シナリオ詳細
<ラケシスの紡ぎ糸>コングと鉄帝バーリトゥード
オープニング
●
拳が剣を粉砕した。
それも、横からへし折ったわけでも、据え置いた刀身を割ったのでもない。
兵士が刃をたて、斬り付けたその刀身を真っ向から受けて、拳が剣に勝ったのである。
「なっ――!」
あまりの事態に、剣を振った部隊長は目を見開き、その次の瞬間には更なる拳が顔面をとらえていた。
剣で叩かれても平気なはずのフルフェイスヘルメットが盛大にひしゃげ、へこみ、血を吹いて、そして隊長の身体もろとも飛んで行く。
首がもげて飛んでいかなかったのは、咄嗟に後ろに飛び退こうとしていたためだろうか。
いずれにせよ、壁に激突しめり込んだ部隊長がそれ以上動く様子はみられなかった。
「弱い……」
そう呟いたのは、拳を振り抜いた一人の戦士。上半身は裸の、首から上が蒸気機関車のようになった異頭の存在である。
他にも周囲には提灯やランタン、爆弾やドリルといった異頭の戦士達が兵士をボコボコに殴り倒している。
「このように脆弱なものと戦ったとて、何が得られようか。鉄帝国はそんな国であったか?」
問うように機関車頭が呟けば、隣のランタン頭の戦士はハアとため息をもらした。口もないその異頭でどのように息を漏らしているかは不明だが。
「兵を倒して行けば、いずれ出会えよう。いや、待て」
何かに気付いたようにランタン頭が振り返る。
ゴロゴロと大岩が転がるような音がしたのだ。いや、近づいてくる。
そしてそれは、大岩などではない。
自らの身体を丸めた、鎧を纏った巨躯のゴリラであった。
「ホゥウウウウウアアッ!」
身体を広げ、跳躍し、振り上げた拳を繰り出すその姿は鉄帝ラド・バウA級闘士。鉄帝のスター。コンバルク・コングその人である。
「ぐおっ!?」
咄嗟にガード姿勢をとったランタン頭がパンチによって吹き飛ばされる。
が、それだけだ。
空中で体制を整えると地面を引っ掻くようにブレーキをかけて無理矢理停止。先ほどの機関車頭の戦士が拳を繰り出し、コングもまたその拳に真っ向から対抗してパンチを繰り出す。
激突する拳と拳。衝撃が波のように広がり、両者はその場から動かない。
「――強い。なるほど、貴様のようなモノを待っていた!」
そして、激戦が始まる。
●
世界の滅びが近づいている。
それは終焉に隣接する各地に終焉獣が出現したことからも明らかであり、鉄帝南部に全剣王の塔こと『コロッセウム=ドムス・アウレア』が出現したことからも明らかであった。
この塔からは『不毀の軍勢』なる集団が現れては、鉄帝めがけ侵略を行っているという。
「おい、大変だ! コングの旦那が一人で飛び出していっちまった!」
そんな折、その事件はおきたのだった。
コングのマネージャーをしているDDという男があわをくって酒場に飛び込んできた。
彼が言うには、コングが『不毀の軍勢』による鉄帝侵略に対抗する旨を突如表明。即断即決とばかりに飛び出し、既に軍勢のひとつと戦い始めているというのである。
「やべえよ、相手はA級闘士になったあんたらが束になって対応するような滅茶苦茶にヤベエ軍勢なんだ。いくらコングの旦那でも多勢に無勢ってやつだぜ!」
DDが慌ててまくし立て……てから、「いや案外渡り合えてるのかもな」とぼそっと呟いた。その辺りは、信頼というやつなのかもしれない。
「と、とにかく。連中への対処を急いでくれ! 急いで現場に向かって、異頭の戦士たちと戦ってくれ!」
情報によれば『異頭の戦士達』は『不毀の軍勢』の中でも近接格闘能力に優れた個体で構成され、その猛烈に高いフィジカルでもって拳や蹴りといった徒手格闘戦を仕掛けてくるという。勿論『それだけで戦っていける』くらい対応能力が高いということだ。油断すれば足元を掬われ、そして地面に叩きつけられることだろう。
