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シナリオ詳細

再現性東京202X:因習村祠破壊チャレンジ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「たたりじゃ! じゃがら様の祟りじゃ!」
 腰を曲げた老婆が叫び、祭事に用いる木の棒を振り回す。
 それは、明らかに異様な光景であった。
 人間が木から逆さに吊され、全身は酷く切り裂かれている。流れ落ちた血は地面を濡らし、草花はじっとりと赤く染まっていた。
 吊されている女は古道といい、村の風景を撮影しにきた観光客だと名乗っていた。
 だが後に調べてみれば、この村に古くから崇拝されている『じゃがら様』の祀られている祠を調べ、場合によってはその一部を持ち帰り好事家に売りつけようと企む人間であったという。
 ならば祟りにあうのは当然のこと。
 ……で、終わればよかったのだが。
「今すぐ生贄を準備するのじゃ! 村の若い娘を生贄にするのじゃ! 藁焼きの儀を執り行うのじゃ!」
 祭事、つまりは生贄の儀式に用いる木の棒を振り回し、老婆はヒステリックに叫び出す。
「そうだ、儀式だ」
「儀式をしなければ」
「若い女は」
「ああ、確か丁度良い時に」
「あの女か」
「あの女だ」
「そうだ、そうだ……」
 集まる村人たちはこくこくと頷き、そして手に手に農具を持って動き出すのだった。


「――ということで、このままではうちの娘が生贄にされてしまうのです」
 二人の男女。そして年若い娘。という三人の組み合わせが希望ヶ浜学園校長室内にて揃って頭をさげていた。
 校長もとい黄泉崎ミコトはムウとうなり、そして棚から資料を取り出して広げてみる。
「その『じゃがら様』というのは夜妖の一種で間違いなさそうだ。村の信仰を集めることで力を維持し、外敵となる存在から村を守っていた……いたが、その存在に依存しすぎた結果村は狂気に侵され、夜妖に生贄を捧げるまでに至った……と」
「その通りでございます」
 男が顔をあげる。どうやら娘の父親であるらしく、隣の女性は母親だ。
「我々の村は古くからあるのですが、そうした因習が深く染みついておりまして、村の外から来た人間にはとにかく冷たくあたるところがございます。中でも、祠に触れたり傷つけた者には」
「祟りがある、と」
「はい。そして実際にその祟りは起きている。実在しているのでしょうか、じゃがら様は……」
「してはいる」
 と言ってから、校長は煙草を取り出し口にくわえた。
 ジッポライターで火を付け、すとんとソファーに腰を下ろす。
 暫し紫煙をくゆらせる静かな時間が過ぎた後、校長は男たちの顔を見た。
「だが、お前たちの思うような神や、まして村を都合良く守るだけの存在ではない。ただの怪物だ。怪物を檻に入れて、都合良く木の棒を振り回して崇めたつもりになっているにすぎん」
「なら……!」
「ああ、そろそろ、目を覚まさせる時期かもしれんな」

 かくして呼び出されたのは希望ヶ浜に立ち寄っていたイレギュラーズたち。
 彼らを前に、校長は資料をテーブルへと広げて見せた。
「炎煌村という地区がある。ここは閉鎖的な村で、これまで『じゃがら様』なる存在を崇拝することで村のメンタルを保ってきた。
 だがそれがエスカレートし、村人を生贄に捧げるまでに至ってしまった。
 話をしてどうにかなる問題じゃあない。特別な対処が必要だ」
 特別な対処?
 そう首をかしげる誰かに、校長は指を三つ立てた。
「『行って』『壊して』『倒せ』」
 かみ砕くとこうだ。
 自動車を用いて村へと強行突入をしかけ、問答無用で祠へ直行する。
 そして祠をありったけのパワーでぶち壊す。それも徹底的に叩き壊す。
 するとじゃがら様なる夜妖が現れるので、これを力を合わせて撃退する。
 この夜妖の力に縋っていた分、倒されるという事実は強烈なインパクトを村へ齎すはずである。
「そこから先の政治的な転がし方は任せておけ。うまく誘導しておいてやる。村人の追求も面倒だろうから……コトが済んだら車でさっさと逃げておけ」
 最後に依頼料となるコインの入ったケースをテーブルに置くと、校長は煙草を再びふかし始めた。
「因習に染まった村人に、現実を見せてやれ」

GMコメント

 因習村に飛び込んで祠をぶっ壊そう!(祟りもあるよ!)

