シナリオ詳細
<ラケシスの紡ぎ糸>雪原は我らのテリトリーである!
オープニング
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……近い将来、世界は滅亡する。
ざんげの神託によって、無辜なる混沌の消滅は確定づけられてしまった。
この世界から、あるいは外の世界から呼び寄せられてイレギュラーズとなった者全て、等しく滅びからは逃れられない。
しかしながら、滅びを蓄積させる魔種による凶行をイレギュラーズは数え切れぬほど退けてきた。
冠位魔種(オールドセブン)も残りは僅か。
未来を変える為、イレギュラーズは戦い続けなければならない。
●
各地に現れる終焉獣は混沌の滅亡の予兆。
「目的情報は後を絶たない。いよいよ間近に迫っているのかもしれないね」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)も情報屋として、あちらこちらに出現するその情報に対処し、イレギュラーズにもその討伐を依頼し続けている。
数も多く、各国も対処に追われているらしい。
ラサに現れる変容する終焉獣。
終焉獣に憤るとみられる大樹ファルカウ。
覇竜で姿を見せる人型の星界獣。
そして、鉄帝では、帝都近辺に天を衝くほど巨大な塔が突如現れたと話題になっている。
「『コロッセウム=ドムス・アウレア』ってその塔の出現と合わせて、全
剣王って名乗る者が鉄帝に宣戦布告したって話さ」
『我こそが真なる鉄帝の王である。我はこの塔より惰弱なる現鉄帝を支配し、その部を布くものである。
命惜しからん者は挑むがいい。この塔には最強が在る!』
だが、塔からは終焉獣が現れており、加えて人型の怪物『不毀の軍勢』も出現が確認されている。
「なんでも、自分で最強だと名乗っているんだってさ」
それらの軍勢は、全剣王なる存在に付き従っているのだという。
さて、塔内部は魔術によって構成されており、階層の状況、その内部構造など全てが滅茶苦茶な空間となっている。
何が起こるかわからない。
ただ、だからと言って、終焉獣などを率いる相手ならば、イレギュラーズとしては黙っていられない。
「全剣王……どれほどの相手なのか気になるね」
ともあれ、その全剣王へと挑むにも、塔の攻略を進めねばならない。
オリヴィアはイレギュラーズへと、率先して攻略に当たるよう願うのである。
●
事前情報の通り、『コロッセウム=ドムス・アウレア』までの道はすでに他のイレギュラーズや鉄帝在住の闘志らによって切り開かれていた。
今回編成されたチームは慎重に塔内部へと突入するのだが、すぐに異様な感覚にとらわれてしまう。
メンバー達は気を強く持ち、先へと進んでいくと……。
気づけば、皆、雪原のような場所へと至る。
実際、踏みしめていたのは雪であり、その質感も冷たさも本物に思えた。
ただ、この場は塔のフロア内だったのは間違いないようで、フロアの壁や天井は視認できた。
そんな中、腕組みしてイレギュラーズの前に立ち塞がるのは3人の人影。
「「「ふはははははは……!」」」
高笑いする彼ら……不毀の軍勢は、我こそが最強だと名乗りを上げる。
その3人は中遠距離を得意とした立ち回りをする者達で、狙撃、遊撃、砲撃の最強を自称している。
「さらに、終焉獣、変容する獣」
「全剣王どのと我らがいれば」
「いかなる相手だろうと敵ではない」
ゴリラの如き獣と、両手の姿をした終焉獣を従え、胸を張る軍勢ども。
しかし、そんな彼らの表情を一変させる存在がこの場へと迷い込む。
「またこの地も物騒になっているのである!」
「この塔は一体何なのだ!?」
現れたのは多数の白い体躯をした雪だるま達。
その手前にいた大柄な2体の雪だるまは夫婦らしく、子供達を連れて各地を巡り、道行く者に雪合戦の勝負を挑んでいる。
