シナリオ詳細
<伝承の旅路>綺麗で綺麗で、いっぱいの世界へ
オープニング
●勇者なんかじゃないけれど
あなたの進む冒険に、私も連れて行ってほしいの。
かみさまが見捨てたこの世界を、あなたがどんな風に救うのか。
この世界にも希望がちゃんとあったのか。
私もこの目で、確かめたいの。
もしあなたがこの手を取ってくれたなら、きっとどこへだっていける気がするから。
星の少女ステラ。何も持たずに目覚めた彼女は、持たざるままに知っていた。
この世界を救う方法があることを。それが、目の前にいる――棺を覗き込んだ彼ら彼女らの中にあることを。
だから託したのだ。『死せる星のエイドス』を。
「冒険の旅は、どこを目指すの?」
アトリエ・コンフィーで温かい紅茶を淹れて貰ったステラの尋ねに、応えたのは綾辻・愛奈(p3p010320)。
愛奈は思い出す。彼女が警戒心を抱きながらも握っていた銃を『綺麗ね』と言った、ステラのあの表情を。
そして質問の答えを思い出して、首を振る。
「勇者……いいえ、アイオンさんは魔王城を目指すものだと、そう言っていましたね」
「そう、僕たちイレギュラーズはこの世界の滅びを避けたい。そして勇者一行は共に冒険の旅をしたい。それなら答えは決まっているだろうって」
愛奈に続けて応えたのは水月・鏡禍(p3p008354)だった。
二人は顔を見合わせ、そしてこくりと頷く。
そんな中――。
ばさり、と羽ばたく音と共に白き太陽の翼が舞い降りた。
そう、混沌では勇者一行のひと柱として大陸を飛び回ったと言われるハイペリオンである。
そこにはカイト・シャルラハ(p3p000684)の姿もあった。ハイペリオンさまに付き従うさまは神官ベルハイドを思わせ、ハイペリオンもまたそのように思っているようだった。
「私の力が十全であれば、かの魔王城サハイェルまで飛んでいくこともできたかもしれませんが……」
眉尻をさげてしょんぼりとするハイペリオンに、カイトがいやいやと首を振る。
「道中は魔王軍の配下や終焉獣だらけだ。連中を倒しながら進むのはかなり厄介な旅になる。ハイペリオンさまに危険な橋は渡らせられないぞ!」
「そう言って頂けると……」
ハイペリオンはこくりと頷き、そして――。
「かわいい!」
ハイペリオンのおなかにステラがぽふっと抱きついた。
はたから見ていたマリエッタ・エーレイン(p3p010534)がぎょっとして二度見する。
「かわいいかわいい!」
顔を埋めて両手(というより腕全体)でなで回すステラ。
「あ、あの、いちおうその方、神様らしいので」
「だめ?」
顔をちらりとあげるステラに、ハイペリオンはにっこりと微笑みかけた。
「構いませんよ」
やったあと言って再び顔を埋めるステラ。
ハイペリオンはそれを微笑ましそうに見つめてから、次にマリエッタたちへと視線を移した。
「今回の旅路には私達も同行しましょう。見ての通り私の力は衰えてしまっていますが……仮にもあなた方の世界では勇者一行に数えられた身。何かのお役には立てるはずです」
「あ……」
ステラはハイペリオンから身体を離し、あなたへと振り向いた。
そしておずおずとだけれど手を差し出す。
「私も……一緒に行って、いい?」
●そして旅は始まるのだ
太陽の翼ハイペリオン、そして星の少女ステラ。彼女たちをつれた魔王城への旅が始まる。
「旅の道具はもちましたか?」
「うん!」
満面の笑みでリュックサックを背負ってみせるステラ。
旅は長いものとなるだろう。一度はプーレルジールから東へと旅した時のように、今度は西へ。
「混沌でいうところのラサ方面だな。そして、ラサを抜けて『影の領域』へだ」
カイトが手書きの地図を広げて指をさす。
「道中、長い旅になるでしょうから途中のオアシスを見つけて休憩を挟む必要もありそうですね」
ハイペリオンが言うと、カイトが大きく頷く。休憩は大事だ。
そんななかで、ステラがちらりと手を上げる。
「それで、ね。私からもう一つお願いがあるんだけど……いいかな」
おずおずとするステラに、愛奈とマリエッタが小首をかしげる。
「大丈夫ですよ」
「言ってみてください」
ステラはこくんと頷くと、両手を胸の前であわせる。
「私、この世界が好き。知らないことがいっぱいで、綺麗なものがいっぱいで。
中でもね、一番綺麗なのが……あなた。あなたのことを、もっと知りたいの」
それは戦いの中で、あるいはキャンプをはって語らうその中で。
鏡禍は『もちろん!』と声をあげた。
「ステラさんのことを沢山教えて貰ったんです。今度はこっちの番ですよね」
ぱあっ、とステラは顔を輝かせた。いや、実際には輝いていないが、キラキラして見えるくらい目を見開いて喜びを露わにした。
「それじゃあ行こう――西へ!」
その言葉は奇しくも、勇者アイオンのそれと似ていた。
- <伝承の旅路>綺麗で綺麗で、いっぱいの世界へ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別EX
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年10月16日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC7人)参加者一覧(10人)