「しかし……なんでコングの旦那はいきなり侵略軍への対抗なんて表明したんだ? 旦那は言っちゃあなんだがラド・バウでのバトル以外に興味の無かったひとだ。鉄帝が冠位魔種に支配されてもだんまりだったんだぜ。それがなぜ突然……」
ぼそぼそと呟くDD。そしてハッと我に返り、懐に入れていたコイン袋をドンとテーブルに置いた。
「報酬は勿論払う! 頼む、コングの旦那と一緒に戦ってくれ!」
- <ラケシスの紡ぎ糸>コングと鉄帝バーリトゥード完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年12月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
「なーーーっはっはっは!」
馬車の上で叫ぶ『殿』一条 夢心地(p3p008344)。当然ながらの立ち乗りで、胸を反らして高笑いをあげていた。
「またもコングが飛び出していってしまったようじゃの。
今日は「鉄帝中の樹木をすべてバナナの木にしたらどうか」というテーマできゃつと熱く語り合う予定じゃったのに……これは探しに行かねばならん!
鉄帝中の樹木をすべてバナナの木にする案、コングならきっと乗ってくれるハズじゃ。
ヴァレーリヤが飲むのも、今後酒ではなくバナナジュースのみになる。
健康的じゃろ? なーーーっはっはっは!」
「普通にいやですわ!」
突然話を振られてぎょっとした『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が両手を振る。
そんなことより、と。
「『不毀の軍勢』にひとりで……コンバルクなら大丈夫……かも知れないけれど、放っておくわけにもいきませんわよね。
急ぎましょう! コンバルクと砦の人達が、私達を待ってございますわ!」
確かに、という様子で頷く『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は黙ったまま馬車の進む先を見やった。
場所は確か、鉄帝の砦であったか。
「闘技場以外に興味は無いと言い切っていたあのコングが……これはどういうことだ……!?
その心境の変化が何によるものか……見定めねばなるまい!」
一方でそんな感想を漏らしたのは『黙示録の赤き騎士』ウォリア(p3p001789)だった。
確かにウォリアの言うとおり、コングはなかば強引に誘うのでもない限りは闘技場から出てこない男である。
冠位憤怒の動乱の時でさえ動かなかったのに何故今になって……と。
「コングが何を思って突撃したのか分からないけれど、それを聞くにはまずは早くコングに追い付かなきゃね!」
『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がぱしんと拳を手のひらに叩きつける動きをしながら言った。
(あの森の賢者であるコングがこんな行動に出るだなんて何か重大な事に気付いたからに違いないよ!
オレたちも早く追いつかないと歯ごたえのあるヤツと殴り合えるチャンスが減っちゃうよ!)
と、内心はこんな感じである。
この辺りは良い具合に鉄帝スレしているというか、なんというかだ。
「コングめ、そう来たか。そんな誘い方をされた以上、出遅れる訳にはいかないな。
さっさと突っ込んで、コングと一緒に暴れ回るぞ!」
かと思えば、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はきっぱり『そのつもり』であるらしい。
実際の所、イレギュラーズを強引に誘い出したくて単身乗り込んだという線もなくはない、というのが鉄帝人のヤバイところなのである。
ああと頷く『竜拳』郷田 貴道(p3p000401)。
「なるほどな、要するにコングの野郎が楽しそうな舞台を独り占めしてるって訳だ
こいつは見過ごせねえよな、是非とも御相伴にあずからないと!
