シナリオ詳細
<THEO>れぎおにいたあ
オープニング
●晩餐を待てぬ
幻想の外れに位置する団子屋が襲撃された知らせを受け、三人の雇われハンターが現地を訪れた。
「モンスターならテキトーに狩って終わりなんだがな」
「盗賊かなんかだろ。どっちにしろ皆殺しで終わりだよ」
「面倒くせえ。そうだ、賭けようぜ。人間に一枚だ」
だらだらと歩く三人。最後尾の一人が手書きの地図をちらりと見て足を止めた。
「どうした。休憩小屋はまだ先だろ? 」
「いや……この辺りらしいんだが」
言われて周囲を見回す。土と石しか見えなかった。
人が居た形跡も、まして小屋があった形跡すらない。
「見間違いじゃないのか?」
「いや間違いない。ここに小屋があったはずだ」
「へえ、小屋ごとでっかいバケモンにでも喰われたってか。よっぽど腹ァすかせてたんだな?」
茶化す仲間に、ハンターが地図を握りしめ悪態をつこうとしたその時である。
ただならぬ気配に振り向いた。
木々の間を抜けて現われた一人の男。
身の丈は2メートルは超えているだろうか。肌は深い色黒で、ジャケットからのびたフードを深く被っていた。
素足に素手。されどあふれんばかりの殺気を、この黒人男性は放っていた。
「賭けは俺の勝ちだな」
ハンターの一人がライフルを構えた。
「三対一だ。余裕だぜ」
残る二人。赤髪の男は剣を、青髪の男は杖を構え戦闘へと突入する。
先制のライフル射撃。常人を幾度か殺せそうな弾をしかし、黒人男性は胸板だけで弾いた。
ずかずかと歩いてくる。そうはさせまいと剣を振り上げて飛びかかる。
が、黒人男性は振り込まれた剣を握り、素手のまま止めてしまった。直後に首を掴まれる。圧倒的なパワーに苦しみもがく。
「暫く耐えてろ、後で回復して――」
杖を構えたハンターが援護の魔法を放とうとした、その瞬間。
赤髪の頭が消えた。
正確に述べるなら、首から上が何かに食いちぎられて消えたのだ。
吹き上がる血のむこうに見えるだろうか。
黒人男性がフードの下から覗かせた、芋虫のごとき頭が。
いまさっき食いちぎった仲間の頭を咀嚼し、ごくりと飲み込むさまが。
「に、人間じゃねえ」
「強すぎる。一度逃げて――」
逃走の構えをとったハンターたちの足が、ぴたりと止まる。
ハンターたちの後ろにいつの間にか、フードを深く被った人影が立っていたのだ。
いまさっき仲間の首を食いちぎった者を含めて三人。
だが逃げそびれたのは彼らの存在に警戒したせいではない。
ハンターたちの足下を、コールタールのような粘液が大量に広がり、這いずるようにまとわりついたのだ。
ぞくりを精神を犯す粘液の力に、ハンターたちは逃げることにすら失敗したのだ。
「かあさまは言った」
「人間は美味しい」
「大いに喰らえ」
フードを脱ぐ。現われた芋虫の顔が、大きく大きく口を開いた。
●レギオニーター討伐依頼
「……とまあ、これが現場に残った霊魂その他諸々から得られた情報だ。
詳しい人間によるとこれらの名前は『レギオニーター』。
単眼芋虫の頭部と人型のボディという外見特徴をもつモンスターだ。
これがどうも、あちこち同時に出現したらしくてね。
行動目的はサッパリ分からないが、とにかく食欲が旺盛で何でも喰う。特に生きてる肉が好物らしい。身分職業種族問わずだいぶやられてる様子だよ」
無数の資料をテーブルに広げる『黒猫の』ショウ(p3n000005)。
そのうちの一つを指でトントンと叩いた。
「そんなわけで、ローレットにも駆除の依頼が入ってきた」
レギオニーターの特徴はなんといってもその食欲。
そして周囲に展開している謎の粘液である。
「情報によると――時間経過と共に飢餓感が増し、それに伴って攻撃性が増すらしい。戦闘の追加行動として周囲のものを捕食しはじめ、ある程度食べれば満足して状態がリセットされるという話だよ。
石でもなんでも口に入るなら何でも食べる。勿論好物はさっきも言ったとおり生きた肉だ。
そしてこの『謎の粘液』なんだけど……どうやらこれに纏わり付かれると精神を犯されるらしい。かなり酷い状態になるから、注意するようにってさ」
このチームに割り当てられたのはあるエリアを徘徊中のレギオニーター。まとめて3体。
「くれぐれも、奴らの新しい餌にはならないようにね。頼んだよ」
- <THEO>れぎおにいたあ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年10月27日 21時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●子羊たちは鳴き止んだかね?
