シナリオ詳細
<THEO>˥ƎפIONƎ∀┴Ǝɹ
オープニング
●僅かな隙間
咀嚼音。
耳を塞いでも響いてくる。微かな微かな音が脳髄へと届いて。
奥歯を噛み締め震えを殺す。上だ。真上に『奴ら』がいる。気付かれてはならない。ここに私がいるのだと、決して気付かれては。
幼い頃はここによく隠れたものだ。両親が私を探している様子をここからよく見ていた。
あっちに行ってる。違うよここだよ。そっちじゃないよ。私はここだよ。
動き回る足だけがここから見えて。ああとても楽しい一時だった――はやく見つけてよと、あの時は思って。
今はただただ願う。決してここが見つかるなと。
今。ベッドの上で親を貪っている――あの芋虫人間達に。
●ローレット
「すまない、緊急の案件だ。即座に向かってほしい」
ギルオス・ホリス(p3n000016)はローレットに滞在していたイレギュラーズ達に言葉を紡ぐ。矢継ぎ早に、資料を広げて。
「目的地はここ――街中からは少し外れた所にある、商人の屋敷だ。ここが今、魔物に襲われている」
どうもそこから命からがら逃げだした使用人がローレットに辿り着いたようだ。ギルオスが話を聞いて、依頼として受け取ったという事か。しかし。
「襲われている……という事は、現在進行形なのか?」
「そう。生存者がまだいる筈だ――全滅していなければね」
侵入して幾何か。使用人がここに到達するまでにさらに幾何かの時間は経っている。
まだ生き残りはいるか。それとも魔物にもう――
「依頼の達成目標としては魔物……個体名『レギオニーター』の殲滅を第一としている。生存者がいる場合は助けられるよう動いてもらいたいが、それは君達に任せるよ。内部の現在状況にもよると思うしね」
生存者の無事……はひとまず置いたとしてもだ。
今レギオニーターは商人の家の中にだけいる。しかしもし自らの知覚内にいる者達を喰い尽くしてしまえば外に出るだろう。そうすればどのように被害が広がるか想像するだに恐ろしい。特に四方に散ってしまった際などは殲滅に面倒となる。逃してはならない。
「レギオニーターは周囲にある『あらゆる物』を捕食して体力を回復する傾向がある事が判明している。ただ……物を口に出来ず、腹が減っているとそれはそれで攻撃する力が上昇するみたいでね……注意しておいてくれ」
「あらゆる物……というのは」
「定義上の話ならば木、石、肉――何でもだね。文字通りあらゆる物を消化し、栄養と出来る」
ただ、それはあくまで『食せる』という範囲の話であって。
「彼らにも好みは存在する」
それは。
「――生きた人間の肉を、最も好むんだ」
●視線の合う時
咀嚼音が止んだ。
息が止まる。静寂が、耳鳴りだけを伝えてきて。
一秒。二秒。何も音がしない、三秒。四秒五――
「――ぁ」
手が掛けられた。ベッドの端に、両の五指が。その中央から何かが下りてきている。奴ら、だ。
奴らが、こっちを逆さに覗き込んで――
目が合った。
- <THEO>˥ƎפIONƎ∀┴Ǝɹ完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年11月02日 23時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
轟いた悲鳴。間に合わぬ命。消える灯。
しかしそれは敵がまだいるという事。大筋として『間に合った』とせねばならぬのが――この依頼だ。
「……なんでも喰らう芋虫人間、か。とても自然発生とは思えない……いや」
思いたくない、だな。と言葉を紡ぐのは『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)である。同時、拳の中で握りしめる石に光が宿れば、それは一種の照明代わり。彼の星産みのギフトである。
