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シナリオ詳細

第(数えるのも馬鹿らしいくらいの数字)回・鉄帝大運動会

完了

参加者 : 22 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アイコンのハートは「ちょっと心臓がどきどきする位の運動をしよう」の意味です。
 ゼシュテル鉄帝国。
 古代文明と肉体、オイルと血によって生み出されたその帝国は、非常に武力を重視する国民性で知られている。
 些かの誤解を招く事を承知で言えば、この国家は上から下まで、脳筋の集まりである、という事だ。
 さて、そう言った国民性であることから、人々は基本的に、体を鍛える事に余念がない。
 強力な古代兵器を擁するとは言え、扱うのは結局、人間であるのだ。どれだけ強力な武器があろうと、その持ち手が貧弱であれば無意味――最後は個人のポテンシャルがモノを言う。
 そしてラド・バウの大闘技場が存在する事からもわかる通り、鉄帝の人々は、鍛えに鍛えた己の力を披露する事も、それを見る事も、大好きなのだ。その発表の場は大闘技場に限らない。様々な形で、連日のように、なにがしかの――鍛えられた肉体を披露するための場が催されているのである。
「そんなわけで、皆さんを招待したいとの事です!」
 と、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)は、イレギュラーズ達へ、そう言った。
 曰く、鉄帝にて連日のように行われている、体を鍛える事も兼ねた運動会。その中でも比較的規模の大きな会より、是非イレギュラーズ達にも参加してもらいたい、という打診があったのだそうだ。
 第(0の数を数えるだけでもうんざりする位の数)回目となるこの大会は、大闘技場に参加するようなハイレベルな猛者たちではなく、民間レベルでの腕っぷし達が参加する、一般市民たちが身体を動かす為の娯楽のような物だという。
「ですので、まぁ、気軽に参加してほしい、との事ですよ。バトルもいいですが、偶には思いっきり体を動かした、爽やかな汗をかいてみるのもいいんじゃないですかね? 参加希望者はこちらにお名前の記入を! キャンセルは不可! おやつは300Gまで! 水分補給はしっかりお願いします!」
 と、ファーリナが参加希望用紙を差し出した。
 たまにはこういったレクリエーションもいいかもしれない。そんな軽い気持ちで、イレギュラーズ達は参加用紙に名前を記入していく。

 この時、誰もが忘れていた。
 あるいは、甘く見ていたのかもしれない。
 鉄帝という国のハードルの基準を。

●アイコンのハートは「心臓が破れる位の運動をさせられるぞ」の意味でした。
 後日、鉄帝より送られてきたプログラムを見たイレギュラーズ達は、流石に度肝を抜かれた。その内容は、ファーリナが、
「…………なんというか…………ごめんなさい……」
 と真面目に頭を下げたレベルである。
 まず最初の競技。鉄帝徒競走100km。100mの記載ミスかな? と確認をとった所、100km走らされるらしい。
 続いて借り物競争。これは「筋骨隆々の大男が「お前には借りがある」と叫びながら追いかけてくるのをかわしながら、1km先のゴールまで走る」というわけのわからないもの。また単位がおかしい。
 玉入れ。20kgの鉄製のボールを、地面と垂直に立てた6mの長さの棒の先端に括り付けた籠に投げ入れる。20kgのボールを6m以上投げ上げる事が果たして可能なのか。そして可能だったとしたら、20kgの鉄球が雨あられと降ってくることにもなる。
 そして綱引き。古代兵器の一つである『ゼシュテル・トラック』――身もふたもない言い方をすれば、山ほど荷物を詰め込んだ2tトラックだ――と綱引きをする。
 なんだコレ。びっくり人間コンテストかよ。イレギュラーズがそう呟いたか定かではないが、これが鉄帝である。
「えーと、その……」
 イレギュラーズ達へ言葉をかけようとしたファーリナだが、十秒ほど考えて、結局浮かばなかったようだ。
 ある種の落胆と憐憫の色をにじませながら、
「お怪我には気を付けて……」
 と、ようやく月並みな心配の言葉を吐き出したのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 秋なので、ちょっとした運動会イベントをやろうと思いました。

●基本方針
 運動会に参加し、競技を完遂する。

●やれること
 以下4つの競技の内、一つに参加できます。

 【1】鉄帝徒競走100km
     読んで字の如しです。100km走ります。個人戦です。
     参加者全員で一斉にスタート。順位は着順になります。
     コースは、運動会が開催される鉄帝のとある都市の道。
     おおざっぱに言えば、都市をぐるりと(100km分)一周するイメージです。
     街中ですので、路地裏などを使ったショートカットも可能ですが、
    もし発覚した場合はそれはそれは恐ろしい事になると思います。
     不正は許されません。