道は荒野へ続いている。
風上からただよう臭いは、汚水のそれによく似ていた。
表情を特にかえるでもなく、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は剣をとる。
「群れで食らうからレギオニーターか。骨まで利用するのは褒めてあげる、でもね。……食べられない物を教えてあげる」
『神がそれを望まれる』と囁いて、魔力の光を帯び始める。
一方で、『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)はスケッチされた資料を見て顔をしかめていた。
「上が芋虫で下が人間…逆ならまだギリギリ見れそうなものでしたけれどアレはきついデスねぇ。しかも雑食で本当に何でも食べるとなるとここで倒さないと……アレに食べられるとか御免被りマスぅ!!」
そうは言っても、今から自分たちは化け物に食べられに行くようなものだ。
食べられて死ぬか、食べられてでも生き延びるかの違いにすぎない。
……いや、とりようによっては、この世に生きる全ての動物がそうなのかもしれない。例外だと思っているのは人間だけ、なのかもしれないのだ。
『風来の名門貴族』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)が長い髪をはらう。
「まーったく。世間は魔種でごたごたし始めてるのに、害獣なのか害虫なのかやめてほしいね」
レイヴンは黒い翼を広げ、皆の頭上あたりをふわふわと飛行している。
「必要とは言え、翼を出すことが多くなったな……」
レギオニーターとともにある謎の粘液は地上を這うものであるらしく、飛行は対策として有効なのだそうだ。
『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)はそれを見上げて小さく首を振った。
「レギオニーター……他所の依頼の事後処理に俺らを使うなって話だが、そうも言ってられんか。クソ芋虫ヤローに俺ら止められる訳ねーだろ! 行くぞォ!」
腕をぶんと振るアラン。
何でも屋のローレットに所属しているとはいえ、後片付けは性に合わないようだ。
『鬼を宿す巫女』蓮乃 蛍(p3p005430)のほうはあまりそうは思っていないようで、むしろ世の不安に思いをはせていた。
「次から次へと不穏な事件ばかり。此度も大事になれなければ良いのですけど……」
風向きがすこしだけ変わった。
季節外れの生ぬるい風が、首の間を吹き抜けていく。
おぞましい気配が近いからだろうか。『蒼海守護』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)のつれていた犬がおびえて逃げ出してしまった。そう遠くへは行かないだろうと放っておいて、ココロはぎゅっと拳を握る。
「どっかで聞いた芋虫の話。もし、以前に痛い目に合わせてくれたあれと同種? ということは、リベンジですね!」
ゼオニーターという単語に聞き覚えがあるなら、ココロの思うところを察することができるだろう。
今回はいくらか事情が異なるとはいえ、もし関連する何かであるならリベンジには違いない。
酒気を帯びたため息をつく『とにかく酒が飲みたい』祈祷 琴音(p3p001363)。
「とり逃した相手が似た特性を持った別物になって戻ってくるとはねぇ。私が逃したあれやそれもいずれ現れるのかしらぁ? ま、リベンジとかは特にこだわりはないし、現れても酒代のために倒すだけねぇ」
当時のことを想い、琴音はあつい頬に手を当てた。
『白き渡鳥』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が翼を広げ、ふわりと飛翔する。
「極めて危険な魔物です。放置すれば多くの犠牲が、留まることなく増え続けるでしょう。そのようなことはあってはなりません。ここで食い止める必要があります」
義務感。使命感。そして仕事として請け負ったがゆえのプライド。そんな色々なものをないまぜにして、Lumiliaは胸に手を当てる。
想像するのは、かつての資料に記されていた捕食風景だ。
仲間が。現にココロが味わったという、『芋虫に身体を食いちぎられる』という感覚。
