PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<尺には尺を>しあわせ村

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●理想
 イレギュラーズが行っている神の国への攻略作戦は順調である。冠位魔種の余裕を歪ませるには至っていないが、四騎士や炎獣、ゼノグロシアンと彼らの主力部隊は見慣れ、戦い慣れた障害となった。神の国の玄関口『審判の門』や『レテの回廊』と次々に突破したイレギュラーズだが、そう簡単には玉座にたどり着く事はできないだろうと誰もが感じている。
 物理的な広大さに加えて、魔力によって空間が捻れているのだから途方もないスケールでの戦いだ。もう一つの天義を相手に戦争を行っているような錯覚さえ覚えてしまう。国を名乗るだけの事はあるな、とため息が出るだろう。
 攻略部隊が次に取り掛かる場所は『理想郷』という呼称を使う事になった。接敵した遂行者や、ある程度の意思疎通が可能なゼノグロシアンが度々に口に出した言葉をそのまま使う形だ。
 理想郷は正しく彼らの理想郷であり、レテの回廊をはじめとする荘厳な雰囲気の場所ばかりではない。時には天義の慌ただしい住宅街、時には平穏な村、時には陽光の降り注ぐ静かな森と次々と形を変える。其処に住まう人々はイレギュラーズと神の国とのぶつかり合いなど意に介さず、幸せな日々を送っているようにみえる。
 しかし、イレギュラーズはこれが全て紛い物だと知っている。遂行者との戦いで命を落とした人々がこのような場所で、第二の人生を歩んでいるはずがないのだ。見覚えのある顔、故人に出会ったという報告から、これらは洗脳されたゼノグロシアンというよりは作り物の命であるとローレットは判断した。

●処置
「やあイレギュラーズさん! またオ仕事かい、頑張ってくれよ! ウちに泊まってくれたらご馳走するぜ!」
「もう、あなたったら。野菜ときのこだけじャ恥ずかしいわよ。でも、ゆッくりしていってくださいね。華やかな都会とは違いますが、住みやすい場所ですカら」
 のどかな村に臨戦態勢で挑んだ面々は、気さくな農家からの歓迎を受けた。神の国の内部にこのような無関係な村があるはずがない。牧歌的な景色が広がっているが、実態としては強烈な瘴気に満ちているのだ。不調を訴えるものも出るだろう。
 情報収集を行った所、彼らは貧困や身分差別から解放され、幸せに満ちた生活を送っているようだった。これらはイレギュラーズに罪悪感をもたせる為の小細工でしかない事は理解できるが、彼らを手にかける必要に迫られた時、割り切る事は難しい。
「えぇ!? おれはスイコーシャとかいうのと戦って死んダはずだって? ちょ、ちょっとイレギュラーズさんのジョークはおれには難しすぎるよ。おれはそんな戦うことなんてできないし、こうやって畑を耕す事しかできない男さ。きっと他人の空似だよ」
「ここは争い事と無縁ノ村です。みんなで助け合って生キているのですよ。でも、そのスイコーシャがここで悪さをするのなら、イレギュラーズさんにお仕事を頼む事もあるかもしレませんね」
 無害な存在のようでいつでも爆発できる準備の整った爆弾である。理想郷を突破するには、この神様に選ばれた人々をどうにかするしかない。友好的な面々もいつ牙を剥くか予測不可能なのだ。
 既に『選ばれし人』と交戦したイレギュラーズからは興味深い情報が届いている。彼らは倒しても倒しても復活するというのだ。これは魔力で作られた防衛機構の典型的なパターンであり、間違っても生身の相手ではない事が見て取れる。
 即座に復活する不死の存在ではなく、時間経過で何事もなく同じ顔がひょっこりと顔を出すらしい。不利な消耗戦ではあるが、それでもこれからの戦いに備え、数を減らしておかなければならない。
 ローレットは理想郷のエリア一角であるこの村を襲撃する事に決めた。
 見かけだけでも平穏な日常を送っている村を先制攻撃する本作戦は、やや後ろめたい気持ちになるイレギュラーズが出てもおかしくないものだが、やらねばならない事なのだ。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は宿屋の一室にイレギュラーズを集める。
「後味の悪そうな仕事だって顔をしているね。オレも思う所はあるけど、あれは人間じゃないからね。歓迎パーティーはモンスター退治の作戦会議があるという事で断っておいたよ。あぁ、貰った食べ物も口にしてないよね」
 この村にはモンスター退治の仕事で滞在する事になっている。異質過ぎる状況下の三文芝居だが、慎重に物事を進めた結果、この化かし合いは続く事になった。
「報告を聞いてると思うけど、彼らは抵抗するよ。例の聖骸布で強化されてる類の敵と思って大丈夫かな。オレはもう少ししたら避難するから、そこからは自由にやって良いよ。敵地のど真ん中で申し訳ないが、事を起こすには良い起点だよね」
 数々の悪党から人々を守ってきたイレギュラーズだが、村を襲撃する立場を経験している者はそう多くはないだろう。既に村の宿屋には潜伏している。後はどう行動に移すかである。作戦会議は夜遅くまで続いた。