灯が生まれれば急がなければならない。これ以上の被害を出す訳にはいかないから。
「きき、気味の悪い奴らですね。これじゃ幽霊の方がいくらかマシです……」
「ああ全く――食性も悪いとは、いつからこの世はホラー映画の世界になったんだか」
カンテラに火を点ける『こそどろ』エマ(p3p000257)に、ウィリアムから石を受け取る『祖なる現身』八田悠(p3p000687)。それぞれ些か抱いた感覚は異なっていたものの――気色が悪い、という観点で奴らの感想に一致していた。
造形からして不気味で。そこに確かに『在る』という具現化は、あやふやな幽霊よりも現実性を伝えて来る。それこそが背筋に少しばかりのおぞましさを走らせるのだ。
ともあれ彼らは駆ける。まずは悲鳴の聞こえた地点へと。幾つか用意していた照明を頼りに――
「ちょっと、まって」
音を、『孤兎』コゼット(p3p002755)が捉えた。
何の音か? それは足音だ。超聴力たるその耳が捉えたのは。
「――レギオニーターか」
敵の存在。『赤の憧憬』佐山・勇司(p3p001514)は瞬時にそう判断した。数体現れただけで凄惨たる状況を生み出している化け物。こんな奴らが更に数を揃えて現れでもしたら――
「……いや今は考えるよりも、助かるかもしれない連中の為に」
力を尽くすのみ、と。曲がり角から現れる奴の姿をサイバーゴーグルで一早く視認して。
往く。まずは目の前の対処を優先。己に防御重視たる意識を施せば。
「まったく、もう……不気味過ぎておうち帰りたいっていうのに……!」
若干涙目心境ながら『マグ・メル』リーゼロッテ=ブロスフェルト(p3p003929)はそれでもここにいる。唱える不吉な囁きを、現れた敵に狙いを定めて。
「でもそういうのは奴らから隠れてる人の方こそよね……うう、やるわよ! やれば良いんでしょう!」
纏わせる。不吉なる威を。魔の渦を。
「――スティアちゃん! 行こうッ!」
さればそれに続いて『特異運命座標』サクラ(p3p005004)が地を蹴る。知り合いたる『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)へと声を掛けながら、狙うは短期決戦。
身と共に走らせる。刀を、鞘の中で。目にも止まらぬ剣閃は居合の領域――血飛沫が、舞う。
「うん、サクラちゃん――一緒に頑張ろうね!」
そして声を掛けられたスティアも続く様に。展開する魔法陣。放たれる遠術。
生き残りを救いたいのだ。こんな所で躓いてなどいられない。迅速なる行動を、まだ救える命の為に。
「――」
しかしそんな心情、知った事ではないとばかりにレギオニーターは至近の者らに手を伸ばす。
ああ腹が減るのだ。満たされないのだ。肉を食わせろ。生きたソレを――
蠢く粘液。滴る暗黒。撒き散らしながら、奴らも動く。
底無き食欲に、支配されながら。
●
「いいや。これ以上、誰もお前達には喰らわせない。お前の相手は俺達だ!」
勇司が往く。飛び散る粘液を、推進力を噴射する特殊なモノを用いて簡易なる飛行を行いながら、躱す。
粘液は這いずっている。情報通り、独自の動きを見せているようだ。あれをまともに受けてしまえば嫌悪は免れないだろう。そのまま直進しブロックする。伸ばされる手を弾いて、叩き込むは肘。
カウンター気味に響かせたその威力は痺れを抱かせて。
「生きた人間の肉が、一番好き? 食べてみたら、きっともっと、おいしいの、たくさんある、のに」
なんて勿体ないのだろうかとコゼットは言いながら、彼女も接近する。