イレギュラーズには幾度か敗北しているものの、彼らのフィールドであれば、ほぼ負けなしという雪合戦であれば最強の一角ともいえる存在だ。
「ふん、雪合戦で勝負だと?」
「我らに打ってつけの舞台ではないか」
遠距離攻撃を得意とする軍勢の男2人がうすら笑いを浮かべる。
「向こうもやる気なのだ」
「ここは絶対に負けられないのである!」
雪だるま達はそこで、イレギュラーズ達へと近寄ってきて。
「久しぶりなのだ」
「今回も一緒に戦うのだ!」
以前、子供達が人質ならぬ雪だるま質にとられた事件の時、共闘したことがあったが、それ以来となる。
ここまでイレギュラーズが勝利していたこともあり、その力を認めていたことも大きい。
「「皆、がんばるのだー!」」
人数もあって、子供達は揃って観戦に回る様子だ。
さて、雪合戦のルールだが、このフロア内で雪玉、もしくは雪製武具で相手を全てKOさせること。
飛行は天井があるものの、問題はない。
ただ、敵も飛行能力は所持しているようなので、考慮する必要がある。
事前準備として30分が与えられ、バリケード、トラップの作成も自由。
拘束系のものはそのままで問題ないが、雪で相手にダメージを与えられる必要がある。
例えば、爆発によっておこる雪を伴う風はセーフだが、爆炎そのものはルールの範囲外となるので注意したい。
「ルール破りにはきついお仕置きである!!」
それは、敵味方問わない。雪だるま夫婦、外で見守る子供達が全力で殲滅してくるので留意しておきたい。
「面白い」
「我らの力、見せてやる」
雪だるま達の得意とするフィールドではあるが、軍勢どもも最強と疑わぬプライドがあってか、自分達が勝つと確信すらしていたようだ。
「では、戦闘準備開始なのである!!」
雪だるま夫妻の開戦宣言の後、両陣営は戦闘準備を開始したのだった。
- <ラケシスの紡ぎ糸>雪原は我らのテリトリーである!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年12月27日 23時45分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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魔術によって構成された塔内部を進むイレギュラーズが至ったのは、一面の銀世界。
「わーい、雪だー!」
「雪じゃー!! 我初めて見る! すごいの! すごいの!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)、『メカモスカ』ビスコッティ=CON=MOS(p3p010556)は目を輝かせる。
「「「ふはははははは……!」」」
周囲に響く高笑い。
待ち受けていたのは、全剣王なる存在に従い、我こそが最強と謳う3体の不毀の軍勢。
蒼白いゴリラの姿をした変容する獣、人の左右の手を思わせる巨大な敵……それら終焉獣を率いてこの場を守っていた。
「またこの地も物騒になっているのである!」
「この塔は一体何なのだ!?」
そこへ、駆けつけたのは多数の白い雪だるま達だ。
「雪だるま達は久しぶりだな! 元気にしてたか?」
その再会に『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が喜ぶ一方で、トラブル続きの鉄帝の状況を憂う。
雪原とあらば、雪だるまも雪合戦での勝負を軍勢らに挑む。
「ふん、雪合戦で勝負だと?」
「我らに打ってつけの舞台ではないか」
あちらも調子づいて、自分達に有利と疑わず勝負に乗る様子だ。
「鉄帝を侵略する全剣王……配下も含めてどんな奴かと思っていたが」
それらの敵に対し、『雪製武具職人』天目 錬(p3p008364)は脳筋……もとい気風も鉄帝に似ているという印象を抱いたようだ。