GMコメント

●目標
【必須】選ばれし人たちの無力化

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 理想郷 しあわせ村 積雪
 のどかな村です。宿屋の二階にイレギュラーズは部屋を借りています。
 行動を起こすまでは敵視されないので、時間帯や場所を選ぶ事ができます。
 
●敵
 選ばれし人 数不明
 小さな村ですが、村なりに数も多いでしょう。
 農家や商人、聖職者など様々な人がいます。
 戦闘力はまちまち。数や団結力に加えて、痛みや恐れを感じない人外的精神を持ちます。

  • <尺には尺を>しあわせ村完了
  • GM名星乃らいと
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月16日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
佐藤 美咲(p3p009818)
無職

リプレイ

●チェックイン
 神の国との激しい戦いが嘘のように穏やかな村に夕暮れが迫る頃、イレギュラーズの面々は立場のメリットを最大限に活かしていた。結局の所、これは冠位魔種のお遊びなのだろう、と誰かがふと考える。騙し討ちという線もなくはないが、理想郷という戦場が持つ、秘めた地の利なり先制攻撃なりを行った方が余程手っ取り早いものだ。ともかくも、現時点ではイレギュラーズはモンスター退治を終え、村で歓迎される立場となっている。
「しかシ最近はイレギュラーズさんがこの辺りに多いね? 国を巻き込む程の化け物と戦ってなきゃいいケどさ」
「まー、そうっスねー。私達も哨戒の仕事とか色々あるんでそんな感じじゃないっスかね」
 『無職』佐藤 美咲(p3p009818)がある事ない事を次々とでっち上げ、村人と話を始める。作戦の第二フェーズへ移るには日が暮れる必要があり、第一フェーズでは情報収集を主に行う事となっていた。時折、イレギュラーズにボロを出させようとする意図がある質問なども見られたが、美咲の平然とした応対は完璧に村へと溶け込めた。
「バンダナのお兄ちゃん! 何を見ているの?」
 丘の上で周囲を見渡していた『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)に一人の少女が、人懐っこい笑顔で問う。イレギュラーズが村の中をそれぞれ見て回っている中で、違う視点から調べておくつもりであったが、このような場所にまでお目付け役があてがわれるとは思わなかった。
「ああ、のどかで良い村だと思ってね。俺は方向音痴だから、高い所から酒場を探してたのさ」
「さかば! マルタおばさんのとこロだね! 案内してあげよっか、あそこは賑やかで人がいっぱいだよ! あれ、どうしたの?」
 ルーキスは村を襲撃する立場にあまり良い感情を抱いておらず、それが表情に出ていたようで怪訝な顔を返される。
「いや、何でもないよ。それじゃお願いしますね」
 数時間後にはここを壊滅させる。造り物の敵であるとしても、やはり気分は良くない。
