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シナリオ詳細

<尺には尺を>その理想、認めがたきものなれば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●理想の……
 そこにはただ、笑顔があった。
 まるで天義の一都市であるかのようで、しかし何処とも判別できない場所。
 されど何処にもおかしな場所はなく、おかしいことがあるとすれば何処にも偉ぶっている人間が居ないことだろう。
 何処にも騒ぎはなく、誰もが笑顔でいる。
「あはは、待て待てー!」
「待たないよーだ! っと、あっ」
 追いかけっこをしていた子供たちのうちの1人が転びかけて、しかし1人の男の差し出した手に支えられる。
「おっと、気をつけなさい。転んだら怪我しちゃうぞ」
「はーい!」
 あくまで子どものことを想った言葉に、子どもたちも素直に返事をする。そのあとは追いかけっこをやめて、じゃんけんなどを始めたようだ。とても素直で、とても良い子たちだ。
 そんな子供たちを周囲の大人も暖かく見守っていて、誰もが幸せそうに微笑む。
「ああ、まさに理想郷だ」
「幸福だなあ」
 そんな光景を、1人の白い男が噴水の前で眺めていた。
 『聖拳』エクス・ヴァイン(p3n000338)……遂行者たるその男は、ただ無感情にその光景を見ていた。
 自分はその中にいなくていい。まるでそう言うかのように、エクスはその場に佇んでいて。やがて、何かを決意するように頷きその場から姿を消した。

●理想崩壊
「理想郷、と呼ばれる場所があるです」
 それは誰かの夢見た作り物。けれど、確かに幸福の溢れる場所だ。
 ……そう、聖域とされた聖女の薔薇庭園は特異な時間が流れているのか、その地への移行ではない更なる『深層』に向かう必要があった。
 何重にも『施錠』された階層には様々な光景が広がっている。
 人はそれを理想郷と呼んだであろうか。遂行者達の夢見る景色、本来有り得た筈の混沌の姿、降ろされた帳では到底想像も付かぬ華やかな生活の数々。
 最奥にまでは未だ至らぬが、『創造の座』より進めば広がる世界は夢見る心地そのものであった。
 まずは調査を為ねばならない。この地に何が存在して居るか。
 理想郷に棲まう修道女は言う。この地では、失われる命など何も無く、真なる主が選び掬った命は全てが全て永遠なのだと。
 理想郷に棲まう少年は言う。この地では、薄汚い溝鼠と誹られることもなければ黴びたパンを食べる必要も無い。全てが望むが儘に平等なのだと。
『選ばれし人』と『神の意志を遂行する遂行者』達による理想郷に踏込んだイレギュラーズは、先へと進む鍵を探さねばならない。
 そしてそれもまた、とある遂行者の夢見た理想郷であるのだと【旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201)は言う。
「遂行者エクス。彼の夢見た理想郷が、そこにあるです」
 それはまるで、争いというものが消え誰もが優しさに満ちた町。ただただ、そこには明日を信じる希望だけがある。誰もが未来に夢を見て、誰もがその輝く目を曇らせることはない。
 悪に落ちるものなどそこにはなく、その理由も存在はしない。そこには、明るい未来しか存在はしていない。
「……一見、そこは幸せそうに見えるです。ですが、作り物でしかないです」
 壊すしかない。その幸せは、破壊するしかないのだ。それが、作り物の幸せだと知っているからこそ。

GMコメント

理想郷「正義満ちた町」に侵入し、探索しましょう。
町の構造は「時計塔」「住宅街」「商店街」「食堂」「噴水のある公園」です。
皆さんは正面入り口から入ることになります。この空間はまるで春先のような暖かさであり、入る者に多幸感を与えます。
エクスは上記の何処かにいるでしょう。戦い抜きで会話をするチャンスでもあります。
とはいえ、最終的には戦闘になるでしょう。エクスに一定のダメージを与え撤退させた場合、本シナリオは成功となります。

