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シナリオ詳細

銀月九十九の怨霊剣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●銀月九十九
 場所は豊穣、雲流邸。使用人に案内され執務室の扉を開くと、彼はうっすらと笑みを浮かべた。
「来て下さると、思っていましたよ」
 彼の名は雲流。銀月の塔を監視する任を国より任された男である。
 執務室へ通されたのは柊木 涼花(p3p010038)と冬越 弾正(p3p007105)。そしてその仲間たちである。
 要件は、ただ一つ。
「塔の怨霊を退治しに参りました」

 では、背景を語ることにしよう。
 豊穣に住まう者にとってはある程度有名なものとして『銀月の塔』がある。
 これは遥か古代の強力な怨霊を封じ込めたものであるらしく、それを代々管理するのが雲流という男の役割であった。
 だが昨今封印の力は弱まり初め、周辺には邪悪な霊の姿をとった魔物たちが集まるようになってきてしまったという。
 それまで魔物を退治してきた雲流もまた深い負傷を受け、そこで白羽の矢が立ったのがローレットというわけだ。
 涼花や弾正たちローレット・イレギュラーズは見事に集まった怨霊たちを退け、塔の安全と封印を守ったのであった。
 そして今……塔そのものへと挑むべく、雲流へと接触を図っているのである。
「前回も言いましたが、封印されている怨霊は強力なもの。塔内部にもその力を受けて怨霊化した魔物たちが溢れています。とても危険な仕事になるでしょう。それでも……?」
「はい。不意に封印が破られるより、いっそ討伐してしまった方が……」
「だな。確かに強力かもしれないが、今の俺たちなら退治できる。そうだろう?」
 弾正たちの力強い言葉に、雲流は頼もしそうに頷いた。
「確かに、その通りですね。今や世界の滅びと戦おうという皆様であれば、あの怨霊――『銀月九十九』を倒せるかもしれない」

 ――銀月九十九。
 それは遙か昔に存在した武将の名であり、現在は強力な呪いをもつ怨霊の名である。
 その力があまりにも強力すぎるため祠を通り越して塔が建てられ、その最上階に封印されている。
「塔の封印を一次的に解除し、皆さんを塔内へと入れますが……塔の低層階も今や『星霊武者』で溢れていると思ってください。高い戦闘技術を持った怨霊が大量に待ち構える中を強行突破しなければならない……正直、それだけでも厳しい戦いになるでしょう」
「星霊武者というのは、星の呪文と高い戦闘技術をもった怨霊系の魔物だったな。依然戦ったが、確かに面倒な相手だった。それが大量にとなると……」
 苦い顔をする弾正に、しかし涼花は力強く頷いてみせる。
「力を合わせて進めば、きっと大丈夫です。それに、星霊武者だけが相手ならシンプルで戦いやすいくらいですよ」
「ああ……前回は姿を消す面倒な蛇を使役していたんだったな。それはいないのか?」
「はい。おそらく星霊武者だけでしょう。ですが問題は最上階に封じられている銀月九十九です」
 銀月九十九。古代の武将でありその戦闘能力もまた強大。
 巧みな剣術を使うほか、呪力を用いた技も行使してくるだろう。
 かなりの強敵とみて間違い無い。力を合わせなくては、それこそ退治することはできないだろう。
 だが退治することができれば、近隣への不安は解消される。もしこの銀月九十九が解き放たれれば近隣住民に大きな被害が及ぶのは間違い無いからだ。
「勿論、依頼料は支払わせていただきます。ですのでどうか……ご無事で」
 雲流は使用人に貨幣の入った袋を用意させると、立ち上がり深く頭を下げるのだった。

GMコメント

●シチュエーション
 怨霊の封じ込められた塔へと入り込み、古代の怨霊銀月九十九を退治しよう!

