PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<花蔓の鬼>散華

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 花街『瓊枝』――その中の一つの見世で女は出会った。
 澄恋 (p3p009412)とすみれ (p3p009752)。鏡あわせのようでありながら異なる道を辿った女が二人。
 何方もが知る面影を宿した女は悍ましい程に滅びの気配をさせている。
「『お母様』……?」
 その言葉を反芻するように告げた白薊 小夜 (p3p006668)が感じ取る気配だけで、澄恋とすみれが呼んだ女が魔種である事は確かだ。
 ただ、その女を。今より殺さねばならぬであろう滅びの使徒を母と呼んだのだ。
「……」
 言葉を一度紡ごう唇を擦れ合せてから、喉の奥に支えた声を絞り出すことも出来ぬまますずな (p3p005307)は二人の横顔を見詰めていた。
「澄恋のご友人なのでしょう。ご機嫌ようございます。母の彩芽と申します」
「本当にお母様なのですね?」
 すずなは確かめるように問うた。母と云うには余りにも浮世離れし、子の存在など蔑ろにしているかのように思える彼女は確かに母と名乗った。
 澄恋は「まだ、母と名乗ってくださるのですか」と絞り出す。
「ええ、……残念ながら」
「残念って」
 オイオイと呆れたような声音を発してから首に手を当て思わず「くそ」と呻いた耀 英司 (p3p009524)は澄恋の心境を慮ってそれ以上の言葉を吐出すことは出来なかった。
 それだけで、分かる。ヴァイオレット・ホロウウォーカー (p3p007470)から見て、明らかに彼女の親子関係は破綻している。
「残念と仰った理由を聞いても?」
「その子にお聞き下さいな」
 せせら笑う彩芽の美貌からは『澄恋ではなく、すみれ』の面影を感じていた。
 ああ――本当に。
 旅人であるすみれにとって『母と同じ顔をした女』が実母じゃないことは直ぐに理解出来た。
 ただ、彩芽という名も。母と同じ顔をして居るのも。それだけで同一存在(わたし)の母親であると理解させられる。
 だからこそ、本当に。本当に――「産んだのがその子、だったら」
 そんな言葉が毒のように滲み出て、澄恋を苛むのだ。
「ひ、」と引き攣った声を漏した澄恋の前に立ち松元 聖霊 (p3p008208)は「其方の口から意味を聞いても良いか?」と静かに問うた。
 ひゅうと息を呑む女の宿した色彩も、種族特徴も。顔立ちも、所作も、何もかも。
 母である彩芽に似ている部分はあるというのに、残念ながら父には似ていなかったのだ。
「……いえ、私から説明させて頂いても、宜しいですか?」
 分かって仕舞った。解りたくもない、この世界の澄恋の不幸を。
 すみれは緩やかに唇を震わせて、仲間達を振り返った。

「――澄恋(おまえ)は、誰との子供なのか」

 澄恋の足元が崩れていく感覚があった。その腕を掴んで立たせたコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)は彩芽と澄恋を見比べる。
「は、子供に背負わせる事じゃないだろ? アンタの勝手だ」
「ええ。けれど、紛れもなく実を結んだこの子が『せめて』私にだけ似ていてくれたならば――」
 毒吐いた女に瑞鬼 (p3p008720)は「酷い親だねえ」と吐き捨てた。
 女の我が身可愛さは虫唾が走る。だが、この花街で生れ育ち漸く掴んだ幸せが崩れ去った悍ましさは理解出来た。
 掃き溜めより抜け出せた時、女は漸く人間になったのだ。
(ああ、人間としてお天道様の下を歩いて行くつもりが、子の父親が誰とも知れずに家庭が破綻し反転した――か)
 こんな世界で生きてきたのだ。有り得ないことじゃあない。それを全て否定する事は誰にも出来まい。
 そもそも、だ。ムサシ・セルブライト (p3p010126)に云わせればこの獄人差別の色濃く残った花街の在り方こそ否定されるべきなのだ。
 現状の豊穣郷は霞帝と、前当主を亡くし偏見亡く再建に向かう天香太政大臣家のお陰でその差別も薄れつつある。
 前時代は酷い者だったのだろう。それこそ、獄人の娘を買い甚振っても誰も助けてくれやしない程に――