●エネミーデータ
・じゃがら様
 この村で崇拝されてきた夜妖。崇拝されて歴史が浅いせいか神性こそ帯びていないが、力はかなりのもの。
 油断せぬよう!

・邪霊×多数
 じゃがら様に捧げられた生贄やじゃがら様に祟られた者たちの霊魂が囚われしもべとなったもの。
 結構な数がやられているらしく数もそれなり。放っておくとまとわりつかれて戦闘がかなり不利になるのでしっかり排除しておこう。

●フィールド
 村!!!!!!!!!!!!!!!!!


----用語説明----

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

  • 再現性東京202X:因習村祠破壊チャレンジ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月22日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

リプレイ

●因習村へ
 山道を二台の車と一台のバイクが走っていく。
 先頭車両を運転しているのは『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)だ。
 ハンドルを握り、どこか遠くを見つめている。
「もとの世界にはない不思議なものから離れるための場所だったはずの再現性東京、希望ヶ浜なのに、自分たちで不思議なものを受け入れちゃうのはなんかやな感じだね。
 昔からある心のよりどころは大事なのかもしれないけどさあ。それに縛られてどんどんエスカレートしていくのはよくないよね」
 助手席に座っていた『おいしいを一緒に』ニル(p3p009185)がこくんと頷く。
「いけにえはよくないです。
 ニルはかなしいのはいやです。
 祠をえいってすれば……これ以上のかなしいこと、防げるのでしょうか?」
「たぶんね。祠をっていうか、じゃがら様をかな。常識って一回壊されるとそのまま流れていくものだから」
 自分達が信仰していたものが八人がかりで倒せるバケモノに過ぎなかったと知れば、因習も止まるだろうという考えだ。実際、アフターフォローも含めれば充分に価値のある『一撃』になることだろう。
 後部座席で足を伸ばしていた『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)がぽすんとヘッドレストに頭を預ける。
「遙か彼方の神話時代ならともかく、再現性東京で神サマなんて、どうしようもない連中ね。「そういうの」から目を背けて引きこもっている癖に。
 そもそも、対価に生贄を要求するような存在、神だとしても三流だわ。そうは思わない、鏡禍?」
 話しをふられて、横に座って居た『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)はちょっとだけ肩をすくめてみせる。
「生贄を求めるのはまぁ、なくはないですしいいんですけど。
 生贄がないと悪さするぞって脅す恐怖政治しかできないのは弱小感ありますよね」
 表面上はこのように穏やかにしている鏡禍だが、ルチアが依頼に加わっていることもあってか内心はやる気に満ちていた。
(ルチアさんを呪ったり生贄に欲してみろ、塵も残らず消し飛ばしてやる)
 と、このように。

 一方で後続車両。『惑わす怪猫』玄野 壱和(p3p010806)がるんるん気分で運転をしていた。
「んー、このいかにも因習溢れるクソッタレの匂イ。元居た世界を思い出すようで吐き気がするゼ!!」
「そんなことわかるの?」
 助手席でペットボトルのお茶を飲んでいた『無尽虎爪』ソア(p3p007025)が、キャップをしゅるしゅると閉じながら問いかける。
「そりゃオレも運営(や)ってたからナ。因習村」
「ええ……」
 じとっとした目をするソアに、壱和がそんな顔で見るなよと手を振って返す。
「炎煌村…何というか、こう…燃やすまでもなくめちゃめちゃ炎上していそうな名前なのだが」
 と一言呟いた後、すぐに話題を変えた。
「そのじゃがべえはどんな存在なんだろうな」
「べえ?」
「そのものの名をあえて外すことで、深すぎる縁をいきなりダイレクトに直結しないという生活の知恵だ。話しを戻すが、名前の響きからでもなにかしら推測はできないか? 蛇の柄……あるいは殻、とかな」
 もしそんなことがあれば往くべき処へ疾く逝かせてやらねばな、とアーマデルは静かに呟くのだった。

