シナリオ詳細
<尺には尺を>おねがい、わたしのものになって
オープニング
●独占欲
写真の貼られた部屋だった。
アーリア・スピリッツ(p3p004400)の写真だった。
一枚、二枚、三枚、四枚、五枚六枚七枚八枚――。部屋中に、壁中に、天井に至るまで張り巡らされた写真はすべて、アーリアのものだ。
その部屋の中心で、椅子に座った少女ははあとため息をつく。
「ルスト様の権能で、理想の姉を作って貰うのはどうかな?」
ふと聞こえてきたのは、部屋の中にいつの間にか立っていた教祖の声。
「それは、最後の手段です」
少女――星灯聖典の遂行者、洗礼名トゥールーンは吐き捨てるように言う。
「そう……けれど、彼女が君のものになるとは思えない。そう選択することがあるとはとても」
「ちがう!」
トゥールーンはスタンドランプを蹴飛ばして叫んだ。
「お姉ちゃんは分かってくれる! あのメディカがお姉ちゃんを縛ってるんだ! 周りの連中がお姉ちゃんを縛ってるんだ! 全部ぶっ殺せば……全部ぶっ壊せばお姉ちゃんは私の言うことを聞いてくれるもん!」
派手に蹴飛ばされたランプは壊れ、残骸が床に転がる。
「そう……ならば、そうすればいい。彼女が遂行者になってくれれば、話は簡単だったのだけれど」
「なってくれる! 絶対なってくれる! だって、だって」
トゥールーンは両手を頬に当て、顔を真っ赤にして瞳を歪めた。
「アーリアお姉ちゃんは私だけのお姉ちゃんなんだから……!」
●されど先へ進むための
「へえ。では叩き潰しましょう」
角砂糖いっぱいの紅茶を片手に、異端審問官メディカは笑顔も笑顔でそう言った。
「そこにいる、うっかり帰ってこなかった姉と一緒に」
「メディカ?」
「薔薇庭園とやらはさぞかし居心地が良かったんでしょうね?」
つんと顎を上げて不貞腐れてみせる姿は少女めいていたが、これでもれっきとした大人の女である。
なにせアーリアの妹なのだから。
「ちゃんと帰ってきたじゃない。ね?」
「『ね?』じゃありません。もう」
二度と帰ってこないかと思ったんですから……とは、口に出さない。代わりに角砂糖の味しかしない紅茶を口に流し込む。
彼女たちを救い出すため、そしてルスト・シファーを表舞台に引きずり出すため。イレギュラーズたちはテュリム大神殿への殴り込みを決行した。
その甲斐あってと言うべきなのか、行方知れずと鳴っていたアーリアたちは『何らかの選択』をし帰還。今はイレギュラーズたちと合流している。
かちん、とティーカップを置くメディカ。
「それで……テュリム大神殿の先はどうなっていたのですか」
そこは『理想郷』であったという。
『選ばれし人』たちが住まう、理想郷。
誰もが死ぬことなくいつまでも幸福に暮らすことができ、飢えることも病めることもないという。
なぜなら、『真なる主』がそのように人々を、そして場所を作り出したからだという。
「その『理想郷』は幾重にも施錠され、進むためには突破しなければならない障害がある」
情報屋はそのように結んだ。
「その障害というのは? 分かっているのでしょう?」
「トゥールーン。星灯聖典の遂行者です」
という話からの、冒頭の言葉なのである。
「とにかく、敵の戦力を纏めましょ? ミアちゃん――トゥールーンだけじゃないんでしょう?」
「ええ、もちろん。花咲く庭園には『予言の赤騎士』が待ち構えており、炎の獣たちを引き連れて我々を迎え撃つでしょう。その中に、トゥールーンも加わっているのです」
「へえ……」
メディカはそれ以上言わなかった。『では叩き潰しましょう』と言うに決まっているので、続きをわざわざ問わなかった。
- <尺には尺を>おねがい、わたしのものになって完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年11月16日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
りん――とどこか遠くで鈴の音がした気がした。
花咲く野原と美しい一軒家。
空は晴れ渡り、どこか美しい歌まで聞こえるようだ。
だがそれは、傲慢の呼び声の混じった不快なる響きなのだった。
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は閉じていた目を開き、一人の人間として、あるいは天義の聖職者として、呟く。
「ここが理想郷。
綺麗な場所だとは思うけど……。
同時に嫌な感じもする場所だね。
ここで生活していておかしくなったりはしないのかな?」
