PandoraPartyProject

シナリオ詳細

銀月の塔より

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 豊穣が首都、高天京。数ある酒場の中でも、その店はローレットのイレギュラーズが通うことで知られていた。
 それ故だろうか。彼がこの店を選んだのは。
「失礼」
 一言声をかけ、酒場の扉を開いた男がいた。人々は好奇心からその人物を振り返り見て、そして……静まる。
 青い絹の衣の上に、銀の刺繍があしらわれた羽織を纏い、帯には銀飾りのついた剣を納めている。彼の銀の装束は、まるで月光を反射して美しく輝くかのようであった。
「雲流殿か?」
「あの、『銀月』の雲流?」
 よほどの有名人なのだろう。酒場の者たちはその名をすぐに口にした。
 名を呼ばれた当人はそれを気にした風でもなく、ただ声をあげる。
「この酒場にローレットの神使(イレギュラーズ)殿はおられますか。私は雲流。銀月の塔を監視する役目を持つ者です。此度、ローレットに依頼をしたく参上致しました」


 偶然その場に居合わせたあなたを含め、数人のイレギュラーズが集められ、酒場の二階にある個室へと案内された。
 扉をあけると、依頼人ということで上座の席に座らされた雲流が少しばかり居心地悪そうにしている。
「集まっていただき感謝します。自分は……恥ずかしながら下戸でして、酒は飲めないのですが」
 手前に置かれた水を小さく掲げ、苦笑する雲流。
「ここの代金は持たせてもらいます。まずは、私の話を聞いて頂けないでしょうか」
 彼の丁寧な物腰からして、上座に座らされることがくすぐったいのだろう。
 だがそうも言っていられぬと見切りをつけてか、雲流は集まったイレギュラーズの顔ぶれを確認してから頷き、話を始めた。
「『銀月の塔』というものが郊外に存在していることはご存じでしょうか。
 私は雲流。その塔の監視を国より命じられ、任務としている者です。
 塔には古来より強力な魔物が封じられているのですが、最近になって塔周辺に魔物が現れ、塔への侵入を試みるようになったのです」
 塔の魔物の封印が解かれれば、周辺の村々に少なくない被害が及ぶことだろう。
 そうならぬよう見張り続けるのが雲流のつとめであり、場合によっては近づく魔物の退治を行ってきたが……。
「近づく魔物の数は増えるばかり。先日などは月蛇霊が大量に発生し、自分も深い傷を負うこととなりました」
 もしあなたに深い観察眼があったなら気付いただろう。雲流の歩き方や細かい所作に怪我人特有のぎこちなさがあることに。逆に言えばそうまで見なければわからぬ程度に隠せているということなのだが。
 ともあれ、傷を負った雲流はこれ以上すぐには戦いに赴くことは出来ない。
 そこで国を救った英雄であるローレットへと依頼することに決めたのである。
「塔を狙う魔物は主に月蛇霊や星霊武者といった魔物です。
 月蛇霊は月光を取り込んで透明になる力を有した巨大な蛇型の魔物で、その噛みつきには冷気が込められており噛みついた相手を凍り付かせることがあります。
 星霊武者は数こそ少ないですが、星座が浮かぶ鎧に身を包んだ武者の霊で、高い戦闘技術と星の呪文を駆使して戦う恐るべき魔物なのです」
 雲流はコインの入った袋をどさりと机に置くと、集まったイレギュラーズたちに頭を下げた。
「魔物たちの狙いはおそらく銀月の塔に封印された魔物の解放。それを許すわけには参りません。どうか、お力をお貸し下さいませ」

GMコメント

●シチュエーション
 強大な魔物の封印された『銀月の塔』を監視する依頼人、雲流よりの依頼。
 昨今、塔を狙う魔物の動きが活発化し、討伐を行っていた雲流もまた負傷してしまったようだ。
 雲流に代わり塔を守るべく、魔物たちを倒そう。

●エネミー
・月蛇霊×多数
 月光の力を取り込み透明になる力を有した魔物。
 噛みつき攻撃には冷気が込められており、冷気系のBSを受けることになる。

・星霊武者×少数
 鎧に星座が浮かんだ武者の霊たち。古代の武者の霊であるとも言われるが、月蛇霊を使役し塔の封印を解こうとしている。
 星の呪文と高い戦闘技術を有しており、それなりには強敵となる。