「不毀の軍勢ども、ついに手の内出し尽くしたか……?」
そいつらはやることもなくなってふざけているのだろうと、『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)は推察する。
貴道の考え通り、頻繁に出てくる全剣王の部下の中でもアホな方なのかもしれない。
ともあれ、双方同意の元、雪合戦でこの場の勝負を決めることに。
「雪合戦だー!」
「あそぶぞーー!!」
テンションを高める『無尽虎爪』ソア(p3p007025)。
ビスコッティもメカ少女の姿をとり、臨戦態勢だ。
「雪合戦、楽しそうだね」
セララもこんな空気を察して、この依頼へと誘われるように参加したのだろう。
「雪合戦……いえ、失礼。少しばかり幼い頃を思い出しただけです」
それを聞いて、しばし呆けていた『黄昏の影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は我を取り戻してそう皆に告げる。
「雪合戦か。うーん」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)はというと、雪だるま達が展開する特殊フィールド上でのルールについて少し不安を覚えている様子。
「なら、説明するのだ」
そこで、雪だるま達がイナリら初参戦のメンバーへとルールを確認する。
武器は雪玉、雪製武器のみ可。
これには、拳を武器とする貴道が苦い顔をしていた。
30分の準備期間の間にバリケード、トラップは自作自由。
飛行は自由だが、この空間は高さ15mの制限がある。
イナリはしっかりと理解し、仲間と準備に移る。
なお、相手は10体に対してこちらは8人の為、雪だるま夫妻に助力を得ることに。
「「皆、がんばるのだー!」」
今回も子供達は応援に回り、可愛らしい声で声援を送ってくれる。
すでに雪合戦に参加経験のあるイズマは陣地構築、罠設置と持ち前のスキルを駆使してバリケードを作成する。
基本的には雪しか使えぬとあり、イズマは土嚢や網を断念していた。
限られた準備時間を、皆、最大限に活かす。
セララは自身のエスプリで強化したスキルによって、効率的にバリケードを作成していく。
準備ではスコップの利用はできるので、セララはそれを使って盛った雪の塊に体重をかけて雪をぎゅっと押し固める。
その上で、セララはスコップの先で分厚い直方体へとカットし、地面へと突き刺す。
「これで、防壁の完成なのだ」
一つ築いた防壁を見上げ、セララはうんうんと頷く。
傍では、ヴァイオレットが農業スキルを活用し、簡易的な塹壕を製作する。
これで他のメンバーのカバーができれば。
ややネガティブな考えを持つヴァイオレットだが、依頼に対する構えは実に真摯だ。
「ヴァイオレットみてぇな美人なナオンも居るのか。ああいう顔に雪玉が当たると大変じゃなぁ」
そんな彼女を見たビスコッティはのしのしと前に出て、小さく細い雪柱を用意する。
それらによって、致命的な傷を回避できるような遮蔽物としようと、ビスコッティは考えたのだ。
「なら守るのも我のつとめよ。守るものを決めたほうが気合が入るからな。あと……」
ビスコッティが他に注目したのは……。
「雪の彫像作るぜ!」
一見ふざけているようにも見える貴道の行為だが、彼は半分くらいは真面目だ。
軍勢をアホだと断じる貴道。
現に、この準備時間すら、最強の自分達が如何にしてこちらを雪玉でスナイプするかしか考えていない。
そんなわけで彫像を作る貴道だが、準備時間は僅か30分しかない。
「間に合うのかって? 馬鹿め、一般人と一緒にするんじゃねえ!」
仲間や雪だるま達の視線を受け、貴道は大声で反論してから、職人魂を見せつける。
そして、鍛え上げられた肉体から繰り出される恐ろしいまでに速い手刀や貫手。