「どうして、お前が生まれてしまったのか。どうして……『あなた』じゃなかったのか」
 澄恋とすみれを見比べてから彩芽は「ねえ、志鸞様」と振り返った。
 その姿を見てから、英司は「マジかよ」と呟いた。
 ああ――余っ程の悪夢だ。探し人が其処に居る。澄恋と血の繋がりを感じさせる外見に、魔種の気配。
 花町より人が消える噂の張本人。雲と名乗ったその男は彩芽の呼びかけに応じ、その腰を抱いた。
「彩芽、そんな事を言うたらあかんよ」
「けれど……いいえ、澄恋が『貴方との子』だったから、共にあれるのですものね」
 うっとりと、女の顔をして彼女は笑った。貴方との子、と告げる彼女の言葉に澄恋は愕然と男を見詰める。
「初めて会った……いや、一度会ったことはあるなあ。
 覚えてるやろか。詩音が世話になって……むぐ」
「あの子の話はせんとって」
 彩芽が志鸞の唇を掌で覆った。防がれた言葉だけで澄恋は引き攣った声で「詩音」と呼んだ。
「待って、お母様」
「何?」
「お母様……ッ! 詩音とは、花堕の……!?」
『花堕』のあの人に悪事が飛び火しないためにも、必ず犯人を突き止めて――
 そう考えて此処までやってきた。澄恋の反応に驚いた様子で仲間達は彼女を見詰める。
 彩芽は澄恋は家を追われ花街で身売りをして過ごしてきたと云った。その言葉に嘘は無い。だが、自死をも考えた女を救った支えたる娘が同じ獄人の『詩音』であったのだ。

 ――過去に自分も身体売ったり鬼人種差別で大変だったけど運命の人と出逢えた。
   貴方にも素敵な出会いがきっとあるはずだから頑張って。

「ま、さか――」
 運命の人と出会って身請けされ、幸せになった筈の人。澄恋の支えであり、希望だった。
 何れだけ穢れようとも、いつか幸せな花嫁になれるのだと、そんな夢を見せてくれたその人は。

「良かったなあ。詩音」
 男は、『雲』と名乗るその魔種はゆっくりと『角飾り』を持ち上げた。
「ボクの子供の澄恋はオマエの事が大好きらしい。澄恋をよく見ておやり、詩音」
 眼球だろうか。人間の眼球を加工したアクセサリーを持ち上げてから志鸞は笑う。
 手を伸ばす彩芽がそれを握り潰そうと――「やめて! 何てことを!」。澄恋は喘ぐように叫んだ。
「……同じ事をしてるそうやね。澄恋。旦那様を作るんだったか。ボクとオマエは親子だなあ、良く似ている。
 ほら、顔をよく見せておくれ。美人だな。ボクと彩芽の子だ、さぞ良い『商品』になるだろう」
 嫌悪感を露わにした澄恋が一歩後退した。
 ほら、よく見ればあの男の身に着けるアクセサリーは人の骨、角、眼球、それから……。
 商品とは何かと問おうとしたヴァイオレットの声を遮ってから彩芽は云った。
「わたしとこの人の時間を邪魔しないで下さる? ……ねえ、志鸞様」
「いや、オマエが邪魔。今は商品を紹介してる最中。
 顔は美しいがよく回る口は邪魔でしかないな、彩芽」
「ッ――邪魔……。
 わたしより、アイツの方が……? 澄恋ェッ……!」
 彩芽が一歩踏み出した。後方で楽しげに見物している志鸞を余所に彩芽は畳を踏み締め躙り寄る。
「おまえなんて、産むんじゃ無かった! 死ね! 此処で死んでしまえ――!
 おまえが居るからわたしは幸せになれないんだ! ああ、待っていて。志鸞様……直ぐに『捌いて』さしあげましょう!」

GMコメント

 第二話。本気で戦いましょう。

●成功条件
 兎円居 彩芽(うのまどい あやめ)の撃破

●フィールド情報
 とある見世の一室。離れです。それなりの広さのある宴会場が戦場となります。
 人目はある程度避けれますが物音などから誰かが見に来る可能性は否めません。
 時刻は夜です。月明かりは美しく、電気も付いていますが、何時其れ等が喪われるかも分かりません。

●兎円居 彩芽(うのまどい あやめ)
 澄恋さんの実母(世界線が違えばすみれさんの実母と同一人物ですが、混沌の彩芽は魔種です)
 瓊枝で名を馳せた芸子。美しい菖蒲色の髪と眸。短角、銀舌の鬼人種。獄人でありながら非常に売れっ子でした。
 神威神楽の武家である兎円居家の当主に惚れ込まれ、彼と婚儀を澄ませましたが、一夜だけの過ちを犯しました。
 産まれた澄恋は兎円居家の血を引かず、『雲(志鸞)』の子であったため、離縁を申し入れられたそうです。
 その後行方知らずでしたが『雲』の元に身を寄せて彼の仕事を手伝っています。
 彩芽の中に澄恋さんへの愛情はありません。全て邪魔をしてくるのは澄恋さんであると認識しているのです。
 もしも、産まれたのがすみれさんだったならば、今も幸せだったでしょう。
 一夜の過ちは憧れによるもの。ただ、幸せになりたかった女です。