奴らの味覚が如何であるのか分からないが。世には肉しか存在していない訳ではないのだ。人は、それを理解しているからこそ料理なる概念すら生み出したのだから。とはいえ今奴らにそれを事細かく説いてやる心算は無く。
放つ衝撃。ゼロ距離から、奴らを滅す為に。
今はただ――生きている人を助ける目的の為に。
「ひひ……まだ一体しかいないのなら今の内に――」
攻撃を集中させるべきですかね、と短刀をエマは構えた。
さればその時。彼女の耳、またも超聴力が闇夜の中で音を捉えた。それは己の少し前にある部屋の扉が開く音。粘液の這いずっている音――新たな敵の存在。
「いやいや――も、うちょっとその部屋に入っててくだ、さいッ!」
直後、エマは瞬時の判断にて前進。先に出ていた一体目とのすれ違いざま、無数の剣撃を叩き込みながら。開かれんとしていた扉を蹴って強引に――
閉じる。勢いよく音を響かせながら。遠くへ放るカンテラ。そして、用いるは気配消失だ。
奴らはどうも暗闇の中でもある程度こちらを察知しているらしい。それは闇に成れた目という事か。それとも優れた耳を奴らも持っているからか。いずれにせよこれで自身を感知されるか試してみて――
「――!」
だが戦闘中であったからか、移動の気配そのものを最初から察知していたが故か気配消失が上手く働いていないようだった。レギオニーターが扉をぶち破ってエマの方を見ている。恐らく戦闘の始まる前から動かずに潜んでいれば結果は違っていたかもしれないが栓無き事。
振るわれる拳。無手にて防いで。軋む骨だが、まだ芯には届かず。
「エマちゃん……! こ、の――!」
その様子を見たサクラが行動する。一体目のレギオニーター。
己を喰わんと芋虫の口を開けている、その顎を足で直上に撃ち抜いて。
「邪魔、だよ!」
この個体は勇司のブロックに任せよう。己はエマを襲っているもう一体の方への加勢へ。
抜く居合。振るう横薙ぎ。レギオニーターが咄嗟に腕で防げば、その腕に刀がめり込んで。
「……!」
レギオニーターの呼吸が聞こえた気がする――と、同時。サクラは一瞬停止した刀を掴まれて、そのまま破砕された扉の奥へと投げ飛ばされる。壁への激突直前、翻した身の体勢でさほどのダメージは無かった、が。
その目には、部屋の中に存在する死体が映って。
「ッ! 間に合わなくて、ごめんなさい……ッ」
死んで間も無き酷き死臭。口元を抑え、奥歯を噛み締め。間に合わなかった悔しさと怒りを――目に宿す。
「……弔いは後だな。なんたる食い散らかしだ……醜悪とも言うべきか」
死体はほぼ喰われている。残っているのはパーツの隅と隅。旨い所だけ食べたのか。それとも無造作に食っているからなのか。いずれにせよ害のみであると断ずるウィリアムが放つは――剣撃の嵐。
開かれる『星界』への扉。放たれる無数の大剣。壊す殺す。残してなるものか一片たりとも。
「嫌な造形。嫌な喰い方……あぁ本当に。ホラージャンルになんて付き合うものじゃないね」
更に悠も。接敵し、触れた指先から放つは――再生を転じた攻撃の威。
逆再生だ。レギオニーターの身を、文字通り再生させながら殺す。
「僕はどちらかと言えばファンタジー側なんだ。相容れない押し付けのホラーにはご退場願おう」
全身から血飛沫が舞う。更には血反吐も――否。
粘液だ。黒いそれが、最後の妄執と言わんばかりに撒き散らされる。蠢く。不快なソレが。不穏なソレが。
特に至近に位置する物は躱し辛く――浴びる者も当然いる。
「うあ……く、そ。まさかこっちが本体とか、これを記しに認識するとか、そういう事はないよね」
「流石にそれは無いだろう。如何に正体がよく分からない化け物と言えど、な」
悠の懸念に勇司が返答を。あくまで吐瀉物。あくまで粘液。
不吉なる効果はあれどそれ以上の意味は宿していないだろうと。
「傷が深い人は言ってね――回復魔術、施すから……!」