リプレイ
●さあ、冒険に出かけよう
紅蓮の翼を広げ大空へと飛び上がる『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)。
それを撃ち落とそうと空へ飛び上がった飛行型星界獣たちがその牙を繰り出すも、カイトは超人的な回避能力でそれらを次々に回避していってしまった。
「ついでに、お前もだ!」
こちらに向けて腕の大砲を連射する廃棄ドールの攻撃をジグザグな飛行で回避してから、『緋色の呪い』を連続で叩き込むそして低空飛行へと持ち込むと、ドールはカイトに食らいつかんばかりに遅いかかってきた。
それをまた、超人的な回避で避け続ける。
そうして空振りを続けるドールに、『本と珈琲』綾辻・愛奈(p3p010320)による銃撃が撃ち込まれた。
三発ひとつなぎの銃声がドールを軽くノックバックさせたかと思うと、素早く突進した愛奈の槍が突き刺さる。オーラを纏ったそれは見事にドールを貫き、がくりと脱力させる。
そんな彼女が次に目を付けたのは飛行型星界獣だ。自らに飛行の魔法をかけて跳躍すると、飛行型星界獣の背へと飛び乗り自らの槍を突き立てる。
痛みに暴れ、墜落した飛行型星界獣から離脱し地面を滑る愛奈。
トドメの一撃は、突進した『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)の握った剣の一撃であった。
なぎ払うような横一文字斬りは星界獣を両断し、その場に崩れ落ちさせる。
そんなトールを狙って動き出したゴーレム型の星界獣であったが、既に対処は済ませている。
トールは振り返りざまに剣で空を薙ぐと、灰色の斬撃が飛びゴーレム型星界獣を袈裟斬りにした。
ふう、と息をついて剣を握り直すトール。
続けて繰り出した連続の斬撃が、灰色のオーラとなって敵集団へとぶつかっていった。
一方でこちらは狼型終焉獣の群れを引きつけて走る『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)。
足や腕に食らいつき引き倒そうとしてくるそれを、牡丹は華麗な回避術によって交わし続けている。
とはいえ相手の数が数だ。回避も徐々に鈍り……しかしそれでも牡丹の回避能力は遺憾なく発揮されている。
「ったく、しつけえな。けどそのくらいじゃねえと――!」
燃えるような片翼で終焉獣の攻撃を弾くと、仲間に視線で合図を送った。
今だ、と。
「『主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え』――」
メイスを振りかざした『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が聖句を唱え、燃え上がる炎は大剣の如く。
振り下ろしたことで繰り出された炎の渦は、終焉獣たちを巻き込み燃やしていく。
無論、それだけではない。ヴァレーリヤは我に返った終焉獣がこちらへ振り向くのと同時。思い切り踏み込みそのメイスを――。
「どっせえーーい!!!」
叩きつけた。彼女を象徴すると言っても過言ではないそのかけ声と共に繰り出したメイスは終焉獣を物の見事に叩き潰す。
その様子を、治癒魔法を唱えながら見守るハイペリオン。
「さすがイレギュラーズ、ですね」
「うん」
ハイペリオンの背に隠れる形で応援していたステラが、ヴァレーリヤたちの戦いぶりを見ながら呟く。
「すごい……」
そう呟くのも無理からぬことだろう。なにせ鎧袖一触だ。
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がゴーレム型の星界獣と相対して、自らの両手にボッと青い狐火を燃え上がらせる。
「どんなときでも、わたしは変わらぬの」
ゴーレムの攻撃を右へ左へ回避しながら、炎を纏った拳を叩きつける。
様々な効果が上乗せされたその炎を浴び、ゴーレムがぐらつく。マトモではいられるはずもない効果群だ。大量のBSを浴びせた上に、そこへ呪殺の籠もった更なるパンチを叩き込めばゴーレム型星界獣はその頑強な装甲などなかったかのように内側から爆ぜ、仰向けにぶっ倒れた。
シュッシュと拳を突き出し、次の獲物を探して見回す胡桃。
そのまた一方では『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)が廃棄ドールたちを引きつけ、その攻撃から身を守っていた。
腕を剣にかえたドールの斬撃を、鏡のような妖力障壁で防御。
続けての斬撃を後方に飛び退いて回避すると、障壁を剣のように変形させて握り込んだ。
「一気に行きます……!」
鏡の剣となったそれを延長させ、回転斬りを繰り出す鏡禍。
廃棄ドールたちは纏めて斬撃をくらい、小爆発を起こして崩れていった。
が、それでも排除しきれない敵もいる。頑強な装甲を持った星界獣だ。
シールドを展開して鏡禍の斬撃を防御すると、カニのような鋏をハンマーがわりにして殴りかかってくる。
剣型の障壁で防御。吹き飛ばされる鏡禍――だが、すぐに着地して体勢を立て直した。
「こいつは任せろ」
