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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>祈りの、その先へ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 世界の崩壊。そのカウントダウンが始まったらしい。
 辺り構わずバグホールが出現し、終焉獣たちがばらまかれる。
 それは無論、鉄帝の地――ギアバジリカとて無縁ではない。
「保存食の準備もまだだっていうのに、こんな時期になって……!」
 膝まで雪の積もる鉄帝の大地をざくざくと走る。肩から提げているのは小銃だ。
 狙いを付け、祈り、そして撃つ。
 一発目は甲殻を前面に持った星界獣の堅さに弾かれるが、更に連射を続けることで甲殻を破壊、内容物をまき散らして爆ぜる姿をアイアンサイト越しに――『ただの少女』アミナは見た。
 この地には想いが、記憶が、歴史が詰まっている。
 涙した人々がいた。苦しんだ人々がいた。挫折があった。後悔があった。立ち上がる勇気があって、戦いがあった。
 それを知る多くの人々は――。
「攻撃を続けろ! 弾幕を緩めるな!」
 アミナに続くようにして小銃を構え、撃ちまくるレジスタンスたち。
「折角皆が生きようとしているんです。ここを……この場所を、壊させはしません!」
 バグホールだらけのこの世界で。けれどなお、生きようとする。
 その名はクラースナヤ・ズヴェズダー革命派。人々の声である。


「なんとか第一波は食い止めることができました。けれど、情報によれば星界獣と終焉獣の混成部隊がまたも近づいているということです」
 ギアバジリカ内、会議室。アミナはそう述べて周りを見回した。
 集められたイレギュラーズとヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は腕組みをして地図を見やる。
 配置された駒は星界獣と終焉獣の混成部隊を示すもの。それらがギアバジリカ南方から攻め込む形で北上していく姿が表されている。
「レジスタンスに、被害は?」
 そう問いかけたヴァレーリヤに、治療を粗方終えてきたというルブラット・メルクライン(p3p009557)が答える。
「『少なくはない』……といったところか。まだ戦える者も多いがね」
「士気に関しては悪くない。皆、まだ戦うつもりだ」
 そう続けたのは頭にバンダナを巻いたレジスタンスの一人である。あとはイレギュラーズに任せて退いた方が良いという考えもあるが、物量で攻めてくる星界獣たちを抑えるには同じく物量が必要だ。レジスタンスたちの戦力はアテになる。
「なら、こういうのはどうだ」
 ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が駒を指さしてみせる。
「レジスタンスと共に星界獣たちの攻撃に対抗する。それらを『弓』として、ローレット・イレギュラーズを『矢』として敵主力に放つ」
 観測されているのは強大な終焉獣だ。
 人型をし、巨大な体躯をもち、圧倒的な怪力と魔術を行使する様子からまるで手が付けられないとされた終焉獣。仮に『デスペラード』と呼称されている個体だ。
 レジスタンスたちではかえって足手まといになってしまう戦闘力だ。イレギュラーズだけをぶつけるのが正解だろう。
「なるほど……その作戦しかなさそうですわね」
 ヴァレーリヤが頷くと、アミナもまた頷いた。
「ギアバジリカには今だ多くの人々が暮らしています。そんな場所を、壊させるわけにはいきません。一緒に、戦いましょう!」

GMコメント

●シチュエーション
 鉄帝はギアバジリカ。そこが星界獣と終焉獣の混成部隊に襲われています。
 現地のレジスタンスたちと共に戦い、これを撃退しましょう!

●フィールド
 雪の積もったエリアです。が、今回は地形的な不利は生じないものとして扱います。

●前半:強行突破
 アミナ含むレジスタンスたちと共に戦い、物凄い数の星界獣、終焉獣の群れを突破します。
 範囲攻撃などがあると便利でしょう。また、皆さんの行動によってレジスタンスは士気を高めます。

●後半:強敵撃破
 イレギュラーズだけで強敵個体『デスペラード』との戦いに移ります。
 取り巻きの終焉獣たちを相手にしつつ、強敵個体に対応してください。
 デスペラードは人型をしており、巨体でかつ怪力です。範囲攻撃を可能とする魔術も行使してくるらしく、戦う際には注意が必要です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <グレート・カタストロフ>祈りの、その先へ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
イロン=マ=イデン(p3p008964)
善行の囚人
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)
アーリオ・オーリオ