一体は倒した。ひとまずこの場にはあと一体と、スティアは視線を巡らせる。
回復魔術の用意はいつでも出来ている。今までこそ回復の必要なしと遠術など攻撃を行っていたが、時が長引けばそうではなくなってくるだろう。ましてやこの粘液。こちらへの不利な影響を及ぼしてくるものだから。
「ひーんやだやだ……触れたくないし気持ちが悪いし、ああもう! 早く倒れなさいよ!」
展開する魔法陣。リーゼロッテの放つ雷撃が、残ったレギオニーターの身を焦がした。味方に当たらぬ様角度を調整して……屋敷にダメージが往く? 緊急の事態である故、その辺りは見逃してほしい所だ。
ともあれ、実は彼女には同時に行っている事があった。それが――ファミリアーによる探索だ。
その行動自体はウィリアムもだが、とにかく二人は創造した動物にて、己らとは違う方向を探索させ続けていた。鴉にカンテラを。ウィリアムの方は猫に輝石を咥えさせて、ある程度視界を確保しながら。
五感の共有による探索の効果は飛躍的にその効率を上昇させていた。ここにいる八人に加え、プラス二体。今の所はまだレギオニーターの姿も何も見えていないようだが――
「――と!?」
だが瞬間、リーゼロッテの共有していた視界が突如として暗闇に閉ざされた。
いや、正確には微かに見えていた。グロテスクなまでの、芋虫の口が鴉の目を食い破る様を――だから。
共有を即座に切り離した。場所は、ここから少し離れた所の……
●
肉の感触がなかった。どこかへと消えてしまった。
血の汚濁を飲み込めず、貪る肉の生臭さがどこにもない。
なんだこれは不愉快だ。ああ、腹が減った。なんでもよいから噛み砕きたい――
「家具、でも、どうかな?」
そんなレギオニーターにコゼットは背後から強襲。
相手が振り向くよりも早くその後頭部を蹴り抜き、近くの家具へと口を突っ込ませる――飢餓状態の奴らは危険だからだ。ただでさえ人間を狙うというのにそこから攻撃性の上昇は決して馬鹿に出来ない。
だから先んじて口に別の物を突っ込んでやる。要は奴の食欲を満たしてやれば良いのだから。
「ん、とっ?」
が、突っ込ませた家具――机が凄まじい速度でその形を失っていく。
木でも石でも何でも良い。腹に入ればそれでよいとばかりに破砕音を響かせて。
「レギオニーター……全てを食らう化け物か。成程、間違いではないようだ」
勇司がその様を見て言う。あらかた喰い尽くした奴が次に目を向けるのは、こちらだ。
飢餓感を抱いている上でもある程度の好みはあるらしい。道中の椅子の上部を食いちぎって、食しながら前進してくる。飢餓の怪物。悪食の権化。
鈍器の如く振り下ろされる奴の腕。勇司は自らの盾を構え、迎え撃つ――も、初撃の相手より遙かに重い一撃の圧に、勇司の身が揺らぐ。盾から響いてくる衝撃は想像以上であった。
苦悶。されど、その身はまだ倒れる程になく。
「ここまでだ、化け物ッ……!」
むしろ目に炎が宿る。ここで終わるかと。ここでこいつらに押されるべからずと。
撒き散らされる粘液に臆する事もなく――海洋の曲刀を、真横に振りぬいた。
「――!」
今度はレギオニーターの方こそが苦悶を見せた。飢餓に加えた激痛は精神的に奴を追い詰めている。腹が減った痛い痛い食べたい食べたいなんでもいいから――と。
「そんなに食べたいなら、これでも……! え――いッ!」
「結局何でも良いなら、平和的に共食いでもしときなさいよばか――! あほ――!」
だからとばかりに、スティアとリーゼロッテは近場にあった花瓶を放った。
次に灰皿。次に椅子。次に――とにかく近くにある物を、だ。小さい物は瞬時に食べられ、奴の身の回復が増すばかり。されど囮を食している間は幾ばくか攻撃の圧も弱くなっている。そう。