と突っ込んできたのは『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。
『験禳・搶魂汞手』を放ったことで水銀めいた外見の汞手が星界獣のシールドを破壊。
そのまま距離を詰めると、鋭い回し蹴りを叩き込んだ。
凝縮されたマナが踵から放出され、星界獣のボディを貫通。そのままずっと向こうから駆けつけてきた新たな星界獣まで次々に貫通していく。
ぐらり……とかたむいたところで妖刀『愛染童子餓慈郎』を抜刀。あれだけ頑強だった星界獣の身体をすぱんと切断してしまう。
『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)の援護砲撃を受けながら、汰磨羈はゆるゆると首を振った。
「さて、と。残りは任せてもいいか?」
問いかけたのは『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)に対してだ。
マリエッタは血の大鎌を作り上げると、薄く微笑む。
「ええ、お任せ下さい」
汰磨羈が先ほどダメージを与えていた援軍の星界獣たち。
これを相手に、マリエッタは血の大鎌によって相手をすぱすぱと切り裂いてしまった。
相手が動かなくなったのを確認すると、エネルギー消費の激しかったヴァレーリヤや汰磨羈たちに『女神の口付け』によるAP回復を開始した。
今のマリエッタのビルドは能率100ビルド。つまりHP回復もAP回復も、そして強力な神秘攻撃もエネルギー消費ゼロで連発できるというう優れた『死血の魔女』なのだ。
「このあたりのモンスターはこれで全部でしょうか?」
「はい、そのようです」
広域俯瞰で様子を見ていた鏡禍がこくりと頷いて返す。ステラはほっと胸をなで下ろして、鏡禍の後ろについた。
「ありがとう。守ってくれて。あなたの鏡、綺麗ね。後ろにいると、とても落ち着くわ」
少し意外なことを言われたといった様子で、鏡禍がきょとんとして、そして笑った。
「守れて良かったです。さ。先へ進みましょうか」
●豊かなる旅路
紅蓮の翼を広げ、大空を飛ぶカイト。とはいっても、今度は敵を引きつけているわけでも戦っているわけでもない。
ハイペリオンと共に大空を旋回飛行することで周囲の様子を探っているのだ。
「一度下に降りましょうか。この先に見えたのはおそらく……」
「ええ、オアシスでしょう。小さいですが、水浴びもできますよ」
一緒に飛行していた愛奈がそう応えると、カイトも頷いた。
「だな、皆と進路を相談しようか」
ハイペリオンの背からは、落ちないようにしっかりとつかまっていたトールがこくこくと頷く。
「それにしても、水浴び……」
「どうかしましたか?」
「い、いえ」
ぷるぷると首を振って、トールはハイペリオンに再びしがみついた。
ばさばさと翼を羽ばたかせながら降下していくカイト。それに続く仲間たち。
「皆、この先にオアシスを見つけたぞ。そこで一度休憩にしよう」
「賛成なの」
子狐をハイペリオンに乗せて一緒に空を観察していた胡桃が、馬車から両足をぶらんとさせながら言う。
これは牡丹の持ち込んでくれた馬車だが、なかなか居住性の高いキャンピング馬車である。
その気になればベッドを展開して眠ることだってできそうだ。さすがに全員分の居住スペースというわけにはいかないが、あるとないとでは大違いである。
更にはシャボンスプレーまで完備されているらしく、旅の間清潔さに困ることもなくなっていた。
当の牡丹はとめていた馬車の御者席に腰掛けつつ、降りてきたカイトたちにオーケーサインを出す。
「分かった。方角を示してくれるか。一度示してくれればそれで大丈夫だぜ」
旅は牡丹のおかげでかなり快適なものになっている。馬車や道具の準備もさることながら、彼女の方向感覚や五感の鋭さ、更にはエネミーサーチに至るまでが整っているおかげでのんびりと旅ができるのだ。
「ウィツィロを目指す旅でも思いましたが……馬車と御者は旅の快適さを左右するものなのですね」
本屋さんでは教えてくれないリアルな旅事情を実感しつつ、愛奈は服についた砂をぱたぱたと落とした。
「本当ですね。このメンバーで、奇襲や夜襲を心配する必要は無くなった気がします」
トールもトールで温度視覚と超視力を持ち合わせているので、夜に何かが近づいてきてもすぐにわかる。見張りは交代制でこそあるものの、馬車でのんびりくつろぐことも可能だ。
「そういえば、東への旅と違って西への旅は食料の現地調達が難しいの。食材を多めに持ち込んで正解だったの」
胡桃が今ある食材でできる料理を想像しながら語る。
「モンスターとか、倒してお肉にできたら最高だったの」
「そういうケース、ありそうでなかなかないですねえ」
トールがあははと苦笑した。
かたかたと馬車は進む。
砂漠に車輪の跡を残しながら。
その荷台に揺られながら、ヴァレーリヤは水の入ったボトルをそっとステラへと差し出した。
「はい、お水。喉が渇いたでしょう? 飲んでくださいまし」
「うん……けど、いいの? 戦ってるのは、ヴァレーリヤたちなのに」
「関係ありませんわよ。私は、貴女と分け合いたいんですの」
誰だって喉が渇くのに、強いから自分だけのものにしていいだなんて、そんなの理由にならないでしょう?