 そして残る一台。バイクを運転する『先導者たらん』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)はヘルメットもせずに目を細め、髪をなびかせていた。
「今もなお生贄を捧げ続ける村か……この再現性東京には似合わない、時代遅れな因習だ。だからこそ、この貴族騎士がすべてをぶっ壊そう」
 アクセルを捻り、加速をかける。祠まで、もうすぐだ。

●祠破壊
 村人たちが慌てた様子で外へ出てきている。見慣れぬ車が村に入ってきたのを目撃したためだ。
「なんだありゃあ」
「まさか祠に――」
 と誰かが言いかけたところで、アクセルの運転する車が急速なターンをかけて村人たちの前に止まった。
 バタン、と運転席から姿を見せるアクセル。
 そしておもむろに。
「えい」
 魔法を唱え祠に叩きつけた。
「ああああああああああ!」
「Auster meridiei」
 後部座席から出てきたルチアの容赦の無い熱風が祠へ叩きつけられ、石造りの祠が軽く傾く。
 どうやら保護結界が張られているらしく、壊されているのは祠だけだ。
「な、なにをする! じゃがら様の祟りがあるぞ!」
「だから?」
 修道服を纏ったルチアが振り返る。修道服=宗教関係者というわけではないんだろうが、村人は何事かマズイ事態がおきていることだけはハッキリ理解できたらしい。
 あわをくってとめにかかろうと叫ぶ。
「今すぐやめるんじゃ! 祟りがあるぞ!」
「知った事じゃありません!」
 同じ車両から飛び出してきたのは鏡禍だった。彼は鏡のような妖力結界を長い太刀のような形状に変化させるとそれを両手でしっかりと握り込んだ。
 そして、祠めがけておもむろに叩きつける。
 ボゴッと音を立てて祠の屋根が粉砕され、中身となっているご神体が露わとなる。
 いくらなんでも祠をここまでダイレクトにぶっ壊しに来た奴が今までいなかったからか、村人たちは止めようとすれども手が出せず大半は困惑するばかりであった。
 更にニルが歩み出て、村人たちの方を向く。
 まだ何もしないが、もし掴みかかってくるようなことがあるならと神気閃光の構えを取っていた。
「ひとも村も、ニルは傷つけたいわけでではなくて。
 ただ……これ以上かなしいことが起こらないようにしたいだけ、なのです。
 邪霊がこわいなら、おうちに隠れていてくださるとうれしいです!」
 そこへシューヴェルトがバイクを走らせながら厄刀『魔応』を抜刀。貴族騎士流秘奥義『鬼気壊灰』を発動させる。
 これは生まれつき持つ呪詛の力に加えて、これまでの経験で得た怨念なども加えて放つ『碧撃』を超えた技である。放たれた一撃によって何かいろんなものが吹き飛んだ祠。そこへオマケとばかりに爆弾を放り込んだシューヴェルトは、さがっていろと村人たちにジェスチャーした。
 言われるままさがる村人。おこる爆発。
 そこへゆっくりと停車する第二の車両。
 ソアはゆらりとドアをあけて姿を見せると、それまでの人型形態から半獣形態へとチェンジし虎の爪をジャキっと出現させた。
「お邪魔しまーす! 問答無用でいくよー!」
 祠の残った部分をソアパンチとソアキックでボコボコに破壊していく。
 村人はその様子をただ黙って見つめていた。
 もしご自宅に呪われた祠のある方がいらっしゃったらおわかりいただけるとおもう。突然やってきた連中が問答無用で祠をボッコボコに破壊し始めたら通報するか唖然とするかのどっちかだ。そして村人たちの反応は後者であった。
 なにせ、警察より怖いものが出てくるのが分かっているからである。
「ヒトの願い、即ち欲望というものは。強すぎる薬……つまりは毒だ。
 故にそれを神霊の類、或いは怪異に与える際には、世俗に染まり切らぬ清廉な子女を巫女とし、希釈して与えねばならない、だろう?」
 ふと見れば、車によりかかって腕組みしていたアーマデルがなんか語り出していた。
「そろそろじゃないか? トドメを刺しておけ」
「了解。フンッッッッ!!!」
 壱和が運転席からサムズアップすると、祠に向かって車を思い切りぶつけた。
 殆どボコボコにされた祠ゆえに簡単にはじけ飛び、ピーピーいいながら車をバックさせた壱和は祠の残骸にドーンと招き猫を置いた。
「えー、では今からここでは猫の神を信仰して貰いまス。にゃんこ最高! お前もにゃんこ最高って言いなさイ!」
「ば、ばかもん! そんなことをすればじゃがら様が――」
 村の中でも一番の年寄りっぽいじいさんが叫んだその時、祠のあった場所から凄まじい呪力が吹き上がった。
 余人にもわかるほどの呪力は周囲を覆い尽くし、空を曇天に変えていく。
 いや、ちがう。幻影だ。その証拠に遠い空はまだ青いままである。
「我が眠りを――覚ますのは――何者ぞ――」
 ゆらり、と呪力の中から影が現れる。
 それは人間のようであり、蛇のようであり、あるいはそれ以外の荒唐無稽な化物のようでもあった。
「じゃがら様じゃああああああ!」
 一斉に逃げ出す村人たち。
 だろうなと思っていたソアたちは気を取り直すと、祠破壊チャレンジからモードチェンジ。
 夜妖退治チャレンジが始まったのだった。