「できる事は全部やらないと――ね! サクラちゃん!」
スティアが視線を動かした先。そこにはサクラが居た。
彼女のみが扱える自身の聖刀を握り締める。抱く思いは撃滅の意志。
全力なる一撃をその一刀に。鍔鳴りの音と、敵への接触はほぼ同時で。
「――大本を絶たないと根本的な解決にはならないだろうけど」
今この場においては。
「この手に届く事象を、全力で果たすのみ……だよッ!」
高速なる刀を戻したと同時。レギオニーターの腕を、今度はこそ斬り落とした。
腕が地に落ちる鈍い音が響き渡る。奴に人間らしい痛覚と意志があれば悲鳴をあげていたかもしれない。が、まぁあったとしてもやることは変わらぬと。
「えひ、えひひひ……御命、頂きです」
死角から詰め寄っていたエマの一撃が、レギオニーターを捉えた。
超聴力である程度分かるのだ。奴らが来る方向。いる方向。犠牲者の足音。悲鳴。抵抗の音――それが弱くなっていく、間に合わない音。全て正確に、とは言わないが。
お前、ついさっき人を喰ったろう?
「ひひっ……ま、あえて口に出して言わなくていい事もありますよね」
「……? ま、まぁこれで後一体かしらね! 早く倒して帰りま――」
しょ、という言葉をリーゼロッテが続けようとしたその時。窓を突き破って部屋に侵入してきた個体が居た。レギオニーターだ――先の戦闘音に紛れ、近付いていたのか。あるいは意図してのものでなく偶然の一種であったのかもしれないが。
「こいつは……」
瞬時、ウィリアムが気付いた。この個体は『最初の悲鳴』の者を食らった固体であると。
なぜならば若い霊の姿が見えたから。それも、まだ死んだばかりのような霊魂だ。襲いくるレギオニーターの一撃を己が杖で防ぎつつ、ならばと彼は試す。
「――家族は両親だけか? それとも」
軋む杖。されど折れる事は無く。故に、他に家族はいないか――と言葉を紡ぐ。少しでも生存者の情報が分かればと。意志に応えてくれるだけの疎通が出来ればと。微かな希望を抱けば。
ほんの僅か。霊の視線が動いた気がした。
どこを見た? 生存者? いや、違う。なんだ? 動いたであろう先にあるのは――クローゼット?
「……隠れられる場所か! 皆、そっちに行かせるな!!」
「もうひと踏ん張り、か!」
霊の情報が正しいかは中を見てみなければ分からない。しかし勇司の所持する、助けを求める声を察知する能力も確かにこの周囲で反応していた。いる可能性はある。人が潜めるぐらい余裕のある大きさなのだから。
ならば敵を近付けさせる訳にはいかない。今までの様子から察するに、家具に食いつかれれば『そのまま』中諸共食い尽くそうとするだろう。これまでは家具を投げつけて注意を逸らしていたが、守らなければ成らない訳だ。
「そこにいるなら下手に動くな! 暫くそこにいろ!」
悠が声を張り上げる。生存者への勧告の為。レギオニーターの注意を引く為。
己が身に肉体再生の術を再び施しながら備えの構えを見せる。後一体。後一体なのだ。
勇司が前面に。サクラが再なる居合の構えで、エマが無数の斬撃を背後より。ウィリアムが距離を取って大剣の魔法陣を展開。移動中に呼吸を整え回復を行っていたコゼットがナイフを通してレギオニーターへ衝撃を。
圧倒的な連打が叩き込まれる。されどレギオニーターも飢餓への苦しみから凶暴性を増していた。人一人食べた程度では満足できないのだ。より多くの血を。より多くの肉を求めて。
「くっ――」
特に前面を強く受け持っていた勇司へと食らいつく。されば、捕食するかのように奴の口が蠢いている。腕の、肘辺り。ジェットパックがあるとはいえ、流石にこの至近で粘液を浴びせられれば嫌悪感も更に増して。
だが、こんな傷を負った程度でなんだというのか。瞼に焼きついたかつての『誰か』の姿は。