ヴァレーリヤはそう言いながら、ボトルをステラと半分にして分け合った。それができる今が、どんなに幸せなことか。
「これが、あなたのキラキラなのね」
ぽつりと呟くステラに、ヴァレーリヤは首をかしげる。
「最初はね、メイスがそうだと思ったの。けど違った。あなたは……」
そこでぱくぱくと口を動かして、ステラは言葉を止めた。
「ごめんなさい。踏み込み過ぎちゃった」
言われて、ヴァレーリヤは自分がどんな顔をしていたのかぱちりと手を当てて確かめる。顔には何も出なかったはずだ。心にも、おそらくは。
「その……『キラキラ』というのはなんだ?」
話を聞いていたらしい汰磨羈が話に入ってくる。
そらしてくれた、とも言う。
汰磨羈の役割は自然知識を駆使してオアシスの場所を探ったり辿ったりすることだが、そうでない時間はこうした馬車に揺られタイムのほうが多い。
「あなたにもある。みんなにも。希望の力で、可能性のかたち。えっと、えっと……」
ステラは言葉を一生懸命に選んでいるようだった。まるで存在しない概念を言葉にしようとしているかのような。
「汰磨羈。あなたの場合、あなた自身がキラキラしてる。とっても綺麗」
「この身が? ふうむ……」
わかるようなわからないような話だ。けれど、ステラにはそれは重要な価値基準であるのだと、本能で分かった。
「皆さん、そろそろオアシスにつきますよ」
鏡禍が声をかけてくる。
「何の話をしていたんですか?」
「ああ、価値基準の話だ」
「かちきじゅん?」
鏡禍は小首をかしげ、しかしそれまで。追求はしなかった。
「オアシスについたらキャンプをはりましょう。馬車での旅は流石に身体にこたえますからね」
ぐっと背伸びをしてみせる鏡禍。
それにはマリエッタも同意するところだった。なにもない時間は読書でもして過ごせばいいのだが、馬車にゆられてする読書はちょっと気分を悪くしやすい。
「オアシスについたら、皆の話をもっと聞かせて。聞かせてほしいの」
ステラは相変わらず無邪気だ。
マリエッタはその顔をみながら、さてどうしたものかと考える。
(私のことは……どう教えてあげるべきですかね。強いて言うなら、私自身私のことをよく知らないんですよ……)
けれど、ステラが自分を見るとき、どこか自分の内面までもを見透かしているように思うときがあった。
(死血の魔女たる私の姿も、きっと貴女は見えるのでしょうね。それが綺麗かどうかは…わかりませんけどね)
機会があったら聞いてみようか。そんな風に、思いつつ……。
馬車は、オアシスへとたどり着いたのだった。
●キャンプファイヤーを囲んで
カイトとハイペリオンの水浴びシーンである。
「白い羽毛に砂が混じってるぜ。綺麗にとらなきゃな」
「あなたは、ベルハイドのようなことを言うのですね?」
「そりゃあ……まあ?」
カイトはなんとなーくだがあのベルハイドという神官の素性を察しつつあった。おそらくは自分の祖先に当たる誰かのIFなのだろう。本来なら勇者に助けられ仲間になったというハイペリオンの伝説を、この世界ではベルハイドが何かしらを代替していると言ったところか。
(俺がハイペリオンさまにこんなに夢中になってるのは、何か関係があるのかな? ま、どっちでもいいか)
カイトは自由な鳥なのだ。大抵のことには縛られない。
何せ父の率いるレッドコートへの配属も辞退するくらいだ。ご先祖様が何者であっても関係あるまい。
暫く水浴びを終えると、ハイペリオンはプルプルと身体を振って水を落とし、そして謎の太陽パワーで速乾した。
「す、すごい! ハイペリオンさまの側にいると洗濯物がすごい速さで乾く! あとお日様のにおいがする。ステラも吸ってみろ」
「え。うん」
ハイペリオンに抱きついて吸う。俗に言う『ハイペリオン吸い』と呼ばれる儀式である。こっちの世界でも結構やられているのか、ハイペリオンはどうぞどうぞとカイトとステラが埋もれるままにしていた。
「いいにおい……ねえ、カイト。カイトの話を聞かせて。なぜカイトは旅をするの?」
「俺か? オレは……いろんな世界の空を飛んで、海を超えること。それが目的だし、世界の果てだって見てみたい。んで、冒険譚をハイペリオンさまと水竜さまにお話するのが夢だ!」
「いい夢ね。素敵。私も一緒に冒険できたらいいのに……」
「できるさ。きっと」
カイトはおひさまのにおいを一杯に吸い込んでから笑った。
キャンプファイヤーを囲んで食事の時間となった。
ヴァレーリヤに火を付けてもらって、それを囲んで料理をする。
料理をしている間にカイトがケルト音楽を演奏し始め、ハイペリオンとステラは楽しそうに踊っていた。
「おいおい、踊りならオレも混ぜてくれよ。けどその前に、かーさん直伝の料理だ!」
皿に盛った料理を振る舞う牡丹。
「ありがとう、牡丹」
それを受け取って、ステラはぱくりと一口。そして眼をキラキラに輝かせた。
「おいしい!」
「だろー?」
そう言いながら、牡丹はステラの隣に座る。
「オレも同じだよステラ。『かーさん』に会ってオレは変わった。
いっぱいいっぱい愛してもらえたからな。
あの日々がオレにとっての綺麗なもので。
かーさんが愛した命をオレも護る」
「私も……この世界が好き。牡丹たちに出会って、世界が綺麗なものだってわかったの。
だから護りたい。私も……」
見守り人に、滅びの介添人に、それはつとまらないけれど……と。
牡丹はステラの頭をくしゃりと撫でてから、カイトの演奏にあわせて踊り始めた。
「わたしの事と言っても面白そうなのは少ないかしら。炎はただそこにあるだけなの」