●出てくる敵(戦闘になった場合)
【今回の敵は、『死なない加護』を有しています。エクス、そして『理想郷に棲まう者』は本当の意味で死することはなく、一定の時間を経て別の何処かにリポップします】
・『選ばれし人』×たくさん
理想郷に棲まう人々です。彼等は異言を喋りますがある程度のチューニングが可能のため意思疎通が可能です。
ただし、揺らぐことはありません。基本思想は「此処で生きているのは幸せ」「このままずっと過ごしたい」「此処は平等で怖い事なんてない」です。戦闘時には痛みなど感じませんし恐れる事はありません。
また、その身体に「ゲートキーパーの聖痕」があります。
https://rev1.reversion.jp/illust/illust/85531

いざ戦いとなれば各種の武器を持って襲い掛かってくるでしょう。

・『聖拳』エクス
『遂行者』を名乗る人物の一人。非常に真面目で正義感が強い。
ただし、それが一般的大多数の正義と合致するかはまた別の話であるのですが。
オーラを纏った拳による格闘攻撃と、輝くほどのオーラを纏った、超破壊力の拳『聖拳撃』を組み合わせて使用します。また、オーラを輝く衝撃波に変えて放つ『聖拳波動撃』も今回使用してきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <尺には尺を>その理想、認めがたきものなれば完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年11月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ

●理想郷「正義満ちた町」
 そこには、笑顔しかなかった。誰もが幸せそうに笑っていて、薄暗い場所など何処にも存在しない。
 理想郷「正義満ちた町」。そう呼ばれるこの場所には、1つとして恥じるところは無さそうだった。
「ここが理想卿……一見すると平和な場所だけど親切心で用意したとは思えないから困っちゃうよね」
「理想郷かぁ……ソレを壊そうとしてるオレたちはさぞかし邪悪なソンザイに映るんだろうね」
 『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)に『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もそう頷く。実際、道行く人々は皆幸せそうだ……『星を掴むもの』シュテルン(p3p006791)は周囲を見回し、きゅっと拳を握る。
(エクスの言う正義……ここを見たら何かわかるのかな……)
 理解できるかは分からない。しかし遂行者である『聖拳』エクス・ヴァイン(p3n000338)の求めるものは、確かに此処にあるはずで。
「この場所がエクスの理想郷ってわけか」
 『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)も、そう口にする。
「アイツはこういう場所を望んで戦ってるって事だな。ま、確かに悪くはねえ光景に見える。アイツの仲間になる気はサラサラねえが、理想はわからなくもねえ。俺に取っちゃあ退屈すぎる光景でもあるがな」
 そう、此処には一切の不幸はない。今ルカたちがいる時計塔付近でも、誰もが自然な笑顔を浮かべているのが分かる。
「主義主張は別として、一見完璧なように見えても傷があったりとかすることもあるのだけれども。確かに弱点を見つけるのも大変そうねぇ、そもそもあるのかどうかという話だけれども。とはいえ、根本的に神の国を攻略しないといけないのは確かで、帰るまでが遠足なの。気を引き締めていくのよ」
「確かに……それに此処は敵陣のど真ん中だ。いくら平和な雰囲気とはいえ、油断は出来んな」
 『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)と『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の言う通り、帰るまで気を引き締めていかなければならない。
 だからこそ、というのもあるのだが……今回は全員でまとまって行動していた。
「……これが……エクスの望んでる世界……」
 だから、だろうか。『玉響』レイン・レイン(p3p010586)も穏やかな気持ちで周囲を偏見なく見ることができていた。
「優しくて……あたたかくて……キラキラしてる……町も……過ごしやすそう……エクスの心の中が、ここまで優しいって……思ってなかった……もっと……他の……別のところに向かわせてるのかな……って……なんとなく思ってたから……いいところだね……」
「……此処は幸せの場所。見てたら分かるよ。分かるから……壊すのは心苦しいとは……思うけど……でも……まずは聞いてから、かな。エクスとやらの答えを聞いて、から」
 そう、それは『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)にも分かる。だからこそ、まずはこの町を探索し情報を集めなければならない。そう考えていた。