 魔種。非常に好戦的です。炎を駆使して戦うほか、爪や布を武器にもします。
 戦闘能力に優れており、『人を殺め続けた』結果、慣れぬ戦いでもその身に馴染ませてしまったのでしょう。
 第一目標は『澄恋さんの殺害』、その次は『鬼人種』の殺害です。すみれさんに対しては元旦那の面影を感じ惑いを感じています。

●『死の影』 15体
 彩芽の背後から現れた亡霊です。体のパーツが欠けており、拐かされて姿を消した遊女達のようです。
 彼女達は恨み嫉みを抱いており、自らの境遇を投げているようです。言葉は余りに通じません。
 また、そのパーツは背後の『雲』が手にしています。

●『雲(志鸞)』
 雲と名乗る鬼人種。詳細は不明です。人間のパーツを集め、商売をしているようです。
 また、澄恋さんの希望であり憧れであった遊女『詩音』を身請けした張本人であり、彼の身に付けるパーツには詩音のものが多く存在して居ます。
 基本は後方で見ています。彩芽は彼への攻撃を全て庇いますし、彼を愛しているが故に攻撃を加えると更に苛烈な戦いになる事が想定されます。
 また、彼自身も魔種です。恐らく彩芽より強いはずです。攻撃された場合は彼も防衛のために戦闘行動をとります。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 特に澄恋さんは狙われています。予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はDです。
 多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
 様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。

  • <花蔓の鬼>散華完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年10月27日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
松元 聖霊(p3p008208)
それでも前へ
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
耀 英司(p3p009524)
諢帙@縺ヲ繧九h縲∵セ?°
すみれ(p3p009752)
薄紫の花香
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官

リプレイ


 ずっと聞いていたではないか。その声を。母の怒声を、悲しみを。
 お前など生まれなければ。お前など。お前など。己が宿した色彩が故か、己が宿した特徴が故か、己が――不義の子であったからか。
 帰る家などなくなり、姓もなく。名のみの日々はどれ程の空虚に苛まれたか。
 家族という繋がりを喪えど、心だけでも気高くあればさいわいが訪れると彼女は言った。
 硬くなった皮膚は此れまでの苦労を物語っていたけれど、祝言を挙げたその人の美しい笑みだけは忘れたことはない。

 ――幸せな時を忘れたらあかんよ。ずっと忘れずに笑って居るなら毎日が幸せになっていくから。

 ……そうだったでしょう……?