「こんな程度では、決してなかったッ!」
あらゆる嫌悪を拭い去り。彼はレギオニーターへと――頭突きを見舞う。
響く衝撃。伝わる確かな威力。揺らぐ敵の姿はあと一歩で。
「私達はローレットだよッ! 危ないから動かず、そのままで! 大丈夫必ず助ける!」
「間に合ったんだ……これ以上の被害は、出させないよ!」
クローゼットの中で震える生存者へ、サクラとスティアが声をかけつつ。
「この偉大な魔女が来たからには大丈夫! ――もう犠牲者は出さないわ!」
偉大なる魔女(未来・予定・希望)たるリーゼロッテが魔力を集約させ。
「……生きたまま、食べられるなんて、ひどい、よ。気持ち、が、分からない、のかな?」
その魔力が放たれると同時に、再びコゼットが攻撃を集中。レギオニーターに重ねられた傷が、耐久の域を超えれば――致命がついに心の臓へと到達し。
奴の姿が崩れ落ちる。最後の一撃、敵の生命を吸い取る術を放った悠はそのまま言葉を繋いで。
「例えどれだけデキが良かろうと」
バッドエンドなんて碌でもないモノは。
「――少ない方が世界は善く回るだろう?」
少なくとも己は、そうであろうと確信している。
悪夢の終わりは、ハッピーエンドで。
この日、屋敷に現れたレギオニーター四体は――確かに討伐されたのだ。
「……」
そう。確かに討伐されたのだ。ウィリアムは魔物の知識を総動員しながら、レギオニーターの死を検分と共に確かめていた。
お前らは一体どこから来たのかと、思いながら。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加どうもありがとうございました!!
これにてレギオニーターの一幕は終わりです。
無事に四体全ての討伐に成功しました。探索は効率よく、戦闘も危なげがなかったと言えるでしょう。
その中でも戦闘において前線を支え続けた貴方にMVPを。
実際に行えるステータスもあった上での素晴らしいプレイングだったと思います。
それでは、改めてご参加どうもありがとうございました!!
GMコメント
■依頼達成条件
レギオニーターが外に出る前に殲滅。
生存者の救出は本依頼に関係ありません。
■戦場
商人の屋敷。そこそこ広い屋敷です。
中は暗闇に閉ざされていますので光源か暗闇に対する能力があると探索しやすいでしょう。
内部からは時折犠牲者の悲鳴が聞こえてくることがあります。そちらに最低でも一体はいると思われます。
――なお。これはメタ視点の話になりますが、冒頭の子は間に合いません。
捕食されている悲鳴が響いている中で依頼スタートとなります。
■エネミーデータ
レギオニーター×4体
・頭部が芋虫で、人間のような体をした生物。
・非常に食欲旺盛で何でも食べられるが、特に生きている肉を好む。
・物理攻撃力・反応・回避に優れている。
・ターン経過や特定の行動で《飢餓感》を覚え、それが一定値に達すると凶暴化し、攻撃性が上昇します。また、追加行動として《捕食》を行うようになります。この状態は《捕食》を何度か行うことで解除されます。
《捕食》
周辺の木々、石、肉、その他口に入れば何でも食べようとします。
また、この行動によりHPが回復します。
《粘液》
毎行動後に回避判定を行い、失敗すると不吉のBS効果を受けます。この判定難易度はターン経過で上昇します。浮遊していると、判定にプラス補正がつきます。レギオニーターの至近距離にいるとマイナス判定がつきます。
レギオニーターから出ている黒い粘液。
よく見ると自分で動いている。触れると這いずっている感触が嫌でもわかる。
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