 【2】借り物競争
     参加者に借り(恨み)がある暴徒が襲ってきたぞ! 逃げるんだ!
    というシチュエーションで行われる1km鬼ごっこ。個人戦です。
     こちらは直線1kmの運動場のレーンが舞台です。
     暴徒役への攻撃は禁止されています。
     もし暴徒につかまった場合、暴徒たちに囲まれ胴上げされながら、
    競技場を一周する事になります。
     これは、本大会においてはもっとも恥辱的な罰ゲームです。

 【3】鉄帝玉入れ
     20kgほどの鉄製の砲丸を放り投げ、6m上に設置された籠に入れます。
     チーム戦です。特に指定が無ければ、他の参加者(モブNPC、
    イレギュラーズ問わず)とランダムに組み分けられます。
     20kgの砲丸を投げつける筋力はもちろん、降ってくる20kgの砲丸を
    何とかする手段が必要だと思います。

 【4】ゼシュテル・トラック引き
     古代兵器ゼシュテル・トラック――荷物満載の2tトラックを皆で引っ張る、
    綱引きです。チーム戦。指定が無ければ、他の参加者とランダムマッチします。
     トラックは重いのはもちろん、アクセル全開、ゼシュテル人を右に! します。
     トラックの重さと馬力に負けないパワーが必要です。頑張ってください。

 以上4つの中から一つを選び、プレイングの冒頭に【数字】の形式で記載してください。
 数字が書かれていない場合、各種描写が非常に薄くなる、或いは登場できない可能性があります。

 また、各競技における順位に関しては、プレイングを眺めつつ100面体ダイスを振って数字の大きい順に決定します。運試しくらいの感覚でお願いします。

●諸注意
 お友達、或いはグループでの参加を希望の方は、プレイング2行目に「【相手の名前とID】」或いは「【グループ名】」の記載をお願い致します。【相手の名前とID】、【グループ名】が記載されていない場合、セット・グループでの描写が出来かねる場合がありますので、ご了承ください。
 基本的には、アドリブや、複数人セットでの描写が多めになりますので、アドリブNGと言う方や、完全に単独での描写を希望の方は、その旨をプレイングに記載してくださると助かります。
 過度な暴力行為、性的な行為、その他公序良俗に反する行為はお控え願いますようよろしくお願い致します。
 可能な限りリプレイ内への登場、描写を行いますが、プレイングの不備(白紙など)やキャパシティの限界により、出来かねる場合がございます。予めご了承ください。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • 第(数えるのも馬鹿らしいくらいの数字)回・鉄帝大運動会完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年11月05日 22時30分
  • 参加人数22/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 22 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(22人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
セララ(p3p000273)
魔法騎士
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
オクト・クラケーン(p3p000658)
三賊【蛸髭】
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
メアトロ・ナルクラデ(p3p004858)
ふんわりおねーちゃん
ヴァン・ローマン(p3p004968)
常闇を歩く
ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)
鉄腕アリス
リナリナ(p3p006258)
無限乃 恋(p3p006272)
恋の炎を散らす者
シエル(p3p006444)
天空の狙撃役
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
藤堂 夕(p3p006645)
小さな太陽
椎名・美由紀(p3p006697)
真のメイド喫茶ガール
ケドウィン(p3p006698)
不死身のやられ役
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人