「速さが違えよ!」
雪の塊は見る見るうちに仲間を模した雪像群へと姿を変える。
そのデザインは、同行するメンバーの中から虎の姿をしたソアだ。
やたら勇壮で段違いに凝っているのは、貴道の興が乗ったからである。
周囲から巻き起こる拍手。
雪だるまがどうやって手を叩いているかは想像にお任せしたい。
「あと……ああいうでっかいやつも我は好きじゃ! 張り合いがある!」
棒読みながらも周囲が震えるほどの大音量で、ビスコッティはうんうん頷きながら宣言していた。
少し離れた場所では、フード付きの白い外套を着用したイナリの姿が。
イナリは雪中用に仕上げた装いで、露出した肌には白いペイントをつける。
なお、光が反射しそうなものは外していた。
イナリは塹壕掘りも頭に過らせてはいたが、全ての敵が持つ飛行能力によって、頭上から攻撃されるだろうと想定する。
その為、イナリは半地下式のかまくらのような形のものを作ることに。
練達上位式で作った式神を使役することで製作を手伝わせ、イナリはかまくら作りの作業効率を上昇させる。
錬もまた飛行型の式神を作製し、練達中位式の式神と合わせて雪製武具の作製を進める。
持てる力を発揮し、一人5回分、自分用を追加して5回分の雪製武具を作り出す。
雪だるま夫婦を含め、各メンバーも作成している。
(これぐらいあれば、あとは現場でなんとかできるだろう)
ある程度完成すれば、錬もバリケードの構築に回る。
彼もまた空からの狙撃砲撃を警戒し、それらに対応できるよう雪だるまの意見も聞き、やや高めに作り、矢狭間付屋根をつけるなどできることを進める。
一方で、バリケードを作ったメンバーは雪玉、雪製武具作製へと移っていた。
「雪合戦に欠かせないものを作らないとね」
ソアはせっせと雪玉を作り、仲間達の築くバリケードの内側へと積んでいく。
こうしておけば、続けて投げられてとても便利だとソアは言う。
同意するイズマも雪玉、雪製武器を作って蓄えていく。
セララは作りやすく、雪玉同様投げやすい雪の槍の量産を進め、貴道は圧縮しすぎて氷のようにギッチギチになった雪玉を残りの時間で作っていた。
対して、軍勢3名はけらけら笑うのみ。
一応、雪の弾丸は作っていたが、それすら終焉獣頼みだったようだ。
そうして、30分は瞬く間に過ぎて。
「時間である!」
存分に時間を使った両者は改めて、雪だるま達の声に応じて相対する。
「ともあれこれで雪合戦も三度目、負ける気はないぜ」
「遊びだ遊び、連中がふざけてんならミーもふざけなきゃ損だろ」
意気揚々と軍勢と対する錬。
貴道は拳を覆う武器を仲間に用意してもらってはいたが、極め技としか使えぬ状況もあってほぼ拳が使えぬこともあって全部戯れだと首を振る。
「雪合戦……いえ、失礼。少しばかり幼い頃を思い出しただけです」
ヴァイオレットは改めて、勝負を前に思いを馳せる。
まさかこの年齢になって興じる日が来るとは思わなかったが、戦いの一つであるならば……。
「やりましょう。無慈悲に、残酷に、勝つための戦いを」
頷くイレギュラーズ。
軍勢どもはその間もけらけらと笑って。
「面白い」
「我々が負けるはずもない」
最強を自負する軍勢らは、物言わぬ終焉獣を引き連れて勝利を疑わない。
無論、イレギュラーズもまた勝利の為、自分達の持てる力を全力でぶつけるのみだ。
「見ていてくだされ母上! 我は雪合戦でもすごいですのじゃー!」
「さぁ、今回も俺達の力を見せてやろう。勝つぞ!」
「「これより、雪合戦開始なのである!!」」
「「うおおおおおおおおおおお!!」」
ビスコッティやイズマが意気込みを叫んだ直後、互いの怒号、雪だるまの子供達の声が響いたのだった。
●
早くも飛び交う相当数の雪玉。
バリケードに隠れたソアは相手の出方を窺うが、敵の射撃はノーコンとまではいわないが、貴道の築いた彫像まで狙っている。