リプレイ


 小銃で武装したレジスタンスたちの先頭を、少女アミナは突き進む。聖女になれなかった少女は、いまやただの少女として前を向いて進んでいた。
 その更に前を征くのは、『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)だ。
「たくさんの犠牲を積み上げて、やっと手に入れたのですもの。
 この場所を、終焉獣なんかに渡すわけにはいきませんわっ!
 アミナ、皆! 行きましょう! 私達の『約束の地』を守るために!」
「はい!」
 アミナと仲間たちが強く頷き、応える。
 その中には『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の姿もあった。
「鉄帝もようやく復興が進んできてるっていうこんな時に!
 この地をこれ以上荒らさせはしないよ!
 必ず、誰も死なせず護ってみせる!」
 握りした魔法杖『ヴィリディフローラ』から花咲くように魔力が湧き上がる。
 そんな姿を横目に、『善行の囚人』イロン=マ=イデン(p3p008964)もまた前を向いた。
「皆さまの理不尽に抗う意志、人々を想う善の心、どれもまだ曇っていないようで安心したのです。
 で、あるならば、ワタシも全力で応えるのみ、なのです!」
 ずきりと、また頭が痛んだ。軽く額を抑えながらも、けれど視線はそらさない。
(気丈に振る舞ってこそ、士気も上がるというもの。
 不安こそありますが隠し通し、自信溢れる表情を見せるのです。
 終焉獣とやらも、この頭痛も、ワタシの善行を妨げる事はできないと信じているのですから)
 一方でアミナは気丈にしつつも、どこか不安そうな様子があった。
 『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)はその横にそっと立ち、声をかける。
「あの春を迎えた時は、もう皆が死に絶える事態はそうそう起きないだろうと、私らしくもない夢を見たものだ。
 現実は上手くいかないな」
「ルブラットさん……」
「――アミナ。それでも、君達なら絶対に皆が笑顔でいられる世界を作れるよ。絶対に。絶対にだ。今日も、勝とう。……背中は任せたよ」
「はい。ルブラットさんこそ、任せましたよ」
 そこにいるのは、やはり気丈な少女だった。

 『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は片目を覆うようにして呟く。
「俺は……もう、後光の乙女の時とは違う。
 それでも力を求めるというのなら、もう一度言葉を唱えるとしよう。
 だが、『奴ら』に救済は必要ないだろう。終わりを告げる者たちが相手なら、俺達が逆に終わりを奴らに」
 その言葉をとくに聞いてはいなかったようで、『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は手の中に魔力を廻らせながら歩く。
(こうもあちこちにバグホールが開いて怪物が湧いて出てくると終末という感じもしますが、かといって何も試さずに生き足掻くことを諦められるほど生に執着がないわけでもなく。
 終末を待てというのなら、まずは乗り越える努力をしてからの話でしょう)
「…………」
 そんな二人をちらりと兜越しに見る『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
 いつでも戦闘を開始できるようにクロスボウに矢をつがえ、腰にはいたロングソードをそっと触る。
「真っ直ぐに!只管に!一直線で!
 障害も絶望も!
 全部纏めてブチ抜いて差し上げましょう!」
 張り詰めた空気の中、威勢良く叫ぶ『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)。
 『断罪と救済の十字架』を掴み、豪快に担いでみせる。
「生命がある限り、生きたいと強く願う限り。
 必ずや勝利は掴めるはずです!
 さぁ殲滅の時間です、無尽蔵のリソースにて連中を屠ってしまいましょう!」


