シナリオ詳細
<グレート・カタストロフ>終わりの始まり
オープニング
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『神託』の観測した『決定付けられた未来』。
絶対的破滅……通称『Case-D』の決定的な接近により、混沌各地に『バグホール』が出現を始めた。
もはや、目に見える形で破滅が形をとり、混沌の滅亡が身近に迫っていることを実感させる。
「でも、アンタ達は特異運命座標だ」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)はこの場のメンバー達が滅亡に抗う術を持っていることを再確認する。
確かに、滅亡の足音はすぐそこまで迫っているが、まだそうなってしまうと確定したわけではない。
今、イレギュラーズができるのは、精一杯あがくことだけだ。
「今はレオンを含め、各国のトップらも何か対策を講じるはずさ」
現状自分達にできることは、各地のバグホールと合わせて起きている大きな混乱と被害への対処だろう。
オリヴィアはやはり海洋が気になるようで、状況調査を行っていたようだが。
「やはり、港にもバグホールが確認されているね」
先ほどから幾度も名前の出ているこの謎の穴は、次元の歪みのようなものであり、『触ったら消滅する』とも言われている。
今のところ、このバグオールに対処する方法は全く見つかっていない。
ただでさえ、移動の妨げになるこの穴と合わせ、港に終焉獣が現れたという情報もある。
「一度姿を見せた後、どこかに潜伏しているのは間違いないね」
港の辺りなのはわかっているが、まだ大きな動きを見せない。
もしかしたら、イレギュラーズの来訪を待っているのかもしれない。
ならば、その誘いに乗ってやるべきだろう。
「目撃情報から、人型の終焉獣が部位型と寄生型を率いている。注意するんだよ」
相手は意図的に破滅を呼び起こす存在。
今はそれらを撃退し、好機を待つしかないとオリヴィアは話を締めくくるのだった。
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海洋の首都リッツパーク。
元々、幻想などと物流のあったこの地は、豊穣間の海路が確立したことで一層栄えていた。
だが、昨今、滅びの影響は確実に海洋にも現れている。
他国程大きな異変は見られないが、徐々に姿が増えてきた終焉獣と王国軍、海賊団等との小競り合いなどは頻発しているようだ。
リッツパークの港には変わらず、多数の船舶が停泊している。
それらは貴族所有のものであったり、商船であったり、船によっては幻想や豊穣の船籍も確認できる。
その一つの甲板に大小の黒い影が複数。
イレギュラーズが直接それを視認すれば、やはり事前情報の通り人型の終焉獣と、鼻と両耳の姿をした部位型、そして、スライムの姿をした寄生型で編成された小隊だった。
「来たな、滅びに抗う愚か者ども」
やや大柄なそいつはプーレルジールで出会った指揮官型終焉獣クルエラ。
確か、名前はチアウェイといった。
人の部位を象った終焉獣を従えるとみられている。
「顕現した穴はもはやこの世界を呑み込む。抗うなかれ」
だが、イレギュラーズもそれを受け入れるはずもなく、チアウェイらのいる商船の甲板へと乗り込む。
戦いとなれば、近場の船の乗組員や、港を往来する人々に被害が及ぶだろう。
それらの避難はある程度必要だろうが、港や近海に出現しているバグホールが面倒だ。
下手に誘導すれば、人々がそれに触れることで悪影響が出る可能性だってある。
「受け入れよ。それが天命である」
その言葉を否定すべく、メンバー達は立ち塞がる黒い影らに立ち向かう。
- <グレート・カタストロフ>終わりの始まり完了
- 混沌は滅びから逃れられないのか……?