●シナリオ前半(低階層)
・星霊武者×多数
 鎧に星座が浮かんだ武者の霊たち。古代の武者の霊であるとも言われる。
 星の呪文と高い戦闘技術を有しており、それなりには強敵となる。
 これらを倒しながら強行突破を図り、最上階へと突き進む必要がある。

●シナリオ後半(最上階)
・銀月九十九
 遙か昔に存在した武将の怨霊。激しい憎しみに囚われており、その呪力は凄まじい。
 高い戦闘技能に加え呪力を用いた様々なBSや追加効果を持っている。

●フィールド
 銀月の塔内。
 室内戦闘になるが、充分な戦闘距離がとれるものとする。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 銀月九十九の怨霊剣完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2024年01月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
シラス(p3p004421)
超える者
冬越 弾正(p3p007105)
終音
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
八重 慧(p3p008813)
歪角ノ夜叉
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん

リプレイ


 豊穣国、銀月の塔。豊穣に暮らす者にとってはそこそこに有名なスポットではあるが、この塔の門が開かれることはなかった。
 それが今、管理者雲流によって開かれようとしている。
「しつこいようですが、中は本当に危険です。皆様、どうかご注意を」
「心配するなって。ピンピンした状態で帰ってきてやる」
 『竜剣』シラス(p3p004421)が不敵に笑ってそう言うと、門の前に立った。
 同じく門の前に立つ『灯したい、火を』柊木 涼花(p3p010038)。
「さて、名乗り出た以上はしっかりと貢献しないとですね」
 背負っていたケースからギターを取り出すと、いつでも演奏を始められるように構える。
(本人(?)の意志や意図は、それが残っているのかすらわかりかねますけれど
 わたしたちのやることは変わらない。
 だって。
 自分の意志で引き起こしたのなら倒すべき敵で。
 そうでないなら、ここで終わらせる方が、きっと)
 目を閉じ……そして、開く。
 覚悟の決まった涼花の隣に『新たな一歩』隠岐奈 朝顔(p3p008750)が並んだ。
「豊穣の者として銀月の塔の事は知っていましたが、今こんな状態になっていたなんて……」
 腰に下げた刀を抜き、握りしめる。
「豊穣人としては封印よりは討伐を選びたいです。きっと其れは銀月九十九の為にもなるだろうから」
 そして、涼花と顔を見合わせ頷き合った。
 ゆっくりと歩み出る『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)。
「このような塔があるのも初耳だったが、今も怨霊が渦巻くと聞けば尚の事放置は出来ん。
 今の豊穣を脅かすその怨嗟……祓い濯ぐべくいざ参ろう」
 手にするは-SIN-『火斬熔剣』。燃え上がる炎の如く立つと、ウォリアはその鎧の奥で力の炎を揺らめかせた。
 『未来を託す』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)がその横に並び、懐から應龍扇と蚩尤扇という二つの扇を取り出す。
「私のルーツと思われる「閻」という家系は、死者の魂を舞で黄泉に送ると聞きました。
 私の舞にもその力があるでしょうか? あってもらわねば今回の依頼は困りますねぇ〜?」
 見事銀月九十九を倒し、黄泉へ送ることができるだろうか。
 いずれにせよ、この世界に妄執や怨念として染みつき続けることなど、悲しいことだろうから。
 『終音』冬越 弾正(p3p007105)が哭響悪鬼『古天明平蜘蛛』参式を装着する。
「立ち止まる訳にはいかない。俺のゆく道は、もう俺ひとりの物ではないのだから。
 乗り越えた屍、背負った想い。全てに報いる為、強敵さえも乗り越えてみせる!!」
 ゆっくりと前に出る『歪角ノ夜叉』八重 慧(p3p008813)。
 呪われた角と呪われた血。その二つが力となる。血符を懐からスッと抜くと、いつでも放てるように構えた。
「こんなんいたら、周辺の方々はそりゃ不安でしょうね。
 それに、こういう怨念ってのは本人にとっても周りにとってもロクなもんじゃねえでしょ」
 呪となる程の激情など、豊穣の平穏の為にも、解放してやる方が良いだろう……と。
 こくり、と頷き『豊穣の守り人』鹿ノ子(p3p007279)が前に出た。
(古代の武者、ですか。
 世が世なら英雄だったのでしょうか。
 なにゆえに怨霊と化してしまったのでしょう。
 退治するだけなら造作もありませんが、その武者のひととなりは気になりますね)
 うちに込めた想いを胸に。白妙刀『忍冬』に手をかける。
「豊穣に乱あるを許さず――鹿ノ子、抜刀!」
 そして、扉が開かれる。
 激戦の幕開けと共に。