「えぇ、イレギュラーズがたまたま居合わせた場合、依頼料等は必要ありませんので。モンスターの夜襲があった場合に即応できるよう詰め所や村長宅の場所を教えて頂ければ、と」
「ここは危険な怪物とか見た事もないんだけどなア。まぁ、そういう事なら……」
 『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は着実にしあわせ村の地理を頭にインプットしていく。理想郷では皆が幸せに生きており、そのような行動は必要ないと皆一貫して語ったが、かの有名なローレットが無料で行ってくれるサービスについては利用を躊躇わなかった。
「最悪、造り物の村長様の家に挨拶にでも行くはめになる所でした」
「長閑で、牧歌的で、どこまでも続いてしまいそうな安寧……理想郷もなかなか悪くないじゃないか。馬鹿の長に会って見るのも一興だよ」
「ご冗談を」
 『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)の仕事が一つ終わったようだ。他のイレギュラーズの面々は作戦の都合上、断る事になったがセレマは単身で歓迎会に出席し、囮の役割を買って出た。神秘的で芸術的で耽美的な美少年の出席とあらば村中が熱狂する事だろう。
「おんやまあ。随分と愉快な……くふふふふ」
「え、エマさんでしたっけ。何か面白いものでモ俺たちの村で見つけました?」
「いえいえ、こっちの話でありんす」
 村人の歓迎や、こちらの腹を探るような質問攻めも掴みどころのない影のように躱す『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)もまた、その時を待っていた。この茶番劇はまもなく凄惨な闘争となる。これを愉快と言わずして何と言おうか。
 気の向くままに散歩をしているようで、その眼は戦闘が始まった際に不利となる死角を捉えていた。
「全て紛い物と分かっているわけですが、日常の姿を長く見ると勘違いしそうになりますね」
「村人たちに同情する?」
「蛍さんと同じ考えだと思います」
 『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)と『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は空を飛ぶ小鳥を眺めている。それは上空からの珠緒の眼となり、平面的にも立体的にも頭の中に地図を作り上げる。きちんとした建設計画の立てられていない、よくある村だ。規則的な道や目印になる巨大建造物こそないものの、迷う事はないだろう。
 ファミリアーからの視界ではなく、足を使って得た情報としては流石は天義発祥と言った所で教会には力を入れているようであった。敵が集まるとしたらここだろうか。
 死者を模した何かが『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)に語りかける。話の内容は頭に入って来なかったが、ヨゾラはこれを存在してはいけない冒涜という形でしか見る事ができなかった。遂行者との戦いで失われたはずの命が、理想郷という地で利用される。
「ふざけるな……!」
 誰にも見えない所でヨゾラは強く地面を蹴りつけた。

