シナリオ詳細
おビンタ望む。汝その名はサツマイモ
オープニング
●どこにでもある村での困った場面
秋も深まる今日この頃。最近では北風も吹き始めてきたので、そろそろ冬支度もしなければならない。
これはどこにでもある村の話。幻想の、とある小さな村では、少し時期のずれたサツマイモの収穫が始まっていた。
数としては例年通りの出荷量が見込まれるのだが、村人達はやけに疲れた顔をしていた。
足元には至って普通のサツマイモがある。本当に、普通のサツマイモの外見であり、大きさも巨大という訳でもない。
それなのに、何故彼等は疲れた顔をしているのか。
サツマイモを掘り起こす際にしゃがむ事で腰を痛めたとかそういうものでも無さそうだ。
「困った……」
「これは儂等にはもう手に負えんぞ」
「俺ももうこれは辟易している」
男達は顔を見合わせて口々に「困った」と言い合った。
「だが、これ以上人手は増やせんぞ」
「自分に良い案がある」
「おう、なんだ」
「ローレットに依頼を出そう」
とある村人の鶴の一声により、ローレットに村の困りごととして依頼が舞い込んできたのだった。
●ローレットに舞い込んだ、一通の依頼
集められたイレギュラーズ。彼等の前には情報屋の男が座っていた。
ここはローレット。様々な依頼が舞い込む場所。
本日も、舞い込んできた依頼の一つを解消すべく、こうして情報屋の男によって集められたという訳だ。
顔の整った男は依頼の内容を要約する。
「サツマイモの収穫を手伝って欲しいそうだよ。
『自分達ではもう手に負えないサツマイモなので、助けを借りたい』だってさ」
「『手に負えない』? まさか、変なサツマイモなのか?」
「さあ、何だろうね? 詳しい事は書かれてないけど。
でも、だからって、助けに行かない、なんて選択肢は無いだろう?」
「それはそうだが」
「ま、そういう訳だ。よろしく頼むよ」
イレギュラーズに笑いかけながら、サラッと依頼を押しつけてきた情報屋の男に溜息をつきつつ、結局はその依頼主の場所へと赴く事にしたのだった。
到着した後で若干後悔する事になるとは露知らず。
到着した村は、至って普通の小さな村だった。
どこにでも見るような一般的な木造の家。どこにでもあるような普通の畝が作られた畑。
ただ、少し異変があるとしたら疲れた顔の村人をあちこちで見かける事だろうか。依頼にあったサツマイモと何か関係があるのかもしれないが、さて。
ローレットでの依頼を受けて来た事を告げれば、村人達は大変喜んでくれた。余程切羽詰まっていたのか。
案内されたのはサツマイモ畑。ここだけ見れば特に何も変わりは無いように思えるのだが。
「まずはこれを見てください」
二つの籠に入ったサツマイモ。全体の量は多くはないのだが、なんだろう、片側だけにやけに量が多いような……?
それから、事前に焼いてあったらしいサツマイモを持ってきてくれた。量の多い籠のサツマイモと、量の少ない籠のサツマイモの二種類だそうだ。
「食べ比べてみてくだせえ」
囓ってみる。量の少ない籠の方のサツマイモは甘いが、量の多い籠のサツマイモの方は甘くない。
見た目は特に変わっている様子はないのに、どうしてこのような違いが?
それを尋ねると、村人は説明してくれた。
「実は、この村のサツマイモは少々特殊でして。甘いサツマイモにするにはある事をしなければならないんです」
「ある事?」
「はい。おビンタをしなければいけないのです」
「おビンタ」
「おビンタです」
思わずオウム返しになったが、村人の顔は至って真面目だ。
「いつもなら少々のおビンタで甘くなるのですが、今年は何故だか頑なというかかなりの力でおビンタをしないと甘くなってくれず……。
流石に自分達では体力の限界なので、ローレットに依頼してお力を借りようという事になりまして……」
何だそのサツマイモは。
「どうやって甘くなったと判断出来るんです?」
「基準を満たすとサツマイモが『ご褒美ありがとうございます!』と言ってくれます。
基準に満たない場合は『まだまだだね』とか『もっと熱くなれよ!』とか言います」
「ええ……?」
何だそのサツマイモは。(二度目)
そもそも、しゃべるサツマイモとは……と思ったが、世の中には不思議な食べ物とか生物とかが居るから今更な気もする。
マンドラゴラゴリラとかゴリライカとか。あれ、ゴリラしか居ないな?