そんな中、終焉獣の中で変容する獣、そして、軍勢の中で遊撃が全身してくる。
様々なスキルを駆使して敵の位置を把握するイズマは雪玉による意図せぬ破壊を防ぐべく保護結界を展開していた。
「全て受け止めてやる。俺は倒れないぞ!」
己を幻想で守るイズマは口上を上げ、敵の攻撃を引き付けようとしていた。
「ボクは銀の森の生まれだから、雪遊びにはもちろん慣れてるよ」
ソアはやってくる敵を返り討ちすべく、準備した雪玉を連射していく。
スキルによる強化は可能、攻撃は雪を使ってダメージを与えられればOKとのこと。
セララも遠慮なく自身の最適化、燐光舞う白い衣装に姿を変え、美味しいドーナツを加えて戦う。
最初から、セララも出し惜しみなしだ。
「セララ・スノウキャノン!」
さながら砲弾の如く空中を飛ぶ雪玉が直撃した変容する獣は大きく仰け反っていた。
貴道も予め瞬発加速を高め、両拳に力を込めて構えをとる。
「ぶん殴らなくても自前の性能が違うんだよ、量産型軍勢どもめ」
バリケードの影から、貴道は無数の雪玉を投擲した。
名付けてガンマナイフクロス投法。
命中した複数の個所から衝撃が体内で交差し、激しい衝撃を生む。
「「我々もいくのである!」」
雪だるま夫妻もその体から一気に雪玉を連射する。
(……ダーティなプレイはルールに抵触するおそれがあります)
味方のはずの雪だるまから撃たれるのはごめんだ。
ヴァイオレットは自分の能力の範疇で健全に戦うことに決め、後方から狙撃してくる敵の注意を主に引く。
ただ避けるだけでなく、ヴァイオレットはその回避によるステップを活かし、返す刀の如き反撃の雪玉を叩き込む。
さて、敵陣奥の狙撃砲撃、混迷の手は牽制射撃を行っている。
錬は特に混迷の手2体を脅威と認識し、最優先で落とすべく立ち回る。
飛行できる相手なら、迎撃する作戦をとるべきと錬は判断。
絡繰兵士の援護を受けつつ、錬は敵の攻撃を受けた仲間や自身を治癒符で癒し、号令を発して逐一皆の態勢を立て直す。
「今は迎撃あるのみだ」
雪縛りがある以上、残弾に気を付ける必要があるはず。
一方で、イナリなどは開戦後も式神を使ったサポートとして、雪玉を量産してもらう。
イナリ自身は口に雪を含み、吐息が白くならないよう配慮しつつ、簡易ながらも運命力を操って奇跡の力を纏う。
敵に気づかれぬよう遊撃に出つつ、イナリは神幸を使って攪乱に動く。
「――ゆくぞ」
そんな中、ビスコッティは超越個体の五感を利用し、細い雪柱の合間を縫うように移動し、雪玉を軍勢へと投げつける。
「混迷の手が特に厄介じゃが……」
ビスコッティは敵陣奥から雪の投擲を行う敵をつり出すように前に出る。
軍勢が……いや、終焉獣が張った罠が発動し、雪が飛んで来ようとも、丈夫なビスコッティはまるで気にしない。
「そうよもっと遊ぶぞ、我の再生はそのためにあるんじゃからなぁ!」
吠えるヴァイオレットもまた敵の雪玉を受け止めるよう敵陣へと向かう。
●
空中を制すれば有利と判断したのか、軍勢側は1体また1体と浮遊する。
だが、それをセララが許さず、同じく浮遊して雪の槍を撃ち出す。
それを食らった獣へとイナリが迫り、至近距離から雪玉で仕留めてみせる。
「所詮、獣か」
唾吐く遊撃は足を活かして移動し、弾幕の如く雪玉を投げつけてくる。
だが、イズマがそれを受け止めた直後に、貴道が再度ガンマナイフクロス投法を披露し、遊撃へと雪玉をぶつけていく。
思いもしない威力に意識が飛びかけた遊撃へ、自らの彫像より物質透過で現れたソアが雪玉を連射して。
「が……」
大きく目を見開き、遊撃が崩れ落ちた。
続き、変容する獣2体が投げつけてきた雪玉を見事にステップで避け、ヴァイオレットはすかさず雪玉を投げ返して1体を沈黙させる。
「「力だけで我らは倒せぬのである!」」