リプレイ

●大運動会当日
 空砲が打ち鳴らされ、秋の空に響いた。
 街には屋台が並び、観客・参加者を問わず、盛況の様子を見せていた。
「え、マジで? マジで100km走るの? 無茶では?」
 キドーが声をあげる。キドーがいるのは、第一競技、鉄帝徒競走100kmのスタートラインである。因みに誤字ではない。100kmである。
 大きく街を周回するコースをとるが、スタート地点は競技会場に存在する。ここからスタートして、会場から街へ出て、既定のコースを回った後、再び会場へと戻ってくる、という工程をとる。それはさておき。
「結構参加者いるのが驚きっスよ……鉄帝はどうなってるんっスか……」
 葵が呆然とした様子で、言った。コース上には、現地の人々の姿が老若男女問わず見える。
「おっと、そろそろ始まるみたいだね」
 ルチアーノが声をあげる。スタートラインに現れたスタッフがゆっくりと空砲を掲げ、引き金に指をかける。
「位置について。用意!」
 その言葉に、参加者たちは一斉に、スタートの構えをとった。イレギュラーズ達も、合わせて構える。
 どん、と空砲が高らかに、スタートの合図を鳴らした。団子状になって参加者たちが走り始める中、それを突き破るように突如スパートをかけたのは、
「ふっふー、かけっこなら昔から一等得意ですの! 負ける気なんて微塵もしなくってよ!」
 ヴァレーリヤである。些か得意げな表情で、後続へとチラリ視線を向け、
(あらあら、どうしてみんな、そんなにゆっくり走っていますの? 100m走なのだから、全速力で走らないと!)
 そんな事を思いつつ、視線を前に戻した。栄光のゴールは、目の前にあるはずであった。

●借り物競争
 さて、第一競技の参加者たちが、全員会場外へと出た所で、次の競技がスタートする。
 第二競技は借り物競争。これは、「以前やっつけた相手に復讐される」……つまり「借りを返される」ことを想定し、相手の襲撃から逃れるというロールプレイングである。
「いくらなんでも無理があり過ぎませんか」
 概要を聞いたシエルがぼやいた。筆者も今はそう思う。
「カリモ! カリモって誰だ!?」
 リナリナが声をあげた。どうやら『カリモの競争』だと思っているらしい。
 さて、スタートラインより後方には、何やら屈強な男達が並び始めた。準備運動やらポージングなどを決めつつ、観客席に手を振る。
「リナリナわかった! 全員カリモだなっ!」
 指さしつつ、リナリナ。あながち間違ってはいないかもしれない。
 楽しげに笑っていたリナリナではあったが、しかしその表情は恐怖に彩られる事となる。スタートの合図とともに、解き放たれた暴徒役の屈強な男たちが、一斉にこちらへと向かってきたのである。正直、怖い。
「ぎゃ~~~!!」
 流石のリナリナもこれはたまらない。慌てて逃げ始める。
 ゴールは1km先である。暴徒役以外の障害などはないが、やはり単位がおかしいのが鉄帝と言う事だろうか。
「恨みをもった暴徒だぁ~? はんっ、このケドウィン様がそうそう簡単に捕まるわけねぇだろ~!」
 余裕しゃくしゃく、相手を煽る様に言うのはケドウィンである。
「あまり挑発しない方が良いのでは……?」
 隣を走るシエル。しかしケドウィンは笑いながら、
「ケッ! 俺はアウトローだぜ? 敵に追われるなんざ日常のことよ!」
 強がるものの、しかし暴徒役達も素早い。
「うおっ、前に……!」
 ケドウィンが呻く。暴徒役達は連係プレー、一人が進路をふさぎ、左右からイレギュラーズ達を追い立てる。
「……よっ、と」
 シエルはタイミングを見て、跳躍した。バーニアを吹かし、一気に距離を放す。
 ――しかし、ケドウィンにその手の回避手段はない。
「な、馬鹿な……! このケドウィンが追い詰められる……!?」
 慌て、ケドウィンは思わず足を止めてしまった。そしてそれは、大きな判断ミスであった。暴徒役達はケドウィンを包囲し、じわり、じわりとにじり寄る。
「お、俺に近寄るなぁ~~!!」
 ケドウィンの悲鳴が、競技場へと響き渡った。
 さて、イレギュラーズ達の激戦は続く。恋は走りつつ、ちらちらと後ろを見やる。追いすがるは、暴徒役達。
「男の人に追いかけられるなんて……」
 恋は呟いた。その顔は恐怖に震え、
「……まるで夢みたいなシチュエーションじゃない!?」
 ているようなことはなく、むしろ嬉しげであった。
「あたしを求めて1kmも追って来てくれるなんて。あのゴールは、きっと競技的な意味だけじゃなくて、人生の伴侶的な意味も兼ねてるんだわ。ええそうよ、間違いない。だってあんなにも――ああ、あんなにもあの人は――あたしの事を見てくれている。素敵だわ、素敵だわ、素敵だわ! でもでも、あたしはそう簡単には捕まってあげないの。だって恋は駆け引き。時にはつれない態度をとるの。だってそう! 簡単には手に入らないからこその恋! 長い長い――具体的には1kmの道の果てにようやく、ようやく二人は手を取って、それでそれで、恋はみのるの。ああ、ここよ、ここよあたし! 一足先にゴールで待つあたし、遅れて来るあの人。息を切らせた2人は見つめ合い抱き合って、そして共にウイニングロードを」
 そう言って、『ゴール直前で』振り返り、両手を差し出した恋を、暴徒役の男は軽々と持ち上げた。
「え、あら? あら? ……ゴールライン、踏んでなかったの? そんなぁ……あ、でもでも、こうやって男の人に抱き上げられるのもいいかも……」
 頬に手を当て、浸る恋を、暴徒役達はわっしょいわっしょいと胴上げしつつ、競技場を練り歩くのであった。
 さて、エルもまた、残念ながら暴徒役につかまってしまっていた。
「あはははっ」
 とは言え、その表情に羞恥の色などはなく、むしろ男たちによって胴上げされつつ競技場を一周するのを楽しんでいる様子であった。
 そんなエルに、観客たちから声がかかれば、エルは笑顔で手を振り返す。その様子に観客たちも喜び、また笑いと歓声が上がった。
 競技場を練り歩き、胴上げの終わったエルに、暴徒役の男達は笑いながら、声をかけた。
「残念だったな、イレギュラーズさん」
「いえいえ、お相手、胴上げ、ありがとうございました」
 頭を下げるエル。それからエルは少し申し訳なさそうな表情をすると、
「楽しかったので……もう一周、胴上げしてもらってもいいですか?」
 と尋ねるので、男たちは笑い声をあげつつ、快諾してくれた。