いや、あるいは、もう既におかしくなっているのだろうか。だからこそ、かのトゥールーンなる遂行者は……。
「美しい場所だね……。
だが……そんなことがどうでも良くなるほどに、あのトゥールーンなる者からは底知れぬ妄執を感じる。
アーリア君や仲間達の為にも、なんとしても奴を倒してこの先へ進まねばなるまい」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は腕組みをして、重々しくそう呟いた。
そう、妄執、だ。
あのひとりの女を突き動かしているのは、妄執。
「何やらめっちゃ込み入った事情やら感情やらが空回りしてそうではあるけど……」
ぽりぽりと頬をかく『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)。
「とりまアーリアさんは連れ去られるワケにはいかねー」
「その通り。生憎彼女をあちらへ渡すわけにはいかないのでな。思う存分抵抗させてもらおう。
というより、あのトゥールーンとやらはまだアーリア殿を狙っているのか」
「どうやらそのようね」
『薄明を見る者』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の言葉に、『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)が重ねるように言う。
「私に兄弟とか姉妹とかはいないけれどそんなに欲しいものなのかしら」
「さあ、な」
肩をすくめるブレンダ。
ハッキリしていることは、彼女たちのなかでひとつだけだ。
『くれてやるわけにはいかない』という、ただそれだけ。
「うぅ、思い出したわ……むかーしメディカのご機嫌を損ねて口きいてくれなかったこと」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は二日酔いで頭を痛めたときのように、額に手を当ててうーんと小さく唸った。
「変わった所もあるけれど、変わらない所もあって。
ミアちゃんはきっと、私の変わった所を見ていない。
私ってばこーんなイイ女になったのに、ね」
「…………」
そんなアーリアを横目でじっと見つめる『ただの女』小金井・正純(p3p008000)。
「なあに、正純ちゃん、その顔」
「いえ……アーリアさん、なんというか色んな方面から愛されてますね……?」
限界まで言葉を選んだ正純の言いように、アーリアはもう一度唸って額に当てた手をすべらせる。
「それにしても、花畑、庭園。……最近あの場所から帰ってきた身としてはあまり落ち着かぬ場所ではあります」
「そうね。あの場所も相当な……」
ハッとして振り返ると、メディカがニコニコ糸目で笑っていた。
相当怒っている時の顔だと察して黙るアーリア。
そんなメディカに、『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)がぽんと肩を叩く。
「はじめまして! アーリアさんの友達で天義の聖騎士、サクラ・ロウライトだよ。よろしくね!」
「あら、まあ。よろしくおねがいします。アーリアお姉様の妹でメディカと申します。あなたとは……なんだか、親近感をおぼえますね?」
「そう? 偶然だね、私もそう思ったところ」
なんだか不思議な同盟が組まれつつある。
そう思った矢先、がちゃりと屋敷の扉が開いた。
「お姉ちゃん、来てくれたんだ。周りの人は……なあに?」
姿を見せたのはトゥールーン。彼女はハンマーを握りしめ、今にも人を殺しそうな目でこちらをにらみ付けている。
途端、ぼっと炎が燃え上がり焔の赤騎士ルドルフォンが姿を見せる。更には次々と人々が集まってきて、彼らは自ら望むかのように焔に包まれ、炎の獣へと変じていく。
「アーリアお姉ちゃん。二人だけでお茶会をしよ? ここにいればずっとずっと幸せになれるよ。刻印を刻んでもらお? 他の人は……ここで死ね!」
トゥールーンの妄執に突き動かされるかのように、赤騎士ルドルフォンと炎の獣たちが走り出す。
●
誰よりまず飛び出したのは、手を繋いだアーリアとヴィリスだった。
ダンスを踊るようにくるりとステップを踏む二人。
踏んだステップは舞踏魔法のそれを成し、光の妖精が次々と踊りながら飛び出していく。
迫る炎の獣の群れへめがけ、ヴィリスのステップが迎撃にかかったのだ。
妖精たちが炎の獣にすがりつき、あるいは手を取り、時にその様子を無防備にし、時に自らを傷つけさせる。
「こちらにもあちらにも騎士と騎士。狙われる女と狙う女。ええ、ええ、いい題材じゃない!