急ぐぞ野郎ども、ミーは残り物で満足するつもりは更々ねえ!」
とんとんと進む仲間たちの会話に、とりあえず頷いて起きつつ、『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は前方を見やった。
そして気持ちは、やはりこうだ。
「先日のダンジョン以来か。また共に戦えて嬉しいぞ、コング!」
●
砦の前に馬車がとまり、昴たちは馬車から颯爽と飛び降りる。
行く手を阻むようにぞろぞろと展開したのは、クマのような形をした屈強そうな終焉獣たちである。
「数がいたところで意味はない。幾らでも擂り潰してやろう」
そんな終焉獣に真っ向から突撃をしかける昴。
終焉獣を掴んで持ち上げると、そのまま振り回して周囲の終焉獣をまるごと吹き飛ばしていく。
攻撃をがしりとうけとめた終焉獣が反撃に振るった爪は昴を深く傷つけたが、しかし止めることまでは叶わない。強烈な前蹴りが終焉獣を吹き飛ばす。
そこへ滑り込むように割り込みをかけた夢心地。
既に刀に手をかけている。
「聞いてみるとするかの。今生えている木をぜんぶバナナの木にしようと思うがどうじゃ?」
「――?」
突然の問いかけに、知性もない終焉獣はグオオと声をあげ爪で斬りかかろう――とし、その寸前で夢心地の剣によって腕を切り落とされていた。
「クマにはバナナの素晴らしさがわからぬようじゃな。そなたらは鮭でも捕まえておれ」
そうして夢心地と昴は背中合わせにたち、それを取り囲むように終焉獣たちが展開し始める。
どこから飛びかかられてもいいように構える二人……だが、何も二人だけで戦う必要はないのだ。
「――」
オリーブによる掃射が終焉獣たちに突き刺さったのだ。
クロスボウによる射撃を何発も何発も重ねて終焉獣へ撃ち込み、その強力なダメージと脚部への射撃によって弱らせていく。
足止めを喰らった終焉獣はそれをやめさせようとオリーブめがけて突進を図るが、それを易々と許す汰磨羈たちではない。
間に割り込み、剣を抜く。妖刀『愛染童子餓慈郎』――『生死を分かつ妖刀』へと至ったそれをすらりと抜き放つと、グルルと唸る終焉獣と向き合った。
風が一陣――吹き抜ける。
風に乗った葉が大地に降りたその瞬間、両者は動き出していた。
終焉獣の繰り出す爪。常人を容易く切裂き殺してしまうその一撃をしかし、汰磨羈は飛び込み前転によって回避。
素早く身体をスピンさせ放った妖刀の斬撃が、終焉獣の足を切り飛ばす。
ずずんと地面に崩れ落ちた終焉獣。
それを見て、イグナートは『そっちは任せた』とばかりに別の集団めがけて突進を始めた。
突進してくるイグナートにギラリと怒りの視線を向ける終焉獣たち。
強烈に繰り出した爪の一撃は、『聖王封界』によって強化されたイグナートの腕が受け止めた。
常人であれば腕を切り落としていて然るべき一撃だが、まるで鋼でも打ったかのように堅く、そして強い。
終焉獣でもその強さは本能で分かったようで、ジャッと飛び退き若干の距離を開ける。
だが怒りに我を忘れていた個体はそのまま飛び込み、爪による攻撃を乱発するのであった。
「こいつらは抑えておくから、ミンナは攻撃を頼むよ!」
『殲滅兵団』のスキルを解放し仲間たちの強化を図るイグナート。
それをうけ、ヴァレーリヤは思い切り飛び込んでいった。
「熊は大人しく、森でハチミツでも漁っていなさい!!!」
大上段から繰り出したメイスがクマ型終焉獣の頭部を強烈にへこませ、再びの一撃によって巨体を吹き飛ばす。
ヴァレーリヤの小柄な身体からはとても想像できないようなパワフルなスイングに、終焉獣たちが警戒の色を露わにした。
が、そんな警戒を塗り替えるように『アッパーユアハート』を連発するイグナート。
ついつい引き寄せられ警戒が疎かになった終焉獣にまたしてもヴァレーリヤの強烈なメイススイングがお見舞いされるのである。
「一人で引きつけるのは苦労するだろう。半分受け持とう」
ウォリアはがつんと自らの胸部を叩いてみせると、終焉獣たちの群れに飛び込んで『アッパーユアハート』を自らも使用。その鎧内部から溢れるような炎の揺らめきに魅せられた終焉獣たちが飛びかかり、その鎧へと爪を立てる。
四方八方から爪を立てられたウォリアはしかし、構わぬとばかりに『神滅剣アヴァドン・リ・ヲン』を手に取った。
そして、豪快横回転斬り。繰り出された斬撃によって終焉獣たちは纏めて吹き飛び、一部はそのまま上下に分割され消えていった。
「邪魔だ雑魚ども、お前らにゃ興味ねえんだよ。
挽き肉にしてやるからとっとと並べ、そう、綺麗に一列にな!