●100km走・中間
 ひゅーっ、ひゅーっ。
 ヴァレーリヤの、か細い呼吸音が聞こえた。
 100km走を100m走と勘違いしたヴァレーリヤは、スタートダッシュにて全力を使い果たした。
 もとより、長距離走は苦手であったヴァレーリヤである。もはや体力など残ってはいない。
「り、リタイアを……」
 涙ながらに懇願するヴァレーリヤであったが、しかしスタッフは無情にも首を振った。
「もう少し走れるのでは?」
 無慈悲な言葉を受けながら、ヴァレーリヤは再び、走り始めた。
「さ、流石に100kmはキツイっスね……」
 葵は手にした紙コップに口を付けつつ、ぼやいた。
 元の世界ではサッカー選手であった葵ではあるが、いくらなんでも100km走り続けるのは未知の領域である。幸いというか当然というか、補給所は頻繁に設置されていたため、水分・エネルギー補給の面では万全ではあったのだが、だからと言って何なのだ、という気持ちはある。
「これは……明日はとんでもない筋肉痛がきそうっス……」
 苦笑しつつ、しかし真面目に走る葵であった。
「わーい! 次はどうしようかなー!」
 さて、元気な声をあげつつ、アイスなどをパクつくのはQ.U.U.A.である。街を走るという事は、すなわち観光するに等しい。そう言った思考でQ.U.U.A.は、屋台や目についた飲食店などではジュースや食べ物を買い、公園を見つけては遊び、川を見つけては飛び込んだ。
 とんでもないバイタリティに敬意を表したのか、或いは本人には棄権の意志がないためか、ある程度のコースアウトなども、スタッフたちには大目に見られている。
「んーと……」
 かりかりとアイスのコーンを齧りながら、Q.U.U.A.はあたりへと視線を巡らせる。そんなQ.U.U.A.の目に留まったのは、畑にて農作業をしている男性の姿だ。Q.U.U.A.は瞳を輝かせると、
「畑だ! おじさーん! 何作ってるのー!」
 楽しげに声をあげながら、Q.U.U.A.はパタパタと駆け出して行った。
「うーん……ローマン君、大丈夫かしら……」
 言いながら、メアトロはきょろきょろと周囲へ、視線を巡らせた。
 一緒に参加したヴァンと逸れてしまったメアトロは、競技中故に立ち止まったりするわけにもいかず、もどかしい思いを抱えながら、コースを進んでいた。
 一方ヴァンもまた、メアトロの姿を探していた。果たして、メアトロは先に行っているのか、後にいるのか。不安はありつつも、しかしきょろきょろと探して回るのも、なんだか迷子になってしまったようで気恥ずかしく、出来ない。
 平静を装いながら走るヴァン。果たしてその視線の先に、ヴァンは見知った背中を見つけた。一方、メアトロもまた、ヴァンの気配を察知していた。
「メアトロさん!」
「ローマン君!」
 2人は同時に声をあげる。お互いを見つける事の出来た2人は、笑顔を抑えることが出来なかった。

