シナリオ詳細
キングおもちスライム襲来!
オープニング
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各地に出現する終焉獣の脅威に人々が震えている。
幻想にあっても、それは変わらない。
混沌の滅亡は近いのか。
イレギュラーズをもってしても、止めることはできないのか。
人々はそう囁き合いながら、年越しを過ごし、新たな年を迎える。
「早くこの状況を何とかしたいものですが……」
幻想ローレット。
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は年越しのタイミングでイレギュラーズと現状について話し合う。
手近な事件は一つずつ解決に導いているが、戦い続きのイレギュラーズだ。
少しくらい休みたいと考えるメンバーも少なくはない。
こうしてローレットへと顔を出しても、新たな事件に備えて待機……という名目でのんびりしている者だってちらほらいる。
ただ、ローレットは混沌中を股にかけて活動する組織であって、人手は常に足りない。
だからこそ、舞い込む小さな依頼はなかなか対応できぬことも多々あるようだ。
「皆さんに一つ、お願いがあるのです」
アクアベルの未来視によれば、事件が起きるのは年明けとのこと。
その為、年内は話をしつつ対策を練ってくれればいいそうだ。
事件は幻想のとある街ライラス。
この街は度々、モンスターの襲来を受けており、ローレットにもその討伐依頼が出ていたことがある。
「その際はおもちスライムの討伐依頼でしたね。私が仲介したと思います」
おもちスライムはその名の通り、体がお餅でできた塊に意志の宿ったモンスターらしい。
相手を溶解する能力こそ持たないが、質量を活かしたタックルや、伸縮性を生かした縛り付けなどが特徴的な相手だ。
なお、イレギュラーズはそれらを倒し、街の人と餅パーティーを行った。
「長らく餅は保存食として愛され、このライラスのB級グルメとなっています」
それはそれとして。
その後もライラスの街は幻想の戦乱に巻き込まれたり、モンスターの被害に遭ったりしていたようだ。
その度に、近場の自警団や依頼の道中であるイレギュラーズ、貴族や商人の用心棒、他国の傭兵らに助けられているらしい。
今回は年明けとあり、人の往来も多少ある状況の中での依頼。
できるなら、先んじて対策を取りたいとアクアベルは言う。
「何せ、今回の相手はおもちスライムの王というから、穏やかではないのです」
全長10mほどもある餅の塊が飛び跳ねてくれば、街に多大なる被害が出るのは確実だ。
出現に備え、登場したらすぐに迎撃し、撃退したい。
「ただ、キングはその身を削いで、多数の小型おもち系スライムを生み出すことが確認されています」
その身を削げば、それだけキングの体躯は小さくなるが、多数のおもちスライムが街を目指してくる。
スライム達の目的は街の人々とみられ、文字通り獲物とするつもりのようだ。
人の往来の多い年明けだと、その被害も止めるのが難しい。
「街に入る前、平原で食い止めたいですね」
見上げんばかりのキング……キングおもちスライム。
それを如何にして『調理』するか、メンバー達は話し合う。
なにせ、モンスターであってもお餅には変わりない。
討伐して水洗いし、調理すれば美味しく頂けるのは以前の依頼で実証済みだ。
「無事に依頼が解決したら、私も少しだけご相伴に預かりたいです」
最後に笑顔を見せるアクアベル。
熱々のお餅を美味しく頂けるなら、私が調理しますと彼女はやる気を見せていた。
●
年が明けて。
依頼を受けたイレギュラーズは、問題のライラス近郊へと足を運ぶ。
街は新年を祝う人達が挨拶回りに行き交っている。
さすがにこの流れを止めるのは容易ではないと考えるメンバー達だ。
それだけに、なんとしてもやってくるモンスターを撃退せねばならない。
ズシン、ズシン、ズシン……。
巨大な体をバウンドさせてやってくる柔らかく白い物体。
近づいてくるそれ……キングおもちスライムを遠目に見つつ、イレギュラーズは戦闘準備を整えるのである。