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年01月22日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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海洋、リッツパークの港へとやってきたイレギュラーズ。
偽名が司書で通っている『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はこれ見よがしに溜息をついて。
「全く、久々の海洋でのバカンスを楽しみにしてたのにひどいものだわ」
そのイーリンは『銀焔の乙女』アルテミア・フィルティス(p3p001981)に呼びかけ、グラオクローネに向けて小麦色に肌を焼いてやろうという話をしていたそうだが。
「ちょっと? 小麦色に焼こうだなんて私聞いてないんだけれど!?」
どうやら寝耳に水だったらしく、アルテミアは太陽に聞いても焼かないからと驚きと呆れを入り混じらせていた。
さて、ひどいと証言されていたのは、メンバーが視認したモノにある。
まず、港や近海にバグボールの発生が見て取れた。
「ついに来たって感じでしょうか」
『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)はそれらによって、混沌へと終焉が間近に迫ってきていることを実感する。
バグ・ホールは次元の歪みのようにも思える謎の穴で、『触ると消滅する』という。
それ以上のことはイレギュラーズですらまだ乏しい状況だ。
「やぁね、せっかく綺麗な世界なのに」
世界がどんどん壊され、消えていくのを眺めてるだけなんて、すごく嫌だと『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217) は本音を漏らしていた。
そして、停泊するとある船の甲板には複数の黒い影……終焉獣が。
「来たな、滅びに抗う愚か者ども」
全身黒い人影をしたクルエラ、チアウェイは尊大な態度でメンバーへと告げる。
「チアウェイ……混沌世界にもいたのか……!」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も驚きを隠さない。
何せ、プーレルジールでも相まみえたそれが現実にも現れたのだから。
「海を荒らすな! 水竜さまとリヴァイアサン様が起きちまうだろうが!!!」
仲間と甲板へと駆け上がっていく『簒奪者』カイト・シャルラハ(p3p000684)はそれらへと呼びかける。
ソルベ様も、イザベラ女王だって多忙だ。
リゾート開発も真っ只中とあって、これ以上悩みの種を増やしたくないという彼なりの配慮だろう。
ただ、滅びは混沌全体に等しく近づいている。
「滅びを受け入れよ。それが天命である」
「いや、滅びは受け入れない!」
世界が続き、生きる希望を持ち続けられるなら愚か者で結構と、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が声を荒げてチアウェイに反論する。
「世界が呑み込まれるのを受け入れろ、ですって? 冗談じゃないわ」
メリーノもまた終焉獣の要求をのむ気などさらさらない。
混沌に住む者達は、終焉獣などよりももっとずっと、強欲で傲慢だ。
だから、受け入れるなど御免だとメリーノは突っぱねて。
「平和な世界も、未来も、手に入れるのよ」
早くも身構え、彼女は敵対の意志を示す。
「聞けない命令に抗うなと言われ、素直に従う私は故郷に置いてきました」
『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)もやはり、仲間達と足並みを揃える。
なお、故郷にいた頃の瑠璃でも、敵対陣営の言う事などは死体になった後でしか聞く耳を持たなかったそうだが。
「僕は護るって決めたんです。誰一人何一つ被害に合わせませんとも」
強い決意を示す鏡禍は広域俯瞰で戦場となる船を確認する。
「とにもかくにも、このまま終焉獣を放置しておく訳にはいかない以上、ここで確実に討ってひとまずの安全を確保しないとね!」