●鉄帝玉入れ
「えー……砲丸が降ってんだけど……」
 リリーが呆然と呟いた。五つのチームに分かれての弾入れ競争である。一般的なそれと違う所は、玉が重量20kgの砲丸であるところだ。
 投げればもちろん、落ちてくる。それを防ぎ、よけ、投げ返すところも、この競技の魅力である。
「そんな魅力いらないよぉ……」
 筆者も今はそう思う。
「んー、まぁ、適当にバールで打ってれば飛ぶよね……」
 リリーはそういうと、バールを取り出し、果敢に砲丸へと立ち向かった。
「魔法騎士セララ&マリーの実力を鉄帝にみせてやるんだ!」
 声をあげ、セララが砲丸を投げ上げる。意外に力のあるセララである。砲丸は放物線を描き、籠へと吸い込まれていく。
「魔法少女は負けない……でしたっけね」
 降り注ぐ砲丸を受けるは、ハイデマリーの役目だ。降り注ぐ砲丸、その内、自分達の障害となるものを的確に撃ち落としていった。まさに無敵のコンビネーション。二人を先頭に、チームの士気も上がっている。
「流石だね、マリー。この調子でどんどんいこう!」
 にっこりと笑いかけるセララへ、
「口数の前にしっかり入れるでありますよ」
 そっけなく、しかし口元には笑みを浮かべ、ハイデマリーは答えた。
「向こうのチームもやるな……! だけど!」
 リゲルは声をあげ、ゆっくりと構えた。雨あられのごとく降り注ぐ砲丸を睨み、ゆっくりと息を吸い込む。
 と――リゲルは動いた。落下速度の乗った砲丸を、見事片手でキャッチ。
「……っと。流石に重いな。けど、これ位手ごたえがあった方が面白い!」
 お返しとばかりに、手にした砲丸を放り投げる。高く高く上がった砲丸は、放物線を描いて籠へと突き刺さる。
「ブーハハハーハァー! まったく鉄帝は鉄帝だぜ!」
 一方ゴリョウは、落下してきた砲丸を、ブロッキングバッシュの要領ではじき返していた。弾かれた砲丸は再び宙を舞い、籠に向かって飛んでいく。
 落ちてくるなら、それを拾う時間も惜しい。こうすれば、防御にもなり攻撃にもなり、一石二鳥。
 ゴリョウの技量のなせる技――まさに敵に回せば恐ろしく、味方にすれば頼もしい。
「くっ……競技も参加者もハイレベルすぎではなかろうか!」
 落下する砲丸を受けつつ、ローガンが言う。ひとまず砲丸の防御を担当したローガンではあったが、攻撃手であったはずのリリーは、あきらめてからにこもった。
「ええい、投げるしかないであるな! え、なげるの、コレ! 本当に飛ぶのであるかなぁ!?」
 自問自答するローガン。しかし投げなきゃ始まらないのだ。
「やるのである、我輩! うぉぉぉ!」
 ローガンは吠えた。吠えて、吠えて、投げた。
 その声で火が付いたのか――各チームの攻撃が、より一層激しくなる。
「ラストスパートだよ、マリー!」
「防御は任せて!」
 セララとハイデマリーが!
「全力! 投球! 今この瞬間に全てを賭ける! 唸れ! テンペスト!!」
 リゲルが!
「今が攻め時だぜ野郎ども! 死ななきゃ安いぜぶははははぁーッ!」
 ゴリョウが!
「リリー殿も投げてほしいのであるなぁ!」
「うーん頭に砲丸が当たったもうだめだー」
 ローガンとリリーが!
 己が力の全て出し尽くし、砲丸を投げ続けた!
 ――そして、競技終了の笛の音が、鳴り響いた。