胡桃はそんなふうに自分を語った。
「けど、あなたの炎は綺麗だわ。とてもキラキラしてる」
「そう?」
胡桃はキャンプチェアから足を投げ出してみる。
「どんな存在にも等しく終わりがあると知っていて……。
それでも滅びに抗うことに手を貸すようになったのは、きっときまぐれとしておくのが都合がいいの」
「かみさまのきまぐれ?」
「だとしたら、ステラさんと似たもの同士なの」
胡桃はうっすらとだけ微笑み、ステラもまたそれに応えて微笑んだ。
「あのね、私、あなたのそんな暖かいところが好き。変わらずにいてくれるところが、好きよ」
ステラの率直な物言いに、胡桃は少し驚いたけれど、ありがとうと言って料理に手を付けた。
今日の料理は胡桃も一緒に作ったものだ。丁度良くお肉に出来そうなモンスターを見つけたので捌いて調理したのである。
そうしていると、鏡禍が話に加わってきた。
「似たもの同士というなら、僕も……ですね」
鏡禍は手鏡を取り出してみせる。
「僕も元の世界では鏡の中にいて外のことをずっと見ているだけでしたから」
「元の世界?」
「そうです。元の世界」
この世界に召喚されて、空の本当の青さを知った。夜のつめたさを、人のぬくもりを知った。
「だから世界が新鮮で綺麗で不思議だっていうのはとてもよくわかるんです」
それにね、と続ける。
「僕が誰かを守る戦い方をするのは誰よりも守りたい人がいるからなんです。
その人の為に僕は努力して隣にあれるようになりました。
大事な人を守るための力、それが今の僕の在り方です」
いいながら、鏡禍はステラの言葉を思い出していた。鏡を綺麗ねと言ってくれたことや、後ろにいると落ち着くのと言ってくれたこと。
そしてどうやら、愛奈も同じ連想をしたようだ。
「そういえばステラさん。最初に私の銃を綺麗だと言ってくれましたよね」
「うん。それに、その槍も」
こくり、とうなづく愛奈。
「私は……元はただの売れない本屋さんでした。戦うだなんて縁もなくて。
だから、この拳銃を『似合う』と仰ったことが、私が呼ばれてからの歩みや、これまでのご縁を褒めてくれたようで嬉しかったです」
「あのね、私」
ステラはお茶を手に持ちながら、言葉を選んでいるようだった。
「その人のキラキラが見えるの。愛奈、あなたの銃と槍には、あなたの大切なものが詰まってるように見えた。だから、あなたの言うとおりよ。私はその銃が綺麗だと思うし、好き。けれどきっと……あなたが『ただの本屋さん』だった時に出会っても、好きになれたと思う」
「そうだと、嬉しいですけれど」
愛奈はくすりと笑って、お茶に口をつけた。
「貴女の事も、傷つけさせませんから。一緒に色んなものを見に行きましょうね」
「……うん!」
「やあ、星の少女……会えて嬉しいよ!」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はキャンプファイヤーを囲みながらステラと語らっていた。
「僕も元の世界で見た夜の空に憧れてヨゾラって自分に名付けたから、星空には思い入れがあってね……。
空を煌めく流れ星のように、僕は僕が願いを叶えたい・応援したいって思う人の願いを……。
そして僕自身の願いを、叶えたいなって思ってる」
「それは、とっても素敵な願いね」
ステラが微笑んでヨゾラに応じた。
すると『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)がコーヒーカップを持ってやってくる。
「ねえ、あなたの話も聞かせて」
「俺の? そうだなあ、最近だと……アルカディマの魔導書とか、ヴォラックスっていう魔物とか、アンシエント族の遺跡と遺物とかかな」
アルムは自分のしてきた冒険の話を語り終えると、ステラにカップをを渡した。
「俺は記憶喪失で……混沌世界のことしか覚えてないけど、とても素敵な世界で、たくさんの人がいて。
こんな俺でも友達が出来て……今までなんとかやってこれたんだ。
ハイペリオン君にもステラ君にも、皆を好きになって貰えると思うよ」
「うん。私ね、この世界や皆のことが好きになれたわ。冒険って、こういうものなのね」
「そう、かもね……」
『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)がその隣に座って話に加わる。
「僕は……大切な人達を癒したい・助けたいって思う。
僕自身、元の世界の記憶はまだ朧げな所もあるけど。
大切な人が死ぬのは、助けられないのは…いやだから。
全てを癒す事はできないけど…少しでも助けになれればいいなって、思う。みゃー」
ところで、と祝音は顔をあげた。
「ステラさんは猫さん好き?」
「たまろさんは好きよ?」
「あれもねこさんだけど……」
すると、『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)がはいといって手を上げた。
「ステラ様のおかげでゼロ・クールのみなさまを……助けてあげられると思うと、ニルは、とってもとってもうれしくて、ほっとしました。
……助けられなかったのが、とてもかなしかった、から」
自らのコアのある場所を、服の上から抑えるニル。
「うん。わかるわ。この世界の滅亡を救えないように、人形たちも救えなかった。けど、今は違うものね。あなたの奇跡が、可能性のかたちがある」
はい! とニルは頷き、そして続けた。
「ステラ様はどんなごはんがすきですか?