「考える事は多いけど、全力で対処していかないとね」
アルテミアに同意するヨゾラは、終焉獣の撃破と合わせ、周囲の人々、船舶など避難の呼びかけと直面する問題の多さを指摘する。
視認できるバグ・ホールの回避もそうだが、何より敵の中に寄生終焉獣がおり、それらが人々に寄生することが十分に考えられた。
「足掻いてやるよ、終焉の方が消えるまでな!」
イズマがこの場は人々の避難誘導へと当たるようだ。
他のメンバー達は次々に戦闘態勢をとって。
「まったく、お前のことはどーでもいいけど水竜さまのために滅ぼしておくぜ」
「詳しいお話が伺える事を期待しています」
チアウェイを止めにかかる構えのカイト。
瑠璃も何か情報が得られる可能性を信じて戦いに臨む。
「この仕事が終わったら太陽に聞いてみましょ……神がそれを望まれる!」
イーリンもまたアルテミアと共にチアウェイの抑えへと向かうのだった。
●
終焉獣の指揮官クルエラ、チアウェイが従える終焉獣は9匹。
人体の部位を思わせる終焉獣は様々な事件で目撃されているが、今回は1体の強欲の鼻、2体で1対となる醜聞の耳である。
それに加え、小柄だが、6体もいるスライム状の寄生型終焉獣が見た目以上に厄介な存在だ。
逃してしまえば、リッツパークの民へと被害が出てしまいかねない為、イズマは周辺の人々の避難を急ぐ。
「落ち着いて、陸の方へ避難するんだ。周りをよく見て、空間の穴には近付かないように!」
人々はもちろんだが、戦場となっている一隻以外の船舶についても避難対象。
船の持ち主の操船も合わせ、イズマは誘導していた。
それ以外のメンバーも個々で終焉獣と対し始める。
まずは、敵の指揮を封じるべく、2人がチアウェイの元へと向かう。
アルテミアは一気に距離を詰め、戦いの鼓動を高める。
敢えてチアウェイのみを相手取るよう位置取る彼女は、強い殺気をぶつけて注意を引く。
羽風を起こすカイトも手始めに軽くチアウェイの黒い体へと触れ、その精神を歪めようとする。
チアウェイは小さく笑ったかと思えば、腕を一時的に太くし、2人へと殴り掛かってきていた。
前線メンバーの交戦を含め、瑠璃は一歩引いた位置から戦場全体の把握に努める。
とりわけ、瑠璃がチェックしていたのは、寄生型の位置。
6体全てが甲板から出ていないのは最優先だ。
こちらも戦場広域を確認する鏡禍。
「危険です。迅速に避難を!」
甲板から落ちぬよう気がけつつ、鏡禍は人々へと呼びかける。
それだけでなく、彼は戦意を高めて終焉獣複数の意識を自らへと釘付けにせんとしていた。
その鏡禍を支援するよう、イーリンが動く。
騎兵策道で近場の仲間達を支援する彼女はやはり寄生型を船から出さないことを最優先とし、1体ずつ紫苑の魔眼で見つめる。
さながら催眠に近い状態へと陥り、寄生型1体はイーリンへと飛び掛かってくる。
それを確実に彼女は魔力剣で貫き、攻め立てる。
なお、引きつけから漏れていた寄生型を、瑠璃が逃さない。
流れ出す己の血で印を結んだ彼女は、影より召喚した巨大な顎で食らいつかせることで、残りの敵を誘い寄せていた。
寄生型にイレギュラーズの注意が集まるが、強欲の鼻や醜聞の耳だって危険な存在だ。
何せ、混沌におけるあらゆる事象を食らい、浸食しようとしてくるのだから。
甲高い耳鳴りを発してこちらの手を止めようとする耳は左右が揃うと強力な攻撃を行うとされるが、現状まだその素振りは見せない。
鼻は強風を巻き起こし、こちらを吹き飛ばしにかかる。
こちらは荒波を起こす力を持っており、海での戦いとあって地の利もあるのが厄介だ。
それらの攻撃にさらされながらも、メンバーは単体ではさほど攻撃能力は高くない寄生型の殲滅を急ぐ。
五感を研ぎ澄まして戦況の把握を逐一行っていたヨゾラは、仲間の引き付ける敵へと纏めて星空の如き泥を浴びせかけていく。
その泥は、混沌に揺蕩う根源たる力を魔術によって具現化されたものであり、ヨゾラの意志に従って終焉獣のみへと浴びせかかる。
泥にまみれた1体が姿を保てなくなり、早くも体を崩していた。
メリーノも終焉獣を殲滅せんと力を尽くす。
ソリッド・シナジーで己を最適化させ、メリーノはチートコードによって一時的に限界突破させた力を持って直接寄生型へと邪道による大太刀の斬撃を二度、三度と刻み込む。