困惑の色が広がるイレギュラーズに、村人達は至極真面目な顔で改めて頼み事を口にした。
「皆様方にはおビンタ力(ぢから)が相当あるとお見受けしました。どうか、収穫を手伝って頂けませんでしょうか?」
おビンタ力って何?!
ツッコミで叫びたいのを堪えて、イレギュラーズは黙って頷くしか出来なかった。
だって、もうこの依頼受けてる以上は回れ右出来ないじゃない?
- おビンタ望む。汝その名はサツマイモ完了
- サツマイモの収穫ですってよ!
- GM名古里兎 握
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年11月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●覚悟の時間ですわー!
『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は一人頭を抱えていた。
「……まあ、うん。原理としては理解できるよ」
サツマイモが甘くなる原理について、ある程度の理解はしている。元の世界で学んだ事だ。
彼の言葉に「そう、なのか?」と尋ねる『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)は、分からないなりに理解しようとしているらしい。
「サツマイモの甘味はサツマイモに含まれるアミラーゼがでんぷんを分解して糖化させるからだし。
原理的には確かにおビンタを繰り返して甘くすることは不可能じゃあないだろうし、そういった特殊なアミラーゼを含むサツマイモなのかもしれない」
「ふ、む……?」
科学の知識を持たぬ彼女は首を傾げるしか出来ないが、とりあえず、サツマイモが甘くなる仕組みがあるという事はわかった。
「でも……」と雲雀は頭を抱えたまま、力の限り、疑問を叫んだ。
「それで、喜んで、叩かれたがるサツマイモって、何????????????????????????????????」
尤もな疑問なのだが、そういうものなので……としか村人には答えられない。
「村の昔からの特産品なので……」
「そんな特産品ある?!」
思わず叫ぶ彼を「まあまあ」と宥める『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)。サツマイモ畑を改めて見ながら、嘆息する。
「……何て言うかな……うんまあ再現性薩摩とかに比べたら、十分普通……なわけないよね!?」
再現性薩摩は比較対象としては特殊だと思うんですよ(by報告書作成者)
「喋るどころか強いビンタがご褒美のサツマイモってマニアックだと思うんですよ?! これ、モンスターの一種とかじゃないですよね?! マンドラゴラみたいな系統の!!」
「多分、そんなものは特産品にはなりえない、のでは?」
『薔薇冠のしるし』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)のツッコミに「ですよね……」と、遠い目をするしか出来ないレイテだった。
「甘いサツマイモ、マリアは好き、だ。
ところで、どえむ、とは、なんだ?」
彼女の質問にレイテはどう答えたものか迷うが、昴が出来る限りのフォローを入れる。
「えっと、知らない方が……いい?」
「ふむ? まあいい。とにかく思い切り引っ叩けば甘い芋になるのだろう」
「ああ、うん。そうだね。そうなんだけど、その前に……」
レイテは改めて他のイレギュラーズを振り返る。
「あの皆さん? するのはビンタですからね?」
思わず念押しの言葉をかけるぐらいには、周りのイレギュラーズの様子は頭を抱えそうなものだった。
『鉄帝神輿祭り2023最優秀料理人』御子神・天狐(p3p009798)はビンタの素振りをしているし、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に至っては往復ビンタの素振りである。
あと、昴はなんかスクワットやってた。
「なんでスクワット?!」