●フィールド
 銀月の塔の前。
 銀月の塔自体に封印が施されているため易々と侵入されることはない。
 もし封印されている魔物などの情報が気になるので有れば、戦闘後に調査してもよい。
 また、雲流は戦闘には参加できないが、あとでより詳しい話を聞くことが出来る。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 銀月の塔より完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
冬越 弾正(p3p007105)
終音
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
柊木 涼花(p3p010038)
絆音、戦場揺らす

リプレイ


「銀月の塔……領民から噂は聞いた事があるけど封印の地だったのか。
 ここにきて急に塔に襲撃を仕掛けに来たのは何かありそうだが、まずは対処の方からだな」
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)はそんな風に呟きつつ、突貫工事で仕上げつつあった投光器を地面に置く。額には玉の汗が流れ、随分と披露している様子だが……。
「ま、どういう相手がどこに来るのか分かっているなら、準備もしようがあるってもんだよな」
 辺りは既に暗くなりつつあり、夜目の効く仲間が注意深くあたりを監視している。
 『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)はポケットに手を入れつつ、周囲の空気が徐々に変わりつつあることに気付いていた。
「雲流の話によれば、塔には強力な魔物が封印されているらしいな。
 カタギの皆様に迷惑をかけられねえ。仕事に励むとしようか」
 塔の封印が解かれればどんなバケモノが出てくるかわかったものではない。
 周囲の民衆への被害も計り知れないだろう。
 雲流が依頼してきたのも、当然それが理由なのだろうから。
「ぶはははッ、『銀月の塔』か。豊穣住みなんで名前だけは聞いたことはあるが、実際に行くのは初めてだねぇ!」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が塔を見上げ豪快に笑い声をあげる。
 『無尽虎爪』ソア(p3p007025)もそれにつられてあははと笑った。
「『銀月の塔』の塔に封じられた魔物はどんなだろう? 永い間ずっと塔の中だなんてボクならお腹空いて死んじゃう」
「だな、話してたら実際腹が減ってきたぜ……終わったら飯にするか」
「するー!」
 一方で、『終音』冬越 弾正(p3p007105)は黙する『群鱗』只野・黒子(p3p008597)と共に塔の周囲を一回りしてきた所だったらしく、仲間に合流してきた。
「ああ、お疲れ様。魔物の姿はあったか?」
「いや、全くだ。どうやって現れるんだろうな」
「雲流の話しだと湧くように現れるらしいけどな……」
 『斬竜刀』不動 狂歌(p3p008820)が塔の壁に背を付けて腕組みをしながら言う。
「しかし銀月の塔……か。前に近くを通ったことがあるけど、ここって魔物が封印されてたんだな。どんな奴が封印されてるかは気になるが……」
「ああ、領地持ちとしてもその辺は放っておけない情報だよな。けど、まずは目の前の魔物からだ。
 一族の為にも塔を守り、中の魔物とやらを調査しなければ」
「そいつには賛成だ。というか……奢って貰った飯の分と依頼料分は働かないとだしな」
「どこかに黒幕がいるのか、封印されている魔物に引き寄せられているのか、それとも……。いずれにせよ、きな臭い気配がします」
 『奏でる言の葉』柊木 涼花(p3p010038)があたりを観察しながら、ゆっくりと背にしていたギターを回し演奏できるように構える。
 彼女なりの臨戦態勢というやつだ。
「皆さん、見えますか? なにか、ぼんやりと……」
 目を細める涼花。
 狂歌はそれに応じて大太刀『斬馬刀・砕門』を抜いた。
「エネミーサーチにも感あり、だ。本当に湧いてでやがったな」
「ついでに言えば、囲まれてるみたいだ」
 哭響悪鬼『古天明平蜘蛛』参式を構える弾正。
 言葉の通り、ぼんやりとだが武者のような幽霊が周囲に姿を見せ始める。
 錬が急いで投光器を発動させると、飛んできた矢が投光器を破壊した。
「あっ、こいつ! 折角設置した投光器を……!」
「大丈夫、見えてるよ!」
 悲鳴のように叫ぶ錬。ソアが独特のタイガー拳法(?)めいた構えをとってみせる。
 ゴリョウが盾を構え、義弘がポケットから手を抜く。黒子もまた戦闘態勢へと移行した。
 総員、戦闘開始。


