへ、ヴァレーリヤがメイスで殴り上げるように攻撃を行う。
「どっかぁん、ですわ~っ!!」
 その衝撃は、星蟹の意識を奪い取り、絶命させた。
「マグタレーナ、バーべーキューソースをかけましょう! フグの肝もよくわからないけど糠につけておくと食べられるといいますし! ワンチャンバーベキューソースにつけておいたらお酒のおつまみになりません?!」
「まぁ、ヴァレーリヤさん。お酒を飲むことを正当化した過ぎて本末転倒になっている気がしますよ」
 もちろん軽いジョークの応酬である。いや、お酒を飲みたいのは本音かもしれなかったがさておき。
「さぁて、こういいましょうか?
 『後がありませんわよ、ロゼッタ』。
 最強の鎧と私のメイス、どちらが勝っても後腐れなく行きましょう!
 この場合は、鎚盾って言うのかしら。言わない?」
 不敵に笑って見せるヴァレーリヤへ、ロゼッタは笑った。
「は――アンタのうわさは聞いているよ。最強脱獄囚――」
「そんな噂を?」
 ジルが困惑するのへ、ヴァレーリヤが笑った。
「濡れ衣ですわ!」
「ですよね……!」
「騙されてる……」
 朝顔が肩を落とす。さておき。
「ふん、いいぜ。あんたらに破鎧の力は越えられない。
 かかってこいよ」
 身構える。ロゼッタ。同時――。
 一気に、双方、駆けだす!
 ロゼッタの反応速度は速い。が、この時、サクラに追いつける者はいない!
「確かに堅いね。大した鎧だと思うよ。
 でも個人的な事情でね。最強なんて名乗らせる訳にはいかないんだよ!」
 本気の瞳でサクラが吠える。ふるわれたサクラの刃を、ロゼッタは破鎧の力を借りて受け止める。
「効かねぇ!」
「では、これはどうです?」
 間髪入れず踏み込んだマリエッタが、そのての呪血印を怪しく輝かせる。同時、体内の聖女の血を媒介に、神聖なる光――すなわちアイン・ソフ・オウルを解き放つ! 掲げた手から放たれる、爆裂がごとき聖光!
「破鎧!」
 ロゼッタが叫ぶと、破鎧は内の魔力を爆発的に解き放った! 爆裂が、その域の者たちを吹き飛ばすように炸裂する! マリエッタ、サクラ、ロゼッタ、三名が一気に飛びずさる。が、すぐさまの追撃が、ロゼッタを狙う!
「部下にそれだけの物を与えているのなら、全剣王本人はさぞかし凄い武装をしているんでしょうね」
 軽口一つ、ルーキスが突撃! ロゼッタは笑った!
「ああ! 全剣王様の持つ剣は、最強にして無敵の剣だ!」
「……情報量があるんだかないんだか……」
 呆れ半分、ルーキスが斬撃を繰り出す。がきぃん、と双方の双剣がぶつかり合い、火花を散らした。
「やはり、その破鎧、厄介ですね。
 ……ねぇ、ヴァレーリヤさん?」
「では、槌鎧、と行きましょう。
 貴女の一撃と私の一撃。
 貴女の鎧(プライド)と私のメイス(プライド)。
 どちらが重いか勝負と行きましょう」
 ヴァレーリヤが踏み込む。放つは突撃! ただそれだけ、ただそれだけの――シンプルにして究極の一!
「どっ、せぇぇぇぇぇぇいっ!!」
 雄たけびとともにぶつかるは、撃! 二つのプライド、どちらが砕けるか! 破鎧は、その一撃に反応した。展開する、爆発的な魔力、障壁――その波を吹き飛ばして、ヴァレーリヤが踏み込む!
「もういちどッ! どっせぇぇぇぇぇっ、いっ!!!」
 ぐん、と踏み込んだ。接触。同時、たたきつけるメイスが、破鎧を粉砕する――!
「ば」
 ロゼッタの顔面が、驚愕に染まる!
「か、なっ!?」
 砕け散った破鎧が黄金の光を放ち、キラキラと砕けて散っていく。ロゼッタはすぐに体勢を立て直すと、その双剣をふるうべく突撃――抑えるべく立ちはだかる、二つの盾。ゴリョウと、スティア。
「オメェさんの双剣は、確かに鋭いさ」
「でも――私たちの鎧(タマシイ)は砕けないよ!
 スティアの防御術式が展開し、ゴリョウを包み込む。ゴリョウはロゼッタの一撃を、盾で受け止めた。
「やんな、朝顔!」
「はい!」
 朝顔は一気に踏み込み、横なぎにその魔刀を振るった。刃が、ロゼッタの体を切り裂く。ごふ、と血を吐いたロゼッタが、それでも逃げ出そうと体をよじるのへ、ルーキスの刃が突き刺さった。
「俺の勝ちです」
「畜生……! 確かに、強かったな……!」
 ロゼッタが悔し気に呻くと、その体が黄金の粒子になって消えていった。どうやら、魔力によって生み出されたタイプの不毀の軍勢であったのだろう。
「おお、さすがローレットの方々だ!」
 ロゼッタを撃破したことを察したのだろう、聖騎士団部隊のリーダーが駆け寄ってくる。
「周囲の星蟹も撃破を完了しております。
 皆さんのおかげです」
「いいえ、お互いさまででしょう」
 マグタレーナは笑う。
「これ、破鎧のかけらなんだ。
 何か情報が得られるかもしれないから、調査チームに回しておいてほしい」
 スティアが言うのへ、彼はうなづく。
「ええ、確かに預かります」
「オメェさんがジル坊のとこのリーダーかい。世話になったぜ」
「いえ、こちらこそ。
 ジル、お前もよく頑張ったな」
 そう言って、彼は笑う。ジルはうなづいた。
「ジルくん、聖騎士になったからって気負わないでね。私達のやることは何も変わらないんだから!」
 サクラがほほ笑むのへ、リーダーがうなづいた。
「うん、俺が言うよりもずっと説得力があるのが悔しいところだが。
 そういうことだ」
「はい、みなさん!」
 ジルが元気よく返事をするのへ、皆は笑う。
(セレスタン=サマエルさん。
 ジルさんって強いね。
 貴方の為って、
 神使の先輩と共に前を向いて歩いてる。
 きっと貴方の死を乗り越えて立派になるよ。

 ……それが寂しいだなんて思っちゃ駄目なのにな)
 少しだけチクリとした胸を抱えながら、朝顔はそれでも微笑んだ。
「そういえば! ゴリョウが打ち上げを企画していると聞きましたわ!!」
「いいですねぇ。せっかくですから、にぎやかにいきましょう」
 マリエッタが笑うのへ、ルーキスがうなづく。
「ええ。同じ釜の飯を食う、なんて言葉もありますからね。
 皆さんとは、今後も連携していくでしょうし」
 その言葉に、リーダーの聖騎士がうなづいた。
「はは、では内からも何か用意させましょう。さすがに、星海獣を食べるわけにもいきませんからね」
「おう、頼むぜ! じゃあ、凱旋と行くか!」
 ゴリョウの言葉に、仲間たちはうなづいた。
 滅びは間近に迫っていたとしても。
 希望と笑顔は、決して絶えないはずだ。

成否

成功

MVP

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました。
無事、窮地の突破に成功しました――。

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