 わしわしと多脚を動かす星界獣と、四足歩行の終焉獣。それらの混成部隊が遠くより押し寄せてくる。
 銃を構えたレジスタンスやアミナたちの様子を見てから、ヴァレーリヤはイロンへと視線を向けた。
「イロン、私の指揮をお願いしてしまってもよろしくて? 貴方の目が必要なんですの」
 こくり、とイロンは頷いて見せた。
 そして自らの額に一度手をやると、何かを確かめるように目を瞑る。
「ただ従うだけの人形や従者としてではなく、一人前の兵士として、仲間の一員として、必ずや皆さまに希望を示してみせましょう。
 ですからアミナさん、ワタシたちの背中はお願いするのです!」
 かっと目を見開くイロン。
 イロンはクェーサードクトリンの力を解放し、レジスタンスたちに強化の力を施していく。
 この手のエスプリ効果は味方の数が多ければ多いほど効果が高まるものだ。今回のように大勢のレジスタンスを味方に付けて戦う際にはそれこそ高い効果が見込めるのである。
 勢いづいたレジスタンスたちが近づく終焉獣たちに射撃を開始。
 その中をヴァレーリヤは駆け抜ける。
「アミナ、貴女も気をつけて。危なくなったらすぐに言うんですのよ」
「そちらこそ、危なくなったら下がってくださいねヴァリューシャ先輩!」
 射撃による援護を受けながら、メイスに炎を纏わせるヴァレーリヤ。
「――『主よ、慈悲深き天の王よ。彼の者を破滅の毒より救い給え。毒の名は激情。毒の名は狂乱。どうか彼の者に一時の安息を。永き眠りのその前に』」
 『致命者に捧ぐ讃歌』で準備を整えると、『太陽が燃える夜』を解き放つ。
「――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』!」
 叩きつけるように繰り出したメイスは炎の渦を作り出し、終焉獣たちを纏めて貫くように燃やしていく。
 一方でアレクシアは『アイゼルネ・ブリガーデ』を発動。花咲くように湧き上がった無数の精霊たちが終焉獣の群れへと突撃。剣のように変化させた腕で終焉獣を貫いていく。
「アミナ君、レジスタンスのみんな、最優先は自分の生命だからね! 絶対に死なないように!」
 アレクシアの言葉にアミナは親指を立てて笑って見せた。
 気丈な姿に安堵を覚えつつ、散開を始めた終焉獣たちに『誘争の赤花』を発動させた。
 別名『テロペア』。赤き花の如き魔力塊を生成、炸裂させ魔力を拡散させる魔法である。炸裂した魔力片を喰らった終焉獣たちはアレクシアに強い敵愾心を燃やし始め、怒ったように殺到し始める。
 そこへ、レジスタンスによる集中砲火が浴びせられた。
 しかし終焉獣たちも伊達に群れで行動してはいないようで、怒り付与のされていない終焉獣たちがレジスタンスたちを狙って攻撃を開始。獣の牙で食らいつき、押し倒しにかかる。
「皆さん、離れて!」
 アンジェリカが『エンジェル・レイン』を発動。レジスタンスたちに『光輝50』を付与すると、今度は自身に『アムド・フォートレス』を付与。敵を引きつけるかのように前へ出ると、『ティスタ・ヴァージュ』で自らの力を増大させた。
 あとはイロンとアンジェリカによる治癒をかけていけば、光輝効果もあってレジスタンスたちの戦闘不能は防げるという寸法だ。
 『幻想楽曲オデュッセイア』と『無穢のアガペー』を使い分けるアンジェリカのヒーラースタイルはそうそう仲間を落とさせない。
 そんな中で攻撃に転じるブランシュ。
「俺たちの自由をこんな訳の分からない奴に奪われるものか。
 クリストスペシャルが決まった相手は既に動かない的だ。遠距離から打ち込み続けろ。
 我ら革命の乙女の名を連ねる者であるのだと――!」
 『軌道カタパルト』『未来簒奪』を自らに付与し終えたブランシュはその機動力にものを言わせて上空から終焉獣たちを俯瞰。
 『ヘルメスの鳥』を上空から放つと、急降下突撃を仕掛け『クリストスペシャル』をばらまいた。
 地面を殴りつけるように着地したブランシュを中心にウィルスがばらまかれ、【怒り】に支配されつつも激しい【停滞】と【退化】をくらった終焉獣たちはのろのろとした動きへと変わっていく。
 そんな終焉獣の一体一体をレジスタンスは銃撃していった。