その方が殴りやすいからなぁ、HAHAHA!」
こうして集められた終焉獣がどうなるかというと、貴道にひって『挽き潰される』のである。
轢かれるのではなく、挽かれる。彼はその鍛え上げられすぎて常軌を逸した拳でもって終焉獣を粉砕し、進み、粉砕し、進み、粉砕し、そして進む。
その精密な機械のような動きは終焉獣たちをまるでものともしていなかった。
「味方は巻き込んでねえな? よし……」
後ろを振り返り、頷く貴道。
「スレスレだったがな。まあ、そのくらいの方が良い」
引きつけ役であったウォリアがゴウッと炎を燃え上がらせる。笑ったのだろうか。
昴が振り返り、砦へと走り出す。
「さあ行こう、コングを待たせている」
●
約11体の異頭の戦士たちを相手に、コングは奮戦を続けていた。
殴り飛ばし、蹴り飛ばし、転がって轢き、そして時に頑強な鎧で身を守る。
しかしそんなコングは劣勢であった。A級闘士が飛び込んで劣勢になるほどの、戦力であったのだ。
「来たか」
目を鋭くして呟くコング。と同時に、イグナートが強烈な跳び蹴りでエントリーしてきた。
機関車頭の異頭戦士の頭部に蹴りが直撃し、その身体が派手に吹き飛ばされる。
「待たせたねコング! 急いだつもりなんだけれどオレたちの相手はまだ残ってるかな?」
「ウホッホ!」
「ほう……まだこれほどの戦士が残っていようとは」
機関車頭の異頭戦士が砦に壁に軽くめり込んだ状態からすぐに復帰し、着ていた上着を脱ぎ捨てる。
現れたのはとてつもなく屈強なボディだ。
が、そんなことは関係ない。
「コング、オレを掴んで投げてくれ!」
「ウホッホ!」
イグナートを片手で掴み、ぐるぐる回してからぶん投げるコング。
飛んで行ったイグナートは黄金のオーラを全身に纏うと、自ら身体をひねって旋回を開始。頭から機関車頭の異頭戦士へとぶち上がった。
「これぞ! 無影拳・旋頭雷霆弾!」
「ぐおお!?」
身体を上下に分断され、はじけ飛ぶ異頭戦士。死体は……残らなかった。
「やはり、滅びの力……か」
目を細め呟くコング。
「待たせたな。イレギュラーズのエントリーだ!」
汰磨羈が飛び込み、コングの隣に並びたち花劉圏・赫刃烈破『曼珠血咲』を解き放つ。
縮地による瞬間的移動で接近し、殺気と闘気を極限まで込めた赫刃を叩き込むというその技は異頭戦士を吹き飛ばすに充分であった。
「清々しい気分だ。こういう豪快なのも、たまには良い」
「ウホ!」
汰磨羈とコングは共に走り出すと異頭戦士を両サイドからボコボコに殴りつけ、更にはコングの強烈なパンチと汰磨羈の斬撃から放つ『殲光砲魔神』を交差させ異頭の戦士を滅多打ちにした。
飛ばせ、のジェスチャーを受けた汰磨羈はリクエストに応えて異頭の戦士たちを適当な方向へと吹き飛ばす。
何人かは絶えたが、絶えきれなかった提灯頭の個体が吹き飛ばされ柱に激突する。
「くっ……!」
そこを逃さず攻撃するオリーブ。
敵陣に飛び込み標的を散らす形で剣をふるった。
彼の狙いは自分に対応せざるを得ない状況を作って、コングや仲間たちへの手出しを阻むこと。そして相手取っている敵がコンたちの攻撃対象となったら起点として攻撃をいれつつ下がり、存分に攻撃して貰うというものだ。
(勢いだけで動くのはどうにも苦手でして。嫌いではないのですけれど、ね。
人には得手不得手、向き不向きがあるのですから、自分に出来る事を出来るだけやれば良いのです)
と、その一方。
「コンバルク、あの砦の上の方に私を投げ飛ばして下さいまし! 上にいる敵を片付けて参りますわっ!」