●その理想、認めがたきもの
「今はドーナツが食べたい気分かしら」
 町中を歩きながら、胡桃はドーナツ屋へとふらふらと寄って買ってくる。
 揚げたてドーナツにはたっぷりと砂糖がかかっていて、ドーナツ特有の素朴でありながらおいしい味がする。
「普通のドーナツだな」
「まさしくそうなの」
 エーレンに胡桃は頷き、ドーナツをかじる。
「わたしとしては、彼らの事を知る意味でも普通に観光してみるのがいいと思っているの。商店街でお土産買ったり、食堂にご当地グルメがあったりすると嬉しいの。ひとまずお金は持ってきているけれども、はたしてこちらでも使えるのかしら、というのは聞いてみないと分からぬけれども。幸せで満ち足りた生活をしています、と豪語するからには、きっと美味しいものたくさんある国に違いないと思っているの」
「そういう考え方もあるか」
「そもそも、うどんが人類に叛逆したり渡り豚の季節が来たりスイカマンが現れたり面白系なイベントがないとそのうち飽きてしまうかもしれぬの。もしかしたら、そのうちここも死なないのを良い事に面白シュールギャグ空間になってるかもしれぬけれども。世の中にはアンドーナツとかもあるけれどもドーナツの穴に何かが詰まっている必要もないのかもしれぬし、それでいいのかもしれぬの。重要なのは外側のドーナツ本体が美味しいかどうかだもの」
 なるほど、胡桃の言うことは理解できる話ではあった。大分真理をついているとすら言えるだろう。だからこそこの町の探索をしているのであり、スティアもしっかりと情報を集めるようにしていた。
「とにかく、まずは町を探索して情報を集めるよ!」
 時計塔から噴水のある公園までの全てを回るようにしようというのが今回の方針だったが……どうやら時計塔にはエクスはいないようだ。
 スティアは人々がどのように暮らしているかを重点的に調べてみるつもりだった。
 この世界は日々の変化があるのか、それとも同じ日常を繰り返すのか。そういった点も重点確認対象だ。
(幸福に溢れた場所のようには見えるけど同時に違和感も拭えないような気がするんだよね。永遠に失われない命を持って、人間として暮らせるのかな? って)
 試しに話しかけてみれば、誰もが笑顔でスティアたちに応対してくれる。
「日々の生活? そうだな……幸せだよ。此処には何の不幸もない。理想郷だよ」
 誰もがそんなことを言う。そこには、一切の嘘は感じられない。
(もし偽りの生命でなかったとするなら何の為にこの町を用意したんだろうね。少なくとも利用価値がなければ作らないはずだから……)
 あるいは、此処が神の国であるのならば彼等は本物の人間ではないのかもしれない。しれないが……それでも今までの「神の国」と比べれば、格段に幸せそうであるのは間違いない。
「オレは死なない世界なんて生きているとは言えない、つまらない世界だと思うんだよね。でも、飢えから解放された人に対して死ぬかもシレナイ苦しい世界で生きろなんて言う事の残酷さも解る! 意地を通すしかないんだけれど、世の中はムズカシイね」
 イグナートの言葉もまた真実だろう。苦しみを許容しろというのは簡単だ。簡単だが……そういったことを許容できない人々の存在もまた、遂行者というものを生み出した原因であるのかもしれないからだ。
 そんなイグナートはこの街のエネルギーの根源……源といえるものを探ろうとしていた。
 住民にも敵対をしないように注意してこの街の仕組みを教えてもらえないか挑戦していたが、住民たちは首を傾げるだけだった。
「不思議パワー……? よく分からないな。でもまあ、そういう浪漫を探すのも良い人生の証だよな」
 否定するでも馬鹿にするでもなく、分からないなりに肯定できるポイントを見つけてみせる。なるほど穏やかで理想郷の住人らしい行動だ。
「ここが……エクスの理想郷……」
(笑い合う民、幸せだと口々にする…エクスはこれを守りたい……それが彼の『正義』なの?)
 シュテルンはそんな場所を見ながらそう考える。実際、此処には文句のつけようのない……あくまでこうして見る限りでは理想郷だろう。それが正しいかはさておいて、1つの理想の結実した形だ。