 呆然と立ち尽くす『姓なき花嫁』澄恋(p3p009412)の前には魔種が二人立っていた。一方は『姓秘し花嫁』すみれ(p3p009752)にも良く似た美しいかんばせの女であった。
 射干玉の薄絹で角を隠し、血潮の涙を流す女は澄恋をぎらりと睨め付ける。彩芽、瓊枝で名の知れたその人は紛れもなく澄恋の母であった。
「ああ」と唇が擦れ合わされた。じっとりと、耳朶を這いながら落ち行く声音に憎悪が滲む。お前など、産まなければ。
 姓を名乗ることは許されず、憧れは惨めに潰え、母は魔に転じ、はじまりは眼前で笑う『実の父』だというのだから、滑稽だ。
「やはり、わたしなど……産まれなければ……」
 澄恋の悲痛なその声音にすみれは何も答えやしなかった。一方は愛しい人との祝言の最中に斯様な地に呼び出された幸い溢れる娘。もう一方は地に潰えた苦しみばかりを抱いた女。
「そんな……そんなことは……! 親が……生むんじゃなかったなんて……なんでそんな酷いことを言えてしまうんだ……!
 親としての責務を果たせとまでは言わないけれど……だが……! そんな親修正してやる……ッ!」
 怒りを堪え、拳を振るわせた『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)の言葉に『雲』と名乗った男がからりと笑う。
「人の家庭環境に首突っ込んだらあかんよ。感動の再会やろ?」
「感動のご対面、だぁ? いや、そうは見えないがな。俺ぁ殆ど事情は知らねぇ。澄恋が話したがらなかったからな。
 でも、感謝してたんだぜ? アンタ等のおかげでこんな美人と出会えた。サンキュー、そんで、さよならだ。――変身」
 遣ることはシンプルだ。澄恋を喪わず、彩芽をこの世から葬り去る。事態を飲み込めて居らずとも、選択肢は『殺す』の一択なのだ。
『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)は仮面を被る。全てを覆い隠すようにして、今だけ感情をひた隠した。
「美人。そうだろうとも。ボクの子や。
 あ、そうか……父親やもんね。曇暗 志鸞。肉屋とも呼ばれる屋号『くものくら』で商売してます。澄恋、曇暗を名乗ってもええんやで」
 唇がついと吊り上がった。肉屋という言葉と、彩芽の背後にぞろりと見えた亡霊の影だけでどの様な商いを行って居たか直ぐに分る。
 臓器を、肉体にパーツを捌き加工しアクセサリーにする。より美しい臓器は加工など為ずに高く売れるのだ。その用途は様々で金には困っていないことが男の身形から良く分かる。
 シンプルに「狂って居る」と『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)が鼻で笑った。
「それで? あれが澄恋のママねぇ……こりゃまた随分とハッピーそうだねぇ」
 皮肉を込めて笑って見せたコルネリアの指先は、拳銃の引き金に掛けられていた。此の儘額を撃ち抜いて全てが終ればどれ程良いか。
 生娘のように恋をして男に媚びを売る姿。『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)に言わせればいい歳をして男にうつつを抜かす色狂いそのものだ。
 身を売り、心を切り刻み生きてきた女にとっての燃え盛るような焔の恋情は志鸞へ向いたのだろう。幼い少女の火遊びのような恋である。
 現に澄恋の『戸籍上』の父親は志鸞等ではない。彩芽にとっての穏やかな愛情は他の男の為にあった。培う未来と生活が為の傍らは目の前の『肉屋』の為にはなかったのだ。
 だが――現にどうか。
 最初に澄恋を否定したのは父親だったらしい。実の親子などではなかったという苦しみは計り知れまい。それを引き金に彩芽は澄恋を否定した。
 そうして、望まぬ形で現れた男が己の父親というのだ。どの様な言葉を重ねても、彼女を抱き締めようともその気は晴れないだろう。
 ――故に。
「親子事情なんざ知らねぇが、敵だってなら仕事するまでよ」
 これも実にシンプルな応えだとコルネリアは考えた。
「母親を殺そうというの……? 何処までも親不孝」
「かっかっか、澄恋の親というから期待してみればなんぞ別の馬鹿娘がいただけか。
 子を産めば親になれるわけでもなし。親とは子を育ててこそなるもの。恋だの憧れだのそんなものは餓鬼の戯言よ。
 それはそれとして……子を殺そうとするその暴挙。わしが許すわけなかろう」
 瑞鬼はぎらりと睨め付けた。その鋭い眼光を受け止めても彩芽は怯むことは無い。
 親殺しも、子殺しも。血の繋がった者同士が殺し合っても良い理由などあるものか。
 綺麗事などこの場に必要は無く。ただ――救いなどない瓊枝の夜には何処か遠くから楽しげな笑い声だけが聞こえていた。