 戦闘は順調に進んでいる。
 未だにイレギュラーズたちを無視してレジスタンスたちへ向かう終焉獣が出る中、瑠璃は『妖術影鰐(ようじゅつかげわに)』による引きつけを行っていた。
 ピッとナイフで自らの腕を切りつけると、流した血で素早く印を結び妖術を発動。
 自らの影から巨大な鰐の顎を出現させ、終焉獣たちを噛みつかせる。
 それによって【怒り】の付与された終焉獣たちは瑠璃へと標的を変更。飛びかかりその牙で食らいつく――が、高い回避能力をもつ瑠璃をとらえることはできない。
 次々に襲いかかる終焉獣から距離をとり、『ケイオスタイド』の妖術を発動。再び血によって印を結ぶと混沌の泥を召喚して終焉獣たちに纏わり付かせる。
 そうなればもはや良い的だ。
 オリーブはクロスボウによる『掃射撃』を実行に移した。
 オリーブといえば鉄帝国ではダントツで名前の知れたイレギュラーズである。そんな彼の活躍はレジスタンスたちから憧れと称賛、そして勇気の感情を与えるに充分であった。
「正面にだけ集中できれば楽ですけれど、数が多い以上はそうもいかなそうですね」
 サッとピボットターンをかけて側面に対してクロスボウの射撃を行うオリーブ。
 彼としては敵が倒れていれば味方の士気も上がるだろうと考えているのだが、最も士気を上げているのは彼自身の背中なのであった。
「レジスタンスの皆さんも勢いづいています。これならば……」
「ああ、そのようだねアミナ」
 ルブラットは仮面の下で小さく笑った。
 そして敵の層が薄い部分を見極めて『コキュートスの楔』を解き放つ。
 ばっと腕を振るや、放たれた暗殺針が次々に星界獣たちに突き刺さっていく。
 毒を塗布されたそれは行きながらに身を焼き氷河の底で溺れ死ぬ錯覚をもたらすという。
 その通りになったのか、毒の効果にもがき苦しむ星界獣たちを見つつ、そんな中でも針を払いのけ突進してくる中型の星界獣が現れる。
 ならばとルブラットは『滂沱の海』を放った。より強力な投げナイフが今度は星界獣の堅い外殻を貫いて刺さる。塗布された毒と止まらない出血によってがくりとその場に倒れる星界獣。
「私達は先へ征く。あとは任せても?」
「勿論です。任せてください!」
 どうか先へ! と笑顔でこたえるアミナに、ルブラットは深く頷いたのだった。