ハモる雪だるま夫婦の声。
歴戦の2人のコンビネーションは見事の一言。
挟まれた獣は翻弄され、何もできずに前後から雪玉を浴びて果てていく。
先行部隊がやられたと判断した軍勢は、残りの終焉獣全てを差し向けてくる。
それを見たビスコッティは錬、イズマと共にすかさず混迷の手の片割れ……右手に攻撃を開始していた。
一斉攻撃の準備さえ整えば、錬、イズマの攻撃と合わせてビスコッティがここぞと奥の手を仕掛ける。
「これはルール違反じゃないじゃろ?」
すでに仲間へと示し合わせていたビスコッティ。
ガトリング砲で自身の近辺の雪を撃ち、飛び散る雪と溶けた雪で敵の侵攻を食い止める。
「ま、加減はしておる。安心せよ」
混迷の手に視力があるかは疑問だが、怯んだのは確実。
メンバー間のコンビプレイの合間、ビスコッティが投げつけた雪玉によってひっくり返り、動きを止めてしまった。
同じタイミング、浮遊していた変容する獣が雪玉補給へと降り立つ。
そこを、イナリがここぞと雪製の大太刀を叩き込めば、獣は泡を吹いて倒れる。
錬も混迷の手を片方倒したことで、近場の獣へと雪の虚像より発する雪玉を顔面に撃ち込み、昏倒させてしまう。
「敵は総崩れだ」
号令を上げる錬。
敵は思うようにこちらを攻め落とせぬこともあり、焦れていたようだ。
「かくなる上は……!」
空中へと浮かび上がって狙撃を仕掛けてくる軍勢。
制空権を取れれば確かに有利かもしれないが、数が減った今なら単なる的だ。
まずは、飛んで難を逃れたと息つく最後の獣へと貴道が迫って。
「お仕置きだぜ!」
三度繰り出すガンマナイフクロスは、錬の作った雪製グローブによる特製のもの。
思わぬ一撃に嗚咽を漏らす獣は爆ぜ飛ぶようにその場から消え失せる。
「チッ、撃て撃て!」
狙撃が徹底的に弾幕を張り、イレギュラーズの進撃を食い止めようとする。
「近づけぬのである!」
夫婦が攻めあぐねる状況もあり、ヴァイオレットが仕掛けようとするが、飛距離が足りなかったようだ。
そこで、セララが雪の投げ槍を一気に放ち、狙撃の体を撃ち抜く。
魔法剣を思わせる一撃を浴びた狙撃は白目をむき、真っ逆さまに雪上へと墜ちていく。
「…………!」
相方を失った左手も雪を掴んで投げ飛ばしてくる。
威力は相当なものだが、雪製大太刀を構えるイナリが攻撃を仕掛けると見せかけ、地上からヴァイオレットが攻め込む。
雪のストックがなくなってきていたこともあり、彼女は影の手を使って掴んだ雪玉、雪製武具を使う。
「雪の採取に、農業知識も活かせるものですね」
後は速力を活かし、ヴァイオレットは混迷の手左側へと切りかかり、KOしてみせた。
「こんなはずは……!」
砲撃が信じられないと首を振る間にも、ソアが物質透過で迫っていて。
(やっぱり、近寄ってしまえば脆いね)
ここまで存分に雪がっせを楽しんでいたソアだが、砲撃が自分に気を取られている間に近づいてきた仲間と共に取り囲み、固めた雪玉を一気にぶつけていく。
すかさず、砲撃へと接敵したイズマが己の武器を模した雪製の細剣を構えて。
「俺達も雪だるま達も、戦いを繰り返して強くなり続ける。最強の名に驕るだけの者共など、すぐに超えるんだよ!」
これがトドメと、イズマは魔力を振り絞った一撃を放つ。
「ば、馬鹿な……」
信じられぬと表情を固まらせて崩れ落ちる砲撃。
そいつの体を貴道が掴んで。
「喜べ、てめーらも彫像にしてやるからな!」
程なくして建てた像に、彼は『不毀のアホども、ここに眠る』と刻み込んでいったのだった。
●
不毀の軍勢を退けた面々は一息つくが、まだまだ元気な様子。
セララなどは仲間や子供の雪だるまを誘ってかまくらを作る。
今度は身を隠すためでなく、仲間と楽しめる空間を作る為、彼女達は楽しく雪を盛っていた。
傍では、イズマらが雪だるまと交流を深めて。
「雪だるま達に名前はあるのか?」