すでに仲間の攻撃を幾度か受けていた寄生型は反撃すらかなわず、甲板のシミにすらなることなく溶けていった。
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激化する戦い。
船の所有者は胃が痛む思いでその終結を祈っているに違いないが、チアウェイはそれすらも全て破壊しようとして。
「愚かな……」
この場にもいる強欲の鼻よろしく、荒波を巻き起こすチアウェイ。
「人の姿をいくら真似しようが、その精神性はクソッタレだろ?」
船が大きく揺れる状況だが、カイトは踏みとどまって真っ赤な翼を羽ばたかせる。
「なら、その歪んだ心を緋色に塗りつぶしてやらあ」
まずはそいつを強く抑えるカイトは群れる猛禽を展開し、チアウェイを押さえつけようとした。
もう一人、アルテミアは下がりつつ攻勢に出ていたのだが。
「アルテミア! 海風が冷たすぎて温まらないかしら?」
そこで、寄生型を撃ち抜いていたイーリンが呼びかけてきて。
「寒いからってソイツにとりつかれて温められないようにね!」
「この程度で冷えるほど私の炎は弱くないし、むしろコイツを焼き焦がす勢いよ?」
アルテミアは涼しい顔で勢いよく蒼と紅、双炎を燃え上がらせる。
激しい炎は黒い体躯を焦がす。
「…………」
無言で耐える敵の様子に、アルテミアも気を良くして盾となるべく前に出る。
「そういう司書さんこそ、スライムに包まれて温められるんじゃないわよ??」
そんな仲の良い女性達の会話を耳にしながら、カイトは後方に下がって残像を展開するほどのスピードでチアウェイへと槍を突き出していた。
他の終焉獣に対しても、イレギュラーズは順調に攻め立てていたが、ある程度近場の人々の避難を済ませたイズマが加わって。
仲間達が引き付けを続ける戦況を駆けつける間に把握していた彼は、敵を改めて船上に留めるべく呪術で縛り付けた。
満足に動けぬ寄生型を、メンバー達は一気に切り崩しにかかる。
避難が進んだことで、一般人に被害が及ぶ可能性は減ったが、依然として敵がこの場から住民を襲いにかかる可能性はある。
(でも、でも、わたしたちの司書ちゃんと鏡禍ちゃん、アルテミアちゃんたちがそんな単純なミスなんてしないと思ってる)
仲間へ強い信頼を抱くメリーノは、寄生型へとさらなる連撃を浴びせかけてその体を霧散させた。
少し前線から引いた立ち位置を保っていた瑠璃もここぞと動く。
妙な動きを見せる寄生型がいれば、瑠璃はすぐさま逃走を防ごうと再度影から現した顎で食らいつかせる。
動けぬ寄生型がそのまま顎の中で果てるのを瑠璃は見届け、次なる敵へと視線を向けた。
討伐は順調かと思われたが、醜聞の耳が集まるのを見た鏡禍が止めにかかる。
丁度、イーリンが抑えの負担を変わっていたこともあり、彼も余裕をもって両耳が揃いにくい状況を作ろうとしていたのだが、一足遅かったようだ。
…………!!
両耳の根本が引っ付き、高速回転を始めたかと思うと、激しい連撃を浴びせかけてくる。
仲間達に危険が及ぶと判断した鏡禍は、決死の大壁によって仲間を庇う盾となる。
ただ、度重なる強力な連撃に鏡禍は耐えられず、収集器から零れ落ちるパンドラの力に頼って意識を強く保っていた。
その傍らで、イズマが一気に耳も合わせて寄生型を捉え、音に乗せて魔導武器によって召喚した軍勢に襲い掛からせる。
蹂躙される終焉獣達のうち、寄生型1体が体を引き裂かれて消えていく。
しぶとく残っていた最後の寄生型に、ヨゾラが迫る。
彼は倒れかけた鏡禍を愛を持って支え、癒しを与えていたが、持ち直すと同時に仕掛けていた。
握りしめたその手に神秘力を籠め、力の限り殴りつける。
衝撃に耐えられず、スライムの体躯はあっけなく爆ぜ飛んだ。
(どうやら、俺の蹴りを披露せずに済みそうだ)
寄生された者がいた場合に備えていたカイトだったが、その蹴りを見られるのは別の機会となりそうだ。
寄生型が倒れ、メンバーは人体部位の終焉獣へと武器を、術を差し向ける。
醜聞の耳は聞き耳を立て、周囲を浸食しようとし始める。
それは、交戦しながらでも冷ややかに視線を向けるチアウェイがいたからだろう。
「浸食は許さない!」
だが、イズマがそれを止めるべく、フォルティッシモ・メタルの爆音を浴びせかけた。
…………!
その音にはしっかりと耐えた耳どもだが、決して傷は浅くない。
メンバーの攻撃に幾度も巻き込まれ、あちらこちらについた傷からどす黒い液体が流れ落ちている。
終焉へと導かんとする敵を前に、道を切り開くべく仲間達を再度鼓舞していたイーリン。
仲間達が交戦を続ける間に、音を介して治癒の魔力を振りまいた後、イーリン自身も星の燐光を走らせて片耳を切り裂く。
確かな手応えを感じたイーリンに対し、声も上げられぬ醜聞の耳の片割れが崩れ落ちていった。
応戦を続けるもう片方の耳は己の巨躯を活かした押し潰しで攻めてくるが、ヨゾラが前線メンバーを癒す。
「誰も倒れさせないよ……!」
加えて、彼は幻想楽曲を歌い、手厚く気力をも持ち直させる。
人体部位型は思った以上に強力な相手であり、鏡禍も身をもってその力を感じてはいた。
とはいえ、仲間達が十全に立ち回れる状況に加え、相棒を失った醜聞の耳に、鏡禍も遅れは取らない。
押し潰しに堪えた彼は聖なる光芒を持って敵を切り裂き、態勢を立て直してから鋭い刺突でその耳を貫く。
さらなる蒼の一撃をと構えた鏡禍だったが、その前に敵は倒れ、消え失せてしまっていた。
…………!!!!
ここぞと荒波を巻き起こす強欲の鼻。
甲板にまで押し寄せる波がイレギュラーズへと浴びせかかるが、皆、甲板から滑り落ちぬよう堪えて見せる。
「僕等も世界も滅びず生き延びる。滅びるのは貴様等だけだ!」
態勢を立て直す仲間達と共に、ヨゾラは輝く光を纏わせた拳で強く殴りつけていく。
少しずつメンバーの疲弊が大きくなっていたが、絶気昂で心身を修復したメリーノは平然と告げる。
「大丈夫、わたしたちなら全部できるわ」
確信をもって断言するメリーノは巨大な真っ黒い鼻を確殺自負の殺人剣で叩き伏せる。
強風を起こそうと身構えていた強欲の鼻だったが、それもかなわずさらさらと塵のように体を崩していった。
「なぜ抗う……滅びは免れぬというのに……」
抗戦するイレギュラーズの様子に頭を振るチアウェイは全身から黒い瘴気を発する。
それは相手の気力体力を奪い去る胴体の有する技だ。
イズマが危機を察し、暖かな風光によって仲間達を癒す中、この状況ならばと素早く接近する瑠璃が一気にチアウェイを忍者刀で切り伏せんとする。
「滅びの足音が響いているのは確かでしょうけど、まだ決定的な滅びには結びついていない」
ここまで、チアウェイを抑えていたアルテミアは独白するように相手に声をかける。
「なら、私達は抗い続けるのみよ!」
とどめを刺そうと猛攻をかける彼女は圧倒的な速力でチアウェイへと斬撃を浴びせかける。
カイトも、仲間が合流した後は一気に攻勢に出て。
「滅びに抗う愚か者? 滅びが覆せないなんてまだ決まってないぜ?」
最初から決めつけるチアウェイこそ愚か者であり、指揮官には向かないとカイトは呼びかける。
「指揮官ってのはな、望んだ未来を奪い取る強引さが必要なんだぜ!」
カイトもまた速力を活かしてチアウェイを切り刻む。
その体は思った以上に硬いが、どす黒い血が飛び散っている以上、傷を与えているのは確実だ。
「さて、今回の件から貴方が学ぶべき教訓は――」
この船のキャプテンが誰か教えてあげると、イーリンが不敵な笑みを浮かべて後弾機を飛ばすが、敵は強風を操ってそれから逃れてみせた。
「次はこうはいかぬ……」
存在な態度こそ崩さなかったが、チアウェイは自ら海へと飛び込み、姿を消してしまったのだった。
●
終焉獣を撃退し、イレギュラーズは負傷者らの手当てに当たる。
メンバーの活躍もあって、寄生された一般人がいなかったのは幸いといったところ。
それでも、瑠璃やヨゾラは逐一聞き込みなど行い、対処し損ねた者がいなかったかと確認していた。
「人間の部位じゃなく、戦術を学ぶべきだった」
そう呟くイーリンが加えて一言。
「バグホールは何処?」
イーリンがギフトでひらめいた後、改めて海上や港にあちらこちら発生したものを視認する。
今はそれほど大きくはないが、やがては拡大するかと考えると恐ろしい。