 だから。噴水のある公園に立つエクスの姿に、誰もがそれぞれの想いを抱きながら望むことが出来た。
 何も言わないエクスに最初に呼びかけたのは彩陽だった。
「……正史ってのんがあるんやったらさ、そこに『俺らは』存在できるん?」
 混沌から呼ばれた者達。それらが正史でもこの世界にこれるのかどうか。それを聞きたいと思ったのだ。
「だって自分はこっちの世界の方が良い。向こうにいるなんてまっぴらごめんだから。そうじゃなかったら――そんな世界なんてくそくらえだ」
「貴様等もまた救済されるべきだ。もっともその顔は、それに抗うつもりに見えるが」
 そう、彩陽は確かにその言葉には僅かながら迷う。けれども。
「今のままでも元のままでも変わらんくない?」
「いいや。間違いを積み重ねたこの世界は根本から救済されねばならん」
 なるほど、結局はそこなのだろう。
「選ばれたヒトが幸福に生きられる理想郷、ただ完璧じゃないよね? 選ばれてないヒトを不幸にする事で成り立ってると言ってもイイでしょ? どう考えてるのかな?」
「世界はいずれ完全に救済される。選んだ者も、選ばなかった者も。貴様等も。その全ては正しき世界で救済されるのだ」
「……そういう認識かあ」
 鋼のように曲がらず、それ故に融通の利かない答えだとイグナートは思う。これは、絶対に考え直すというようなことはないだろうと確信できた。だからこそ、レインもエクスへと呼びかける。
「君の世界を見せてくれて……ありがと……エクスは好き……エクスの望んでることも……役目に真面目なところも……望んでここへ来た人のことはあるけれど……それでも僕は……未来の、ここへ来ようとしてる人に……もっと他に出来る事…その可能性を全て試してみたいんだ……」
 理解を示すレインの言葉は、しかし決して何1つ譲歩するものではない。
「僕の手だけじゃ足りなくて……助けを求めてる人にそのスピードじゃ……全然間に合ってないこともたくさんで……その意味では……君の方法は早くて……済んだ後は苦しくなくて……良く、見えるけど……偽善でも……生かす為に動いたら……少しずつでもそういう人を減らせる……って……信じるよ……」
 そう、偽善でもいい。レインはそう思うのだ。
「君と……協力出来たらよかったけど……やり方が違う僕とでは……共に出来ないことも……それに世界を付き合わせる意味にもなることも……現実に対して傲慢だってことも……それを覚悟で……生きる事に決めたんだ……今を生きてる命と……僕は生きたいから……」
「そうか。貴様のその決定に俺はどうこうは言わん」
 どうせ叩き壊して救済する、とエクスは言うのだろう。どうしようもなく真っすぐで、どうしようもなく傲慢だ。
「強くても……弱くても……消耗してる人を助ける……僕の世界が……生きようとするものの為にあるなら余計……命で折り重なってる世界でも……考えで生き方で周りで……変わっていくものもあるから……その為の……手……言葉……行動……未来を諦めないよ」
 そう、諦めはしない。救済などには手をのばさない。だからこれは、決別の言葉でもある。
「……エクスの世界を…少しでも知れてよかった……君が倒れた時……少しでも引き継げれると思えたから……でも僕は……君自身も幸せになっていいと思う……君がそれを望めない状態でも……目指してる方向性は似てる……」
 そしてシュテルンもまた、その胸の内をエクスへとぶつけていく。
「皆が皆……信じる自分なりの正義を持ってる。それは絶対に同じものを持ってるわけじゃない。だから、衝突する事は当然ある、絶対にある。分かり合う事なんてきっと途方もない事。エクスはこれからもそんな事も気にせず、自分なりの正義を貫く……きっと変わらないんだね。でも……なんでその正義に満ちた町にエクスは居ないの? 自分が町に必要ないと思ってるならあなたは……本当に勝手な人だね?」
 言いながら、シュテルンはエクスが自分の言葉に狼狽える事なんてないだろう、と思う。