みなさまと一緒に食べるごはんはおいしいから、ステラ様と食べるごはんも、きっとおいしいのです」
「うん、わたし、ごはんのことも好きになったわ。知らないことでいっぱいだったから……」
暫くしてから、たき火を囲むのは『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)と『Star[K]night』ファニー(p3p010255)、そして『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)たちになっていた。
「私の信念。それは誰だって勇気を出せる。勇者になれるってこと。そんないつか勇者になるかもしれない誰かを守る。というのが私のやりたいこと。
命の危険を伴う恐怖や絶望を前に立ち向かう誰かの姿はカッコいいし美しいし大好きけれど、本当はそういう目に遭わない方が幸せだと思う。だから、一人でもそんなことになる人が少なくなるように私は戦い続ける。勇者や勇気を守り、誰かの心に希望や勇気を灯せる人になりたい。それが私の目標だよ。きっと一生の目標」
「それがあなたのキラキラなのね、ヴェルーリア。私もね……この冒険に出るには、勇気が必要だったの。目覚めた場所でじっとしていれば安全かもしれなかったのに、私は魔王城への旅に出た。それはもしかしたら、あなたのおかげだったのかもしれないわ、ヴェルーリア」
「そうだったら嬉しいな」
続けて、ファニーが自らの胸に手を当てる。
「遠い昔、オレも観測者だったことがある。ステラが星の終わりを見守っていたように、オレも物語の終わりを見届けるのが役目だったんだ」
「物語の、終わり……?」
「そうさ」
(物語の終わり、それはつまり人間の一生涯のことだ。
その始まりから終わりまでを見届けることが、かつての自分の役割だった。
オレが地上から星を観ていたとき、ステラは天上から星を見守っていたんだな)
ファニーはステラをまじまじと見つめ、そして問いかける。
「ステラ、人間が星に願いごとをするのは知っているかい?
人間が星にかけた願いは、星たちの歌声となって舞い降りるんだ」
「それは……とっても素敵ね、私も星の歌声を聞きたいわ」
「ああ、君にも聞こえたらいい。そうだな、オレのことは……どうか、アルファルド、と呼んでくれ」
「ええ……アルファルド。星の話をありがとう。わたしたち、すこしだけ似てるのね」
一方で、夜の魔女ことセレナがすっと身を乗り出す。
「わたしもあなたとお話してみたかったの。星の現身みたいなステラ。とっても綺麗で、可愛いお星さま!」
「可愛いだなんて。あなたもとっても素敵だわ、セレナ。星をのぞむ夜みたい」
ありがとう。そう言ってセレナが語ったのは『姉妹』の話だった。
「召喚されて身寄りの無いわたしに出来た、大好きな姉妹たち。
マリエッタもその一人なんだけどね。……そう、マリエッタは特別、大切な人なんだ。
そんな人たちの力になりたくて、今頑張ってるのかも」
夜。たき火を囲み寝袋に入る仲間たち。
そんな中で、汰磨羈とヴァレーリヤ、そしてステラはまだ起きていた。
インスタントコーヒーをいれ、オイルランプをはさんでキャンプチェアに座っている。
「私の生い立ちは、詳しく話せるような代物では無い。その代わりに、信念の事なら語ろう」
そう、汰磨羈は語った。昼間の間に猫の姿でハイペリオンにのっかりお昼寝をするという贅沢をしていたせいでかえって眠れなかったらしい。
「信念?」
「そうだ、信念。私の信念は、『必ず生き抜き、そして関わった者を生かす』事だ
その為にも、あらゆる災厄を狩り尽くす。
この一生を賭けても叶わぬ事だとしても、その歩みを止めるつもりは無いさ」
「それが、あなた自身がキラキラしてる理由なのかしら」
「そうかもしれんが……わからんな」
「ねえ、ステラ」
コーヒーに口をつけ、ほっと一息をついてからヴァレーリヤが問いかける。
「世界を救えたら、ステラはどうしたいんですの?」
「えっ……」
考えてもいなかったという顔をして、眼をぱちくりさせるステラ。
そして、満点の星空を見上げる。
「わからない。けど……冒険が、したい、かな」
「それはいいかもしれませんわね。きっと目移りしますわよ、冒険と言っても、それこそ世界は広いですから」
「ヴァレーリヤは?」
はい? と問い返すヴァレーリヤに、コーヒーカップを手にしたステラが問い直す。
「ヴァレーリヤは、世界を救ったら何がしたい?」
「私は……どうかしら。ちょっと叶えるのが難しい願いかも」