戦友である彼らがどう呼ばれているのかと、イズマは気にしていたのだ。
「こっちはジョン、そっちはミハイル、あっちはレオナルドなのだ」
思ったよりイカした名前の雪だるま達に、メンバー達は呆気に取られてしまうのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは自らの武器を満足に使えぬ中で最大限のパフォーマンスを見せた貴方へ。
今回もご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ラケシスの紡ぎ糸>のシナリオをお届けします。
今年も雪合戦の季節がやってまいりました。
皆様、雪だるま達と共闘し、最強を自称する連中の撃破を願います。
●状況
鉄帝の帝都近辺に現れた奇妙な塔に挑みます。
すでに、入り口まで制圧されており、内部に突入できます。
その内部は非常に入り組み、階層の順番どころか空間すらも歪んでいるようです。
たどり着いたのは雪原を思わせる場所。
今回は雪だるま夫妻が協力してくれ、子供達が見守る中、雪合戦で敵集団を倒します。
直径40mほどの円形、天井までの高さ15m程度と一定区画内での戦闘を強いられます。
フロアの柱があちこちに配置されており、障害物として利用可能です。
バリケード、トラップは自作自由ですが、正々堂々戦う雪だるまの定めたルールにより、敵味方共に30分しか準備期間が与えられません。
雪玉、雪製の武器のみ使用可。
雪だるま達のテリトリー内でのルール無視の行為は、イレギュラーズはもちろんのこと終焉獣とて例外なくきっついお仕置きが待ち受けます。
威力は手持ちの武器に準拠しますが、雪玉、雪製武具は1回使用すると崩れてしまいますので、使いどころが肝心になるでしょう。
●敵
全てが飛行能力を所持しています。
〇不毀の軍勢×3体
全長2m強。『全剣王』と呼ばれる何者かに付き従っている、強力な人型の怪物の軍勢です。
鷹の目を持つ狙撃(男性)、身軽なフットワークが売りな遊撃(女性)、大砲で前方の殲滅を図る砲撃(男性)の3体が敵として立ち塞がります。
〇変容する獣×5体
体の中身が透き通っている蒼白い終焉獣です。
さながらゴリラのような屈強な姿をしており、移動は四足、止まって雪玉を投げつけることができます。
上記の軍勢の指示に従ってこちらを攻撃したり、守りを固めたりと見た目以上の知能、行動力があります。
〇混迷の手×2体
全長2m弱。左右一対の手です。
今回はルールの都合で浸食が一切できず、直接その身で雪玉を投げつけてきます。
両手が揃っている状態だと、強力な範囲攻撃を仕掛けてくるので要注意です。
●NPC
○雪だるま夫婦
全長5mほど。
旅人の一団で、子供達を引き連れて混沌を旅しているらしいです。
今回、冬になって鉄帝に戻ってきたところ、出現していた塔に興味をもって侵入し、今回の事態に遭遇したようです。
今回は夫婦のみの参戦。イレギュラーズとの共闘です。
後方からの狙撃、広範囲に渡るロケット砲、中距離からの乱舞を使い、飛行可能。統率、カリスマ持ちと実に頼もしい存在です。
なお、ルール無用のプレイは味方であっても容赦ないので、ご注意ください。
○子供達×30体ほど
全長1.5~2mほど。
大きな雪だるま夫婦の子供達らしいです。
上位数名が選りすぐり隊として、野良バトルで活躍しています。
子供達は親とイレギュラーズの勝利を信じ、戦場外から声援を送ってくれます。
ルール破りした者には彼等もイレギュラーズ、敵問わず、徹底的に殲滅に当たってきます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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