「あれが拡大していけば、やがては街を呑み込むのか」
そうなれば、人々は戻れなくなるとイズマは考える。
場合によっては、避難民となる人々の受け入れ先も考えねばならないだろう。
「異世界だったら、冒険できるんだけどなあ」
カイトは楽観的な考えを口にしていたが、現状、触れただけでも破壊されかねぬ空間であることが分かっている。
それは、例え、空だろうと海だろうと呑み込んでしまう。
そして、除去する手段もまた全く判明していない。
今はただ放置するだけしかできぬバグ・ホールをしり目に、メンバーは新たな事件対処へと向かうしかできないのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは強力な攻撃から仲間を庇った貴方へ。
バグ・ホールは現状対処法は不明で、どうすることもできぬようです……。
ご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<グレート・カタストロフ>のシナリオをお届けします。
混沌全土に出現する終焉獣。
加えて、世界そのものを崩壊に導く『バグボール』も現れ、本格的に滅びの神託が間近に迫っていることを実感させます。
滅びに抗う為、各地で起こっている事件の対処を願います。
●概要
海洋、首都リッツパークの港が舞台です。
港や近海にバグボールが発生し始めている状況の中、停泊している船の上に終焉獣の群れが出現しています。
商船の一つに下記の一団が出現していますので、撃退を願います。
寄生型終焉獣が一般人に寄生する可能性もあります。
バグボールは戦域にはありませんが、避難の際は(陸上の人々、停泊中の船の移動など)人々に近づけさせぬよう呼びかけが必要です。
●敵
〇クルエラ:チアウェイ
指揮官型終焉獣。全長2mほどの黒い人型。
これまで出会った人の部位を象った終焉獣の内から幾つからの技を使う、指揮官に相応しき能力を持ちます。
場合によって付け替え可能なようで、戦いによって様々な能力を操る厄介な敵です。
〇終焉獣×3体
滅びのアークそのもので作られた獣達。
姿は様々ですが、漆黒の体躯をしたものが多いようです。
・強欲の鼻×1体
全長3mほど。
浮遊から自重を活かしたプレス、強風や荒波を操る他、匂いと合わせて相手の存在まで吸い込んでしまう恐ろしい相手です。
・醜聞の耳×2体
全長3mほど。右耳と左耳が1体ずつですが、実力の個体差はありません。
自重を活かした押し潰し、甲高い耳鳴りを中心に攻撃します。左右揃うことで強力な攻撃を行います。
聞き耳を立てて音を聞くような仕草をし、周囲を吸い込むようにして浸食することもあります。
〇寄生型終焉獣×6体
全長1m弱。
スライムのような姿をしており、通常の人間に取り付いて狂気状態へと陥らせます。
寄生状態の特効薬は『死せる星のエイドス』であることが分かっており、混沌でも利用することで寄生された人を無事に助け出せます。
また、寄生終焉獣同志で引っ付き合い、強化個体になることも。
スライム状の姿で戦う際は、身体の一部を弾丸のように飛ばしたり、近づいて相手の動きを止め、精神に作用してその体を乗っ取ろうとしてきます。
●【寄生】の解除
寄生型終焉獣の寄生を解除するには対象者を不殺で倒した上で、『死せる星のエイドス』を使用することで『確実・安全』に解き放つことが出来ます。
また、該当アイテムがない場合であっても『願う星のアレーティア』を所持していれば確率に応じて寄生をキャンセル可能です。(確実ではない為、より強く願うことが必要となります)
解き放つことが出来なかった場合は『滅びのアークが体内に残った状態』で対象者は深い眠りにつきます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いします。
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