苦笑するヴァレーリヤ。
「お互いに、叶うといいですわね」
「マリエッタさん、助けてください……! 人生最大の危機なんです!」
夜に皆が寝静まってから小声でそう請われて、マリエッタは湖のほとりで見張りをすることになった。
要するに、トールの水浴びが誰にも見られないようにするための見張りである。
「まったくトールさんは……。まあ、でも、夜間に見上げる星というのも悪くはありませんし」
などと星空の下で読書など、と思っていたらとことことステラがやってくるのが見えた。
「こんなところで読書?」
「ええ」
湖に行こうというわけでは、どうやらないらしい。事前にセレナが釘を刺してくれたのだろう。
「二人の姿が見えなかったから」
「ああ。なら心配いりませんよ。待っていればトールさんもすぐに来ますから」
「そう」
ステラは頷くと、すとんとマリエッタの隣に座った。
なんということのない対話が続く。星の並びや綺麗さや、夜の静けさについて話す時間だ。
そんな中で、ぽつりとステラがこう言った。
「あなたの作った血の鎌、綺麗ね」
その言葉に、マリエッタは無言で彼女の顔を見る。
「あなたと冒険したがってるように、見えたわ」
「……あなたには、そう、見えたのですね」
「うん。ええと……」
ステラはつたない語彙の中から探すように言葉を選ぶと、マリエッタに向き直る。
「あなたの血の色が好き」
「なんだか猟奇的な……殺し文句ですね?」
「そうかも」
ステラは足を投げ出して言う。
「この世界には好きなものがいっぱいできたの。あなたもね、そのひとつ。だから……この世界に、滅んでほしくないな」
救い方が分かったから、じゃない。
好きになってしまったから。
滅んでほしくないな、と。
「そう……」
マリエッタが眼を細める……と、そこへトールがやってきた。
「あ、ステラさん。何のお話ですか?」
「何のお話なんでしょう」
言葉にしづらいですねとマリエッタが苦笑すると、察した様子でトールがステラの隣に座った。
「ねえ、あなたのことも聞かせて。知りたいわ。あなたの……そのキラキラのこと」
トールのさげている剣、ではない。懐にしまっているはずのプリンセスシンデレラを指さして、ステラは言う。
一瞬きょとんとするけれど、トールは頷いて話を続けた。
「じゃあ、私の故郷の話をしますね」
女性しか存在しない世界に生まれ、ずっと仕えている女王様がいたこと。
その状宇王様と再会しておおいに喜んだこと。
美しさを競う舞台でオーロラに輝くドレスを着てシンデレラに選ばれたこと。
そのドレスはもう無いけどいつかまた着てみたいこと……。
「ステラさんは夜空に輝く星のドレスが似合いそうですね。さしずめ勇者たちと旅する星のお姫様だ」
「私はお姫様なんかじゃ……」
ステラは照れたように笑って、そしてトールにまた向き直った。
「わたしね、あなたが、オーロラに輝くドレスを着るところ……見てみたいな。その話をする時のあなたが、好きだから」
「ええ、その時には……きっと」
ステラとトールは星空の下で笑い合った。
●影の領域と、寄生型終焉獣ミューテリア
キャンプを終えた一行の旅はつつがなく進み、そして彼らは魔王城に近い、名も無き遺跡を発見するに至った。
遺跡は広く、改造すれば魔王軍と戦う拠点として活用することができそうだ。
だが……遺跡にて待ち構える魔王軍の配下と遭遇したのだった。
可愛らしい魔物に乗っかって、可愛らしい少女が遺跡の上空から現れる。
「はっはっはー! この場所までたどり着いたことをほめてやろー! ボクは魔王軍が配下、ミューテリアだよ!」
素早く魔物たちが展開し、その周囲に終焉獣たちまでもが展開し始める。
ハイペリオンが叫ぶ。
「皆さん、気をつけてください! 彼女も滅びの気配を纏っています!」
ぱっと見た限り幼い少女にも見える彼女は、どうやら四天王同様に終焉獣に寄生された魔物であるらしい。
当然の如く身構え、戦闘態勢に入るカイトたち。
その中でハイペリオンの後ろに隠れるステラを見て、ミューテリアはぺろりと舌なめずりをした。
「あの『へんな奴』が言ってたのはその子だね? えーっと、ステラちゃんだっけ」
ビクッと肩をふるわせるステラ。
ミューテリアはにやりと笑う。
「君。次元を渡れるんだってね。ってことは……『使える』ね」
「ステラさんに手出しはさせませんよ」
間に割り込むように立ちはだかり、銃を突きつける愛奈。
彼女の射撃を、ミューテリアは召喚した小型の魔物たちを盾にすることで防御した。
「おっとー、あぶないあぶない」