 突入と同時に扉は背後で閉じられた。当然だ。星霊武者たちを解き放つわけには行かないのだから。
 無論それは望むところだ。退くつもりなどさらさらない。
「征くぞ」
 第一階層からして星霊武者だらけだ。すべての星霊武者は彷徨い歩くのをやめ、こちらに向けて刀を抜いて襲いかかってくる。
 ウォリアはそれを真っ向から迎え撃つと、手にした剣に炎を纏わせ一閃。
 飛んで行った炎は爆発を起こし星霊武者たちを焼き焦がした。
「作戦通りに」
「承知した」
 朝顔と頷き合うウォリア。
 彼女ら二人は先駆けとして突入し、アッパーユアハートを左右にわけて放ち注意を集めるという作戦を立てていた。
 その後ろに続くのが鹿ノ子とシラス、中衛部隊を挟んで最後尾に慧という陣形だ。
 ウォリアが右方向の敵を引きつけ始めたのを確認すると、朝顔は左方向の敵へと突進。『アッパーユアハート』を発動させて星霊武者たちの注意を引きつけた。
「貴方達に構ってる暇なんてないので、強引でも押し通させて頂きます!」
 次々に飛びかかってくる星霊武者を刀でいなすと、豪快な回転斬りによって星霊武者たちを切り払う。
 そんな朝顔の作戦から逃れるべく距離をとり、星霊武者が星の呪術を発動させる。
 鎧に刻まれた星座のような模様が輝き始め、ホーミングする流星のような砲撃が朝顔を襲った。
 が、それを朝顔は剣で払って防御。水色の両目をかっと見開き星霊武者をにらみ付ける。
「任せろよ、宿屋から出た後みたいなピカピカの全快で上まで届けてやるぜ」
 その後ろに続いたシラスの役割は入念な回復であった。
 『マナ・スプリント』の付与を斬らさずに常時維持しつつ、『練気展開』による治癒を味方に与える。
 朝顔たちが呪術によって何らかのBSにかけられたときは『クェーサーアナライズ』の出番だ。
「できるだけ戦闘は避けたいんだよなあ。ドリームシアターでデコイを作れないか?」
「既に補足されてますからね、難しいんじゃないでしょうか」
 そう言いながら鹿ノ子は刀に力を込める。
 放つは花の型・改『桜花散撃』。
 強烈な踏み込みと共に放たれた刀は桜の花弁めいた幻影を散らし、星霊武者たちを切り裂いて行く。
 うちの一体が鹿ノ子の剣を受けようと刀を翳したが、それを先読みしたかの如くするりと舞って星霊武者の鎧もろともを切断していく。
「そろそろ上へ参りましょう、皆さん!」
 そう言いながら再びの『桜花散撃』。階段前を塞いでいた敵を切り裂いて道を開くと、仲間たちと共に一斉に上階へと駆け上がっていった。
 上階に到達したその瞬間。待っていたのは整列した星霊武者たち。彼らは祈りの姿勢を取ると、星の呪術を一斉砲撃してきた。
「回復を――」
「任せてください!」
 迎撃のために平蜘蛛から音楽を鳴らす弾正と、ギターをかき鳴らしメロディを作り出した涼花。二人の演奏が重なり響き合う。
 前へ進むための勇気を、明日へ進むための勇気を、振り返らない決断をさせるようなそんな音楽は星霊武者たちの一斉砲撃に対するカウンターヒールとして機能した。
 涼花は演奏に自らの歌を重ねることで更なる治癒を行使。そのメロディに応える形で演奏された弾正の平蜘蛛は連続爆破によって無数の呪術弾を迎撃していた。
 そして『剱神残夢』を再付与。整列した星霊武者たちめがけて平蜘蛛を構える。
「そこに並んでると、邪魔なんだよ!」
 爆音と共に放たれた力の塊が星霊武者の一人へと着弾。と同時に衝撃となって爆発する。
 爆発によって吹き飛ばされた星霊武者たち。一人だけ爆発を凌いで突撃を仕掛けてくるが、弾正は平蜘蛛に接続したシールド発生器を起動させて半球形のシールドを展開。星霊武者の大上段からの刀の一撃を見事に払う。
 相手の体勢が崩れた所に再びの爆音をぶつけ、今度こそ吹き飛ばした。
「今だ! 上へ急げ!」
 星霊武者が体勢を立て直さないうちに仲間たちは急いで上階へとダッシュ。
「そろそろ私の出番ですねぇ」
 上階で待ち構えていた星霊武者の集団めがけ、ヴィルメイズは『崔府君舞』の舞いを披露した。
 力有る舞いが星霊武者たちの足元に特殊な舞台を作り上げ、攻撃を仕掛けようとしていた星霊武者たちはそれぞれが派手に転倒し続けた。
 重ねて、『無常勾魂舞』の舞いを披露するヴィルメイズ。
 元は悪霊を鎮め地獄の審判にかけるための儀礼舞踊だというこの舞いによって、星霊武者たちの特殊な舞台が固定される。
 停滞しきった彼らの動きは先陣を切るウォリアたちを押しとどめられない。
 なんとかヴィルメイズの舞いの力を抜け出した星霊武者が星の呪術による砲撃を放ってくるが、ヴィルメイズはその攻撃に構うことなく『地府十王舞』を洗濯した。
 本来はこの世に蔓延る悪霊を捕え鎮めるための舞。それをヴィルメイズが舞うことにより生者も魂を抜かれるような耐え難い苦しみを受けることになる。無論、邪霊たちとて例外ではない。
 激しい重圧を受け動けなくなった星霊武者が破裂したように消えていく。
「見えました、最上階への扉!」
 階段とその先にある扉を見つけた慧は『苦反しの血棘』を自らに付与するとあえて敵集団へと突進した。そして『マリシャスユアハート』を発動。
 周囲の星霊武者が目の色を変えて刀で攻撃してくるが、その攻撃は呪われた血の力によってすべて反撃という形をとって放たれる。
 更に扉の前に陣取って邪魔しようとする星霊武者めがけ、『厄招きの血符』を放った。
 厄を、敵意を、殺意を呼び寄せる呪い。それが爆発したかのように星霊武者を襲い、思わす星霊武者は駆け出し慧へと斬りかかってしまう。
 攻撃を受けた慧から血色の棘が飛び出し、星霊武者へと突き刺さった。
 先頭の朝顔が扉を開き全員が駆け込んだことを確認したところで扉を閉じる。
 星霊武者たちは扉を開くことが出来ないようで、ドンドンと叩く音だけが響いていた。
「なんとか、ここまで到達できましたね……」
 呟く涼花が振り返る。
 すると、部屋の中央に一本の剣が刺さっているのが見えた。
 いや、ただの剣ではない。それは――。