- キングおもちスライム襲来!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年01月16日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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幻想、ライラスの街へと向かうイレギュラーズ。
「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします!」
『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)の声が響く中、集まるメンバー達もまた互いに挨拶を交わして。
「ということで早速……餅! 食べずにはいられないッ!!」
新年とあって、涼花をはじめ、気持ち新たに依頼に臨むメンバーも多い。
「さて、今回の仕事は餅モンスター達の撃破だ」
「この時期にお餅のモンスターがやってきて、しかも食べられるなんて!」
改めて、依頼内容を確認する『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)。
『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)は、『飛んで火に入る冬の餅!ってヤツかなぁ?』と笑う。
涼花もこほんと一つ咳払いして。
「おもち、美味しいですよね」
きなこをまぶしてもいいし、焼いて砂糖醤油をつけてもいい。
お雑煮も最高だし、餅巾着だって忘れてはならない。
変わり種でいくと、切り餅を薄切りにしたものを生地にしたピザなども面白そうだ。
すでに、事後のお餅タイムに想いを馳せる涼花はさておき。
「縁起物って言ってもいいかな……いいかも」
新年に登場する敵としては、『竜剣』シラス(p3p004421)も縁起を担ぐのに丁度いい相手だと捉える。
また、ローレットが依頼を請け負い始めたころから所属するシラスにとって、どこか懐かしい類の依頼だと話す。
「イレギュラーズになりたての頃は依頼で野生の寿司とか、野生のカツ丼とか狩ってたよ」
原点回帰と言うシラスに対し、『君よ強くあれ』安藤 優(p3p011313)はギフト『追憶者の図書館』を起動させて。
「アッ、4年前にも鏡餅スライムが襲ってきているのですね」
かつてのボスキャラが雑魚的として出てくるのに、2作目感があるとメタ的な呟きを漏らす。
なお、ライラスの街というこの地名も、「ライ(ラ)ス」の茂尻ではないかと。
そんな優の考察を耳にしつつも、シラスはこれほどのデカブツは当時なかったと語る。
「初めて相手する規模だ」
「ひぇっ!? で、でかあああい!? 実際に見ると10mは迫力がありますねえ!?」
街中からでも視認できる巨体だ。
近づけば近づくほど、圧倒的はさながら壁のように義弘、優も感じて。
「10メートルもある餅とはな。ちょっとしたビルくらいでかいんだが」
「おっきいねえ……! ……本当にどこから出て来るんだろう?」
小柄な『無尽虎爪』ソア(p3p007025)も冗談のような眺めの敵の侵攻に疑問を抱きつつも、気が抜けぬ状況であることを再認識していた。
「おもちキングスライム……さらに分離生産で増える餅スライム達……!」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)もその見た目だけで、美味しそうだと漏らしかける。
傍の『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)もその大きさに、圧倒されながらも、冷静になって。
「いやあ……これ食べんの? 大きすぎへん?」
確かに、これから戦って細かく千切っていくわけだが、それにしても大きすぎると彩陽も危機感を露わにする。
「さっさと細かくしてかな厳しいかもしれん」
「生み出す子分達も相当な数になりそうだ」
できる限り、纏めて吹っ飛ばしたいと義弘は話す。
すでに、優は自己強化など準備を整え、戦場を俯瞰して細かく分かれた敵に備える。