「今までにもっと危険な魔物も多かったとは思いますが、真にここまで恐怖を感じる相手は居なかった気がします。落ち着いて冷静に、慎重に依頼を遂行いたしましょう……」
今回に限ってその難を逃れられるとは思えない。
痛みを覚悟し、傷を覚悟し、虫を殺すのだ。
レギオニーターという、おぞましい虫を。
●喰うか喰われるかの運命
レギオニーターの姿は遠方からでも視認することが出来た。
背の高い黒人男性を思わせるシルエット。ジャケットのフードを深く被り、向き合って何かを話しているようにも見えた。
数は情報通りに3体。
辺りの石やら土やらを喰ったのか、彼らの周囲はゆるやかなクレーター状になっていた。
アランは斧を握りしめ、先端の刃で地面をがりがりと削りながら歩き始めた。
「おら、クソ芋虫ども。俺が見えるか! アァ!?」
威嚇するように叫ぶアラン。
レギオニーターたちはアランのほうを注目し、そしてゆっくりとこちらへ歩き始める。
琴音やイーリンたちも、対抗するようにアランと並んで歩き始めた。
「分かってるわね?」
「大丈夫よぉ」
琴音は酒瓶が空になるまでラッパ飲みにして、さらにしたたる滴を舌で受けると、瓶をだらんとさげて早足に歩き始めた。
対してレギオニーターたちもまた、フードを脱いでおぞましい芋虫の顔をさらす。歩調を早め、彼我の距離がみるみる縮まっていく。
やがて六人は目を剥いて走り出し、叫びを上げて飛びかかった。
アランと琴音は自分たちへと集中したレギオニーターに名乗り口上と怒涛飲酒をぶつけ、まず自分たちへの注目をひいた。
狙いはレギオニーター三体の分断である。
元々攻撃力の高いレギオニーターが集中攻撃を仕掛ければ頑丈な琴音たちといえどそう長くはもたない。最悪(本当に最悪の場合)瞬殺ということも考えられる。
三方向に分かれて走るアラン、琴音、イーリン。
イーリンは召喚した黒馬に飛び乗り粘液の上を走り抜け、一方のアランと琴音はたがいに交わるように走行。
「わりーな酔っ払いおっぱい! そのクソ芋虫どもは任せたわ!」
アランが引きつけてきたレギオニーターを親指でさししめす。
追走するレギオニーター。跳躍し、口を大きく広げ、掴みかかろうと振りかざして片手を広げ――たその瞬間、飛びかかった琴音の酒瓶がレギオニーターの顔面に激突した。
回転して落ちるレギオニーター。一方の琴音はといえば、腕を盛大に食いちぎられて大量に出血していた。酒瓶は途中から砕け、琴音の血が伝うように鋭利な先端からこぼれ落ちる。
琴音の狙いは二体を引きつけること。叫び声を上げてひきつけようとしたその瞬間、ぞくりと背筋に冷たいものが走った。
足から這い上がるように絡みつく粘液が、琴音の精神を犯したのだ。
喉が詰まる。
声が出ない。
自分のそばをレギオニーターが抜けていこうとする――のを、イーリンの馬が横から蹴り倒した。
「手伝うわ」
剣に魔力を込め、魔法の斬撃を放つイーリン。
レギオニーターはそれを翳した腕で打ち払い、イーリンへと飛びかかった。
各個撃破戦術を考えた将軍は偉大だ。
ただ攻撃を集中させるだけでは総力によるただのつぶし合いになる。
しかし敵集団を分散し、合流を遅延させ、1個体に残る戦力を集中させた場合強い優位を獲得することができる。
「一匹孤立させたぞ。ぶっ殺せ!」
「回復は任せてくださいねぇ」
粘液の上を平気な顔をして駆け抜ける美弥妃。
厄除の効果によって、いくら体中を這い回られても『きもちわるい』で済むのだ。
そうして行動のリソースを確保した美弥妃は、祈祷と緑の抱擁による味方の不吉状態回復に専念した。優先対象は琴音とイーリン。
最初の一体を倒すまで、この二人にはできるだけ長く生き残ってもらわねばならない。
現在、美弥妃を中心とした左右に琴音とイーリンによる合流遅延チームと、アランをはじめとする集中攻撃チームに分かれた状態にある。
「勇者さま、がんばって!」
アランにエンピリアルアーマーを付与するココロ。
同じ調子でイーリンにも付与を回して、その後からマリオネットダンスの糸をで攻撃を始めた。
不吉状態による邪魔も少なからずあったものの、ココロの放った糸はレギオニーターに絡みつき、硬い防御の上からじわじわと食い込んでいく。