●チェックアウト
 セレマの伝説的美少年トークに酒場が盛り上がる頃、宿屋より7つの影が飛び出した。
「それで、その先はどうなッたんだい? 続きを教えてくれよ!」
「慌ててはいけないよ。結果を語るだけなら簡単だ。しかしボクという存在を本当に知るには、ここで歌に耳を傾ける必要があるんだ」
 このような歓談は何時までも続けていられるとしても、セレマは若干の違和感を覚えていた。酒場に入り浸りの酒豪と言えど、ここまで酔いつぶれない事があるだろうか。やはり人間ではないのだ、と感じたがそれはそれで結構。美少年の美貌とは何も人間にしか理解できない狭隘なものではないのだ。
「おぉ、藤野さん。こんな夜中にどうしたんですカい? ここはちっぽけな村ですから、もう酒場くらいしか開いてないですよ」
「うん、眠れなかったの。お兄さんは一人? 用事がなければで良いのだけど……」
 壁に潜む珠緒、男に対面する蛍が全神経を集中して周囲を索敵する。孤立しているお人好しは珠緒の藤桜剣によって切断された。
「幸先が悪いね、珠緒さん」
「宿を出て数秒で一人。上々でしょう」
 何とも心強いパートナーだ。だが、珠緒に危機が迫れば蛍もその本性、そして本領を発揮するだろう。
「あー、月並みっスけどあの離れの民家からやるっスよ。あそこにすし詰めになっていたら流石に想像を超えるので立案者を責める事はできないです」
「二人暮らしの新婚夫婦ですね。元となっているのは戦火で引き裂かれた悲劇的な方々です」
「くふふふ、詳しおすなあ」
 黒子の聞き込みから得た情報は、それこそ美咲やエマの想像を超えるものであった。しかし、参考程度に捉えておかねば侵入や暗殺が容易な民家ですら気を抜けないものだ。
 美咲とほぼ同タイミングで侵入し、家を間違えた酔っ払いの応対でもするつもりだった男の息の根を止める。黒子の魔弾とエマの暗黒の技を同時に受ければ声をあげる暇もない。
「それじゃ、そういう事で」
 寝息を立てている女に枕を押し当て、美咲はそれを撃ち抜いた。
(クビになった職場ではありまスがー……こういうの、召喚前からやってたんスよね。わー……嫌なことに我ながら手際が良い)
 夜中であっても、しあわせ村の住人はそれなりの数が外を出歩いていた。友人の家での飲み帰りか、散歩か、急用など様々なものが考えられるが、理想郷では闇夜に紛れる殺人鬼や夜行性モンスターなどの存在が0である事が大きいのかとルーキスは思った。今、ルーキスはその前者として命を刈り取っている。
(まるで辻斬りにでもなった気分だな。相手が人外だと分かってはいるが、やりづらいことこの上ない)
 ルーキスが斬る相手は、自分が何をされたか気付かず、ぽかんとした顔でルーキスを見つめた後に崩れ落ちる。バケモノにでも変身してくれた方が幾分かは楽なのだが。
「僕が許せないのはさ。君達が殺された人の事を騙る事、殺された人達を殺した輩に与する事。どうせ殺したって復活するんだろうけど、何度蘇っても他者を騙る貴様等の罪は消えない」
 ヨゾラは敵意を明確に向けた後、少数のグループを星空の泥で飲み込んでいた。下手をすると騒ぎになりかねないが、ヨゾラの強大な魔力の前では、死体の影一つ残らないだろう。確実に数を減らして行くヨゾラだが、既に屠ったはずの男の姿を其処に認める。相手にこそならないが、現時点でどうやっても復活する敵というものは徒労感を覚えるものだ。ため息を一つ吐いた後、次の敵へと向かう。
「この種の排除も何度目でしょう……根の冠位が別でも、やることは然程変わりませんね」
 珠緒と蛍が人の形をした何かに対し、割り切って動けば戦闘力の差は明白である。そもそもがこちらに敵意を向ける前に事が済むのだ。
「飽きちゃった?」
「楽しいものではありませんが、二人でならば退屈はしませんよ」
「それはボクも同意見!」
 蛍の桜吹雪が舞えば珠緒の刃で首が飛ぶ。残酷なまでに美しい光景である。
