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シナリオ詳細

<伝承の旅路>神聖なる聖騎士王ゴードン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あたまの良い人
 この世界に生きる人類は魔王の虐殺によりひどく減少している。数で負けている戦いをゼロ・クールによって何とか誤魔化し続けている所にイレギュラーズが現れ、攻勢へと転じる事が可能となった。
 プーレルジールを脅かす魔王城はサハイェル砂漠の遥か奥に鎮座する。アイオンの呼びかけによりこの地を目指す事になったイレギュラーズはギャルリ・ド・プリエの魔法使いやゼロ・クールの協力もあってここまでは順調な旅路を歩んでいた。
 しかしながら、際限なく生まれる終焉獣や悪の道に堕ちた者、星界獣と敵方の手駒は多い。質で勝るイレギュラーズに対し圧倒的な数がぶつかる形となっている。敵の総本山に近づくに連れてそれは顕著に現れた。
「こんな所まで来るとは思わなかったよ。アンタ達、相当強いんだな。何がお手伝いさんだよ、本職もいいとこだぜ」
 同行を願い出たアトリエの魔法使いが足を休めるイレギュラーズに声をかける。レンブランと名乗ったこの男はフィールドワークの方が性に合っているという冗談めいた理由で今回の遠征についてきた。こうしている間にもプーレルジールの各地では戦いが繰り広げられており、イレギュラーズの側にいる方が安全が確保される打算的な考えがあったのかもしれない。
 結果として、レンブランはそれなりに役に立った。終焉獣程度であれば彼の助けはそれほど必要ではなかったが、それでも敵の情報は多い方が良い。彼はプーレルジール特有のモンスターに対する知識を備えていた。
「いやあ、さっきの終焉……獣っての? あの羽の生えたタイプは危なくなるとすぐ逃げ出すんだ。いつもなら追撃を諦める所だけど、今回は戦闘のプロがいるからなあ。俺の知識とあんた達が手を組めば怖いものなしだな!」

●あたまの悪い豚
 『最弱の』シュナルヒェンの配下がサハイェル砂漠を巡回する。四天王だと言っているのに五人目のそれは不名誉な二つ名を持っていながら自分を王だと信じてやまない、イレギュラーズよりもイレギュラーな存在である。極めつけに、そのオークからなる配下全員が同様の思い込みを持つ、魔王軍にとって大変扱いに困る集団だ。
 サハイェルの僻地を巡回する任務も彼らには都合の良い方向に話が捻じ曲げられ、来たる侵略者をこの地で討つ魔王軍最前線、頼れる黄金の鉄の騎士であると信じ込んでいる。
 その汚くない黄金の鉄の騎士たちは些細な事で王位継承戦を行い、10匹ほどいたオークは幸運な1匹のオークを残して壊滅した。このオークも早々にサハイェルの砂地に足を取られ、壮絶な同士討ちが行われている間、死んだふりをしていただけに過ぎない。
「フッフッフッフ! やはりこのゴードン様が選ばれし王だったようだオーク。共に戦った仲間は逝ってしまったオーク……それでも、俺は彼らの意志を継いで立派な王になるオーク!」
 隠す気もない謀反、反骨精神を持つ彼らであるが奇跡を100回起こしても魔王の座が脅かされる事はないので、魔王軍としても適当に使える駒として色々と見て見ぬふりをしている現状にある。
「だがオーク……いくらキングとて一人では苦戦は免れないオークね」
 ゴードンは何やら自己流のハンドサインで援軍の要請を伝令に出した。しかしそのような者は存在しないので、やがて自分でそれを行いに走った。