●100km走・終盤
「ふふ……あはは、待ってよぉ……」
 なんだか虚ろな顔をして、ルチアーノが走る。
 100km走も、ついに終盤。ゴールを目前にして、選手たちは精神的、体力的に限界を迎えようとしていた。
 体力づくりのために、そして愛するものを守るための力をつけるために、と参加したルチアーノであったが、どうしたって限界と言う物はある。
 辛く苦しい時は、愛する人の笑顔を思い浮かべ、耐えた。それでも限界を迎えそうだったので、愛しのシマエナガを妄想し、その姿を追った。やはり限界だったのである。
 しかし、ルチアーノの涙ぐましい努力も、もうじき報われるはずであった。
「あ……あはは……走りきれちゃいそう……」
 苦笑を浮かべつつ、夕は走る。ゴールの競技場は、もう目と鼻の先であった。観客たちの応援の声が聞こえる。
 100km。数字にするだけなら簡単だが、実際に走るとなると尋常ではない距離。夕は走った。「走りきったらこれ、人間やめました、みたいだよね?」と、最初は考えていた距離。『全身鎧で』という指定がないだけ、まだ優しいよね、と思っていた競技。動きやすい、スポーツウェアで参加しました。道中の補給もしっかりしました。人間意外と、やればできるんだなぁ、って思いました。
「……一番マシな……競技が……これって……どういう……ことなんでしょうか……」
 息も絶え絶えに、美由紀が走る。荒い息と上気した肌。輝く汗と揺れる身体。
 スニーカーを履いたバニーと言ういでたちの美由紀ではあったが、何とか走った。走り続けた。そして今、ゴールしようとしている。
 足が、ゴールラインを踏んだ。歓声が上がり、美由紀は思わず、倒れた。スタッフが身体を支え、勇者を労わる様に、ゆっくりと、控室へと連れて行く。
 そう、参加者たちは、勇者であった。自らの力を魅せ、その限界を魅せ、戦いに打ち勝って魅せた参加者たちを、鉄帝は勇者と呼ぶ。
 勇者たちは凱旋したのだ。人々はその姿を称え、謳うのだろう。

●鉄帝綱引き
 そして最後の勇者の戦いが始まった。
 古代兵器ゼシュテル・トラック。アクセルベタ踏みでエンジンをうならせるその怪物に立ち向かう、最後の勇者たち。
「パワー。そう、パワーこそがサイゴにショウブを決めるんだ」
 イグナートは言った。チームのメンバーは、力強く頷く。
 パワー。そう、パワーこそが全て。パワーこそが正義。それがこの世界の絶対的なルール。
「オレの右手がツナをハナすことはない。ならば、トラックのパワーにオレのパワーが勝てるか否かだ!」
 イグナートは、そう言って綱を掴んだ。仲間達も、それに倣った。
 力強く、綱を引く。
 トラックが、怪物が、吠えた。強く、強く引きずられそうになる。
 しかし勇者たちは、耐えた。綱を引き絞る。怪物を御するために。
 次の瞬間、勇者たちは雄たけびをあげた。空転するトラックのタイヤ。それが悲鳴のような声をあげた瞬間――。
 怪物は宙を舞い、勇者たちの歓声が上がったのであった。

●末路
 戦いは終わり、その熱気もすっかり失せた、夜の競技場の真ん中で――。
「マッスゥ……マッスゥ……マッスル……」
「マッスゥ……マッスゥ……マッスル……」
 オクトとキドーであった。
 ブーメランパンツ一丁で、身体の至る所にキスマークを付け、磔にされている。
 不正を行った者の末路。
 果たして二人が一体何を見たのか。
 それは誰にも分らぬまま――。
 運動会は幕を下ろした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、今回の運動会は大盛り上がりだったようです。
 次回のご参加もお待ちしております。

 以下、最終成績です。
 おまけ程度にご参照ください。

 100km走
 葵         40位
 Q.U.U.A.      88位
 ヴァレーリヤ   100位
 ルチアーノ     54位
 メアトロ&ヴァン  58位(同順)
 夕         45位
 美由紀       94位
 キドー&オクト   不正により失格

 借り物競争
 リナリナ  完走
 恋     捕獲
 シエル   完走
 ケドウィン 捕獲
 エル    捕獲

 弾入れ競争
 Aチーム(セララ&ハイデマリー所属) 88得点
 Bチーム(リゲル所属)        84得点
 Cチーム(イレギュラーズ無所属)   64得点
 Dチーム(ゴリョウ所属)       87得点
 Eチーム(ローガン&リリー所属)   77得点

 綱引き
 イグナート&鉄帝一般市民の皆さん  成功(75cm引っ張りました)

 以上、敬称略、名前のみ、順不同となります。
 以上の順位は、『基本的にはダイスを振っただけ』の数値です。
 パラメータ等の数値は一切反映されておらず、ゲームにおける通常判定も適用していません。あくまで『ちょっとしたおまけ』程度としてみていただければと思います。
 それでは改めて、ご参加ありがとうございました。

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