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シナリオ詳細

サヨナキドリ妖精郷支部、営業中!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 世間は厳冬の気配を感じ冬支度を進めている中で、そんなものとは無縁の場所がある。深緑から繋がる妖精郷アルヴィオン。そこは常春の世界であり、外の季節に関わらず常に麗らかな日差しの温かい、過ごしやすい気候となっている。
 さて。そんな妖精郷にその店はあった。サヨナキドリの妖精郷支部である。かつてローレットのイレギュラーズは妖精郷を巡る事件を解決したことで自由に出入りできるようになっており、こうして小規模ながら店を構えることも出来たのだ。

「店長、棚卸は終わったよ。在庫の足りなくなっていた商品は、本部に連絡を入れて補充しておくね」
「ありがとう、アルム君。それが終わったら今日の営業を始めようね」

 商品棚に陳列されている様々な商品の在庫管理を行っていたのは『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)。この妖精郷支部でアルバイトをしている。
 そしてそのアルムに店長と呼ばれたのは『のんびりセルキー』ネイクリアス(p3p011357)。サヨナキドリがこの妖精郷支部を発展させるために派遣した支部長である。
 開店前に毎朝行われる諸業務を片付けると、表の看板を営業中に切り替えて店を開くと、やがて妖精たちに使役された精霊が生活に必要なものを買いにきたり、或いは妖精本人が嗜好品を買いにきたりと店内は賑わいを見せ始める。
 そんな折のことだ。店内へと一人の妖精が蝶のような翅を必死に羽ばたかせて飛び込んできたのは。

「た、助けてください!」
「うわっ! どうしたんだい!?」
「僕が話を聞いておくから、アルム君は店の事を頼んだよ。さぁ、店の奥で落ち着いて話そうか」
「ありがとうございます……」

 急な来客に驚くアルムに途切れず訪れる接客を任せると、ネイクリアスは飛び込んで来た妖精を店の奥にある、従業員用の休憩室へと通した。
 とても切羽詰まった様子の妖精だったが、ネイクリアスの穏やかな気配を感じて少し落ち着いてきたのか、個との経緯を話し始める。

「私の村はこの近くの森にあるのですが、今日になって突然その村が魔獣に襲われてしまって……」
「それは大変だ……! 何か原因は分かったりするのかい?」
「少し前に大雨が降った時に森の奥で土砂崩れが起きていたみたいで、その時に未発見の遺跡の入り口が出てきたみたいなんです。魔獣たちはどうやらそちらの方から来たみたいで……」
「なるほどねぇ。遺跡の中から魔獣が出てきたってところか。それで、僕たちに魔獣の討伐と遺跡の調査を依頼したいってことでいいかな?」
「はい。お願いできませんか? いまはなんとか持ちこたえていますが、このままでは私たちの村が……!」
「大丈夫だよ。すぐに僕たちが向かうから」

 今こうしている間にも村がどうなっているのか心配なのだろう。泣きそうな顔をしている妖精の頭を、ぽんぽんと撫でるとネイリアスは妖精と共に店内へと戻っていく。


「――というわけで、僕たちでこの妖精さんたちの村を助けに行くよ」
「分かったよ、店長。でも、僕たち二人で行くのかい?」

 妖精郷に多数の人間が入り込むのはよろしくないだろう。ということで、妖精郷支部の人員は支部長のネイリアスとアルバイトのアルムの二人だけである。
 妖精の村に現れた魔獣がどの程度の物かは分からないが、流石に二人だけで向かうのは危険すぎるだろう。

「うん。だからローレットにも依頼を出しておこうかなって。アルム君、頼める?」
「じゃあ、僕はローレット行ってくるので現地で合流しましょう」

 妖精に村の場所を聞いて、ネイリアスは直接そちらに向かい、アルムはローレットで人を集めてから向かうことにする。
 ちょうど店内に客がいなかったこともあり、看板を臨時休業に変えると二人はそれぞれが向かう場所へ急ぐのだった。