 周囲に見えているのは星霊武者のみ。月蛇霊の姿は見えない。既に透明化を図っているようだ。
「くはははッ! こっちの姿で戦うのも久しいねぇ! さぁ来な蛇ども! この闘争心を寒からしめることが出来るならなぁ!」
 ゴリョウは突如としてスリムになると、周囲を温度視覚で見始めた。
「思った通りだぜ。例の蛇は通常の気温より冷たい!」
 ゴリョウは目視できた月蛇霊めがけて突進すると、シールドバッシュと同時に『招惹誘導』の術を展開した。
 力強く響く彼の声が、周囲の月蛇霊たちを引きつけ始める。
「よし――」
 義弘は音と臭いで月蛇霊の大まかな位置を把握していたが、あえて月蛇霊を無視して星霊武者への攻撃を開始していた。
 刀を振り下ろしてくる星霊武者。その一撃を鉄パイプで受け、強引にそらす。
「オラァ!」
 義弘は気合いの声をかけると、その鉄パイプに竜の如きオーラを纏わせ強引に振り抜いた。
 正面の星霊武者が大きくよろめき、その周囲に固まっていた星霊武者たちも同じようによろめく。
 そして、すぐに散開が始まった。
 こちらの範囲攻撃に対応して散開するだけの知能は持っているということだ。やはり先に狙って正解だったと義弘は頷く。
「畳みかけろ」
「ふふーっ、いただきます!」
 猛烈なダッシュからのソバットキックを叩き込むソア。
 キックによって吹き飛ばされた星霊武者に更なる攻撃を加えるべく、ソアは虎の拳をぎゅっと握りしめ走る。
 横一文字に振り抜かれた剣――をほとんど四足歩行の構えですり抜け、強烈なアッパーカットを繰り出す。
 ソアのアッパーカットによって高く吹き飛んだ星霊武者はそのままシュオオと音をたてて消えていった。
 どうやら偽りの生命が潰えたらしい。
「この調子!」
「ああ、分かってる!」
 弾正は平蜘蛛から激しい音楽を鳴り響かせると、拳に炎を纏わせて星霊武者を殴りつけた。
 パンチの衝撃で爆発が起き、星霊武者が派手に吹き飛ぶ。
 が、星霊武者もさるもので、弾正めがけ弓矢を放ってきた。
 矢が肩に突き刺さり血が滲む。
 が、それでも弾正は止まらない。更なる突進をしかけ、星霊武者の顔面に第二のパンチを叩き込んで見せた。
 そして巻き起こる第二の爆発。吹き飛んだ星霊武者がシュオオと消えていくのを確認し、弾正は次の対象めがけて『ブレイズハート・ヒートソウル』を発動。
 平蜘蛛の一部ががチカチカッと点滅したかと思うと星霊武者へ鎖を飛ばし、その腕に巻き付け固定する。
 チェーンデスマッチの如く向き合う姿勢になった弾正と星霊武者だが、あいにく今はチーム戦。錬が『式符・殻繰』で絡繰兵士を展開すると、側面に回り込んで『式符・陰陽鏡』を発動させた。
「投光器の恨み……! 設置するの滅茶苦茶大変だったんだぞ!」
 照射によってダメージを受けた星霊武者へ、絡繰兵士たちが腕を改造したライフルによって射撃を開始。援護射撃を浴びせられそれを刀で弾き落とそうとする星霊武者に、『式符・相克斧』で杖を斧形態に変化させた錬は思い切り斬りかかった。
「星の呪文には興味はあるが手加減はしないぜ!」
 大上段から振り下ろされた斧が星霊武者の翳した剣をへし折り、その鎧もろとも破壊する。
 シュオオとまたしても音をたて消えていく星霊武者。
「星の呪文……そういえば、まだ敵はそれを使っていません。気をつけて!」
 涼花がそう叫んだのとほぼ同時だっただろうか。星霊武者たちは一斉に剣を水平に構え、何やら詠唱のようなものを開始。鎧に刻まれた星座の模様が光り輝き、それに応じるかのように空から無数の流星めいた光が降り注いできた。
 こちらは包囲されている形であった上散開していなかったこともあってか、集中砲火をあびることになる――が、勿論無策なわけではない。
 涼花がギターをかき鳴らし星と夜空をテーマにした歌をうたいはじめた。
 歌はそのまま治癒の力となって仲間たちに浸透し、流星による集中砲火のダメージを中和していく。
 一方で黒子は『葬送曲・黒』を発動。詠唱をやめ格闘へと移った星霊武者めがけて発射する。
 縦横無尽に操る呪力の鎖が星霊武者へと絡みつき縛り付ける。黒子を斬り付けようとしていた星霊武者はその鎖によって動きを奪われ、攻撃に失敗する。
 当然、隙だらけだ。狂歌がその隙を逃すはずがない。
「何故魔物の封印を解こうとする? 目的はなんだ?」
 問いかけながらも繰り出した大太刀による豪快な横一文字斬りは星霊武者を真っ二つに切断する。
「オオオ、オオオオオ――」