●聖騎士王
「あ、不味いぞ。あれはバカだ」
 レンブランが魔力で生成したレンズで遠方を偵察する。敵影はおぼろげに目視可能となっているが、肉眼では終焉獣なのか規制されたゼロ・クールなのか判別がつかないような距離でモンスター通の男が敵を評価した。
 真面目に答えてくれとイレギュラーズが咎めればレンブランは申し訳なさそうに、されどそう答えるよりないという確固たる意志で続けた。
「オークって知ってるよな。そうそう、武器で襲ってくるブタみてえな獣人って所だ。俺も魔法使いの端くれでね、伝説上の生き物から実際の脅威までそれなりに知識はあるはずなんだが、どうしてかココのオークは著しく知性に乏しいんだよ」
「聞こえているぞ人間オーク! 俺を強いと感じてしまってるやつは本能的に長寿タイプオーク」
 レンブランは察してくれと悲しい表情でイレギュラーズへ顔を向ける。わかりました。
「あれはどうにでもなるよな。しかしリーダーのバカより取り巻きのバカの方が問題だ。見てくれ、あれはトロルだ。オークを数倍デカくした化け物という認識で良い。あれも頭は悪いが、筋力や凶暴さは見た目通りなんだ。最も気を付ける必要がある特徴として、驚異的な再生能力がある。俺たちは再生する皮膚に火や酸で対処してきたが、まぁそこはアンタたちに任せるよ」
 望遠レンズを借りればボロ布を騎士のマントのように身につけたオークと、筋肉質で巨大な化け物が数匹確認できる。調子は狂うが腐っても魔王軍だ、頭の悪い雰囲気に流される事なく任務に取り掛からねばならない。

GMコメント

●目標
【必須】神聖なる聖騎士王ゴードンの撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション サハイェル砂漠
 現場に到着する頃は昼になります。
 見晴らしも良く、特筆すべき問題はありません。

●敵
 神聖なる聖騎士王ゴードン
 めちゃくちゃ弱いですが鬱陶しいです。
 逃げられても面倒くさいので絶対倒しましょう。

 トロル 3匹
 真面目に戦う必要があります。
 棍棒(もはや丸太)による強力な一撃に警戒する必要があります。
 強力な再生能力を持っていますが、致命的な攻撃の他に火や酸を扱う攻撃が有効です。

  • <伝承の旅路>神聖なる聖騎士王ゴードン完了
  • GM名星乃らいと
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
レッド(p3p000395)
赤々靴
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ

●ホーリーロード
「オークックックック! 逃げずに立ち向かう武勇、貴公らを死なすには惜しい。レッド・ミハリル・アストルフォーン、お前さえ良ければ私の側室にしてやろう」
「いやっす」
 その言葉は神聖なる聖騎士王を激怒させた。『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)の失言は後世に語られる、サハイェル聖戦記にて語られる事となっている。少なくとも、ゴードンというオークの中では。
 『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)や『金の軌跡』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)にも同様のアプローチを行ったが、これで快諾するイレギュラーズというか普通の人は返事しないだろうなあと言うことで残念ながらゴードンの中ではわかりあえない宿敵と認定されてしまった。
「情報にないことを、ぶっこんでくる、な。神聖なる聖騎士王も、意味がかぶっているようだが……」
「終焉獣といっても、言葉も通じますし、感情もある方なのでしょう。進む道が違う以上、私はゴードンさんの手を取る事はできません」
 グリーフの生真面目さが光る。嗚呼、何故このような聖女が胡乱な場に。聖騎士王と聖女だからか。
「なんて不運なんだ。猪突猛進、一毛不抜、得手勝手にして言語道断と名を馳せるあの神聖なる聖騎士王ゴードンが俺達の相手だなんて」
 『狂言回し』回言 世界(p3p007315)がなんか難しい四字熟語を並べ立てる。後にゴードンは敵ながらに知性のある、優れた軍師であったとか語るのだろう。でも頭が痛くなるし言葉の意味もよくわかんないので聖剣オークカリヴァーの一撃で屠ったとかで聖戦記には記載されるのだ。
「そんな小さくて魔王なの?力とかなさそうに見えるけどなー?」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の失は後世に語られる(二度目)。ハンサムメガネの屈辱、で知られるこの事件はヨゾラが屈辱を受けた事象ではない。紛らわしいがヨゾラから不当な扱いを受けた聖騎士王ゴードンが屈辱に甘んじた、というのが正解であり、国立オーク学校でも間違える生徒は多い。だが、神聖なる聖騎士王ゴードンが偉大すぎてハンサムメガネごとき一撃で粉砕し、メガネが屈辱を受けたと認識するオークが多いのもわからないでもないのだ。ゴードンはつよい。
「名前だけは何となく強そうなんだけどなぁ。楽な仕事であれば良いんだが」
 『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)はもう正直な所、家に帰りたかったが気を引き締める事にした。ゴードンのお陰で認識にズレが生じる所だが、オークにトロルは凶暴な亜人として知られている。サンディの中のモンスター知識がそれをアジャストする。
「フ……ゴードン様の威光を知らぬ少年でも本能で察するか。敵である事が惜しい……レッド・ミハリル・アストルフォーン、お前さえ良ければ私の側室にしてやろう」
「サンディさんと話してたじゃないっすか! いやっす!!」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はもうこの間にフロストバンカーとかグラビティスマッシュの足技を連発すれば良いのではないかと思っていたが、一応側近のようなトロルがしっかりと守っているので機会を失った。
「ゴードンだけだったらずっと楽だったんスけどそうはいかねぇよなー」
「驕るな、174cm。私は192cmだ」
 ゴードンがサバを読んでいる。正直な所、レッドとどっこいどっこいだし、だからこそレッドを側室に入れようとしているのだ。いやっすけど。パンドラ以上の奇跡が起き、プーレルジールの地を神聖なる聖騎士王が征服した場合、彼の肖像画は実際よりも高身長に描かれ、葵やサンディは醜い悪魔のような雰囲気で描写されるだろう。それは避けねばならない破滅である。
「マリアも低い方ではある、が。どう見繕っても、192は言い過ぎだ」
「私は園児は対象外なのだ。大きくなった時には、また余を尋ねるが良い……。俺は国を背負うもの、そなたの愛に応えてやる事はできぬ」
 エクスマリアはもうイラっとした。求愛している立場になっている事もそうだが、何より一人称がコロコロ変わる事が許せない。たぶん神聖なる聖騎士王も設定が定まっていないぞ。語尾もいつの間にか無かった事になっているし。
「それがし、確かに回避盾は憧れるのでござるが、空蝉の術がまだ下手で……」
 『忍者人形』芍灼(p3p011289)は美しい人物であったが、汚い忍者と聖騎士王は理解りあえぬ立場である。ゴードン著の聖戦記では心を通わしそうになるロマンスの後、国のために芍灼を斬った事になっている。この悲劇的なシーンは読者を感涙の嵐に巻き込み、オペラや吟遊詩人の物語で広く使われる事になる。なっている。結果はちょっと違うけど、そういう話なら人選はグリーフさんが良いんじゃないかなあ。