「腰を落とし、足に力を入れて踏ん張る。そうすると、力を込めやすくなるのだ」
「つまり?」
「足の力が重要。だから、スクワットを準備運動にやっている」
「準備運動だったら先にストレッチじゃない?!」
論点はそこじゃないと思うよレイテくん。
そういえば先程からツッコミが自分しかやってない気がする。
助けを求めるべく仲間達を振り返ったレイテは、そこで見た光景に目を瞠る事になった。
「おーーーーーーほっほっほっほ! さあ、サツマイモ達、準備はよろしくて?」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がお嬢様姿で立っている。具体的には、縦ロールの髪型にドレス風の上着を着ており、扇子を持っていた。なお、上着の下は上下共にジャージである。そんなちぐはぐなお嬢様があるかい。
普段と同じ伊達眼鏡を装着している。彼曰く、「これだけは外せない」らしい。
「グーパンではダメ、おビンタならば往復でも可。
おビンタという事はお嬢様! 即ち、ご令嬢になりきるのが良いって事ですわー!」
「いや、その理屈はおかしい」
思わず冷静につっこむ雲雀。
細かい事は気にしてはいけない。気にしたら負けだよ、今回の依頼。
そんなヨゾラの様子を見て影響された者が一人。
「おビンタ……貴族とかお嬢様とかがやってるやつだよな?
ならそれっぽくするのが良いのか……?」
『特異運命座標』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)である。
彼は拳を握りしめると、「うん」と一人納得したように頷いた。
「あんまり演技とかした事ないけど、頑張ってやってみるか!」
「なんか影響受けてるぅぅぅぅ!?」
レイテが叫び、雲雀が頭を抱える。
彼等二人を尻目に、エクスマリアは少ない量が入っている方の籠からサツマイモを取り出す。
改めて確認すると、掌よりも大きいサイズである。村人達の話によれば相当頑丈らしいが、イレギュラーズの力は一般人より強い。出荷する為の品を破壊し、失敗する訳にはいかないので、周りの様子を見て学ぶのが良いだろう。
そう結論づけた彼女は、最早ツッコミ要員と化したレイテと雲雀、未だにビンタの素振りをする天狐と汰磨羈や、高笑いするヨゾラとそれを真似するプリンを眺めながら、エクスマリアは一度だけ頷いた。
「頑張れ、だな。マリアは、最初は皆の試行錯誤を応援しよう」
常識的な判断である。
●おビンタの時間ですわー!
まずはヨゾラが保護結界を展開。これでサツマイモが壊れる事は無い、はずだ。
「えっ、あの、ビンタにアレコレ乗せた攻撃したらダメですよ? わかってます?」
展開されたそれにオロオロしながらレイテが問う。
天狐が指をサムズアップして力強く叫ぶ。
「大丈夫じゃ! 蒟蒻も叩くと味が染み込みやすくなって美味しくなるからの! つまり、味が染みこみやすくなる程に叩けば問題ないし、この結界があれば、限界まで叩く事も可能という訳じゃ!」
「そういう問題です?!」
「細かい事は考えるでない。ほれ、おぬしもさっさと準備せぬか!
なあに、考えるより感じろ、じゃ! そこな汰磨羈殿もノリノリな様子じゃしの」
天狐が視線を向けた先では、汰磨羈がまだ掘り返していないサツマイモ畑に向かって往復ビンタの素振りをしながら話しかけていた。
「おビンタが欲しいか?
ならばくれてやる……!」
「なんかどっかで聞いた台詞ーー?!」
「どのジャンルであろうと、ドMを甘く見ない方が良い。
さぁ、行くぞ。おビンタフェスティバルの始まりだ――!!」
「おおーーーー!!!!」
ツッコミ要員二人を除いたイレギュラーズ全員が鬨の声を上げ、その声は村の中に響き渡った。
なんかめっちゃ高レベルのイレギュラーズが多いけど、大丈夫だ。
コメディもシリアスも経験してきた奴らだ。面構えが違う。
上半身はご令嬢、服装はジャージというヨゾラは早速掘り起こす所から始めた。赤子の手を捻るがごとし。ずるりと地中から複数のサツマイモが現われた!