でもあちらの騎士は役者不足でこちらの騎士は役不足。主演がいいのに勿体ないわ。
だからせめて周りの私たちが盛り上げて魅せましょう!」
「ええ、まずはお邪魔な周りからお相手ね」
アーリアは弱った炎の獣たちめがけて『メイヴ・ルージュ』の魔術を発動させた。
紅い唇から紡がれる声色が、呪いのように炎の獣たちに激しい重圧を降り注がせる。妖精たちがケタケタと笑い、炸裂した呪いは炎の獣たちを次々に消滅させていった。
「炎の獣……普通に倒した時と変わらない。死体が残らないって点では、大きく違うのかな」
理想郷の仕組みを知ろうとしていたスティアは、その様子を深く観察していた。
どうやら『選ばれし人』たちは死してもリポップするらしい。その仕組みはルストの権能によるものだが、深く観察しても『そうなるように作られた』としかわからなかった。いや、逆に種も仕掛けもないということなのだろうか。
「次は、私の番。獣たちを抑えるね」
スティアは天使の羽根のように散る魔力を旋律に変え、複音を鳴り響かせた。
術中にはまった炎の獣たちはその音に魅入られ、スティアから目を離せなくなる。
密集する獣たちに対して抵抗するように、『天華』の結界を展開するスティア。
ガガガッと結界にぶつかる炎の爪や牙。それらはスティアの眼前で止められる。
「良いですね。どうぞそのまま」
メディカがハンマーを振り回し、炎の獣たちを次から次へと吹き飛ばしていく。
一方で、赤騎士ルドルフォンはスティアの術中から逃れ、攻撃する相手を吟味している様子を見せていた。スティアの術から逃れた炎の獣たちを盾にしつつ、である。
赤騎士をすぐにでも倒したいこちらの気持ちを遮るように。
が、それは双方同じ事である。
「お姉ちゃん」
「おっと」
すぐにでもアーリアのもとへ向かいたいトゥールーンを、ブレンダが剣を翳して遮った。
「お姫様を奪うのならまずは護衛の騎士を倒すのが筋というものだろう?」
「そこを退け!」
豪快に振るわれたトゥールーンのハンマーを、あろうことか剣で受け流して回避するブレンダ。
「そんなものでは通してはやれないな」
「この……!」
ハンマーをぐるぐると振り回し、更なる攻撃を仕掛けてくるトゥールーン。
ブレンダはそれを軽やかに回避――しそこねて剣で攻撃を防御した。
「――ッ!」
以前より強さが増している?
吹き飛ばされまいと足でブレーキをかけつつ、ブレンダは相手の強さに息をついた。
「そっちはまかせたよ!」
マリアは地面を強く踏み込むと、紅蓮の雷を身体に纏い飛び出した。
狙うは赤騎士ルドルフォン。
「異世界人の私ですら肌に感じるこの悪寒……! アーリア君が感じる呼び声はいかほどのものか想像もつかない! さっさと決着を着けてしまおう!」
「――!」
そうはさせるかとばかりに間に割り込んでくる炎の獣。
マリアは邪魔だとばかりに拳を叩きつける。
プラズマを伴う神速の二連撃だ。拳に纏った雷と、そして炎。それらは炎の獣をして叩きのめすに充分であった。
「どうもぉ~uber dopeです。イケメンのお届けに参りましたァン。
大変申し訳ございませんがお前は前座ですって事で早々に舞台袖に引っ込んでもらおうか!」
そこへ加勢しにかかったのは千尋である。
豪快な跳び蹴りから入った千尋のコンボラッシュは炎の獣を民家の壁にまで追いやり、フンと勢いをつけて繰り出した拳は壁をぶち抜いて破壊した。
反撃にと爪を繰り出す炎の獣。だが千尋はそれを軽やかなステップで踊るように回避する。
そしてくいくいと指で手招きして挑発する始末。
「ってことで、今じゃね?」
「悪いけど、アーリアさんは私の大事な友達なんだから! 貴方には上げられないよ!」
サクラが一気に突っ込み、『閃華』を繰り出す。聖刀『禍斬・華』に集中させた光の闘気が邪魔しようと割り込む獣に叩きつけられ、光は激しく拡散する。
それはスティアの福音を逃れることができた炎の獣たちでさえ逃れることの出来ない、眩い光だった。
「さぁ、こっちにかかってきなさい!」
ついサクラに意識を集中させ、襲いかかってしまう。
「ほう……」
そこで初めて、赤騎士ルドルフォンは小さく声をあげた。
「獣たちをすべて術中におさめるとは、さぞ名のある騎士なのであろうな」
名を問う――より早く、正純の矢が飛ぶ。
「――ッ!」
ぱしりと矢をキャッチする赤騎士ルドルフォン。