●聖なるウォー
 イレギュラーズは辛い選択を取る事になった。こちらを見くびらせ、油断させる事によってゴードンの退き際を失わせるという高度な作戦はメンタル面との勝負になる。世界やサンディがビンタすればそれだけで倒せそうなオークだが、これはこれで逃がすと驚異的な運命力で再会しそうだし、次に会った時に自分たちがどんな肩書きを言いふらされているか想像もしたくない。
 このレベルの知性に合わせる事は苦痛を伴ったが、今の所はゴードンもこちらを格下に見ている事は確かであった。
「わざと外すってのも変な癖が付きそうで嫌っスけどねぇ」
 葵が気怠げにフロストバンカーを明後日の方向に蹴り飛ばす。明後日はやりすぎな気もするが、明日くらいの方向に調整するとゴードン程度の敵では何故かクリティカルヒットしてしまうかもしれない。それで粉砕できればそれはそれで良いのだが、何か一撃くらいは謎の補正で耐えそうな気がしないでもない。
「フ……我の覇気に気圧されるのも仕方がない。葵と言ったな、若い」
「あー帰りてえー」
 エクスマリアはもうイライラっとした。一人称がまた追加されたぞ。葵もたしか名乗ってないはずだ。ソウルストライクの一撃で終わらせたかったが、まだその時ではない。
「行くぜーっ! ゴードン!」
 サンディがナイフを握りしめ、すんごいわざとらしく振り回しながら飛び込む。ゴードンは省くとして、割と普通に強いトロルの一撃でさえサンディにはスロー過ぎる攻撃であった。
(演技するって言っても、俺、こんなの当たらないといけないの?)
 もはやサンディの方からトロルの棍棒に吹き飛ぶしかなかった。それに手を付き頬を寄せ、勢いのまま自分から吹き飛ぶ高度な回避を見せたがゴードン程度の敵ではクリーンヒットしたようにしかみえない。
「ぐあああーっ!! つ、強いぜ……!」
 迫真だ。
「ほう、アーティファクトの加護か。だが、それも何時まで持つかな?」
 ゴードンの中では汚い忍者はなんかすごいアーティファクトでトロルの一撃を凌いだ事になっている。そして、アーティファクトの加護はサンディの魔力か何かを消耗させ、押し切られるのは時間の問題らしい。
「サンディをやらせはしないぞ。くらえっ」
 ヨゾラが棒読みで星空の泥を放つ。ゴードンの運命を黒く染め上げる上位の魔術。トロルが若干苦しみ、苦痛に唸り声をあげたが渾身の魔術を行使して尚、健在な4匹を前に絶望の表情を見せるヨゾラを前に、優位性を疑うことはなかった。
「予想通り貴様はハイクラスのウィザードのようだな。今のは……効いた。ジャスティス・正義の盾がなければ危ない所だった」
 ジャスティス・正義の盾は廃材だった。古い倉庫とかで良い感じの板があったのだろう、釘と布で作られた取っ手がハンドメイド感がすごい。
「グオオオーッ!」
 トロルがグリーフを餅つきのように叩く。ルーンの盾と魔術結界が単純な暴力を防いでいるが絵面はすごい。
 咆哮からまともな殺意が感じられるが流石に相手が悪い。何度か障壁が破壊される事になったが、其の度に新たな膜がグリーフを覆う。これが突破された所でグリーフがやられるかは、彼女のステイタスを確認すればわかる話だが。
 それでもトロルの暴力性、攻撃性はグリーフを突破せんと幾度も殺意の矛先を向けるよりなかった。
「では忍者らしい事を行いまする! ゴードン殿、お覚悟!」
 芍灼が忍法毒ガマの術とかそんな感じでゴードンに致死毒を仕込む。過程はちょっとゴードンからするとわかんないが多分そんな感じだ。毒に頼るしかない哀れな忍者だが、これにはゴードンも手を焼いた。ジャスティス・正義の盾では躱すことのできない卑劣な忍術だ。
 忍者の調合した毒はゴードンの身体を静かに蝕む。聖騎士王はこのまま病に伏せてしまうのか? 否。ホーリーパワーとレッド・ミハリル・アストルフォーンの献身的な介護によって復活を遂げるだろう。なんで?
「なんでボクだけ毎回フルネームなんすか! しんじゃえーっす☆」
 エレガントな重火砲が火を吹く。頭に一発、胸に二発、ついでに太腿に一発お見舞いしてあげよう。かわいい感じとポーカーフェイスとカリスマ性があれば悪い結果にはならないでしょう。
「フ、フハハッ! 気が強い女だ、気に入った。それがしの妻に相応しい!」
「ころす」
 芍灼の一人称が感染ってるぞこいつ。レッドは間違いなく、しんじゃってもいいかなの域で撃ち込んだがまあ終焉獣なので見た目の低俗さとは裏腹に、ゴードンもそれなりに回避した。平静を気取ってはいるが、脇腹には一発いいのが入っている。
「うう……何かそれがしの真似をされるのは、アイデンティティが脅かされて嫌でございまする」
「芍灼さんは、芍灼さんです。ゴードンさんが真似をなさろうと、人それぞれの生を歩んでいるのですから気に病む事はありません」
 グリーフが良い感じにする。この胡乱な場に舞い降りた天使とはグリーフの事を言うが、いくらこのガーディアンエンジェルであっても、この場すべての頭を抱える迷い子を救う事は不可能であった。エクスマリアに世界、葵やレッドはもう帰りたいのである。ヨゾラもだ。
「嘆いてばかりもいられないからな。一つ一つ終わらせていくぞ」
 世界は冷静にトロルへ苦痛の秘術を行使した。トロルの再生能力を放っておくと、一生グリーフと餅つきを行っているだろう。幸いにしてこの卑劣なる悪の魔術に対抗する術はゴードン側にはない、むしろ気付いてもいないようであった。
「奇妙なものだな……敵同士だと言うのに、貴公らとは長年の友であったように感じる」