蔓から丁寧に取り除き、ヨゾラは伊達眼鏡の奥で目を見開く。
神秘な力の影響でヨゾラの身体が発光する。
ヨゾラの手が光って唸る! お芋を叩けとおビンタが叫ぶ!
「お覚悟なさいませ、このお芋! お芋の『も』はMなO芋のMO、ですわ!」
「ありがとうございまーす!!」
叫ぶサツマイモから合格点を貰う。というか、保護結界が無ければ多分ぶっ壊れていたんじゃないか、このサツマイモ。
それぐらいヨゾラの至近距離攻撃は強かったのだ。というか、お芋の『も』についてはこじつけじゃ……ごほんごほん。
彼を見て負けていられないと意気込むプリンは自分が掘り起こしたサツマイモに向かって睨みつける。高貴な者のように背筋を伸ばし、サツマイモを見下ろした。
「生まれも育ちも何もかも、お世話になった分際で……わがままを抜かしおって」
蔓から取り外したサツマイモを空中に一度放り投げる。重力に従って落ちてくるそれのタイミングを見計らい、クワッと目を見開いて平手打ちの構えを取る。
「とっとと甘くなるのが、キサマの仕事だろうが!」
お嬢様というよりそれはなんかこう、追放した側の人間みたいな凄みになってるぞ、プリン。ついでに言えば、恐ろしい程の速さで叩いたサツマイモは畑の中に埋まってしまったぞ。
土煙が舞い、思わず咳き込むプリンに向けて、サツマイモが高らかに叫んだ。
「どうも、ありがとうございましたぁーーーー!!」
言ってる事は最高判定なんだけど、声の出し方が漫才の締めのそれなんだよなぁ。そういえばそろそろそんな季節ですねえ。
サツマイモからの最高判定を受けてガッツポーズするプリンは、確認する。己のおビンタ道は間違っていなかったと。おビンタ道is何。
(負けていられない……!)
彼のように筋肉と向き合っている昴は静かに闘志を燃え上がらせると、自分の身体に集中し始める。
既にサツマイモはいくつか掘り起こし済みだ。出来るだけ一箇所に纏めて並べる事で、これから自分がやろうとしている事への下準備もバッチリだ。
練り上げていく二つの闘気。それを感じながら、目を見開く! 前髪で隠れて見えないのが残念である。
「おビンタぁぁぁ!!!!」
鋭いビンタを並んだサツマイモ達に一斉にぶつけていく。
「「「「ご褒美ありがとうございますぅぅぅぅ!!!! やったぁぁぁぁ!!!!」」」」
ひどい大合唱もあったものである。
収穫を終えたサツマイモ達を籠に入れながら、昴はふとある一つの事を思いつく。
それには、皆の協力と、村人との相談が必要なのだが。
(やってみるか)
人と話すのが多少苦手ではあるが、このやってみたい事をやる為ならば勇気を踏み出すしかない。
拳を握りしめて、昴は「もし……」と村人に話しかけたのだった。
「喜ぶ人が増えるなら、やるしかない、けど……。
その内『罵ってください!』とか言い出しそうで嫌だなぁ」
溜息をつく雲雀だが、やらねばならぬと己を鼓舞して、掘り起こしたサツマイモ達を見つめる。そして、距離をある程度取ると、深呼吸を一つして攻撃を展開する。
「おビンターー!!」
遠距離からの攻撃。一本のサツマイモに寸分違わず当てたのを確認してから、次の一本へと当てに行く。
サツマイモ達のある方向から「あざーっす!!」とか「MO! サイコー!」とか聞こえてきた気がするけど、耳を傾けまいと心を無にしながら作業を続けていく。
続いて往復ビンタも行なう。無の感情だからか、雲雀の顔も無表情である。