Lumiliaの演奏による支援も始まった。
美弥妃の頭上。つまりは戦場の中心にて飛行し、神の剣の英雄のバラッドを演奏し始める。
コストは高いが非常に強力な付与能力だ。
フルートの音色が彼女たちにより躍動的な力を与えていく。
だが心配なのは琴音やアランたちだ。
分断できているとはいえ、きわめて恐ろしい攻撃力をもつレギオニーターが相手である。
首を食いちぎられないように腕や肩を突っ込ませるくらいはする必要のある相手だ。
Lumiliaは今まさに食いちぎられている彼女たちの部位を少しでも再生させるべく、ハイ・ヒールの演奏へとシフトしていった。
アランの頭上へ飛び上がり、召喚の術を行使するレイヴン。
「砕け、魔蟹の腕よ」
魔獣カルキノスの腕が魔方陣より呼び出され、レギオニーターへと襲いかかる。
巨大な蟹の手に挟み込まれ、払いのけようと力で対抗するレギオニーター。
「ちぃ、芋虫の癖にずいぶんとタフなことで……!」
「けどこれで……」
蛍は黒鴉の式神を用いて攻撃を開始。
和紙のヒトカタにふっと息を吹きかけ力を込めることで、式神を作り出していく。
「鴉さん、お願い……穿て!」
現われたカラスがレギオニーターをついばみ、肉体を食いちぎっていく。
「オラァ! さっさと死ねクソ芋虫野郎がぁ!!」
アランの剣が、レギオニーターの首を切断した。
人間にしか見えない胴体と、虫にしか見えない頭部が分かれ、回転しながら頭部が落ちる。
まだわずかにうごうごとけいれんするレギオニーターの頭を、レイヴンの召喚したカルキノスの腕がたたきつぶした。
●いらっしゃいませ。そして永遠にさようなら。
「人間は美味しい」
転機がどこであったのか、ハッキリとはしていない。
アランの腕が食いちぎられ、そのまま全身が喰われるかという時が、目に見えたそれであったと思う。
「ちっくしょう……!」
レギオニーターを殴りつけるも、食欲は止まらない。
アランを喰い、そしてみるみる肉体の怪我を治癒していった。
「これでも食べてろデスぅー!!」
仲間たちが干し肉、ジャーキー、パン、ペットフードといったものを投げつけるが見向きもしなかった。大好物である生きた肉が目の前にあるがゆえに、死んだ肉に目移りしないのだ。
「――ッ!!」
Lumiliaが翼をするどく整え、アランをかっさらうようにしてもぎ取っていく。
「今すぐ回復を」
「やめろ、俺はもう、ほっとけ……」
血を吐きながら、アランはまどろむように目を閉じた。
キッと振り返るLumilia。
口に残った肉片をずるずるとすすりながら、レギオニーターがこちらを見ている。
食べかけの肉を返せとでも言わんばかりに歩き出すその姿に、Lumiliaは手を翳した。
抵抗ではない。
攻撃でもない。
レギオニーターの更に後ろ。片腕を完全にもっていかれた琴音に、自らの治癒魔法を全力でぶつけるためである。
「――――――ッ!!」
言葉にならぬ声をあげ、琴音が血まみれの金属ジョッキをレギオニーターの後頭部に叩き付ける。
かよわい人間であれば死んでいてもおかしくないような衝撃に、ごきりと首がおれまがる。
レギオニーターはゆっくりと振り返ると、琴音めがけて口を大きく広げた。
その瞬間、レイヴンによるロックバスターが叩き込まれた。
のけぞるも、しかし倒れない。
「ええい……どれだけタフなんだこいつ! もう魔力がキツイってのに!」
水弾の魔術に切り替え、レギオニーターへ連射していくレイヴン。
その一発が、レギオニーターの身体を貫いていく。崩れるように倒れるレギオニーター。
そんな時。レイヴンの背に、しぶきを上げた粘液が僅かに付着する。
振り払おうと振りかえったその時、跳躍した別のレギオニーターと目があった。奴らの目がどこにあるかもわからないのにだ。
捕食者の目に、それは見えた。
「まだまだ油断できませんよぉ!」
「分かってる!」
美弥妃とココロは走りながら、イーリンに支援魔法を送り続けていた。
イーリンには無数の粘液が飛びかかり、レギオニーターが食らいつく。
人間社会の常識を当たり前のように粉砕し、レギオニーターは人体部位をパンのように食いちぎっていく。