「俺は感じてねえよ」
 葵がもう色々と飽きたのか重力エネルギーを蹴り込む。ゴードンはそれを見て指を鳴らす。トロルが偉大なる聖騎士王を守る算段だったのであろうが、世界から受けた傷やグリーフに気を取られているトロルがかばう事はなかった。つまり、ゴードンは余裕たっぷりに直撃し、二度か三度は転がり飛ぶ結果となった。
「このバカヤローッ! ころす気か!!」
「ころす気だ」
 続けてエクスマリアが体感3年は溜めていたソウルストライクをゴードンに、正確に放った。ついにジャスティス・正義の盾は砕け散った。あってないような物だが、この事実はゴードンの逆鱗に触れる事となる。
「おのれ小娘……! ジャスティス・正義の盾はこの世の迫害され続けるオークを護るべく、伝説の鍛冶屋ヴォルドレッド・ホワイトフォージが生涯をかけて生み出した『四宝』の一つだ。それを……」
「廃材っすけどね」
「私を護ってくれたと言うのか、ヴォルドレッド。お前の願いはオーク族の繁栄、その願い……聖騎士王として必ずや」
「いや、どう見ても廃材だろう」
 ゴードンの話をまともに聞くイレギュラーズはあまりいなかった。あまり。
 孤独な聖騎士王の友ヴォルドレッド、邪悪なるブロンズドラゴンとの死闘、友との別れ、聖騎士王への即位は色々と辻褄の合わない英雄譚で割と長い話になり、中途半端に効いてしまったイレギュラーズは割って入るタイミングを失った。
 聖女メリドニルとの悲恋やドラゴンズマウンテンのくだりはグリーフ、サンディの琴先に触れたのか少しだけ聞き入ってしまった。1000割は嘘だろうが。
「よし。じゃあドラゴンズマウンテンを制覇した、竜殺しの英雄に挑むとするか」
 ちょっとだけ冒険心をくすぐられたサンディは切り上げる義務を感じたようで、デビルダーク城の戦いの話のあたりでゴードンに襲いかかった。このままだとエクスマリアが寝ちゃうかもしれないし。
 スーパー・サンディ・ボールの大暴投は死球もいいとこだ。ゴードンの頬に直撃し、盾を失った事の深刻さは計り知れない。盾があったとしても、そろそろトロルより凶暴になってきたイレギュラーズを止めれるとは思えないが。
「話が長いよ! あんな(知性に乏しい)奴等に、誰も倒れさせないよ!」
 ヨゾラが紡ぐ星の祝歌が色々と疲れたイレギュラーズを癒やす。
「見えているぞハンサムメガネ。そのカッコの知性に乏しいは取り消せ! 俺はバカで頭も悪いが、仲間を侮辱する事は許さねえ!!」
 悲愴な決意を抱く英雄から熱血ヒーローに鞍替えしたようだ。これにはヨゾラも何かちょっと悪いことを言ったかなと1秒ほど血迷ってしまったが、間違いなくヨゾラが正しい。あと何で聞こえた(見えた)んだろう。
「俺はこのような場所で死ぬ訳にはいかない……! トロル、すまない!」
 ゴードンが背を向けて逃げようとする。びっくりするくらい足が遅いので葵や世界は言葉を失った。
「そうはさせません! 汚い忍者から逃れる事はできませぬ!」
 汚い忍者がドレイク・チャリオッツで行く手を阻む。普通に走っても追いつくのだが、準備していたものなので芍灼は一応使う事にした。ドレイクたちもゴードンを乗せればいいのかと勘違いするような光景だ。
「退路を……断たれた、かよ」
「そういう事にしとこう」
 世界が徒歩で回り込んだ。突然にして加速するかもしれない可能性を考慮して、イレギュラーズは警戒を緩めなかった。ここで逃してはいけない、エクスマリアとレッド・ミハリル・アストルフォーンはそれこそ悲愴な決意を抱いていた。
 すっかり忘れていたが、トロルについてはグリーフが餅つき大会を終え、その命を亡きものにした所だった。死せる魔獣に祈りを、機械人形は静かに、動かなくなったトロルを見下ろしていた。
 ゴードンはそんなグリーフを一瞥した後、聖剣オークカリヴァーを抜く。これもハンドメイド感あふれる木の棒(おそらくアカマツ)でしかないが、これはこれで叩かれたり突かれると結構痛いものである。
「神聖なる聖騎士王、ゴードン・アヴァロン」
「……名乗らないといけない感じでございますね。サヨナキドリ、芍やがあああああ!!」
「なめるな」
 何事かとサンディが鋭い眼光で観察すれば芍灼が名乗り終わる前にゴードンがアームロックなる関節技をかけている。忍者人形に痛覚があるのかは定かではないが、きたなくてくさいオークに関節技をかけられている芍灼はなかなかに悲惨なものだ。いや、まず名乗らせろよとサンディは呆れ返った。
「沈黙が正解とは、な」
 カリブルヌスの一族はと言うと、ちっこい身体にみちみちに詰まっている知識から、名乗り返すのが礼儀と反応しそうになったが、たまたま近くにいた芍灼が犠牲になったので被害を免れた。
「そ、それがしごとやってくだされ! はやく!」
 芍灼が何かとんでもない事を口走っている。熟練のイレギュラーズならばこの程度の位置関係など、何の苦ともせず攻撃対象を識別できるだろう。芍灼もそれは無数の戦いで経験済みのはずだが、どうにも様子がおかしい。これはゴードンから発せられる頭の悪いオーラが芍灼にも作用しているという事か。
 ナイフによるとどめを狙っていたサンディは踏みとどまる。あのアホに近づく事は危険だ、自分もアホになる。
「グヒェヒェーッ! てめえらに仲間が撃てるかナーッ!? 俺様に勝とうなんざ100年は早いんだよアホがーッ!!」
 どうしたんだ聖騎士王。追い詰められて本性が出たどころの騒ぎではないぞ。