ひたすら無心に叩いていく彼の姿が見えている訳では無いだろうが、サツマイモ達の方も無駄に騒ぐ事はせず淡々と「ありがとうございました」と繰り返していた。なんで一気にホラーになるの。やめなさいよ。それなのにサツマイモが甘くなるのってどういう仕組みなんですかマジで。
おビンタフェスティバルの開催を宣言した汰磨羈の手には無数の炎片が纏わり付いていた。
彼女が握っているのは蔓についたままのサツマイモ達。
「見せてみろ、御主等のドMっぷりとやらを!」
開始されるのは、汰磨羈命名による、『往復ビンタ地獄モード』である。
彼女の右手が炎片に纏わり付く中で繰り出されるビンタのラッシュ。右から左へ。左から右へ。繰り返される往復ビンタに、サツマイモ達の口からは恍惚としたような声で「ありがとうございまぁぁッす!!と発していた。
うむうむ、と満足げに一人頷く汰磨羈だが、少し離れた場所に居る天狐の前に、なんかちょっとボロボロのレイテがサツマイモの上に覆い被さっていた。何やっているんだい、君?
ちょっとした興味からそっちへと移動し、尋ねる。
「御主、何をやっているのだ?」
「サツマイモをかばってます」
「かばう?」
プリンの施した結界のおかげでサツマイモが壊れるような事は無いはずだ。だというのに、何故かばう必要があるのか。
「だって、皆さん、普通にビンタすればいいのに、色々乗せて攻撃みたいなビンタするから! サツマイモを! 大事に! して!!」
「十分大事にしていると思うが……」
「そうじゃそうじゃ!」
汰磨羈に賛同する天狐が拳を突き上げながら抗議する。
「ちょっと高速で往復おビンタを繰り出そうとしただけなのに、そこにこやつが割り込んできたのじゃ。
わしがうっかり正しい意味での女王様になるところだったのじゃ!」
「ああ…………」
なるほど、ボロボロだったのはそういう訳か。
得心がいった汰磨羈は、皆の様子を窺っていたエクスマリアを呼ぶと、怪我の手当を頼んだ。
「任せろ。
……ところで、レイテ。芋を守っていた、ようだが……もしかして、叩かれるのが、嬉しい、のか?」
「全っ然、そんな事無いからね!?」
「そう、なのか……?」
純粋なエクスマリアの疑問を即座に否定で返す。ひどい誤解を与えたくはないのだ。
彼女は首を傾げつつもレイテの手当を施していく。
そこへ、昴がこれまでに比べると巨大とでも言うべき大きめのサツマイモを一つ持ってきた。
「皆に、相談が……ある」
●最高のサツマイモなのですわー!
大体のサツマイモの収穫を終え、残るは昴が持ってきてくれた巨大サツマイモが一つ。
さておき、イレギュラーズは神妙な顔つきというか、一部涎が出そうな口元を拭っていたりするなどしている。
先程昴が皆に持ちかけた提案はこうだ。
「究極に甘い最高級サツマイモを作りたい」
ヨゾラが展開した保護結界の中であれば、サツマイモは壊れない。
ならば、イレギュラーズ全員で叩き込んだら最高に甘いサツマイモが出来上がるのでは?
昴の説明に納得した彼等は急ぎサツマイモを収穫し、昴の持ってきたサツマイモを買い取る形で手に入れて、今、改めてサツマイモに向けて最高の一撃を準備していた。
「では、行くぞ……!」
昴が高く放り投げる。
跳ぶはエクスマリア。皆の様子を見て、どんな感じでやっていけばいいのかはわかってきたので、ここまでの収穫も最高判定を貰っていた。
その教訓を基に、奇跡によって強化した自身の平手打ちを当てる。下から上へ、跳ね上がるようにしておビンタを打つ!