GMコメント

●ご挨拶
 この度はリクエストをありがとうございます。東雲東です。
 リクエストを頂いてから時間は経ってしまいましたが、ようやく手が空きましたのでオープニングを公開させて頂きました。
 どうぞよろしくお願い致します。

●目標
 1.村を襲う魔獣の討伐
 2.村近くで発見された遺跡の封印

●ロケーションなど
・妖精の村
 助けを求めてサヨナキドリ妖精郷支部を訪れた妖精の住んでいる村です。
 住民は数人程度で、全てが身長30cmほどの小さな体に、蝶のような翅の生えた一般的な妖精です。
 森の中で切株などをくりぬいて作った家で生活していましたが、魔獣が現れたことで村の中心にある樹の上に避難しています。
 PCの皆さんが戦う上では、森の木々やそこに作られた妖精たちの家を傷付けないように気を付ける必要があるでしょう。

・森の遺跡
 大雨による土砂崩れで入り口が現れたこれまで未発見だった遺跡です。
 妖精の村を襲った魔獣はここから出てきたと思われます。
 内部は石造りとなっており、広さも明かりもあるため戦う上での苦労はないでしょう。
 比較的浅い造りようで、探索そのものはすぐに終わりめぼしいお宝や情報もないため、中の魔獣を駆逐したら入り口を崩して封印することになります。

●エネミー
・ヘルハウンド×3 (村)
 妖精の村に現れた魔獣です。
 大型犬や狼に近い容姿をした魔獣で、鋭い牙や爪での攻撃に加えて炎を吐くくことが出来ます。
 炎には【火炎系統】のBSが付与される可能性があります。

・ヘルハウンド×5 (遺跡)
 村を襲っているものと同じです。
 数は多いですが、個の強さはさほどでもありません。

・オルトロス×1 (遺跡)
 ヘルハウンドたちのボスのようで、遺跡の中にいます。
 ヘルハウンドよりも一回り大きな体で、二つの首を持ちそれぞれが炎と冷気を吐くことが出来ます。
 炎には【火炎系統】、冷気には【凍結系統】のBSを付与される可能性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • サヨナキドリ妖精郷支部、営業中!完了
  • GM名東雲東
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2024年01月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
毒島 仁郎(p3p004872)
ドクター・チェイス・ゲーム
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
※参加確定済み※
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺
ネイクリアス(p3p011357)
のんびりセルキー
※参加確定済み※

リプレイ


 助けを求めてやってきた妖精に連れられて『のんびりセルキー』ネイクリアス(p3p011357)森の奥へと向かうと、妖精の言っていた通り木々をくりぬいて作られた妖精たちの家が見えてきた。
「ここがきみたちの村なんだね」
「そう。みんな、中央の樹の上に避難してるはずなんだけど……あ! あそこ!」
 周囲を探るように見渡していると、妖精が声を上げてある樹の上を指させば、たくさんの妖精たちが枝の上で身を寄せ合って震えていた。
 視線を下に落とせば、赤黒い毛皮を纏う大型の狼のような魔物が、獰猛な唸り声を上げながらがりがりと樹の幹を爪で引っかいている。
「はやく助け出さないと……! もう少しだけ頑張ってね」
「おーい、店長~!」
 ネイクリアスが村の状況を確かめていると、人手を集めるためにローレットへ向かっていた『昴星』アルム・カンフローレル(p3p007874)が追い付いてきた。
 どうやら無事に仲間を募ることが出来たようで、その後ろに何人かの姿が見える。
「みんな、来てくれてありがとう!」
「なに、友達の助けになるくらい当たり前さ」
「俺もサヨナキドリのバイトやからな。仲間のピンチには助けにこんとな」
 ネイクリアスが集まってくれたイレギュラーズに声を掛けると、『つばさ』零・K・メルヴィル(p3p000277)がアルムの肩に手を置き、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)はネイクリアスに向けて手を挙げる。
「確か、村のヤツだけじゃなくて、近くの遺跡にもいるんっスよね。なら、早く倒しにに行きましょう」
「そうだね。妖精さんたちを安心させてあげないと」
 道すがら、アルムから状況を聞いていた『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の言葉に『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が頷くと、今いる者たちでこの村を救うために手早く作戦を打ち合わせていく。
「さぁ、頑張りますぞ! あ、ぽぽ魅さん、今日もよろしくお願いします」
 簡単に話し合いを終わらせていざ戦いへ、となると『ドクター・チェイス・ゲーム』毒島 仁郎(p3p004872)は隣に立つ長身の女性にそう声を掛けた。
 ぽぽ魅と呼ばれたその女性は明らかに尋常ならざる怪異ではあるが、どうやら害になるような存在ではないらしく、他の者はひとまず気にしない事にしたようだ。
「妖精の敵は俺が斬る!」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)の言葉と共に、イレギュラーズは行動を開始した。