「ウホッホ!」
走ってきたヴァレーリヤを掴み、物凄い勢いで砦の上へと放り投げるコング。空中を舞うヴァレーリヤは身体を捻り、メイスに炎をぼうっと燃やした。
「――『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』!」
天空から撃ち落とされる『太陽が燃える夜』。直撃を受けた狐面の異頭戦士はがくりと膝をついてその場で塵と化した。
「ふふん、感謝することですわねコンバルク。私達が来なかったら、今頃あの変な頭に捕まって動物園に入れられて、檻の中からウンコ投げていたところでしたのよ!ちゃーんと、後で借りを返して頂戴ね!」
「ウホ……」
懐からそっとバナナを取り出すコング。華麗な着地から台詞までをきめたヴァレーリヤはそれをすごい釈然としない顔で受け取ったのだった。
そうしている間にも戦いは続く。
「全身をバナナ力で満たした上で、放つのはやはりバナナコンビネーションじゃ!」
それ! と夢心地は半分にした深緑バナナをパス。それを口でキャッチして一口で食べたコング。夢心地もまぐりとバナナを食べきると、バナナパワーをフルチャージしてからジャンプした。
「コングよ麿の両脚を持てい。シャイニング・夢心地(発光)によってバナナのごとく輝いた麿を!」
身体をそらし剣を両手で掴んだその姿はまさにシャイニングバナナ。コングはその両足を柄のごとく握ると。
「ウホアアアアアアアアア!!」
大回転しながら異頭戦士たちのほうへと突っ込んでいったのだった。
「お、おいマジか」
「冗談じゃねえ!」
こんな技で倒されてたまるかと飛び退く異頭戦士たちの中で、バナナ頭の異頭戦士だけが対抗して飛び込んでくる。
そんなバナナ頭の異頭戦士を豪快に切断し、爆発させる。
背を向けて見栄を切った二人。
「バナナさえ足りておれば争いなど生まれぬのだ。
バナナを食すのはゴリラだけに非ず、人だけに非ず。
鉄帝に生きる者すべてにバナナを行き渡らせるのじゃ。
ヴァレーリヤは今後バナナジュースのみじゃ。
なーーーっはっはっは!」
「だからいやですわ!」
とかやっているうちに昴がドリル頭の異頭戦士とボコボコに殴り合っていた。
「なかなかのパワーだ」
「力自慢はコングだけではないぞ!」
「そのようだな!」
両者の拳が相手のボディへと叩き込まれ、そのたびにがくりと身体がゆすられる。
昴は既に倒れていてもおかしくないだけのダメージを喰らっているが、根性でまだ立っていた。
「コング、合わせるぞ!」
殴りつけた敵を掴み、上下逆さに持ち上げる昴。
「そろそろ終わらせるとしようか」
それを察したコングは素早く飛びかかり、コングのアタックの勢いに合わせてパイルドライバーを炸裂させる。
ドリル頭の異頭種はそのまま地面にめり込み、動かなくなって塵と化したのだった。
そして戦いはまだまだ続く。
「X(クロス)ワイルドキングハリケーンだ!」
強さと戦いを求む魂と誰よりも優しき野性の化身たるゴリラの心を共鳴させるウォリア。
コングと同時に飛び出したウォリアはその強烈なパワーを鉄球頭の異頭戦士めがけ炸裂させた。
「ぐおお!?」
派手に吹き飛ぶ鉄球頭の異頭戦士。
壁にめり込むようにして激突した所へ、更なるコンビ技を提案するウォリア。
「コング、オレをあいつ等に手加減ナシの全力で投げつけろ!」
「ウホ!」
砲丸投げの要領で丸まったウォリアを思い切り投擲するコング。
「脆弱、と退屈をしているなら――オレと根性勝負だ!