彩陽も気を引き締め、やはり不意打ちに備えるべく広域からの視座と超視力で戦いに臨む。
「……こほん、倒して街を守らないとね」
ヨゾラも保護結界を展開し、感覚を強化して警戒を強める。
ズシン、ズシン、ズシン……。
巨大な体をバウンドさせてやってくる柔らかく白い物体。
間近に迫ったそれを、一同は改めて見上げて。
「しっかり街を守って、皆でいっぱい食べようね~!」
「気を引き締めていこう」
「さっさと倒してパーティーしましょう!!」
ユイユ、シラス、涼花の掛け合いの後、メンバーは一気に攻撃へと出るのだった。
●
見上げんばかりの大きさを誇るキングおもちスライム。
その巨躯もあり、潰されることも懸念して近寄るのを避けようとする者も。
(街の方に向かわれると面倒だな)
いい感じの場所でやっつけたいと考えるシラスは、距離をとって敵を見据えて。
「おっと、そっちに行くんじゃねえよ。この先は通行止めだぜ?」
敵の侵攻を食い止めるべくシラスは青い衝撃波をぶつけ、その巨躯を街から少し遠ざける。
その地点で、すでに敵は体を切り崩し、まずは鏡餅スライムが生み出される。
「我冀う。その力を奇跡と成す事を」
彩陽も死者の霊より力を分けてもらい、弓矢に籠めて放つことで分離したスライムも纏めて射抜いていく。
ソアもやはり潰されたら大変とキングから距離をとって。
「焼きもちにしてあげる……びりびりどーん!」
高くリヴァイ・アポカリプスを掲げ、ソアは敵の頭上へと雷撃を降り注がせる。
激しい雷がキングや鏡餅を包む中、さらなるメンバーの攻撃が。
「まだ分裂しようとしてるよ」
敵の動きを注視するヨゾラは仲間達へと気づいたことを逐一伝達しながら、自らも魔術紋を輝かせてから分離した鏡餅を中心に神聖秘奥の術式を展開し、おもちスライムの群れをこんがりと焼いていく。
義弘も仲間を巻き込まぬよう配慮しつつ敵のみを捕捉し、野生の咆哮を上げてタックルを叩き込む。
「兎にも角にも、ちっさくしなきゃだね!」
ユイユは他メンバーと違って巨大な相手にも真っ向勝負。
浄化の裁きを叩き込むことで強力な一打を与える。
とはいえ、巨体もあって、それは餅つきの一突きといった印象だ。
そこで、キングはさらに体の一部を切り崩し、切り餅スライムを作り出す。
それらの一纏めにすべく、優は己を勇気で奮い立たせて。
「こ、このぼくを相手に……やるのか?」
やや震えながらも名乗りを上げた優へとおもちスライムが集まっていく。
近場にいたメンバーが分離したおもちスライムに絡まれる中、涼花が演奏を響かせた。
回復支援に動く涼花は初手は攻撃に出る。
魔力を高めた演奏によって、形作られる音が光を帯びて雷撃に。
それはうねり、のたうつように伸び、細かくなった敵もろとも打ち貫いていく。
すぐさま、仲間のサポートへと回る涼花の前で、彩陽が近づく仲間の状況も把握して。
「早めに分割させた方がよさそうやし、でも分割させすぎて対応できんくなっても困るし大変やわ……」
その対応に苦慮しながらも、彼は堕天の輝きを発し、おもちスライムだけを灼き、動きを鈍らせていくのである。
●
キングおもちスライムは危機感を抱いたのか、しばらく体を分離させて多数の子分を作り出す。
義弘はそれら含めてキングを狙って殴り掛かるが、小型のお持ちスライムも含め、鏡餅、切り餅と数が増えていくのが実に厄介だ。
その中でも、街へと向かう相手は最優先で、ヨゾラは楽園追放で動きを止めていく。
間違いなく、相手は邪悪とは言えぬ存在だが、害なす敵の狩りとみれば、十分である。
「楽園追放……あっ、でも餅部分は残しておいてー!」
攻撃しながらも、ヨゾラは思わず相手が完全になくなってしまわないかと気にしていた。
ユイユもまた好き勝手暴れようとする分離体の中で大きな鏡餅スライムから裁きの宣告を直接叩き込む。
「大きい程多彩だし……このおめでたそうなの、領地に持って帰って飾っちゃダメ?」
鏡餅スライム1体を持ち帰りたいと主張するユイユ。
今は対処が大変だが、状況が許せば見つかるかもしれない。
とはいえ、イレギュラーズはその数もあって、多すぎる敵の対処に苦慮することになる。
できる限りの敵の動きと能力を封じようとしていた彩陽だが、多くを巻き込むことで複数の敵のターゲットとなり、変形したおもちスライムに絡まれて苦しい戦いを強いられる。
ソアもまた、たくさんの子餅(ソア呼称)へと自由自在の雷で攻め立てていたが、こちらも数にたかられてしまう。
彩陽もソアも、一度はパンドラにすがり、気を強く持ってその猛攻に耐えていた。
「本体は少しずつ小さくなっています」
涼花は演奏を響かせて仲間を鼓舞し、傷を塞いで万全に戦えるよう演奏する。
その際、涼花は無駄なく行動できるよう極力後手をとるよう心掛けていた。
「この後、お餅を楽しむんだ! 誰も倒れさせないよ……!」
ヨゾラもまた、仲間が劣勢になれば個別に疲弊した仲間に愛を与え、傷の痛みを抑える。
また、力を使い切らぬようにと、彼は幻想楽曲を歌声に乗せ、仲間達の気力、魔力が尽きぬよう補填にも当たっていた。
そんな仲間達を巻き込む危険を考慮し、義弘はタックルでお持ちスライムを纏めて叩き潰さんとする。
優も纏めて雷撃を浴びせかけていたが、仲間達の戦況などもチェックを怠らない。
メンバーの攻撃は確実に手応えのは間違いないのだが。
「思ったより弾力がありますね」
前回の戦いでも、おもちスライムはさほど固くなかったと優は情報を得ており、今回もそうだと確認していた。
「伸し餅にしてやらぁ!」
あちこちでバウントするおもちスライムの群れ。
シラスはそれらを個別に魔力弾による衝撃で潰していく。
なお、敢えて不殺に留める攻撃を多用しているのは、その方が美味しく仕上がる気がしたとは、シラスの談だ。
しばらくはバウントし、のしかかり、絡みつき、張り付いてくるおもちスライムども。
イレギュラーズは激しく抵抗し、動くスライムも徐々に減ってくる。
ユイユが鏡餅スライムを相手する傍で、体力を幾分持ち直したソアは自身の気力低下を自覚したことで一気に加速し、へばりつく餅を振りほどく。
後は狩人の爪を抜き、一気におもちスライムを切り刻んで。
「はぁー……つっかれた! これ全部で何人分あるかなあ?」
かなりの数にスライスできたのを視認するソアだが、さすがに戦いの最中に数えるわけにはいかないだろう。
「ほら、餅剥がしてやるよ」
シラスは仲間達に張り付いた餅を引っぺがしつつ、格闘魔術で攻め立ててきっちりと仕留めていく。
別のお餅スライムが彼へと絡みつこうとするが、シラスは聖骸闘衣でそいつを弾き、さらなる攻撃を見舞う。
そうこうしているうち、分離したおもちスライムの数が減って。
街道に多量の餅が散乱する中、大多数の取り巻きを失ったキングがうろたえつつ後ずさる。
「だいぶ小さくなったけど、それでも大きいね」
ユイユはそう言うものの3m強あるキング。
だが、体の半分以上を切り離したことを考えれば、相当数をメンバーが撃破したのは間違いない。
「さほど固くない相手なら……」
彩陽はキングの体を一時的に魔空間へと押し込めようとし、一気にくし刺しにする。
とはいえ、敵が弱っているようにも感じられぬ彩陽は、冥王の呼び声も織り交ぜ、異常をもたらすことで相手を弱らせていく。
「相手は餅だからな、乾燥したら表面はガチガチになっちまうからよ」
表面を固めぬよう、中から破壊すべく掌打を叩き込み、相手の体内に送り込んだ気を破裂させる。
「…………!!」
怯むキングだが、攻撃は止まらず、こちらへとのしかかってくる。
だが、巨体も3mになれば、威力こそ変わらぬが攻撃範囲は狭まる。
狙われた仲間を、涼風が神意の祝福を与えて癒す間に、他メンバーが一気にキングへと畳みかけて。
「街を守る為、お餅を食べる為! 倒させてもらうね!」
メンバーの攻撃の合間を縫うように、ヨゾラは改めて魔術紋を強く輝かせ、神秘の破壊力を集約させてキングを殴りつける。
大きく変形するキング。
相手の攻勢が弱まったことで、こちらも涼花が再度精神力の弾丸を撃ちだし、手数で追い込んでいく。
「はい、ぺったん!」
「…………!」
ユイユが敵を吹き飛ばそうと衝術を打ち込む。
それを堪えたキングへと、優が一気に迫って。
(可食部ができるだけ残しませんとね)
終始、事後の食事のことを心掛ける優は、炎を纏わせた腕で全力の拳を打ち込む。
これまで思う存分暴れていたキングおもちスライムだったが、抵抗もここまで。
ぐにゃりとひしゃげるように中央部が潰れ、完全に停止したのだった。
●
キングおもちスライムを撃破したイレギュラーズ。
「よし、後は食べるターンだな」
シラスはそういうものの、ある程度細かくなったおもちスライムが街道の至るところに転がる。
「普通に食べられるらしいから、ありがたく頂くとしよう」
義弘は仲間と手分けして残った餅の回収を進める。
その脇では、ヨゾラが仲間の手当てと合わせ、撃ち漏らしのスライムがいないかと警戒していた。
なお、鏡餅スライム1体をユイユが強引に確保していたらしく、自身の領地に持って帰る気満々らしい。
「……まあ、これもエコ? ってやつなんかねえ」
「ちょっと焦げちゃってるけど、これだけたくさんあれば大丈夫だよね」
「特に問題ないでしょう」
自身の攻撃で焦げた餅を拾うソアの呟きに、涼花がどのみち焼く餅もあるからと返す。
ともあれ、さすがの物量もあり、ユイユのメカ子ロリババアにも手伝ってもらって街へと運ぶ。
「10メートルの塊ともなると、流石に食べきれない。街をあげて手伝って貰わないとな」
「餅はカビるかもしれねえからな、さっさとさばいてしまうのがいいだろう」
シラスの提案に義弘が同意する。
「日干しにすると保存食になるんだっけ?」
シラスの言うように、乾燥させれば常温でもカビることはないという。
また、密閉、冷凍などできれば多少長く保存できるが、幻想の一般市民には少しばかりハードルが高いかもしれない。
「まあ、お裾分けするか。ちょっとした餅パーティーになりそうだ」
いずれにせよ、今回討伐した分全てを保存などしきれない。
義弘がこの場で皆に振る舞うべきだろうと話すと、彩陽などはすでに餅を調理できる場所を探していたようで。
「皆でお餅食べよっか」
「それじゃあ、水で洗ってつき直すんだね。手伝うよ」
ヨゾラが乗り気になって、運ばれたおもちを片っ端から水洗いしていく。
彩陽は街の人と協力し、早くも餅つきや料理にと餅の受け入れを始めていた。
そんなこんなで、準備も進んで。
「おもちタイムだー! もちつきぺったん!」
子供っぽくはしゃぐヨゾラは街の人が用意した臼に入れたおもちを思いっきり杵でぺったんとつく。
「アクアベルさんもよろしくね、お餅料理楽しみー!」
「はい、腕によりをかけますね」
ヨゾラに声をかけられ、駆けつけたアクアベルは笑顔で調理に当たる。
「ぼくにお手伝いできることがあれば何でも言っていただければ」
優も料理はできるそうで、仲間に何が欲しいかと尋ねていた。
まずは、直接焼いて味わうメンバー達。
あちらこちらで七輪などを使って火を起こし、おもちの焼けるいい匂いが漂う。
そちらは銘々で焼いていたが、焼きあがった餅につけるものもまた様々。
彩陽は砂糖醤油で甘じょっぱくしていただく。
「海苔があるのはありがたいな」
義弘は普通の醤油を垂らして網で炙り、練達で流通する海苔を拝借して巻いて磯部焼きにしていただく。
ヨゾラはその両方を楽しみ、おもちの触感と味を堪能する。
「今回はせっかくですので、変わり種でいきましょう!」
涼花はというと、チーズにケチャップをかけてピザ風にしたり、ネギ塩だれで味付けしておつまみ風にしたりとアレンジ。
その味は、ライラスの住民にも絶賛されていた。
「ボクは甘いお餅がいい!」
ソアはきな粉やあんこを街の人と作り、それをまぶして美味しく頂いて笑顔を浮かべていた。
「こんなこともあろうかと!」
ユイユも料理にチャレンジと用意したのは、自身の領地で採れた木の実。
醤油を絡めた香ばしいお餅に、砂糖で炒めた胡桃をトッピングすれば、甘くサクサクした食感が。
さらに、仲間の作ったぜんざいの鍋の一つに、オマケで栗を投入すると、栗ぜんざいに。
「うん、美味しくできたよー」
その出来に、ユイユも満足していたようだ。
なお、ぜんざい鍋は優も作っており、多数の街の人々へと配っていた。
「新年に美味しいおもちタイム……もちもち嬉しいー!」