「覚えておけ、偽りの聖王。イレギュラーズは困難に立ち向かい、勝利する存在だと言うことをな」

 エクスマリアの背中をグリーフが抱え、レッドとサンディが足を固定させる。
「あとは頼みましたよ、マリアさん」
「撃った後の事は俺たちに任せとけ!」
「ボクたちの思い、託したっす」
 ヨゾラが分析し、葵がゴードンを射程圏内に蹴り飛ばす。
「ゴードン! 吹っ飛べ!」
 見よ聖騎士王。これが人類の希望、光だ。
「撃て!」
 そういう役割だと悟った世界の一言で、エクスマリアから(たぶん口とかから)究極の一撃、ソウルストライクが放たれる。
「馬鹿な! 認めん! 認めんぞイレギュラーァァアアアズ!! 私は、聖なる……!!」

 サハイェル砂漠の障害が一つ取り除かれた。だが、神聖なる聖騎士王は魔王軍の尖兵に過ぎない。プーレルジールを守る為には、これらを統べる四天王を倒さなくてはならない。永い戦いは始まったばかりである。
「しかし、扱いに困る奴等だったな。上司のシュナルヒェン殿もさぞ気苦労が多い事だろう。もし会う機会があれば、胃痛薬を献上しておこうか。もっともソイツも……いや、やめておこう」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

オーク(一般的な挨拶。主に朝~昼。フォーマルな場ではオークを使う)
オーク(主に場所を尋ねる時に用いる。プーレルジールは何処にありますか)
オーク(何と言ったのですか? 失礼ですが、を先に用いる事が多い)
オーク(男性を表す表現。サンディは元気な男性だ)
オーク(女性を表す表現。ヨゾラは女性のようにも見える、美しい人間です)

例文:オークオーク、オークオークオーク、オーク(ご参加ありがとうございました。またご縁がありましたら精一杯頑張らせていただきます)

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