そうなることを予期していたの如く、正純は『解鎖・天理』に既につがえていたもう一本の矢を放った。
思わず切り払う矢。しかし矢に込められていた魔術が至近距離で爆発し、『ケイオスタイド』の魔術が周囲へ激しく拡散する。
「フン。まずは貴様から潰すべきやもな……!」
赤騎士ルドルフォンは正純を標的と定めるや、一気に距離を詰めて剣を繰り出してくる。
素早く弓を叩きつけることで剣の攻撃を防ぐ正純。
剣に纏わせた紅蓮の炎が燃え上がり、正純の顔を茜色に照らした。
●
まるで迫る壁のように。
スティアは展開した結界で炎の獣を防ぎながら、赤騎士ルドルフォンへと距離を詰めていく。
連続してならされる福音は、術中から逃れていた獣たちさえもスティアに意識を向けさせ、ついには大量の獣がスティアへと迫るに至る。
だが、スティアを潰すことはこれだけ大勢の獣をもってしてもかなわなかった。
まるで美しいスノードームのように、結界の内側に天使の羽根を散らしながら悠々と進むスティア。それを止めることが叶わないと知るや、赤騎士ルドルフォンはスティアと、そして同じように結界を展開して獣たちを阻むサクラを無視することを決める。
だが、彼女たちの【怒り】の付与に耐えている余裕は、どうやらなくなりつつあるようだ。
「私の出身世界では神は実在したが、敬うべき存在であり同時に倒すべき敵でもあった。
そんな私の眼にすら、君達の信仰はいささか異常に見える。信仰はいいさ、信じ敬うのは個人の自由だ。だがそれを強制したりそれを理由に誰かを傷付けていいはずがない!
そんな教えを吹聴する神が存在するならば私にとってはただの倒すべき邪神だ! 覚悟しろルドルフォン! 押し通る!」
守りのなくなった赤騎士ルドルフォンへとマリアの強烈なパンチが襲う。
プラズマを伴った例の二連撃だ。一撃が赤騎士ルドルフォンの顔面へ、二撃目が胸へとそれぞれ叩き込まれ、たちまち赤騎士ルドルフォンは炎に包まれる。
反撃とばかりにマリアに剣を叩きつけようとする赤騎士ルドルフォンだが、自らの剣に纏っていた炎が消えていたことに気がついた。
「力を奪われていたか――不覚!」
瞬間、ヴィリスの舞踏が光の妖精たちを湧き上がらせる。
「私たちの相手は荷が重かったわね。赤い騎士さま」
「何っ――!?」
これまでいくつものBSに絶えてきたその身体に、妖精たちの重圧がのしかかる。まるで針の上で踊れるような軽くて小さな妖精たちが、しかしあべこべに重く、そして苦しい。
「ぐ、おおおおおお!」
抵抗しようと剣を振り回す赤騎士ルドルフォンだが、もはやそれは悪あがきでしかなかった。
光の妖精に包まれた赤騎士ルドルフォンはまるで大量のなにかに食い尽くされるように鎧を削り取られて、内側から爆ぜるように破裂して消え去ったのだった。
「もう一曲よろしくて? アーリアお姉様」
さあ次はトゥールーンだとばかりにくるりと向き直るヴィリス。
マリアもまた、トゥールーンへと向き直る。
「君の考えは決して大事な人を幸せにするものではない! 心改めて投降したまえ!」
「きゃは――誰がするか!」
トゥールーンのハンマーがサクラへと襲いかかる。
張っていた結界がバキバキに破壊され、余った衝撃によって吹き飛ばされるサクラの身体。
しかしサクラは剣を地面に突き刺すことでブレーキをかけ、踏みとどまった。
「貴方はアーリアさんにわかってほしいと思うばかりでアーリアさんをわかろうとしなかったよね。
自分がこうあって欲しいってイメージを押し付けるだけじゃ、わかり合うことなんて出来ないんだよ!」
叫びながら繰り出した一撃は光を纏い、トゥールーンへと叩きつけられる。
が、トゥールーンを覆う球系の『聖域』はサクラの腕をもってしても破れないほどに強固だった。
ならばと剣を一度おさめ、居合術によって全力を叩きつけるサクラ。
直後、空中で縦向きに回転しながら突っ込んだメディカがトゥールーンの脳天を狙ってハンマーをたたき落とす。
聖域に阻まれたものの、ばきりと聖域にヒビが入る。
「あっ、メディカちゃんも突っ込みすぎない方がいいよ危ないから!」
「危険は承知の上ですよ」
「そういう性格!?」
ならばと千尋は強烈な後ろ回し蹴りでもってトゥールーンの結界をついに粉砕した。
「食らいやがれ地元で恐れられた伝説の肩パンをよ!」
向きだしとなったトゥールーンの肩を狙って拳を繰り出す千尋。