●じゃがら様
 祠の上に浮かぶように現れたじゃがら様。その周囲を取り巻いているのは大量の邪霊たちである。
 それらが一斉にこちらをにらみ付けると、その表情を邪悪なものへと変化させた。
 両目は底のない穴のように黒く沈み、大きく開いた口は闇に通じるかのように黒い。そんな邪霊たちが両手を翳し、こちらを呪い殺そうと突き進んでくる。
「こんなにたくさんのひとたちが、かなしいめにあったのですね。
 あなたたちをたすけられなくて、ごめんなさい。
 ニルは、かなしいのはいやだから。
 これ以上かなしいことが増えないように。
 あなたたちを倒さなきゃいけないのです」
 ニルは大きく飛び退くと、コアの石を淡く美しく光らせた。
 その光に応えるかのように術式が形成され、完成する。邪霊たちの足元に開いた無数の魔方陣が凶悪な泥濘へと変化し、更には飛び上がる無数の光が呪力の爆発を引き起こす。
 そんな中を駆け抜けるニル。
「ありったけの力をこめて――!」
 握りしめたるはミラベル・ワンド。レガシーコアであるアメトリンが宝飾としてあしらわれた短杖。
 コアの光が眩く輝き、あふれ出る魔力がじゃがら様へと叩きつけられる。
 派手に攻撃をくらったじゃがら様は手を翳すと、ニルを空中に持ち上げて遠くへと放り投げた。
「念力カ」
 壱和は仲間たちを強化すべく[いかり]を行使。ニルの動きが不自然にぎこちなくなっていたのを確認すると、[ほうらい]を発動させて治療した。
「猫には数千年人と寄り添ってきた歴史があるワケ。そんじょそこらの妖とは神性としての格が違ぇんだヨ」
 [きりあけ]を発動させる壱和。両腕に巻き付き白き鉤爪状の躯体を発現させる第一相の[ねこ]。
 その湯愛馬には権能である死の呪いが纏い憑くという。
 飛びかかる壱和が鉤爪で攻撃を仕掛けると、じゃがら様はそれを腕を翳すことで防御した。
 呪力の結界が壱和とじゃがら様の間を阻む――が、壱和はそれを切り裂いていき、第二の斬撃をじゃがら様へと命中させる。
 一方で、アーマデルは蛇鞭剣ダナブトゥバンを展開させると、群がろうとする邪霊たちを一撃の下になぎ払った。
 そしてじゃがら様へとターゲットを移す。
 発動させるのは勿論『英霊残響:妄執』。
 志半ばにして斃れた英霊が残した未練の結晶が奏でる音色である。
 音色は諦念と絶望、そして愛憎の狭間にて身を焦がし、ひとり堕ちゆく暗殺者が最期に零した呪い(あい)。
 呪力には呪力だとばかりにぶつけたそれはじゃがら様の抵抗能力を著しく低下させた。
 それを確認すると『英霊残響:怨嗟』に切り替え発動。
 それは命を削る程の努力を踏み躙られ、偽りの聖女と誹られし者の怨嗟。刃が軋り歌うその音は何処か物悲しく、狂気にも似た不協和音だ。
 それによって呪縛の効果を受けたじゃがら様が動きを鈍らせたところで『蛇巫女の後悔』……つまりは猛毒を流し込む。
「くっ……」
 シューヴェルトは邪霊たちから聞こえる声に苛まれつつも、騎士式剣舞『此花咲夜』で切り払う。
「来い、この僕がお前すらも喰らいつくそう!」
 挑発的な叫びをあげるシューヴェルトに、じゃがら様は両手を翳し絞め殺すような仕草をする。それによってシューヴェルトの首が締め付けられ、空中へと持ち上げられる。が、シューヴェルトは苦しみにもがくことはなく剣で呪力を切断。
 着地するともう一度挑発的に呼びかけて見せた。
「弱いな、所詮は出来損ないの神といったところか? そうでないというのなら、この僕を呪ってみな!」