誰とて喰われたくなどない。おそらく全ての動物がそうである。そうであるがゆえに全身全霊で抵抗し対策するも、喰われるときは本当に喰われてしまうのだ。
それが、もしかしたら今かもしれない。
蛍はヒトカタに息を吹きかけ白鴉の式神を形成。次々に発射していく。
ロベリアの花を放つわけにはいかない。確実にイーリンを巻き込むからだ。
「もっと、もっと沢山……っ」
ヒトカタをぱっと宙にまき散らし、素早く印をきって全てをカラスの式神へと変化させた。
一方でココロと美弥妃はありったけのメガヒールを叩き込み、イーリンの延命につとめた。
スタミナ切れを起こすまでの間。
少しでも長く、イーリンを援護せねばならない。
しかしそれを阻害するように、粘液がココロにまとわりついては精神におぞましい何かを食い込ませてくる。
ヒールワークが僅かに途切れる。
イーリンを、大量の粘液が包んだ。
飛びかかるレギオニーター。
美弥妃が、首を振って叫んだ。
次の瞬間。
粘液の内側から、輝く剣が突き出た。
剣が、レギオニーターの口内を通り、後頭部から突き出ている。
イーリンは自らのマントに付着した粘液をマントごと脱ぎ捨てた。
馬上にて粘液の進行を遅らせ、マントやロウを塗ったタイツによって粘液の進行を更に遅らせるイーリンの作戦が、レギオニーターという凶悪な生物に勝ったのだ。
ある世界のある星で、人類が食物連鎖の頂点だと主張する者たちがいる。
その理由はただひとつ。
人類が、知恵をもって獣を制したがゆえである。
だらりと脱力し、粘液の上に落ちるレギオニーター。
イーリンは深く深く息をつくと、懐から取り出した瓶に粘液を採取し、残る全てに油をかけて燃やし始めた。
淡々としたその様子に、安堵し脱力するココロたち。
蛍も安堵のあまりひざをつき、『お風呂に入りたいです』と力なく笑った。
燃えていく粘液とレギオニーターの死体。
深い傷を負ったアランや琴音、レイヴンやLumiliaたちを美弥妃が手当している。
Lumiliaは燃える炎を前に瞑目した。
「犠牲となった方の無念は推し量ることすらできません……」
夜明けの音楽が鳴る。
少なくない死を踏み台にして、レギオニーターという存在が、今日死んだ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
きわめて有効な戦術の構築と、かなり的確な粘液対策。これらをとったことでチームを勝利に導いたイーリンさんにMVPを差し上げます。
GMコメント
いかがお過ごしですか。黒筆墨汁でございます。
非常に食欲旺盛な怪物レギオニーターの出現により、駆除依頼が舞い込みました。
【レギオニーター】
頭部が芋虫、ボディが人間という生物。食欲旺盛で特に生きてる肉を好みます。
こちらのエリアには『3体』出現しており、物理攻撃力・防御技術・HPに優れています。
《飢餓感》《捕食》《粘液》という特性をもちます。
・《飢餓感》
ターン経過で発生するレギオニーターの状態。
一定値に達すると凶暴化し、攻撃性が増します。
この状態では戦闘の追加行動として《捕食》を行なうようになります。
・《捕食》
周囲の物体を食べようとします。
この行動によりHPが回復します。
口に入るなら何でも食べますし入りきらなければ食いちぎります。特に生きた肉が好みです。よって、割と必然的にPCを食いに行きます。
・《粘液》
毎行動後にで回避判定を行い、失敗すると不吉(ファンブル値+10)のBS効果を受けます。
この判定難易度はターン経過で上昇します。
浮遊していると、判定にプラス補正がつきます。(※簡易飛行や媒体飛行でもプラスされますが、戦闘ができなくなるのでお勧めしません)
レギオニーターと至近距離にいるとマイナス補正がつきます。
この粘液はレギオニーターから出ているらしく、よく見ると自力で動いています。触れると這いずっている感触がダイレクトに伝わるでしょう。
【戦場】
小屋があったはずの場所。
周囲は土と石ばかり。これらの範囲が広がって今は周囲の木々も無くなっています。
障害物は無く平地。作戦時刻は昼を想定しています。
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