「くふ、くふふ、くふふふ……かような体験は滅多に味わえないもので。わっちも歪な作り物を壊すと致しんしょう」
「な、何をやってるんだあんた達……気が狂っタか!?」
 男が助けを呼びに走ろうとした時にはもう遅く、エマから逃れる事はできない。
「モンスター退治に来たと言ったでありんしょう? それを行っているのでごぜーます」
「間違ってはいないっスけどねー」
 美咲は遺体を薬品で溶かす事を提案し、エマは復活するギミックから縛り上げる必要があると意見が割れた。どちらも試してみる価値のある行動であり、ひとまずは隠密行動を円滑に進める為に前者を選択した。
「得体の知れない敵の生け捕りは中々にリスクを感じるっス」
「私は彼らが食べている物も怪しいと思っているので、後で回収しておく事にします」
「うぇ。気持ち悪い結果が出そう」
 結果として、黒子の読みは今回は外れたものの、敵地において食を提供される事など真っ先に疑うべきである。選ばれし人たちは混入された物で依存、洗脳されている訳ではなく、食事を行える造り物であるとローレットは判断した。冠位がお遊びで生み出した、忌むべき存在だ。
(辻斬りの次は不法侵入…いや、これ以上考えるのはやめておこう)
 ルーキスが鍵を軽く触ると魔法のように解錠され、民家の中は血で染まる。
「ルーキスおにいちゃンが何で! 何でパパを殺すの!!」
「きみとは会いたくなかったな」
 少女の手に握られた包丁が神経を研ぎ澄まさせる。刃物を持った悪党、怪物と思うしかない。
 力任せの突きを白百合で受け、瑠璃雛で喉を刺し貫いた。一方的な戦いであるにも関わらず、じっとりとした汗と疲労感がルーキスに纏わりつく。
 酒場での美少年を称える宴は最高潮に達していたが、一人の男の何気ない発言で雲行きが怪しくなった。
「なぁ、あいつラ遅いな。すぐこっちに来るはずだったんだが、音沙汰がないんだよ。家で飲んだくれてるのか知らねえけど、呼びにいったレストフも帰ってこねえ」
「グリックさんも血の代わりに酒が流れてるよウな男なのになあ」
 セレマは状況を理解する。事は進んでいるが、このまま削り取って行く事は難しさを増す一方のようだ。
「この場に居合わせる事ができなかった者達のために、ボクという存在を眼に、耳に焼き付けるべきではないかな? おしゃべりも良いが、時は金だよ」
「大変だ! グリックさんが生キ返ったぞ!」
「へぇ、君たちは神の加護でも受けている感じなのかな?」
 セレマは平然と話に割り込むが、恐らくはもう全てが看破されたのだろう。賛美の眼差しは疑念、疑念から殺意へと徐々に変容する。
(ここからが正念場かな。馬鹿たちは気付くのも、其処からの対処も遅いから馬鹿と言うのだ)
 グリックという男の復活を機に、しあわせ村の夜は騒々しいものとなった。
「この感じはバレたかな? 僕を見るなり石を投げて来たよ」
 ヨゾラが馬小屋で合流した美咲と状況の確認を始める。
「思った以上に早い復活っスね。生け捕りが正攻法だったかもでス」
 馬を使ってイレギュラーズを追い回そうと中に入ってきた男たちは、影に潜む二人によって即座に葬られる。
 こうなってしまっては縛っておく場所の選定もままならない。
「これくらいなら朝まででも僕は戦えるけど。打ち止めがあって欲しいね、流石に」
 黒子は数人の男に追われている。記憶が正しければ、次の曲がり角を右に進み、左に曲がった後に直進を行うと袋小路である。
「あンたたちにはすっかり騙されたよ。だけど分散行動はまずかったな、お前は逃さねぇ!」
「これは都合良く集まってくれたもので。袋の鼠の立場に甘んじた甲斐がありました」
 放たれる勢滞の魔術。強烈な重力場が男たちを押し潰し、あと一歩の所で黒子に武器が届かない。
「てめぇ……わざとここに逃げ込みヤがっ……!」
「隅々まで観光させて頂き感謝しております」
 自警団の真似事をしているような1グループは壊滅した。