コングの膂力による射出にオレの肉体そのものの鎧の硬さでワイルドキングストリームは二倍のパワー!
いつもの二倍のやる気が加わって二倍×2で四倍パワー!
そして炎を三倍増しで吹き出して加えれば4×3……お前達のフィジカルを上回る12倍ワイルドキングストリームだーーーっ!!!」
炎で身体を包み込んだウォリアは回転しながら敵に激突。謎の大爆発を起こして鉄球頭の異頭戦士を消し飛ばした。
「まだまだ頭おかしい連中が残っていやがるじゃねえか!
おいコング! 楽しい事はみんなで分け合うもんだ、そうじゃないか!
まあミーは分けねえけど?」
「ウホッホ……」
にやりと笑う貴道とコング。
「ヘイ、コング? そろそろ変わり映えもなくて飽きてきた頃だろう!
勝負といこうぜ、ルールは簡単だ!
あの変形頭どものドタマをより多く地面にメリ込ませてやった方の勝利!」
そう言いながら最後の一体へと飛びかかる貴道とコング。
「ま、マズイ……!」
飛び退こうとするがもう遅い。異頭戦士の顔面に貴道とコングの二人の拳がめり込み、その勢いのまま大地に思い切り殴り落とされた。
地面に頭をめり込ませ、塵となって消えていく異頭戦士。
「チッ、同点か。次の勝負に期待だな」
HAHAHAと笑う貴道。コングも笑い、握り拳でドラミングを始めたのだった。
戦いが終わり、誰かが訪ねる。
なぜ一人で突入を? と。
それに対してコングは、賢者の表情になってこんな風に答えたのだった。
「この世界に滅びが迫っている。オレは闘技場での毎日が好きだ。それを脅かすものがあるなら、排除する」
そしてその戦いは、まだ続いていくことになりそうだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
ラド・バウA級闘士、コンバルク・コングと共に『不毀の軍勢』と戦いましょう。
●道中(シナリオ前半)
『不毀の軍勢』に随伴する形で終焉獣たちが展開しています。
終焉獣はクマのような形をした屈強なタイプで、これらを撃破しなくてはコングのもとへとたどり着けません。
できるだけ早く、これらを撃破して先へ進みましょう。
●異頭の戦士達(シナリオ後半)
こちらとほぼ同数程度の異頭の戦士達が鉄帝の砦を攻め落としている最中です。
ここへ乱入し、異頭の戦士達と戦いましょう。
コングと共にコンビプレイを仕掛けたり合体技を繰り出したりとド派手なバトルをお楽しみください。(今回はあえて効率とか無視してドカドカ戦うとよりお楽しみ頂けそうです)
ちなみにコングは一人で攻め込んでしまっている状態ですが、案外持ちこたえているらしいです。
●味方NPC
・コンバルク・コング
言わずとしれたラド・バウA級闘士。鉄帝のスターにしてバトルのひと。
本来はバトルにしか興味のない男ですが、イレギュラーズに執心しているらしくいずれ自分を倒す存在として認知しています。
今皆さんはこのコンバルク・コングと肩を並べて戦えるだけの戦士に成長している筈です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet