PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【クロニッククロニック】進みたい男

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 荒野の中、バイクを走らせる。
 ジャンクもいいところだったが、親切な女性が修理の仕方と、代替の燃料を魔法に変えられるように整備する方法を教えてくれた。そのお陰で今こうして俺は走っている。
 俺は、とにかくこの世界を見て周りたい。
 そう言うと、周囲は止めてきたが、俺はどうしても我慢ならなかった。狭い世界の中に閉じこもっていて、それで一生を生きていくくらいならば、外のどこかでくたばっていた方がマシだ。
 後ろを一瞬だけ振り返る。
 雄大な自然は、数世紀前の人類の痕跡を消し去るように息をしている。
 かつて繁栄を誇っていたであろう高層の建物は何かに吹き飛ばされるようにへし折れて、横たわったそれはかっこうの野生生物の住処となっている。
 寒冷している中、草木はたくましくも遺構に絡みつき、或いは自生し、花を芽吹かせ実を成す。
 人類は、そういった自然の一部をかすめとって、細々と生きている。
 ただソレを感受して生きているだけならば、俺にとっては、死んでいるのと変わらない。
 俺は人で、思考することができる。なら、進みたい。知りたい。

 この世界には何があるのだろう?
 この世界の真実って何だ?
 ――どうしてこの世界は滅んだのだろう?
 俺はそれを知りたくて今日も世界を歩く。

 

 困ったことが起きた。
 道が、ない。
 目の前に広がっているのは断崖絶壁……と言うより、大穴だ。
 向こう側はかろうじて見えるが……。
 巨大な大穴はぽっかりと空いていて、底が見える気がしない。
 どうして出来た大穴だろう?古い地図にはこんなものはなかった。
 調べてみたいけれど……どうしよう?



 境界案内人クロニックは、本を手にしている。
「よろしければ、またこの世界にお付き合い願います。……私には、どうしようもない世界なのです」
 どこか寂しそうな声音だった。彼はどこか遠くを見て、懐かしむような、惜しむような、無力感を味わっているような。そんな、様子だった。

NMコメント

 ライブノベルはなんと一年ぶり、お久しぶりです、tkです。ポストアポカリプス的世界観でちょっとロードムービーをしてみないかい?というシナリオの、一年ぶりの第二弾です。
 ちょっと滅んでいるようで滅んでいないような、そんな世界をお楽しみください。


●目標
【旅人である「アルノン」という男性と共に『大穴』を調べる】
 『大穴』は非常に大きく深く、底が見えないほどです。
 調べようとするのであれば、浮遊する能力があれば様子を伺うことができるでしょう。
 アルノンは『大穴』の向こう側に強く興味があり、飛行できる生物、或いは能力を持ち寄れば、運搬することが叶います。
 その他、魔法的、機械的、お好きなアプローチで『大穴』を調べてみてください。
 
【アルノンの世間話に乗る】
 自分の住んでいる世界の他にも世界があると知ると大変興味を持ち、そのお話が聞けると喜ぶでしょう。
 また、彼はこう問いかけてきます。
「なあ、『進みたい』って思うことは、とても大事だと思わないか? どんなものが待ち受けていたとしても、『進みたい』って全ての原動力になると思うんだ。人が進歩するには、どこかへ歩みだすことが必要だ。皆は――どこでもいいから、旅をしてみたいと思ったことは、ないか?」

  
●世界観
 数世紀前に何かがあり、そのせいで人類が滅びかけている世界です。
 小さなコミュニティで人々は肩を寄せ合って暮らしており、活発に旅をするような人物は希少です。
 かつては魔法と科学で発展していた世界のようでした。気候は世界的に寒いです。
 
 
●登場人物
 【アルノン】
 おとなしい青年です。イレギュラーズの方々には友好的に接し、また強く興味を持ちます。
 ぼそぼそと喋りますが、不思議と声の通りは良いです。寒いため厚着をしています。十代後半。
 
 
 試してみたいことがあったらガンガンプレイングに書いてくださると幸いです。
 また、心情や、やりたいこと、しないことを書いてあると参照できます。
 PCのロールプレイを入れないプレイングの場合でも、一言か二言台詞の例があるとリプレイが執筆しやすいです!

 それでは是非ともよろしくお願いいたします!

  • 【クロニッククロニック】進みたい男完了
  • NM名tk
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年11月06日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談10日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
変わる切欠

リプレイ

●出会い
 大穴の前で呆然としていると、足音が聞こえてくる。振り返るとなんだか不思議な見た目の人……人? も含めて六名。こういう『外』だと、集団に遭うことは珍しいというのに。
「ええと……」
 そういえば、バイクを整えてくれた人も、不思議な人達に助けられたと言っていた。しかし生憎俺は口下手な性分で、だからまごまごとしていると、ずずいと動物のような人……? ライ・ガネット(p3p008854)さんが、口火を切ってくれた。
「ようし、見ての通り、手助けに来たぞ~!」
「……開口一番それだと……ああ、うん、目を丸くしてるぞ」
「え……えっと、怪しい者……ではない、です」
 回言 世界(p3p007315)さんとメイメイ・ルー(p3p004460)さんがそう俺に言うと、赤羽・大地(p3p004151)さんは、自分たちはこことは違う異世界から来たのだという。回言さんの言っている通り、その時の俺は目を本当にまんまるにしていたのだろう。見た目がほぼ動物の人に、動物のような角の人に……ええと? と、この時は思ったけれども、こう思い返している今としては、とても個性的な面々で……出会えてよかったと思っている。
「まぁ、信じられないよな、そういう俺も異世界に来て、こうしてさらに異世界に……いやこんがらがるな、こう言うと」
「ともかく、手助けして回っている者と認識してくだされば」
「クロニックからもだいぶ念押しされたしな」
 ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)さんに頷くアーマデル・アル・アマル(p3p008599)さん。クロニックは誰かと聞くと、どうも俺の困り事の解決に導いてくたれ存在らしい。内心感謝しながら、そういうことなら、と、眼前の大穴を指さした。
「見ての通りなんだ、ここから先は飛べもしない限り、相当迂回しないといけなくて……。魔法が達者な人ならいけるんだろうが、俺はあんまり得意じゃないんだ」
 それと、注文が多くて申し訳ないんだが、この穴について、もし調べられたら知りたい。……とも付け加えた。我ながら強欲だ。


●穴について
 そんな俺の強欲に対して、皆はとても協力的だった。回言さんからは、別にアルノン君も俺達も研究者じゃないんだぜ? と小言を言われてしまったが、それでも手伝ってくれるようで、なんだか言葉に反して優しい人だな、と思った。それで、それぞれ大穴を物理的に調べることも、なんと霊と交信するという形で情報収集を試してみるとも言ってきた。さすがに霊に触れるなんて発想は無かったし、この世界に死者に触れる魔法は現存しないから、驚きばかりだ。
「気配が薄いナ……穴ができたのは、随分前だったのカ……? 自我が希薄かもしれなイ」
「呼びかけて、みるとか……? いかが、でしょう、アルノンさん」
「こういうのは全然詳しくないからな……任せられるのなら、任せたいんだが」
 なんだかちょっと出会った時と雰囲気の違う赤羽さんは、なにかを探すように周囲を見ている。霊、のことだろう。メイメイさんの提案と俺の言葉に頷くと、同じ心得のあるらしいアーマデルさんは呼びかけに加わり、ジョシュアさんも手元にメモを構えて、穴の近くまで寄って行く。他の皆もそれに続いて、穴に潜ったり通過する前に、危険がないかどうかの確認を取るという。……本当にすごい人達だな。色々と手慣れてる。
「……なるほど」
 フードの下から見える口元がなんだか複雑な気持ちを帯びているような、そんな雰囲気でアーマデルさんは戻ってきた。赤羽さんも腕を組んで難しそうな顔をしていた。
「ざっくりと言うと、『皆で頑張っていたんだ』……とかは、聞き取れた」
「あア。付け加えるのならバ、ここで戦闘や、悪意のある行為が行われタ、という雰囲気は無かった――ここに居る霊の全員ハ」
 ぽつりとアーマデルさんは言う。
 なにかひとつの目標に向かって、必死に行動していたようだ、と。