●チェックメイト
「さて、ボクの神秘性をしっかりと拝聴していた者は理解できていると思うのだが、このような粗野な暴力でボクを傷付けられると思うかな?」
「うるせえ!ダまれペテン師が!」
 酒場の中は怒号が飛び交い、巨漢の筋肉質な腕や脚がセレマを痛めつけようとする。しかし見た目通りとはいかないのがイレギュラーズであり、セレマ オード クロウリーという美少年なのだ。内装が吹き飛ぶほどの暴力の嵐に晒されても、その美は揺らぐ事なく其処に在る。
「騙す事を美しいとまでは言わないが、騙される側は断言して愚かだ。そしてボクは愚者ではないという簡単な理屈が解らないかな」
 頭に血がのぼった巨漢が思い切りセレマの顔面を殴りつけようとした時、鋼覇斬城閃の一撃により壁ごと吹き飛んだ。
「遅くなりました。セレマさん、バレたみたいです」
「尋問を楽しんでいた所だよ、ルーキス君」
 外の掃除を終わらせたイレギュラーズは、ルーキスの開けた穴より酒場に躍り出る。
 先程吹き飛んだ巨漢がこの中では間違いなく戦闘に向いているのだろう。既に立ち上がり、当惑する事なく拳を構えている。
「おんや、皆様お揃いで。チェックインより始まり、チェックアウトの後の結末はチェックメイトと言った所でごぜーますか。くふ、くふふふ」
「本来であれば投降を進めるのですが、理解り合えぬ立場ゆえ」
「ボクはあの人が本当に人間だったとしてもそれを呑むとは思えないな!」
 蛍が剣を向ける。もはや巨漢の男は人間とは思えない言葉を発し、かのゼノグロシアンのようなものとなっている。これではまともな会話を望むことは不可能だろう。
「何度だってお前たちを倒してやる。そしてここを更地にしてやる!」
 ヨゾラのナハトスターブラスターが胸を穿つ。全身全霊の一撃はしあわせ村など消し飛ぶ程の威力を持ち合わせていたが、その刹那には風穴が再生を始めている。
「あぁ、何という醜さだ。やはりキミたちにボクを正しく知る事は無理な話だったか」
 セレマは殴り回された時に付着したであろう服のほこりを払うと、近くの椅子に座り直した。普遍のシナリオ、それは醜い敵は負けるという事だ。
「お前たちも望まない生き方を強要される、悲しい生き物なのかもしれない。だが、俺は先に進まなければならないっ!」
 ルーキスが男の右腕を斬り落とす。先に待ち受ける邪悪へ刃を届かせる為ならば何本でも、何十本でも断ってやろう。
「まぁ、本職に室内戦闘を挑むのは正直無理があるっスねぇ」
 美咲が地形を利用して執拗に攻め続ける。男が残った左腕で周囲を払う間に美咲は相応の対価を男に払わせる。
「ガアアアアッ!!」
「くふふ……魔物退治らしくなって来たでありんすねぇ」
 気付けば何人かは復活し、イレギュラーズが開けた穴やドアから転がり込んで来たがエマと黒子のラインを抜く事は敵わない。
「単純な物量作戦ですね。理想郷を突破する間にどれほどの数を相手にする事やら」
 黒子は迫りくる決戦の時、これらの選ばれし人が障害になる事を予測した。
「珠緒さんっ! 今だよ!」
 蛍を狙った攻撃は空振りに終わり、イレギュラーズの多くに背中を晒す致命的な失敗となる。
「貴方がたのしあわせは、どこまでなのでしょうか。この時点でもう消えていますか? 腕が取れたら? 首が飛んだら? 何度でも偽りのしあわせを消してあげましょう」
 堕天の輝きが終わりを告げる。石化した男は衝撃でバラバラに崩れ落ち、人のような物であった痕跡が其処に残った。
「やれやれ、少しは静かになったようだ。せめてもの嫌がらせとして徹底的にこの村を破壊しようじゃないか、ルーキス君」
 セレマが立ち上がる。復活する条件こそ未だ謎に包まれたままだが、目の前で即座に生き返る訳でもない。イレギュラーズはこの果てしない戦いを続けねばならない。遂行者との戦いで命を落とした者たちの為にも。
「辻斬りの次は解体業者か……鋼覇斬城閃って結構疲れるんですけど」
「爆薬でも補給要請を出した方が早そうっスね」
 美咲は何気なく石化した男のパーツを拾い上げる。薬品で痕跡すら残らぬように処理したにも関わらず彼らは復活した。体の一部が残っていれば復活するといった類の物でもない。厄介な相手だ、と目を伏せる。

成否

成功

MVP

ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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