 夢路も恋路もうつつを前にすれば実に儚いものである。恋など叶わぬが故、人は夢を見るのだろう。
 最早破れて叶わぬならば散らしてやるが優しさか。『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)は仕込み杖からすらりと刀を引き抜いた。
 ああ、我が身詰まされようものよ。
(……叶わぬとわかっていてもそれに縋ってしまう、少し我が身のようで嫌になるわね)
 射干玉の髪が揺らぐその瞬間を『簪の君』すずな(p3p005307)はじいと見詰めていた。清廉な気配を宿す一刀を手に唇を引き結ぶ。
 彩芽は恋をした。故に、此処に居る。
 澄恋は『恋をして生まれた』存在だ。本来ならば愛されるはずだった。
 どこかで掛け違えたからこそ、こうして今がある。すずなは親で在る前に一人の女であることは理解していた。それだけは理解出来るのだ。
「……だからといって、これはあんまりでは……? 皆が皆、順風満帆ではないのは当然なのですが……」
 すずなは眉根を下げてから彩芽を見た。実に軽やかに笑う志鸞はさて置いて、彩芽の在り方には異を唱えたくもなるのだ。
 だが、それ以上は考えやしないと息を吐く。惑えば、揺れれば、太刀筋が曇る。己は只、斬ることだけを考えて居れば良いのだから。
「あんまりよ」
 すずなは顔を上げた。己の呟きに応えたのは予想に反して彩芽だったからだ。
「たったの一夜だったのに……思い出だけでよかったのに……ただ、幸せになりたかっただけ、なのに……ああ、ああ、どうして……」
 それがどれ程に身勝手であるのかと『医者の決意』松元 聖霊(p3p008208)はぎりと歯列を軋ませた。
 まるで熱にでも浮かされたかの如く夢中で言葉を紡ぐ彩芽に「おい」と聖霊は鋭く声音を投げ掛けた。ゆるりと首をかげた女の眼球がぎょろんと動く。
「ただ幸せになりたかっただけだァ? ほざけよ、幸せになれる未来を手放したのは他でもねぇお前だろうがよ。
 お前を幸せにしてくれる筈の奴を裏切ったのはお前だろ。
 ……歯を食いしばって幸せになる為に耐えてきた、過去の自分自身を裏切ったのもな」
 本来の幸せの形というのは『目に見えて』しまっているのだ。澄恋ではない、すみれを見れば明らかではないか。
 優しい両親に育てられた武家の娘。獄人でありながらも、それなりの地位を有し、良い縁組で祝言を挙げる『最中』だった娘。
 彼女を見れば忌々しいほどに本来の幸福が存在して居るのだ。鏡写しだからこそ、幸せになった彩芽を知っているすみれはごくりと息を呑む。
「それを産まれてきたなんの罪もない澄恋の所為にしやがってよ。
 俺は医者だ。産まれてきたのがお前じゃなければなんていう母親、許せる訳がねぇよなぁ!」
「産まれてしまったのが罪やったんやろう? それはしゃあないわ。……たった一つの夢を叶えたら良い拾い物をしたからボクは嬉しいんよ」
 どう言う意味だと聖霊の唇が震えた。ああ、気味が悪い笑みだ。それに『男の商売』を理解してから許してなどおけぬ。
 医者である聖霊にとって『くものくら』の在り方全ては許せる者ではなかったのだから。
「ボクに似て良い『パーツ』が揃ってる」
 ひゅ、と息を呑んだ聖霊を留めてから『水底にて』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は美しい笑みを浮かべて見せた。
「ご機嫌よう。ワタクシも『菫』と申します。
 所でこの様な言葉はご存じですか? 『因果応報』――悪意には悪意を。そうやってその報いを受けさせるのです」
 嫋やかな笑みを浮かべたヴァイオレットの紅色の瞳が怪しい色を宿した。足元からぞろりと湧上がったのは女の懐く享楽だ。
 ああ、そうだ。悪人が自らの悪意の果てに地獄に堕ちて行く。その様がヴァイオレットは何よりも好きなのだ。
 ――それが、澄恋の肉親でなければ良かったのに。
「……澄恋様。ワタクシは『菫』。仮初なれど、アナタの影。
 アナタを手折らんとする凶手からアナタの事を覆い隠し、応報の刃を、アナタの代わりに振り翳しましょう」
 彼女はどれだけ悲しみに苛まれ用途も、他者への憎しみや怒りに変えることは不得手だろう。ならば、己が引き受ける。
 ヴァイオレットの足元で嗤う声がしたかの如くぞうと影は伸び上がる。
「澄恋さん、すみれさん、背に」
 静かに声を掛けて、すずなは眼前を睨め付けた。己の役目は彼女を護る事だ。彩芽も、『雲』もその何方もが危険である事には違いはない。
「おい、彩芽。お前は澄恋を殺せねぇよ。何でって俺らが居るからな。
 お前の牙や爪が澄恋を、仲間を傷つけるなら俺が何回でも癒してやる」
「ならば、何度だって殺してやりましょう! お前がいなければ良かったのに!」
 それが女の原動力で、女の心のよすがだった。聖霊はそれに気付いて仕舞ってから酷い苛立ちと苦い思いを噛み殺した。
「馬鹿娘よ。子は親を選べんがやりたいことは選べるもの。『澄恋』のやりたいことをやるがよい」
 瑞鬼は囁いた。馬鹿娘の親も馬鹿娘、蛙の子は蛙などと揶揄したが斯うしてみれば途轍もないが似ては居ない。
 澄恋を守るすずなの傍らで、清い癒やしの気配を宿した瑞鬼は前行くコルネリアを見据えた。
 コルネリアが彩芽の更にその背後を睨め付ければ、そこに揺らぐ気配は像を結ぶ。ムサシは思わず呻いた。
「あれは……攫われた遊女さんたちの………死後の尊厳まで奪い取り尖兵としてけしかけるなんた残忍なことを……」
 角を喪い、臓物を失い。皮膚を縫い合わせた伽藍堂の肉体。眼球は加工しアクセサリーにでもされたか。みてくれは解体された醜い死骸そのものだ。
 殺した上で解体(バラ)して加工して。爪の一つまで有効活用したと自慢げに嗤う志鸞にムサシは苛立ちを滲ませる。
「ッ――行けっ! ディフェンダー・ファンネルッ!」
 ムサシはそれらをその双眸に映した。風邪のように打ちかけられるビームに覆い被さるようにコルネリアの轟炎が渦を巻く。命をも吸う福音砲機。装填された生命力は今や怒りの焔へと転じていた。
「意思が残ってんのかどうなのか。なんにせよ趣味が悪ぃな、この影共は。商売の道具にされ、無念のままにこのザマなのね。
 ……感情さえ奪われ、選択も出来ぬままに魂をも利用された女達。
 アタシにアンタ達を手に取って救う事は出来ないけれど、奪ってやるわ、この怨みと悲しみを――喰らうわよネメルシアス、彼女達の枷ごと全てを」
 生きるもきっと苦しいだろう。其れ等全ての苦しみを払い除けるが如くコルネリアが放つ。
「素敵な商品の紹介をありがとう。私が"見えない"のもあるけれど好きな時に触れられるのは確かに魅力的ねえ? それが気に入っている子なら猶の事。
 お礼に……本職の方がこんなにいらっしゃる中で僭越だけれど、舞を一指し」
 どうしましょうと囁いて。小夜の剣界はただその生き様のように咲き綻んだ。
「折角だもの、彼女達のことを教えて下さる? 商品にしているのだもの彼女達の好きなところ、良いところをお聞きしたいわ」
「ああ、構わ――」
「やめて!」
 鋭く彩芽が叫んだ。小夜の切っ先は曇りもなく澱みもなく。好いた男が他の女の話をすれば嫉妬に狂った女は必ず目を向けると小夜は踏んでいた。
「お前……この人の前で舞うだなんて」
 射干玉の髪を揺らがせた小夜に彩芽が感じたのは淀む嫉妬だった。
 只、その様子を見詰めていた英司は彩芽に仕掛けようとして、気付く。
 嫉妬心がくゆる。射干玉に、藍染に、紫苑に。何れだけ身を委ねようとも、『すみれ』は穏やかでは居られなかった。
 旅人と言えども己は獄人だ。みてくれは違いはなく、澄恋と良く似た『本来の兎円居』家の跡継ぎ娘の姿をしている。
 けれども、聡明な『彩芽』と違いこの場に居る『彩芽』はただのケダモノだ。暴れ散らかす可能性がある。お前を受け止めるのも『別世界の娘』の役目だと鼻を鳴らしたすみれは何度も、何度も、何度も、何でも――
「何故、私を見ないのです。とうの昔に捨てた子など放っておけば良いのに、売り物になる気は欠片もありませんが商人までもがなぜ澄恋を?」
 何故とすみれは叫んだ。彩芽の放つ焔の気配が澄恋にばかりむく。すずなが受け止め瑞鬼が退けんとするのだ。
「……ああ、簡単やろ。ボクの娘の『すみれ』の方が価値が高いから」
 ひくと喉が鳴った。すみれは何処から声が出たのかも分からない。ただ、胸が内に渦巻いた憎悪だけが形を得る。
「あいつの方が、価値が高い……?
 ふざけないで。ふざけるな。あんなに穢れ堕ちた醜い餓鬼に取り柄などないでしょう。
 あいつの完全体が私であるのに、一体、私に何が足りていないというのですか!」
「綺麗なものが何でも美しいと思ったら大間違いやで、お姫さん」
 かあ、と脳にまで熱が上がった。「すみれ」と呼び掛けた聖霊の声もすみれには聞こえていない。
 一度で良いのだ。ただの一度で良いから。
 あんな奴よりも優れていると思わせて。
 彩芽は見ない。彩芽の視線は今だ澄恋ばかりを見ている。すみれが唇を噛み締めた。其方にばかり注力されては溜らないと英司は彩芽の前へと躍り出る。
「おっと、相手して貰おうか?」
「退きなさい」
 睨め付ける彩芽に英司は口笛を一つ。恐ろしい存在だと言わんばかりに肩を竦めて笑って遣った。
 当たり前の様に『母親』と相対せねばならない。それが知った者の肉親であるだけでヴァイオレットは悲しみに包まれる。
 怒りも、悲しみも、常に存在する愉悦も。まぜこぜになったまま『菫』と名乗った女は周囲の影を打ち払うが為に尽力する。
 少なくともヴァイオレットにとって『親』とは両親を与えてくれた存在であり、自らの根幹だ。
 紛い物であったとしても人である事の出来た最後の拠り所だった。自らを人間として認め、人間として慈しんでくれたのは紛れもなく『親』だったのだ。
 それが友人の母親であり、どう転ぼうと彼女の心を刃物で突き刺すようなものなのだ。苛烈な不快感を覆う程の悲しみに行方のない惑いだけが底には漂っていた。