●穴へ
 そうして穴そのものの調査の話となる。霊の様子からして、少なくとも人為的な危険性はないという結論が出ている。
「なら、穴の周りを飛べば良いだろう。危険性の有無も確認したい」
「用意はできている、いつでも」
「えと……これが人工物、かどうかの確認、もしたいですね……」
 赤羽さんに続き、回言さん、アーマデルさんとメイメイさんに続いて。
「そうですね。うーんと……こうも奥が深いとどうなってるのか……もしかしたら人が住んでる可能性もあります」
「ともあれ全員飛べるし、アルノン、一旦調べる方面でいいか? あとで穴の向こうに運搬もできるし」
 ジョシュアさんとライさんも頷く。
 ……。
 ぜ、全員飛べるのかよー!?


●穴にて
「結論から言うと、穴から罠や特筆した危険物質の気配は感じない。だが……文字通り底が知れない。降り過ぎたら、流石にこの星を構成するもの、などで体に異常をきたすだろう」
「はい、僕も同じ見解です。具体的にどうできた穴、というのは、少々潜らないと分からないかと。人工物はぱっと見たところ見当たりません」
「承知した。そうすると……穴の出来た原因を観察してみようか。降りられるだけ降りて見るか? それから向こう側に行こう」
 アーマデルさんに、俺も含めて全員頷く。
 ジョシュアさんの連れているものの背に乗らせてもらって、メイメイさんからおずおずとバイクはあとで運搬すると言ってもらえた。
 穴に少しずつ全員で潜航していく。岩は壮絶に削れている。
「こういう穴、時々あるんだ。俺のバイクを直してくれた人も、穴をみかけたって」
「……時々?」
 俺の言葉に、ライさんはいぶかしげにする。そうだよなぁ、こんな穴がいくつもある、って、信じがたいもんな。とりあえず、俺は説明してみる。自分の見たことと、聞いていること。この世界の今の技術レベル。穴くらいは別に、珍しくないんだけど。
「海の向こうは今の技術じゃ、果てしない先にあって分からないけど、ここから西にも小さな穴が、南西にも穴を見かけてる。ただ、ここまで深くて底の見えないのは、はじめてだ」
「……」
 俺の言葉に、回言さんは眉間にシワを寄せていて、或いはメイメイさんは驚愕していて、ジョシュアさんは口を固く結んで、赤羽さんは顔を歪め、アーマデルさんは小さく息をついて、ライさんは岩壁に当てている光を呆然と見つめていて――それから、誰ともなく言った。
 