ヨゾラも今を噛み締められる幸せを実感しつつ、甘くてもちもちなぜんざいをじっくりと堪能する。
「まだありますので、遠慮なくどうぞ」
「えへへ、ご飯を作って配るのとか初めてだな~」
他にもアクアベルが雑煮を作っており、ユイユが街の人々に配っていく。
それを受け取ったシラスは、野菜スープと一緒にいただいていた。
「冬に嬉しい温まる汁物だな」
冬の寒さは堪えるが、大鍋で多量に煮ることで多数の人々が体を温め、ほっこりしていた姿を見つつ、義弘もそれらの汁物を口にする。
「楽しい場には心地の良い音楽を」
仲間や街の人に聞こえるよう、涼花はギターをかき鳴らす。
それを聞きながら、彩陽は皆と楽しくお餅料理を食する。
「皆と食べるのが美味しいんよ。一人で食べるよりさ」
うんうん頷くユイユはこれでもかとお餅を食べ回って。
「今年もいーっぱいご飯を食べられますよーに!」
その願いが叶えばいいなと皆願う。
「ごちそうさまでした」
椀を置き、餅に感謝する義弘。
皆もまた両手を合わせ、食後の感謝を示すのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは悩みましたが、戦闘、事後パートの楽しみ方も合わせ、お送りさせていただきました。
アクアベルとも接してくれて感謝です。
ご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
2023年もありがとうございました。2024年もよろしくお願いいたします。
幻想のとある街は度々モンスターなどの襲撃を受けているようですが、そこに突然おもちスライムの変異個体が……。
ネタシナリオではありますが、判定はノーマル相応ですので予めご了承願います。
〇概要
このクエストでは、依頼相談タイミングが年を跨ぎ、出発が年明けとなりますので、プレイングもまた年明け想定で願います。
とある幻想の街ライラス及びその外れが舞台です。
街外れの丘陵地帯となっていて中心に街道が整備されております。
所々に木々や草むらがありますが、基本的には見通しの良い場所です。
どこからか現れたキングおもちスライムから街を護ります。
体を切り崩しつつ攻めてくるこの巨大な敵を打ち倒してくださいませ。
事後、討伐したおもちスライムは水で洗ってからつき直して、普通のおもちと同様に食べられます。
七輪で焼いてきなこや砂糖醤油をつけたり、雑煮にしたり、ぜんざいにしたり……。
街の人達と共に新年を祝い、美味しくお餅をいただいていただければと思います。
●敵:キングおもちスライム×1体
全長10mもある見上げんばかりの体躯を持つスライムの変異種です。
溶かす能力はありませんが、異常なまでの伸縮性を持っています。
加えて、かなりの質量があり、広範囲にのしかかってくる上、いかなるものだろうと押し潰そうとしてきます。
また、自分の体を削り、以下の敵を無数に作り出すことができます。
・鏡餅スライム×?体
キングの分離生産によって3~4体が出現します。
全長2mほどあり、2段重ねの餅と上のダイダイを模した大型スライムです。
のしかかり、地面を叩きつけてからの地響き、とりもち投擲、お餅バレットを発してきます。
・切り餅スライム×?体
キングの分離生産によって10体ほど出現します。
全長1m程度。直方体に切られた切り餅を思わせます。
角を突き出しての突撃、お餅バレットにうにょーんと変形してこちらの体を縛り付けることもあります。
・おもちスライム×?体
直径25cm程度のスライム。バスケットボールくらいの大きさです。
身体を変形させて直接体当たりしたり、手足に絡んでこちらの動きを封じたり、顔に張り付いたりして、攻撃を行ってきます。
●NPC:アクアベル・カルローネ(p3n000045)
事後パートのみ参加します。
何か希望があれば、町の人と共に希望の餅料理を作ります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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