 イレギュラーズは二手に分かれ、零、サイズ、アルムの三人で村を守り、残りの五人で遺跡へと向かうことにしたようだ。
「結界を張ったよ、これで周りの被害は気にしないで戦える!」
「よし、これで思いっきり戦える! お前らにはこれ以上此処には手を出させない、掛って来な……!」
「お前たちの相手は俺だ!」
 アルムが結界を張ると、零とサイズが前に出て今にも火を吹いて樹上の妖精たちを焼こうとしていたヘルハウンドに強襲した。
 全身に力を漲らせて急加速した零の拳は、妖精たちを守るのだという強い意志と共に烈火が迸り、残像を残すほどの速度で乱打された。
 不意の襲撃を受けた一体が悲鳴のような声を上げつつも身を翻らせ、すぐに反撃に出ようとするがサイズの一喝が響き渡り注意がそちらに向いたようだ。
 狙いを変えて唸りを上げてサイズへと襲い掛かるが、対するサイズは深紅に染まった大鎌で迎え撃つ。
 自身の本体でもあるその鎌を振るえば、込められた魔力がヘルハウンドをも超える巨獣の頭部を象り、鋭い牙の生え揃った顎で食らいつく。
 しかし、それで止められたのは一体だけ。残りの二体が左右に分かれて炎を吐き出しながら牙を突き立ててきた。
「その程度の炎じゃ、俺の感じるこの寒さを払うことなどできない」
 その身に刻まれた呪いによってサイズは常に凍えるほどの寒さに苛まれている。だが、その呪いの対価として、強靭な肉体を得ているため、この程度の攻撃ならば受けてもさほど痛くはない。
 身を捻りながら鎌を振るって食らいついてきたヘルハウンドを振りほどくと、そこに零が追撃を仕掛ける。炎の拳が一度、二度、三度と抉りこむように放たれれば、ヘルハウンドの骨を砕き致命の傷を与える。
「傷は浅いようだけど念のため直しておくね」
「助かる」
 零の拳を受けてヘルハウンドの一体が力なく倒れる一方で、アルムが左手で小さな鍵を握りしめながら右手をサイズへと向けると、その頭上に天使の円冠のような物が現れそこから降り注ぐ優しい光がサイズの傷を癒していく。
 仲間をやられたという事実に怒りを滾らせ、強い殺意を向けてくるヘルハウンドではあるが、零が攻め、サイズが守り、アルムが癒す、万全の体勢とも言える布陣を崩すことは難しいだろう。
「妖精に手を出したこと、あの世で後悔するんだな!」
「アルム、俺たちも仕掛けるぞ!」
「分かったよ!」
 仲間意識が強いサイズは同族に襲い掛かったヘルハウンドに対して一切の容赦をするつもりがない。自分に引き付けていることをいいことに、向かってくる者から順に漆黒の顎の餌食としていくと、そんな前のめりな姿勢のサイズにつられて零とアルムも攻撃を重ねる。
 刹那の間に連打される零の炎拳は空中に残像を残し、まるで阿修羅の如く。そしてアルムの指先から放たれた魔力の輝きは、一点に収束された光条となって貫く。
 自慢の牙と炎で応戦するヘルハウンドたちだが、やがて抵抗も虚しく地へ伏していくのだった。
「これで村を襲ってきたのは全部だな?」
「そうだと思うよ。一応確認してみたけど、近くにそれらしい気配はなかったから」
「なら、遺跡の方に急ごう。多分大丈夫だとは思うけど、万が一もあるかもしれないし」
 三体のヘルハウンドは全て倒した。しかし、遺跡が封印されるまでは予断は許されない。
 安全のため、もう少しの間だけ樹上で待っていて欲しいと妖精たちに言うと、三人は遺跡があるという方向へと駆けだすのだった。