地面に向かって落ちていくエクスマリアと入れ替わる形で、羽を持っているレイテが飛んでサツマイモに追いついた。
全身全霊を込めたおビンタを上から下へはたき落とすようにして叩き込む。
落ちてくるサツマイモを見据え、ヨゾラが自身の手をラケットを振るような動きで一撃をお見舞いした。
一度叩き上げられたサツマイモだが、再び重力に従って落ちてくる。
今度は天狐の番であった。
しぴぴぴぴ……という音がしそうなぐらいに高速でおビンタを往復させた。
「ここか!?
ここか!!??
ここがええんか!!?? おぉん!?」
女王様が降臨している。女王天狐は往復ビンタの締めとして一発用意する。
「サツマイモはサツマイモらしく鳴け。
ほれ、あと数発イくから噎び泣き喜びつつ繊維食いしばれ!」
叩いたサツマイモが光り輝く。そんな物体が一度は打ち上げられて落ちてくる。
今度はプリンの番だった。
最初に左手でおビンタを食らわせてジャブ。そして右ストレートならぬ右おビンタに全身全霊を込めた。
「チェストォオオオオオッ!!」
なんで再現性薩摩混じってんだよ。
そんなツッコミは誰のものか。
再度打ち上げられ落ちてくるサツマイモに、雲雀の遠距離おビンタがお見舞いされる。そういえば、なんで普通の攻撃なのにおビンタ判定してるんだサツマイモ達。
そして次は汰磨羈。
「『お』もいっきり
『ビ』ームで
す『ン』ごく
『タ』たく
――即ち!」
\ 殲 光 砲 魔 神 ビ ン タ ッ ! !/
「今日からお前は! 激甘イモだッ!!」
そう言って、至近距離ビンタ式ビームをサツマイモに叩き込んだ。
トリは言い出しっぺの昴。
彼女は筋肉の細胞一つ一つに闘氣を練り上げると、息を吸い、吐き出すと同時に右手を振りかぶった。
「はあぁっ!!!!」
最高に大きな音を立てて、籠の中へとサツマイモを撃ち込んだ。
「最高のご褒美、ありがとうございましたぁー!!」
そんなサツマイモの断末魔を残して。
収穫を終えたので、巨大サツマイモを焼き芋にして皆で分けて食べました。
とっても甘く出来ました!!満点!!
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
無事に出荷も出来たようです。
最高に甘いサツマイモは思い出になった事でしょう。
MVPは、究極の一個を作る事を提案してくれた貴方へ。
GMコメント
秋深まる季節。カボチャも好きですが、サツマイモの方がもっと大好き。古里兎です。
おかしいな。本来ならドMカボチャの予定だったんだけど……。
まあ、これはこれで。ドMの野菜が変わっただけですよ。
最近よく見るおビンタの淑女に影響された? まっさかぁ(目をそらす)
何はともあれ、サツマイモにおビンタしまくって甘くしましょう。
無事に収穫を終えれば、余ったサツマイモで焼き芋するよ!!
●成功条件
サツマイモを甘くして収穫しましょう
●収穫の手順
1:まず掘り起こします。簡単に掘り起こせるので子供でも大丈夫です。
2:蔓から一つずつサツマイモを取っていきます。
3:おビンタをします。往復ビンタも効果的です。
4:さつまいもから「ご褒美ありがとうございます!」と言われるようになったら籠に入れます。
収穫手順は以上です。
●サツマイモの判断基準。括弧内は甘味具合です。
最高判定(めちゃくちゃ甘い):「ご褒美ありがとうございます!」
普通判定(甘みが少しだけ):「まだまだだね」「もっと熱くなれよ!」等。
なお、この判定を受けた後でもおビンタを続ければ最高判定にまで上がる事が出来ます。
最低判定(全く甘くない):無言。弱すぎるという判定になります。
●情報精度
この情報精度はS(サツマイモ)です。
皆様、収穫よろしくお願いいたします!
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