続けて、大量の飛行型終焉獣が羽ばたきながら押し寄せてくる。
「こいつらは任せろ!」
カイトがその群れの中に突っ込んでいき、得意の回避盾術でもって引きつけ始めた。
激しい射撃をバレルロールで回避するカイト。その動きについてこれる終焉獣はいない。
一方で剣を抜くトール。灰色の斬撃が空をなぎ払い、終焉獣の群れを切り払う。
タンクと掃討役のコンビネーションはここまでの旅でくり返してきただけあって凄まじくぴったりだ。
「牡丹さん、抜けてきます。連中を頼めますか!」
「任せろ」
そしてタンク役が多いことも、今回のメンバーの強みでもある。牡丹はにやりと笑うと片翼を広げ、突っ込んでくる終焉獣の群れめがけて炎の波動を叩きつけた。
目の色を変えて遅いかかってくる終焉獣たち。
それを迎え撃つのはマリエッタたちだ。
マリエッタは無限に撃てる治癒魔法でもって牡丹を治癒すると、その合間を見計らうようにして血の大鎌で終焉獣を切り捨てる。
数が多いなら、と汰磨羈が飛び出し刀で切り捨てた。
彼女のマナが刀に乗り、波のように迸り終焉獣たちを切り裂いて行く。
「数がヤバイな」
「けど、この程度なら」
マリエッタと汰磨羈が背を合わせ立つ。そこへ胡桃が――。
「ぶれいじんぐぶらすた~」
収束火炎輻射術式を発動。炎が放たれ終焉獣たちが次々と墜落していく。
一方で、ノアの援護射撃を受けながらヴァレーリヤと鏡禍がミューテリアへと迫っていた。
「おっとっと!」
ヴァレーリヤのメイスによる打撃をギリギリで回避しながら後ろに飛び退くミューテリア。
召喚した魔物たちがブレスを放出するが、それは鏡禍の妖力障壁によって防がれた。
「あらら、これボクの部隊だけじゃダメっぽいねー」
魔物を使って空へと飛び上がり距離をとるミューテリア。
「もっと、マジの軍勢をしかけないとね」
「それは一体どういう……」
「今度はその子をもらいにくるからねー。じゃあねー!」
ミューテリアはばいばーいと言って手を振ると、魔物や終焉獣たちと共に撤退していったのだった。
「あの魔物の言っていた『使える』って、どういう意味なんでしょう……」
「それは、ね……」
ステラが、去って行く魔物たちを見つめながら言った。
「私を、混沌へ乗り込むための『入れ物』にできるってこと」
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――影の領域へ到達し、拠点にしやすい名も無き遺跡を発見しました。
――ステラを魔王軍が狙っていることが判明しました。
GMコメント
ステラ、そしてハイペリオンをつれたながい旅が始まります。
共に西へと冒険の旅へ出ましょう。
●砂漠地帯パート
混沌でいうラサがある場所は広大な砂漠地帯となっています。
ここには終焉獣、星界獣、または廃棄済みのドール達が出現するでしょう。
ステラは戦闘力がないのでハイペリオンさまに守って貰いつつ後ろで応援してくれます。
●オアシスパート
ステラやハイペリオンと一緒にオアシスで休憩をとりましょう。
キャンプグッズを持ち込んだりするとより快適に過ごせるかも知れません。
ステラはあなたの話を聞きたがっています。
あなたの生い立ちや、あなたの信念。あなたの目標や夢や、あるいは力のありかたを。
ステラにとって、あなたは『綺麗な世界』のひとつなのです。
●影の領域パート
ここでは魔王軍配下のモンスター、強力な終焉獣などが出現します。
戦闘が激しくなるエリアですので、充分に注意して挑みましょう。
●ステラ
星の少女。世界の滅びを見守るさだめを負っていたはずの少女だったが、イレギュラーズたちに触れることでその性質が変化した存在です。
彼女にとってこの世界は綺麗な未知と不思議でいっぱいのようです。
あなたとの冒険を、そしてなによりあなたを知ることを楽しみにしています。
●ハイペリオン
太陽の翼。混沌では勇者一行のひとりとして大陸じゅうを飛び回っていた存在でした。
ここプーレルジールでは力を衰えさせ、ウィツィロで細々と崇められているだけの存在でした。
ですがイレギュラーズたちと出会ったことで、この世界のために戦う決意をしてくれました。
今回は空からオアシスの場所を見つけたり、敵を見つけたり、ステラを守ってくれたりします。
直接の戦闘はあまり積極的に行わないようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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