 零、サイズ、アルムに妖精の村を任せたネイクリアスたちは、妖精に案内をして貰って件の遺跡へと来ていた。
「じゃあ、中は僕たちで調べるからキミは安全なところで隠れていてね?」
「はい……。よろしくお願いします」
 案内をしてくれた妖精が近くの樹の上に隠れた事を確認すると、五人は慎重に遺跡の中へ足を踏み入れていく。
 地面は石畳、壁や天井も切り出された石材を積み上げているようで、何者かが建てたと思われるこの遺跡は、一定間隔で壁の中に埋められている照明によって内部が照らされており、明かりが無くてもよく見通すことが出来る。
 入り口から一本道の通路を暫く進んでいくと広い空間に出たが、その中ではイレギュラーズの接近に気付いたらしい何かが蠢く気配がしていた。
「ここは先手必勝やね」
「そうだな、一気に仕留めよう」
 通路から大部屋の中へと飛び込んだ彩陽が、宵闇が形を成したかのような魔弓を引き絞ると、流星の如く輝く矢が無数に放たれる。
 矢は弧を描きながら双頭の魔獣――オルトロスが率いる群れの頭上から雨ように降り注ぎ、死霊たちから借り受けた力によって魔物たちを凍てつかせると同時に稲妻を走らせた。
 そして彩陽が仕掛けたのとほぼ時を同じくして葵も動いていた。
 深い集中によって自らの感覚を研ぎ澄ませると、軽く放った灰色のサッカーボールを渾身の力で蹴り抜いたのだ。
 強烈な回転によって疾風を纏ったそのサッカーボールは、大砲の砲弾もかくやという威力をもって突き進みヘルハウンドの一体へと激突すると、その威力が衰えることなく反射を繰り返してまるで生きているかのように次々と別のヘルハウンドにぶつかっていき、最後には葵の足元へと戻ってくると更にもう一蹴り。
 重厚な砲撃がヘルハウンドの胴に突き刺さる。
「先制攻撃は成功のようだね」
 彩陽と葵の同時攻撃によって、魔物の動きが封じられたところへヨゾラがダメ押しの一手を加える。
 地面に手をつくと、背中から伸びる翼の刻印が淡く輝く。背中から肩を通って両腕に。そしてその先にある手の甲へ。光が翼の先端へと届くと、注がれた魔力が変質し魔物の群れの中心に現れた。
 石畳の隙間から溢れるように現れた星々の輝きを宿す泥濘は、魔物の足元に絡みつき命を蝕むと共に悪しき運命の呪いを与えたのだ。
「ぽぽ魅さんはいつものように障壁を全力で展開しててくださいな」
 オルトロスの咆哮によってなんとか立て直したヘルハウンドたちだったが、明らかにふらついており本調子ではない。速く攻撃に移れとでも言われたのか、口の中に溜めた炎を吐き出そうとするが、どうにもうまくいかないようで黒煙を吐いているだけの者もいる。
 しかし、中にはしっかりと炎を吐けた者もおり、炎の渦に飲み込まれそうになったのは仁郎。しかし、焦りはない。
 ぽぽ魅にそう声を掛けると、頷いたぽぽ魅が前に出て不可思議な力で鉄壁の守りを固めて炎を防ぎ切った。
「ん~、もうすこし時間が掛かりそうだねぇ」
 死霊を束ねた矢を放ちつつ様子を見ているネイクリアス。
 彩陽、葵、ヨゾラの三人で仕掛けた先制攻撃によって魔物たちは様々な異常をきたしているようだが、まだまだ体力には余裕があるらしい。
「なら、もう一押しいっとこかな」
 大部屋の中に散開すると再び彩陽が仕掛けた。