「……撤回するつもりはないんでありますか」
「ええ」
 彩芽は周囲の影が倒されていく中で、ムサシの言葉一つに佐本前だというように答えた。
「我々の仲間に対して悪辣な暴言を吐いたこと…撤回するつもりはない、と……親っていうのは、キチンと愛してくれる人だって思ってたのに」
「お幸せそうでなにより」
 彩芽の言葉にムサシはかあと頬が赤らんだ気配がした。眼前の女も親の愛を知らないのだ。
 ――ごめんなさい。その手を救いあげられなくて。
 コルネリアはただ、ただ、苦しみばかりを懐いていた。悔恨さえ懐く暇はなく彩芽の猛攻は続く。
「しっかし、子を産んでも母にはなれず、目当ての男にも邪魔扱い。なんとも滑稽な女じゃなあ。
 男に侍らされ都合のいいように扱われて何が幸いなのかわしにはわからん……うちの娘たちがおぬしのようにならないことわしは祈るよ」
 やれやれと肩を竦めた瑞鬼は彩芽という女の在り方が嫌いだった。妻にもなれず、母にもなれず、ただの女であろうとした。
 女である生き方しかしらなかったのか。実に『馬鹿』な女だ。救いもなく、己で幸せを捨てたくせに他者に擦り付ける馬鹿娘。
「血なんぞもちろん繋がってはおらんし知り合ったのもそう昔ではない。だがわしはあの子を見てきた。
 お前のような売女の娘にしておくのは勿体ない馬鹿娘じゃ。澄恋を貴様らのような親の子にしてはおけんな、そんなにいらんのならわしがもらってやる」
「ッ、返せ!」
 彩芽が叫んだ。すみれが「どうして」と重ねる。いらないのでしょう、必要なんてないでしょう、『私がいるのに』!
 すみれの声を遮るように彩芽は瑞鬼を睨め付ける。
「お前になどやるものか! わ、わたしの、わたしのものだ! 何もかも、私から奪うな!」
 がりがりと頭を掻き毟った女に「お前のじゃない」と聖霊は叫んだ。
「お前は逆立ちしたって幸せにはなれねぇよ。澄恋は笑顔で自分犠牲にして痛みを誤魔化す大馬鹿野郎だ。
 その癖注射は嫌がるわ、病室の窓から飛び降りるわで医者泣かせの患者だ!
 でも澄恋はな、前に俺の両親が敵に回った時に駆けつけてくれたんだ。分かるか?
 お前みたいな母親が居たとしても、出自が何れだけ苦しくとも。『俺を悲しませる選択をしたのだけは理解できない』と叫ぶんだ!」
 それだけ優しい彼女だからこそ、『彩芽』になど踏み躙られてなるものか。
「澄恋は幸せになる為に産まれてきたんだ。お前と違って幸せな花嫁になるんだよ!」
 彩芽は澄恋に向けて踏込む――が。
「かつての小夜さんのように『死角無し』、とまではいきませぬが…私の守勢もそれなりだという自負があります。
 菫の花を摘みたくば――私を地に伏せねば叶わぬと思って下さい」
 すずなは叫ぶ。その死角より飛び込んだのは小夜だった。
「待たせたわね、すずな」
「小夜さん……! 此処が踏ん張り所……! 凌いでみせましょう!」
 あなたが安全ならばそれで良い。
 占いを元に志鸞の存在を認識していたヴァイオレットは薄ら寒さを感じていた。
 志鸞を野放しにしたくはない。ヴァイオレットの意志を組んだかの如く小夜は頷き志鸞から視線を外さぬまま。
 澄恋はただ、ただ、呆然と見詰めていたが――前に立つすずなの背を、そしてすずなを支える瑞鬼と聖霊の暖かさを感じていた。
 驚くばかりだった。己など何もないと考えて居たのに。それでも、こうして傍に居る事を願ってくれる人が居るのだ。
「……お母様。ある方から、笑顔で居る事が幸せになる秘訣だと教わりました。
 神使になると仲間の皆様にたくさん呼んでもらえたことで、いつしかこの澄恋の響きが愛おしくなりました」
 彩芽の唇が戦慄いた。
「何、何よ何よ」
 がりがりと頭を掻き毟り彩芽は叫ぶ。
「お母様、名を授けてくださりありがとうございます」
 ぎい、と女が呻いた声がした。それでも澄恋は止まることは無く凜と微笑む。
 視線の先には英司も居た。すみれだって居た。馬鹿みたいな震えは今は止まってしまったから。
「……もうその希望はこの世を去り、卑しい生立ちを知られたことで友から嫌われ、
 折角掴みかけた幸せを全て手放すことになるかもしれませんが、大切な仲間を無事に帰し、二度とこんなことが起こらぬよう、あなたを討たねばなりません」