 うなり声をあげる星霊武者。聞くだけ無駄だったかと狂歌が思ったその時。
「親方様――封印を――」
「何?」
 聞き返そうとしたところで別の星霊武者が狂歌へと斬りかかる。
 派手に切り裂かれ血を吹き出すが、彼女には『統王王権』の力がある。
 発動したその力を太刀に乗せ、狂暴に笑って見せた。
「ハッ、上等だ! 殺られる前に殺ってやるよ!」
 先ほどよりも切れ味を増した斬撃が星霊武者を切裂きその偽りの生命を消し去っていく。
 が、それで終わりというわけにはどうやらいかないらしい。
 ゴリョウの誘引から逃れた多数の月蛇霊が狂歌たちに襲いかかってきたのだ。
「チッ――!」
 舌打ちする狂歌。エネミーサーチで感知してはいるが正確な位置はぼんやりとしか感じ取れていない。相手の能力ゆえだろうか。しかし――。
「そこだ!」
 蛇ならば食らいつくだろうというコースを狙って『オーラキャノン』を発動。
 刀身に纏わせたオーラを斬撃によって放ったことで、彼女に食らいつこうとしていた月蛇霊が真っ二つになって地面に落ちた。透明化効果は切れている。
「倒せば効果は切れるのか、ま、当然だな」
 そして何を思ったか、狂歌は自らの血を手に付けばっとまき散らすように腕を振った。
 いや、その意図はすぐに判明する。
「――血が、宙に浮いて!」
 涼花の目には彼女の血が宙に浮いてくねるようにみえた。が、すぐに意図に気がついた。
 透明化を図ったところでこうして上から何かを塗りたくれば姿を隠せないのだ。
 歌と演奏に力を込め、『ソウルストライク』の術式を発動。発射する涼花。
 血のついた月蛇霊は見事に術式によって撃ち抜かれ、地面にどさりと落下した。
「なるほどな」
 義弘はおもむろに砂を蹴って砂煙を巻き起こすと、その中でぼんやりと浮かび上がった実態に掴みかかる。
 反撃にと義弘の腕に食らいつくが、義弘はなんてこともない顔をして月蛇霊を地面に思い切り叩きつけてやった。
 それを何度もくり返すうちにぐったりと動かなくなる月蛇霊。
「さあて残りも頂いちゃおうね!」
 自らに『聖骸闘衣』を付与したソアは同じように砂を蹴り上げるとぼんやり浮かび上がった月蛇霊を虎の爪で切り裂いた。
 回り込んできた別の月蛇霊が食らいつくが、付与していた聖なる膜のようなものがソアの素肌との間に挟まって月蛇霊の牙から伝わる冷気をシャットアウトしてくれる。
 ついでとばかりに噛みついていた月蛇霊を殴りつけ、地面に投げ落として踏んづけるソア。
 その一方で、弾正はあえて目を瞑り月蛇霊が空を泳ぐ『音』を聞き分けていた。
「そこか――」
 平蜘蛛を突きつけ、音波を放って爆発を起こす弾正。
 爆発を掻い潜って食らいついてくる月蛇霊がいたが、弾正が纏っている『凍気無効』の装備の効果もあってか全く歯が立っていない様子だ。つかみ取り、拳に纏う炎で燃やし尽くす弾正。
「良い調子だ。このまま駆逐するぞ!」
「もう一押しってことか。了解!」
 錬も絡繰兵士たちに援護射撃をさせながら『式符・陰陽鏡』を発動。
 太陽を写す魔鏡を瞬間鍛造し、派手に浴びせる錬。
 透明化していてもあぶり出す手段はいくらでもありそうだ。
 不吉効果によって次々に行動不能に陥っていく月蛇霊たち。その中の一匹だけがなんとか錬の元までたどり着いてかみつきを行うが、ギリギリのところで斧を食い込ませ防御に成功。そこへ黒子が『葬送曲・黒』を叩き込むことで殲滅した。
 振り返り、ばっと砂を投げることで再び月蛇霊を浮かび上がらせる黒子。
 今度は複数に固まっていたので、『淵海』を浴びせて動きを封じた。
 この攻撃によって極端な弱体化を受けた月蛇霊へ連発して『淵海』を放つ黒子。
「残りは俺に任せな!」
 温度の影響で『見えて』いるゴリョウは残った月蛇霊の集団めがけて必殺の『オークライ』を発動。
 雄叫びを放つことで月蛇霊たちを纏めて吹き飛ばし、塔の壁に激突させた。
 一匹がかろうじて起き上がりゴリョウの腕に食らいつくが、ゴリョウにとっては痛くもかゆくもない攻撃だ。がしりと月蛇霊を鷲掴みにして引き剥がすと、そのまま地面に叩きつけ盾で叩き潰すというコンボで鎮めてしまった。
「さてと、こんな所か」
 ふいいと額の汗を拭うゴリョウ。背負っていた鞄から調理道具やら食材やらを取り出し始める。
「おいおいもう料理を始めるのか?」
「あっ、いいなー! ボクも食べる!」
 驚く錬の一方で、ソアがわーいといってゴリョウの手伝いを始めるのだった。


「この度は魔物の退治、誠に感謝いたします。こちらは依頼料です」
 雲流がコインの入った袋を手に塔の前までやってくる。
 どうやら遠くから戦闘の様子を観察していたらしい。現れるタイミングがバッチリだ。
 義弘は報酬を受け取りつつ、雲流の顔を見る。
「ところで、この塔の調査をさせてもらえるか。封印が弱まっているなら対応が必要だろうしな」
「そうですね……いずれにせよ、これから調査は行う予定でした。もし興味があるなら、この塔について詳しくお話しますが?」
「おう! そりゃ助かるぜ!」
 お握りをめっちゃ作りながら言うゴリョウ。そのお握りをぱくつくソア。
「そもそも、この塔ってのはいつからあるものなんだ?」
「はるか昔から……としか言えませんね。実は私もこの塔についてそこまで詳しいわけではないのです。魔物の封印を行った者は、その過程で命を落としました。私はその者の後を引き継いだにすぎません」
「ってことは……封印をしたのは別の人ってことなんだよね」
「封印の手順などは残っていないのでしょうか?」
 ソアと黒子が尋ねると、雲流は実に厳しい表情を浮かべた。
「残っては……います。ですが、同じ方法で封印し続けることは難しいでしょう」
「外に対して影響を及ぼし始めている程度には、その力が膨れ上がっているから……か」
 弾正が呟くと、錬が『どういうことだ?』と首をかしげて振り返った。
「ここに現れた魔物はみな霊体系だ。こうしたものに影響を及ぼすのは呪詛やそれに類する魔物だと予想できる。おそらくだが、古代の怨霊……といった所じゃないのか?」
「よくわかったな」
「まあ、推測だがな」
 苦笑を浮かべる雲流。
「仰る通りです。ここに封印されているのは古代の怨霊。それも強大な怨霊です。私達では封印するのがやっとの存在でした」
「再封印ができないなら、倒してしまうことはできないでしょうか」
 そんな提案をする涼花に、雲流は小さく頷いた。
「あるいは、皆さんなら可能かもしれません。激しい戦闘になるかもしれませんが……」
「要は、さっきの星霊武者たちの親玉みたいなものが封印されてて、その封印は弱まってるってことだな。確かに俺たちなら対処できるかもしれないが……」
 狂歌の言葉に、仲間たちがそれぞれ頷く。
 雲流は期待を込めた目で彼らを見た。
「もし、塔に封じられた怨霊と戦う気があるなら……また私の所へいらしてください。できるだけ、早くに」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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