 彩陽の放った矢は敵陣中央へと突き刺さると不気味な光を放ち、それに飲み込まれたヘルハウンドたちがびくりと体を震わせる。
 だが、そう一方的にやられているばかりでもいないようだ。群れのボスらしきオルトロスが先陣を切って突っ込むと、動ける個体がその後に続いて彩陽へと迫る。
「させねぇっスよ!」
 鋭い牙を剥き出しにして彩陽に飛び掛かるオルトロスが横に吹っ飛んだ。
 見れば右半身に葵の蹴り飛ばした氷の杭が突き刺さり、体表が分厚い氷に覆われている。直ぐに炎を吐いてその熱で氷を融かそうとするオルトロスだが、回復までには時間が掛かるだろう。
「悪いけど…妖精さん達を襲う以上、倒させてもらうよ!」
 ヨゾラの腕に刻まれた翼の紋様が先ほど以上の強い輝きを発すると、その光が握り拳へと収束していく。
 流星が散る間際にほんの一瞬強く輝くかのように、その光が強まった瞬間に拳を振り抜けば、凝縮された星の魔力による一撃がヘルハウンドの肉体を容赦なく粉砕する。
「皆さん優秀ですから、こちらも負担が少なくていいですね」
「そうだねぇ。お陰で僕たちも攻撃に参加できるよ」
「ですね。さぁ、あともう一押し頑張りましょう!」
 彩陽が起点となって魔物の動きを封じ、葵とヨゾラがそれに続いて激しく攻めることでイレギュラーズ側は終始優位に立っており、後方から支援を行う仁郎やネイクリアスにも余裕が生まれていた。
 死者たちの霊魂を集めて矢へと変え、狙い澄ました一射を行いつつネイクリアスが答えると、仁郎もそれに同意して声を上げる。
 その言葉には言霊でも宿っているのか不思議と活力が漲り、それを契機にイレギュラーズは決着をつけるために一気呵成に攻め立てまずはヘルハウンドを倒しきる。
 残りは群れのボスであるオルトロスのみ。しかし、向こうも大人しくやられるつもりは無いようだ。二つの首がそれぞれ炎と冷気を口の中へと蓄えているのが見える。
「なんかすごそうなのをしてきそうな予感……! えいっえいっ!」
 ネイクリアスが森の中で拾っていた木の枝を投げつけるが、ぺちりと可愛らしい音を立てるだけでなんら痛痒も与えられない。
 しかし、鬱陶しいとでも思われたのか二つの首がネイクリアスの方を向いたのは、ある意味では狙い通りだったのかもしれない。
 同時に放たれた灼熱の炎と極寒の冷気が襲い掛かる。
「後はよろしく……」
「ネイクリアスさん!?」
 炎と冷気に飲まれたのはネイクリアスだけではなく近くにいた仁郎もだったが、ぽぽ魅に守られた仁郎と違い直撃を受けたネイクリアスは倒れてしまう。
 驚いた仁郎が即座に治療を開始したことで命の危険はないようだが、暫くは戦うことは出来ないだろう。
「よくも支部長はんを!」
「許さないっスよ!」
 ネイクリアスが倒れたことで火がついたようだ。
 彩陽が弓を引き絞ると、オルトロスの周囲の空間が歪み内側へと圧縮されていき、動けなくなったところに流星の如く煌めく矢が放たれ、葵の渾身の蹴りによって打ち出された砲撃のような一撃と、ヨゾラの膨大な魔力を注ぎ込んだ無限の輝きが同時に炸裂し、これがとどめとなってオルトロスは跡形もなく消し飛んだ。
 念のため周囲を探るも他に魔物の気配もなく、イレギュラーズは勝利を収めたと確信したのだった。