 空っぽでどうしようも無い少女の言葉なんて取り留めもない事だろうと、そう思うのだ。
(それでも正義は誰であっても『主観』でしか語る事なんて出来ない。誰かの正義は誰かに共感されようとどこかの誰かの悪になる。どんなに正しいと思っていても例え特異運命座標であったって犠牲があって勇者になれる。だから……憎しみも生まれる。ああどうして自分のいない正義で人は満足出来るだろうか。エクスの心を覗きたい)
「まず、根本的な認識の誤りがある」
「それは、何?」
「他の遂行者はどうだか知らんが……俺は救われようなどとは微塵も思ってはいない。この拳はただ、救うためにある。罵られようと血に塗れようと、ただ真なる正義を実現する。それさえ叶えば、この身は消えて構わんのだ」
 なんとも明確な宣言だ。だからこそ、スティアは別の方向から問いかける。
「この町って貴方の理想を具現化した場所だったりするの? 遂行者のそれぞれの理想の形が存在しているのかなって思ったから……」
「その通りだ」
 アッサリと返ってくる答えに、スティアは次なる質問を投げかける。
「以前、真なる世界の実現と言ってたのが頭に残っていたんだ。それがどういうものか教えて貰えるかな? ここと同じような世界にしたいのか、それとも別の世界を差しているのか」
「簡単な話だ。世界の歴史は全て正しく書き換わる。それ以上でもそれ以下でもない」
「……なら、もう1つ。こんな素敵な場所があるのにどうして地上を攻めるのか。そこもよくわからないんだよね。維持するのに何か条件があるのかもしれないけど。何か思う所があるのなら聞いてみたいかな。いつも戦ってばっかりっていうのもなんだし、たまには良くないかな? 気分転換も兼ねて!」
「気分転換などに興味はないが……それも簡単な話だ。救う手段がそこにあって、伸ばせる手が此処にある。だというのに手を伸ばさぬ者を、正義と呼べるか?」
 なるほど、なんとも「らしい」答えだとルカも思う。
「エクス、お前はなんで遂行者になったんだ? 生まれついての遂行者ってやつもいるが、お前はなんとなくその類じゃないように思ったんだが」
 だからこそ、その核心をルカは問いかける。
「別に理由はなく、勘だがな。戦争か、盗賊に焼かれた街でも見たか? ありゃあ良い気分のもんじゃねえから、そうだとしたら多少気持ちはわかる。お前のその門の刻印は、理想郷の門番でありたいって決意なんだろうな。力を行使する自分は理想郷の住人じゃなく、そこを守るって意味の」
 エクスの、そして理想郷の住人たちの持つゲートキーパーの聖痕。それを見ながら、ルカはそんな予想をぶつける。
「俺だって殺すしかなかった母親が生き残ってくれるならって気持ちがない訳じゃねえ。それでも、母さんも自分で考えて精一杯の生き方を選んだ。マルクも命をかけて道を切り開いた。それらを失敗だ、間違いだなんて否定は誰にもさせねえ」
 そう、彼のことをルカは決して否定させはしない。だからこそ、この道は交わらないのだ。
「だから、やり合おうぜエクス。譲れねえもんがあるなら、お互い戦うしかねえだろ?」
「正直に言えば、本物か偽物かどうかなんてあんまり気にしないので強く否定できる材料もないのだけれども。それでもまあ……戦うしかないの」
 胡桃も言いながらSSSガジェット3.0bからのあふた〜ば〜な〜で自分を強化していく。
「いくぞ、エクス。思いっきりやろうじゃねえか!」
「来い。この場で貴様等を救済してやろう」
「ああ! やっとお前と戦える! 待ってたぜこの時を!」
 ルカのクリムゾン・ジョーカーが、戦いの始まりの合図となって。その激しい戦闘の末にエクスは撤退していく。
 結局戦うしかなかった。なかったが……今日の問答は、この先の決着に至る戦いでも、決して忘れはしないだろう。

成否

成功

MVP

ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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