 終焉獣と星界獣の混成部隊を抜けた先。そこで待ち構えていたのは強力な終焉獣個体『デスペラード』であった。
「いよいよ正念場、ですわね。アレクシア、頼りにしていますわね」
「うん、まかせて」
 ヴァレーリヤはメイスに聖なる炎を灯らせ、アレクシアは杖に花の魔力体を咲かせる。
 そして二人は同時にデスペラードへと突っ込んだ。
 両腕を広げ二人同時になぎ払おうとするデスペラードだが、アレクシアはスライディングで、ヴァレーリヤは跳躍によってそれを回避。
 素早く反転した二人はそれぞれの魔術を解き放つ。
「あなたのような相手にそう簡単にやられる私じゃないよ!」
 アレクシアが早速放ったのは『幻朧の鐘花(アトロファ・ヴェラ)』。
 魔力の花弁を拡散する魔術とは異なり直接花弁を撃ち込み、幻覚を見せて敵意を引き寄せる強力な魔法である。
 魔法が効果を発揮したらしく、歯をむき出しにして吠えながらアレクシアに連撃を繰り出すデスペラード。
「どっせえーーい!!!」
 そんなデスペラードの背にむけてヴァレーリヤはメイスによる殴りつけを行った。
 がつん、と激しい音が鳴り響くが手応えは鋼鉄のそれ。
 デスペラードに与えたダメージは全体比で僅かであったらしい。
 ならばと連続でメイスを叩き込んでいくヴァレーリヤ。
「ああもう、しぶといですわね! 獣は獣らしく、巣穴に戻って冬眠でもしてなさい!!」
 一方でアレクシアはデスペラードの強力な連撃に、花弁を散らしたような魔力結界を展開してギリギリ耐えていた。いや、耐えきれずに身体にいくつもの傷ができはじめている。
 それを察したイロンは治癒魔法を唱え始めた。
(レジスタンスの皆さんのことも気に掛かりますが……今は振り向いてはいられません。
 ここはアミナさんを初めとする皆さまの実力を信じて、ワタシはこの場に専念しなければ……!)
 イロンの治癒の甲斐もあってなんとか攻撃をしのげているアレクシア。
 ならばここは攻撃あるのみだ。
(流れが掴めていれば、自分が息切れしていても味方が押し切ってくれるでしょう。一度定まった流れは容易く戻りません)
 オリーブは剣に手をかけると、『コードレッド・オーバーゾーン』を繰り出した。
 凄まじい突進から繰り出す、剣による突き。シンプルながらも強烈なこの攻撃はデスペラードの鋼鉄めいた外皮を貫き、脇腹へと突き刺さった。
 流石に痛みを感じたのかデスペラードがギャオオと吠える。
 そしてオリーブを払いのけようと腕を振った。
 素早く剣を引き抜き、腕の振り払いから飛び退くオリーブ。
 そこへ更なる攻撃を仕掛けるべく瑠璃は『ソウルストライク』の妖術を行使した。
 指に流れる血で印を結び、血の弾丸を生成。解き放つ。
 一発ならず何発も生成されたそれらは先ほどオリーブのあけた傷口を広げるように撃ち込まれ、激しい血を吹き上がらせる。
 怒りの付与から解放されたデスペラードが振り返り、脅威に感じた瑠璃めがけ突進を始める。
 対する瑠璃は攻撃をいなすべく血の網のような妖力結界を展開して対抗。突進から繰り出す強烈なパンチが、結界を破壊して瑠璃の身体を派手に吹き飛ばす。
 が、それを見越していたアンジェリカは『無穢のアガペー』を唱えて衝撃を緩和しにかかる。
「これなら――」
 十字架の中心にあいたバーに手をかけ、ぐるんと回転させるアンジェリカ。それまで魔術媒体として使っていた道具を今度は鈍器のように掴むと、デスペラードめがけて跳躍した。
 大上段から振り下ろす十字架の一撃。
 高い魔力を込めたそれはデスペラードの腕をついにへし折った。
 さすがのデスペラードもこれには痛みをこらえきれないようでグオオと声を上げアンジェリカから距離をとる。
 が、それを逃がすブランシュたちではない。
「言葉を解せるのかは分からないが、告げておこう。
 お前が相手取ったのは後光の乙女ではない。
 貴様の死神だ」
 ブランシュの行動は早かった。集まろうとする取り巻きを中心に『ヘルメスの鳥』と『クリストスペシャル』で瞬く間に鎮圧すると、デスペラードめがけ『V.B.F.E(Variable.Booster.Phantom.Effect)』で突進する。
 ブースターを展開し影すら掴めない雷撃となって突進。OP:B『Sin』の浮遊ナイフが次々と突き刺さったかと思うと、すべてを合体させた大太刀へと変化させ斬り付ける。
 トドメとばかりに突進したルブラットが『Laminas para o Povo』を突き立てる。
 民を先導したそのナイフは鋭さを増し、深々と突き刺さる。
 デスペラードの鋼の防御を突き崩し、傷口を更に広げたルブラットはナイフをねじるようにして【崩落】状態を押しつけた。
 更に『„ φάρμακον “』を展開して高速で斬り付けると血を吹き上げさせる。
「これで最後だ」
 懐から単発式拳銃を取り出し、零距離で射撃する。
 タァンという小気味よい銃声が鳴ったかと思うと、デスペラードはその巨体を倒れさせたのだった。


 瑠璃やオリーブたちがレジスタンスたちの現場に戻ると、どうやら戦闘は終わっていたようだった。
「みんな、無事だよね!」
 駆け寄ったアレクシアが早速治療を開始するのを見て、顔を見合わせたイロンとアンジェリカも治療を開始。
「こらっ、動かないの! 綺麗に巻けなくなるでしょう!?」
 ヴァレーリヤもそこに混じって仲間の治療に当たっていた。
「……しかし、疲れた。ギアバジリカの主砲でも使えれば一網打尽だろうにな」
「そうですね。けれど、あれから動く様子はないんです。また皆の祈りを集めたら動くようになるんでしょうか」
 ルブラットが呟くと、アミナも治療に参加しながらそれにこたえた。
 そんな中へ、ブランシュがゆっくりと歩いてくる。
「アミナ先輩……俺は、まだ主を信じていいのだろうか。
 奴の影になった俺が、自由を求めても……」
「同志ブランシュ……」
 振り返ったアミナが、少しだけ考えてからブランシュの手を握った。
「いいえ、ブランシュさん。あなたは自由です。どうなってもいいんですよ」
 そして、祈りの言葉を口にする。
 それは清らかで、静謐で。明日を感じさせる、心地よい響きをしていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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