 これは、天災で出来た穴だ、と。


●そして
 無事に向こう側へバイクまで到着。焚き火を皆で囲みながら、ひとやすみ。ジョシュアさんが干し肉に、料理も用意してくれたようで振る舞ってもらっている。……ありがたかった、とても。
 見てくれた皆いわく、これは『隕石』というものでできたらしい。
「このバイク整えてくれた人と話をした時。……兵器の開発の跡があって、世界は戦争で滅びたかも、って聞いたんだけど……隕石――空から星が降ってきた、だなんて」
 話のスケールが正直……大きすぎて、びっくりといったところだ。
「その調査に関わっていたが……兵器と見ていた、が、隕石の衝突を防ぐほどのモノを開発していたのならば、頷ける部分は多大にある。霊からの『皆で頑張っていたんだ』、も、世界に関わる脅威であるのならば納得だ。しかし、一つ疑問が」
「クロニックさんが出していた報告書では、生体兵器の開発の痕跡があったとお伺いしています。……この世界は、兵器の開発は生体が主なのでしょうか……?」
 回言さんの言葉から受け継いで、どうやらこの世界での昔の技術をジョシュアさんははかりたいらしいが、生憎俺も昔の歴史を調べていてもそのあたりは不透明だ。申し訳ない、と続けると、いや、ここまで風化していれば分かるものも分からんとの返答だった。
「ともあれ、ハラが減ってはなんとやら、食べるか」
 俺が用意したシチューもあって、椀に全員分を配る。ジョシュアさんのお弁当は日持ちしそうだから、これは後日に有り難く頂戴することにした。自分達に振る舞って大丈夫なのか? とアーマデルさんが心配してくれたけれども、狩りができるから大丈夫、と銃を見せておいた。
 ――ぱちぱち、と鳴る焚き火の音。こんなひょんなことから世界の真相の欠片にたどり着いた、というのも、ここで集ってくれる皆のおかげだ。……俺は、ぽつぽつと言葉をこぼす。
「……なあ、『進みたい』って思うことは、とても大事だと思わないか? どんなものが待ち受けていたとしても、『進みたい』って全ての原動力になると思うんだ。人が進歩するには、どこかへ歩みだすことが必要だ。今みたいに、俺は、進んだことで、新しいことを知っている。皆は――どこでもいいから、旅をしてみたいと思ったことは、ないか?」
 今俺がこうしているのは、とにかく、進みたいから。止まっていては、何も始まらないから。ここに来てくれた皆は、どうなのだろう、と。俺にしては、いつになく饒舌だった。
「進みたい、ですか。わたしは……自分の考えとは別、に、故郷を出ないといけないのが、旅の始まり、でした」
「……。つらいこと聞いちゃったかな」
「いいえ。もちろん、何年もの間、不安な思いでした。でも、『旅』の途中で、色々な人に出会って……少しずつ、変わっていきました。今は、自分の足で一歩一歩進めることが、とても……誇らしいです」
「俺は進みたいという気持ちを、否定はしない。メイメイのように不可抗力でそうなる人間も居て、それがポジティブに転じることもあるだろう。俺の元居た世界でも、『進展、進化、進歩』と発展や向上に関係する言葉には『進む』という文字が使われている。しかし、時には止まることも大切だということは、知っておいたほうがいい」
 バイクだってブレーキが止まれば困るだろう? ――つまりはそういうことだ。旅をしたいとは思わない、というか、旅なんて毎日してるようなものだから。そう続けて、カリカリと地面に回言さんは『進』という文字を書いてくれた。
「……生きるとは、歩き続けること。少なくとも、こちらの教義ではそうなっている。メイメイ殿も、回言殿も、アルノン殿も――皆日々を歩んでいることには違いない。そう思えば、共感できることは多くある」
「進みたい、かぁ。難しい話だな、俺は今まで意識はしてこなかったから。ただ、俺は自分のやりたいことは一番だと思っているから……それをやりきるための原動力というか、そういうのは大切にしたい」
「僕は、そういう気持ちは薄い方だと思います。事情があって、安住できる場所を求めて転々としていた事があるのですが……その時の経験は、あまり……。でも、色々な景色と出会いは、やはり楽しくはあります。僕にとっては――旅をするということは、帰る場所があってこそ、だと思います」
 共感。意義。帰結。……俺は、半ば捨てるように出ていった故郷を想う。止まってしまったままでは、死んでいるも同然だと思っていたから。でも、帰る場所がなければ、人は孤独で。見てきたものを伝えることができないままであれば、それは言葉を操って誰かに何かを伝える人間として、それはとても寂しいことだと。
「結局のところ」
 赤羽さんは、首元をかきながらぼやくように言う。
「進み『たい』理由も、進む『べき』理由も皆それぞれにあって。それにゴールがある人も、ない人もいる。それでも多分共通してることがあって、それは、『旅の先で誰かと出会う』ということ。まったくの孤独の旅なんて無いんだから」
 静かな言葉で締めくくられた食事に、俺は皆に、礼を言った。



 俺の出立を見届けてくれた皆を思いながら、バイクを走らせる。俺が進む意義、意味。
 そういえば、あの女の人はこの世界のことを知りたいのだっけ。行く先は確か――うん、これなら多分、出会うことはできそうだ。こうして今、俺は誰かの再会を夢見ている。そしてふと、置き去りにした故郷を考えて――ぐるりと行けるところまで行ったら、戻ろうと思った。帰るべき場所があることは、とても幸いなのだと、あの人たちの言葉を思い起こしてみる。
 土産話を沢山持って帰ろう。
 そうすれば、俺の進む意義も、意味も、よりいっそう輝くだろうから。

成否

成功

状態異常

なし

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