 遺跡での戦いが終わってすぐ、村を襲っていたヘルハウンドを倒した零たちが合流した。
「魔物は!?」
「もう全部倒したから大丈夫やで」
「……そうか」
 同族が襲われたことで敵意を剥き出しにしていたサイズに彩陽が答えた通り、既に倒すべき魔物は倒し終えており、それを聞いてふぅと息を吐くと殺気が霧散していく。
「遺跡を封印するんで、せっかくなら力を貸して貰えるっスか?」
「よーし、最後までしっかりとやろうね」
 葵の言葉にヨゾラを始めとして皆が応え、遺跡の入り口に攻撃を集中させて崩し、瓦礫の山で完全に塞いでしまう。
 もうこれでこの遺跡が魔物の巣にされてしまうことは無いだろう。
 他の入り口が残ってないか、入念に調べるとイレギュラーズは妖精の村へと戻り依頼の完了を伝えるのだった。
「パンとスープは人数分あるから、慌てなくていいぞー!」
「家の修理は任せろ!」
 魔物を倒せば依頼は完了なのだが、イレギュラーズは襲われた妖精たちへのアフターケアをするべく、自主的に村に残る者がいた。
 己のギフトで生み出したパンと共に、妖精たちから貰った食材を使って暖かなスープを作って振る舞う零は、安堵して涙する妖精たちを見て微笑んでいる。
 一方で仲間のためにと燃える職人魂のままに、サイズは自慢の道具を振るい妖精たちの家の補修を行っていく。その仕上がりは完璧以上であり、妖精たちからの感謝は尽きることが無い。
 ヨゾラや彩陽も瓦礫の撤去など、非力な妖精たちでは大変な力仕事を率先して手伝い、村の復興はどんどんと進んでいく。
「ネイ店長、お疲れ様ぁ!」
「アルム君抱っこしてぇ」
「……えぇ、だっこ? しょうがないなあ」
 妖精たちの傷の手当てをし終えたアルムが元気よく声を掛けると、随分と働いて疲れたらしいネイクリアスがころりと地面に転がって応える。
 困った店長だ。と口では言いつつも抱っこに乗じてネイクリアスの柔らかな毛並みを堪能できるので、アルムもまんざらではないようだ。
「みんな無事で良かったねぇ」
「うん。それに、今回の事が評判になってお客さんも増えるかもしれないよ」
「そうなるとお店ももっと大きく出来るようになるかもね」
 開店したばかりでまだまだ小さいサヨナキドリ妖精郷支部だが、こうして妖精たちと触れ合いながら困りごとを解決していけば、きっと他の支部にも負けないくらいに発展できるはず。
 イレギュラーズと笑い合う妖精たちを見てネイクリアスのやる気も高まっていく。
「ほかになにか必要な者があったらサヨナキドリで用意するから、いつでもお店に来てね」
「はい! なにからなにまで、ありがとうございました!!」
 妖精の村の復興が終わると、アルムに抱っこされながらネイクリアスが妖精たちに支援を約束し、その言葉に妖精たちは深々と頭を下げる。
「え、デート? これからですか? 疲れたので少し休みたいなーなんて……アーッ!」
 妖精たちに別れを告げイレギュラーズが帰路につこうとしたとき、仁郎がぽぽ魅にどこかへと連れ去れてしまった。
 あれは放っておいて大丈夫なのか? という視線を向ける零に、他のイレギュラーズもたぶん大丈夫だろうと苦笑するしかない。
 などという一幕がありつつも、こうして妖精の村には平和が訪れ、イレギュラーズも全員無事に(?)ローレットへと戻り依頼を完了させた。
 サヨナキドリ妖精郷支部はまだ始まったばかりだが、いつかきっと客の妖精たちで賑わう妖精郷になくてはならない存在となることだろう。

成否

成功

MVP

火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

状態異常

なし

あとがき

妖精からの依頼、お疲れさまでした。
妖精の村はほとんど被害もなく、遺跡をねぐらにしていた魔物も全て倒しきり、更には傷付いた妖精たちのアフターケアまで行ったのは流石です。
サヨナキドリ妖精郷支部の今後益々のご発展をお祈り申し上げます。

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