 それは激しい怨念に満ちた剣であった。
 ずるりと這い出るように形を取る霊体。それが剣の柄を握ると、こちらに強烈な殺気を浴びせかけてくる。
「うお……!?」
 圧力すら感じる殺気。実際に足の動きが重く感じる。弾正は涼花にアイコンタクトを送り、涼花は頷いて演奏を開始した。
 どこか和風の、戦いを 過激にするようなそんな音楽が殺気の力を緩和していく。
「あれが――銀月九十九! 回復は任せてください! 皆さん、攻撃を!」
 こうなれば隊列も何もない。
 取り囲んで攻撃するのみだ。
 ヴィルメイズは『地府十王舞』を連続させ停滞の付与を試みる。
「怨霊になるほどの憎しみ……その理由を知らぬまま斃すというのは少し違うような気もします。
 この美しい私に思いの丈をを打ち明けてみては?
 ですがどんな過去があろうとも、生者を傷つけて良い理由にはなりませんがね」
 停滞させているにもかかわらず凄まじい速度で移動した銀月九十九はその刀でもってヴィルメイズを斬り付ける。
 派手に上がる血しぶきに対して涼花が治癒の音楽を流し込み、ヴィルメイズは大きく飛び退き反撃の舞いを繰り出した。
「俺、恨み辛みはともかく、呪いってのとは生まれた時から付き合いありますがね」
 慧が『マリシャスユアハート』を発動――し、その手応えに顔をしかめる。無駄打ちを連発しかねないと察した慧は『災拒みの血刀』にシフトさせた。
 呪われた血が刀の形をとったかと思うと、銀月九十九へと斬りかかる。
 刀と刀がぶつかりあい、幾度もその剣戟がくり返される。途端、銀月九十九の刀身に強い呪力が纏わり付いたのを見た。燃え上がる炎のような呪力だ。
 が、慧にそれは通じない。相手の横をすり抜けるような速度で走ると、銀月九十九を斬り付けた。
「もう無関係な方まで巻き込むもんじゃあねえっすよ」
「初めまして、銀月九十九。今を生きる豊穣の者として貴方の憎しみも全て受け止めましょう!」
 すかさず朝顔が飛びかかり、銀月九十九に斬りかかった。
 無効化しているのかなんなのか、怒りの付与がうまくいかない。そしてこれに拘っていたら負けると思えるほど、銀月九十九の一撃は重いのだ。
 ならばと朝顔は刀に全力を込めて斬り付け、相手の防御を貫くように剣を振る。
 朝顔の肩口から血しぶきが上がると同時に、銀月九十九の脇腹からもまたしぶきがあがる。血ではなく、霊力の流出のようだ。
 ここは、畳みかけるべきだろう。
「怨霊剣……いざ尋常に勝負と参ろう!」
 ウォリアは『朧月』の型をとり、豪快な大剣による一文字斬りを繰り出した。
 それを刀で受ける銀月九十九。防御を無理矢理突破して打ち込まれた衝撃に、銀月九十九はその鎧兜の下で顔をしかめる動きをした。
 ダメージは着実に入っている。と同時に、銀月九十九の反撃もまた来るのだ。
 ウォリアの鎧を貫くかのごとく怨念の力が撃ち込まれ、ウォリアは思わずその場にがくりと膝をつく。が、そこはウォリアである。手にした剣をもう一度振り込み、銀月九十九を吹き飛ばした。
 身体に魔力を纏わせたシラスが突進。豪快な跳び蹴りで銀月九十九の兜を割る。
「テメーの時代はとっくに終わってんだよ、潔く退場しな」
 歯を食いしばりその衝撃に耐える銀月九十九。刀による反撃が来るが、シラスはそれをぱしんと手のひらで挟むように受け止めた。
 ――直後、銀月九十九の蹴りがシラスの腹に入って突き飛ばされる。
「ったく、下手な魔種よりプレッシャーがきついぜ」
 実際、今のシラスは下手な魔種を食えるほどに強さを磨いてきた。そのシラスが一方的になれないほど、銀月九十九という怨霊は強いのだ。
 弾正はそこに追撃を計るべく平蜘蛛に柄だけの剣を接続。音楽と共に展開した光の刀身で斬りかかる。
 またも刀身同士がぶつかり合い、激しい火花を散らした。
 そんな至近距離で、格上殺しこと『至極劔・王威』を発動。大爆発がおこり、銀月九十九は吹き飛ばされた。
(これ程の呪力、名のある武士だったのだろう。それが何故こんなにも悲しい姿となってしまったか……)
 追撃。平蜘蛛を突き出し流れる音楽の力をぶつけ連続爆発を引き起こす。その中へ更に突入したのが鹿ノ子であった。
 鹿ノ子はひらりと銀月九十九の背後へ回り込むと、空の型「万里一空」を繰り出した。
 斬撃――連撃、止まらぬ連撃。
 銀月九十九は素早く反転し鹿ノ子へ連撃を繰り出し始める。
 二人は互いに血を流し合い、傷つけあい、そして――。
 先に倒れたのは、銀月九十九の方であった。