「親を殺すというの!?」
 誰がそんな言葉を言えた義理かと聖霊は思わず呟いた。澄恋はしたたかに笑みを浮かべてみせる。
「ごめんなさい、お母様。産まれてしまって、良い子に育たなくて、辛い思いをさせた上に――親殺しまでする娘になってしまって」
 悔恨がそこにあったわけではなかったのかもしれない。ただ、懺悔するように、この汚れた身で罪を重ねたとて構いやしない。
「せめて来世では、すみれを産めるよう祈っております」
 すみれは。
 只、その言葉だけで苛立った。希望を束ね、奇跡がそこにあるなら。
 たった一度でも良いから『あの女』ではなく己を誰かに見て欲しかった。
 駆けずるようにすみれが近寄っていく。瑞鬼が「馬鹿娘」と思わず呻けど止めることが出来なかったのは彼女がそれだけ真摯であったからだ。
「お父様はずっとあなたのことを愛しているのに、私だって生まれた時から大好きで。
 どの世界線でも私たちの絆は不変であり世界一幸せな家族だと――そう信じていたのに!」
 そんな綺麗事なんて、何処にもなかった。奇跡のように、『当たり前の幸せな世界』があればよかったのに。
 違うのだ。分かって居るのだ。せめて戸惑いを見せなければこんなに苦しまなくて済んだでしょう?
 貴方の子供なのだと、先祖返りなのだと言い張ってしまえば幸せで居られたでしょう。
 貴女が『兎円居彩芽』でさえ居てくれたら――他に何も。
「私を見てよ! お母様!」
 何も、いらなかったはずでしょう?
 彩芽がすみれの体を薙ぎ払い、ずんずんと迫り行く。
『おまえじゃなかったことがすべてのはじまりだったのに』
 のうのうと目の前に現れたことを許せないと彩芽は吼えた。死というのは唐突に迫り来る。ぞうと背筋に感じた嫌な気配を払いながら澄恋は引き攣った声を漏す。
「さて、雲の方。今は『商品』の未曾有の危機。
 それも月日をかけた傑作で……あなたの感性さえも継ぐ、唯一の――わたしの身に価値を見出すのなら」
 澄恋の唇が揺れ動いた。
「助けてみせて、お父様」
「おまえをくれるか、澄恋」
 志鸞の囁きに、鼻先で笑って見せてから英司は大仰な仕草で彩芽と志鸞に声を掛けた。
「ナイストゥーミーチュー、ママ上、パパ上。
 怪人Hです。娘さんを俺に下さい!! ハハ、一度は言ってみたかったんだよなぁ!
 うんうん、これは美人の娘が生まれるわけだぜ。心根まではまるで似てないところがいいとこどりって感じだ。
 温室で育った華だけが美しく咲くわけじゃないんだぜ。分からないか、この儚さと凛とした強さ。アホアホなとこは愛嬌だ」
 ゆっくりと男は仮面を剥ぎ取った。此処に居るのは『耀 英司』だ。怪人なんかじゃない。
「それにな、雲さんよ。性質をいくら継いでようが、アンタとは似ても似つかねぇさ。澄恋を殺すのは俺だ、そいつは誰にも譲れねぇ。
 ――諸々承知の上で、そんなこいつを愛しているのさ」
 鼻先を鳴らした志鸞は「ならそこの女を殺してみぃ」と彩芽を指した。
「志鸞……さま……?」
 呆然と立ち竦んだ彩芽を前にすみれが「お母様」と叫ぶ。声よりも尚も、英司は勢い良く彩芽の胸に刃を突き刺した。
 見るも無惨な死に方だ。女が死にゆく様を眼前で見詰めている。
 それがどれ程までに『恨んだ存在』であっても『欲した存在』であっても、だ。
 澄恋の目が見開かれる。
『お母様』の死に様に心が崩れかけたのは、きっと気のせいではない。
「貴方も同じ考えなら…我々も、仲間もために動くでありますよ」
「ちゃうやろ、なあ澄恋――?」
 お前が望んだんだろうと。
 そう言葉が地を這いながら澄恋の元へと迫ってい来ていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 澄恋さんはお母様が離縁してるので兎円居を名乗れず、志鸞の曇暗を名乗るしかないのに、
 すみれさんは旧姓の兎円居を名乗ることが出来るんだなと思ったら悲しくなりました。

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