 再びの攻撃――が届く前に、呪力の流れを鏡禍の妖力が遮断する。
「しかしまぁ、生贄を求めないと力を保てないっていうのなら夜妖としてはその程度、妖怪的な格としては僕のが上ですよね!」
 挑発を浴びせヘイトをとると、祠を破壊した時にも使った妖力の太刀を握って飛びかかる。
 じゃがら様の呪力が鏡禍の身体にまとわりついて絞め殺そうとするも、それを無理矢理突破して太刀による斬撃を叩き込んでやった。
「ちなみに知ってました?
 生贄って場合によっては神様との結婚の場合もあるんですよ
 それなら一人でいいでしょうに、ねぇ?
 僕だったらルチアさん一択で他に求めたりもしないですのに」
 戦いの最中にのろける鏡禍に、ルチアはちょっと頬を染めた。
「――獄門より来たれ、禍の凶き爪」
 詠唱を手短に終えるとじゃがら様に『獄門・禍凶爪』を放出するルチア。
 その後はじゃがら様の呪力に対抗してバチバチと斬り合う鏡禍へ向けて治癒の魔法を唱え始めた。
 勿論、『啓示の乙女』の効果範囲に入るように調節しながらだ。
 そんなルチアを鏡禍は守りつつ、妖力の結界を派手に展開していく。
 彼を潰すことはかなわない、あるいは難しいと判断してかじゃがら様のターゲットがソアへと移る。
 が、ソアとて百戦錬磨のイレギュラーズである。
 群がる邪霊たちをボルトブリッツの雷で一網打尽にすると、じゃがら様から浴びせられる無数の呪力の手をかわして走る。
「あなた達の仇はしっかりとってあげるからね
 ねえ、聞いてる? そこの怪物!」
 飛びかかり、爪の一撃がじゃがら様の呪力結界を破って走り、その身体を切り裂いた。
「どうせ人間のことを餌としか思ってないでしょう、食われる気持ちを教えてあげる」
(こんなに強いなら本当の神様になれてたかもね、残念なやつ。
 それとも危なかったと言うべきなのかな。
 でもタダでは殺さない。
 これは神殺しなんかじゃなくて怪物退治なんだから。
 村人に自分たちがどんなものを崇めていたのか知ってもらう)
 そこからはソアの一方的な攻撃が続いた。爪による乱れ切裂きである。
「そろそろトドメ……かな」
 アクセルは『雲海鯨の歌』を指揮棒のようにふるってそらに掲げた。
 すると空を覆っていた暗雲が消え、晴天が姿を見せる。じゃがら様に幻影を作り出す余裕がなくなったとみるべきだろう。
 そんな空に向けてくるりと円を描くように指揮棒を回せば、五線譜が空に踊るように脇だしヴァイス&ヴァーチュの光となる。
 そのすべてがじゃがら様へと次々に飛んで行き、必中の魔法となってその偽りの肉体を焼き焦がした。
「ア、アアアアアア!」
 断末魔のような声をあげて燃え上がるじゃがら様。
 その姿はやがて消えていき、最後には燃える祠だけが残ったのだった。
「任務完了。帰るよ、みんな!」
 帰りやすいようにターンしていた車に乗り込むアクセル。
 今更村人たちが出てきてモメても困るのだ。
 その車に仲間たちも乗り込み、壱和とシューヴェルトも車やバイクを回してその場を走り去っていく。
 窓から見える風景を、そしてニルは振り返った。
「ほのお、きれい……」
 それは弔いの炎となったのだろう。彼らは解き放たれ自由になった霊たちを、幻視したのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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