 刀を地面に突き立て、がくりと膝をつく銀月九十九。
 そこにもう怨念や呪力は感じない。
「あなたが何者であったのか、教えてもらえませんか」
 鹿ノ子の問いかけに、銀月九十九は顔をあげる。
「永い時間、憎しみ続けるのも。
 ずっと怨霊のまま居続けるのも疲れるでしょう。
 もう、終わりにしましょう。
 誰でもない、貴方の為に」
 朝顔の言葉に、振り返る。
 そして、銀月九十九は目を閉じた。

 遙か昔、ある武将がいた。
 武に優れ、瞬く間に出世した彼はあるとき褒美を問われた。
 ならばと彼が選んだのは、その土地の姫であった。
 彼らは密かに、恋仲となっていたのである。
 だがそれは許されぬことであった。
 怒りを買った銀月九十九は処刑され、その怨念はいつまでも残り続け、その土地の一族を苦しめ続け――そして今にまで至ったという。
「だがそれも、終わりだ。その一族はもうない」
「恨む必要も、もうないのですよ」
 ウォリアとヴィルメイズの語りかけに、銀月九十九は目を閉じたまま頷いた。
 消えていく。
 銀月九十九も、星霊武者たちも。
 涼花や慧たちは登っていく星のような煌めきを見上げていた。
「さあ、帰ろうぜ……」
 シラスがきびすを返せば、弾正たちも後に続く。
「その無念、晴らせてよかったな。俺は秋永一族の頭首。この豊穣の地で生きる仲間として……お前を見送ろう」
 ――かくして、銀月九十九の物語は、幕を閉じたのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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