しかしトゥールーンもさるもので、腕を固めて千尋のパンチをガードする。
そこへ、正純の矢が鋭く走った。
ざくり――とトゥールーンの腕に突き刺さる。
「独りよがりの想いは、届きませんよトゥールーン。
特に、貴女の求めるお姉さんは人気者で高嶺の花。
それこそ、神にでも楯突く気でなければ手折ることは出来ないでしょうね。
その気がないなら、今日のところはお帰りなさいな」
「――ッ!」
ぎりっと歯を食いしばるトゥールーン。
一方で、正純は内心で息をついていた。
(……祝福を失ってから、初めての戦いでしたが割となんとかなっていますね。
星の力はまだ残っている。あの声が届かなくても、祈りに縋らなくても、私は前に進める。
これからも……)
そこへ、ブレンダの強烈な剣がトゥールーンめがけて炸裂。
派手に吹き飛んだトゥールーンが地面をハンマーごと転がっていく。
「君のような者を何というのだったか……ああ、そうだ。ストーカー、というらしいぞ?」
「ああもうブレンダちゃんそんな直球な……!」
「何も違いはあるまい」
対して。
「ストーカーじゃ、ないもん」
ゆらりと立ち上がるのは、トゥールーン。
「お姉ちゃんなら分かってくれるよね。だってアーリアお姉ちゃんだもん。私の気持ち、分かってくれるよね……!」
縋るような眼差しに、アーリアは……。
「ああ、でもそうねぇ、独りよがりな愛は嫌いだわ! ――行きましょ、メディカ」
「ええ、お姉様」
アーリアの瞳が放ったのは、明確な拒絶の色。
「ねえ、ちゃんと「私」を見て。
此処は確かに素敵な場所だけれど、酒場もない場所に住むのは御免よ」
「そんな――」
放たれるアーリアの魔術。そして、メディカのハンマーインパクト。
愕然とした表情のトゥールーンは派手に吹き飛び、そして綺麗なお屋敷の壁を破壊しながらその内側へと転がり込んでいった。
追いかけて走るアーリア。
今度こそ――と踏み込んだところで、そこには……誰もいなかった。
アーリアの写真が大量に貼り付けられた部屋が、あるだけで。
「逃げられた、か」
ブレンダが呟き、剣をおさめる。
「だがきっと、次が『最後』だ」
確信を帯びたその言葉は、誰の身にも染みるものだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●シチュエーション
遂行者トゥールーンを倒し、この先へと進みましょう。
成功条件はトゥールーンの撤退となります。
●フィールド
美しき庭園です。晴れた空から光がさし、花畑は綺麗に飾られています。
その向こうにはトゥールーンが与えられた小さな家があり、トゥールーンはこの場所で『アーリアお姉ちゃん』といつまでも永遠に一緒に暮らすことを夢見ているようです。
また、空間全体に傲慢の『原罪の呼び声』が響いているような気味の悪さが漂っています。
●エネミー
・赤騎士ルドルフォン
予言の騎士のひとつ赤騎士です。周囲の人間を炎の獣に変える力を持っており、『選ばれし人』たちを素材に炎の獣を作り出しているようです。
選ばれし人たちは倒されれば元に戻ってリポップするためこうなることをなんとも思っていません。どころか騎士の役に立てて幸福とすら思っているかもしれません。
赤騎士ルドルフォン自体は平均的なスペックをしており、徐々に回避と抵抗が上昇する性質を有しているようです。
・トゥールーン
星灯聖典に属する遂行者のひとりです。『アーリアお姉ちゃん』を遂行者にして永遠にこの理想郷で暮らすことを夢見ています。
自らの防御を固めて突っ込むタイプのパワーアタッカーで、障害となるものをすべて叩き潰すつもりでいるようです。
戦いながらもおそらく、アーリアに対して「私と一緒に遂行者になって」と呼びかけてくることでしょう。
●味方NPC
・メディカ
アーリアの妹であり、異端審問官のメディカです。かなり天義の中でも過激派なところがあり、不正義とみるや叩き潰す暴力的な性格をしています。
過去に色々あったことで若干だけ丸くなったようですが、過激なところは相変わらずのようです。
バトルスタイルは聖なる力で身を守りながら敵陣に突撃してぶん殴るというパワーアタッカーです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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