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シナリオ詳細

<伝承の旅路>ダークホールド攻城戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カウンター・アタック
 プーレルジールで反撃の機運が高まっている。この地に生きる者の生命線であるゼロ・クールは寄生型終焉獣によって優位性が脅かされ、このまま防戦を続けていれば人類側のリソースも取り返しの付かない浪費となる事は明らかであった。
 アイオンの呼びかけにより、ギャルリ・ド・プリエのお手伝いことイレギュラーズはサハイェル砂漠の先にある魔王城を目指す事となった。
 サハイェル砂漠は混沌世界に生きるイレギュラーズにとって馴染みのない地名だが、地理に明るい者はすぐにラサに位置するものと気付くだろう。ラサから続く影の領域への道、これほどまでに魔王城の存在が似合う場所もない。混沌においても忌避される土地柄は健在であり、遺跡や浮遊石といったものから真っ黒な海と只事ではない気配が其の地には漂っている。

●エネミー・ライン
「それで、君たちは本当に魔王城を目指すわけか」
 アトリエの魔法使いが今回の作戦と心構えを問う。人類への脅威は日に日に増す一方だが、未だ心の何処かで何とかなるだろうという考えを抱く者も少なくない。魔王城に進軍するという大胆な攻略作戦は半信半疑なのである。
「うーん……そりゃこのままでは被害も増え続ける一方だけど、本当に上手くいくのかな。君たちは色々な事を助けてくれたけど、ここまでお願いしてしまうのは申し訳ない気持ちになるね。まぁ、それでサハイェルを越えるのであれば一つあそこの砦をどうにかしてもらいたい」
 魔法使いが地図を広げ、サハイェル砂漠に入った辺りを指差し、三回ほど指で円を描くと其処に砦のマークが現れた。
 ダークホールド。砂漠地帯に造られた魔王軍の軍事要塞である。魔法使いたちの言う所の真っ黒な海『影海』は彼らの興味を引いたが、この砦の存在により遠巻きにしか見る事ができず彼らも迂闊に近づくことができないという。イレギュラーズはこれを滅びのアークと判断したが、魔法使いにとってもそう有益なものである訳はないと考えていたようだ。
「影海を調査したい気持ちもあるけど、まぁ十中八九ロクなものじゃないと思ってるよ。それよりもこの砦が厄介だ。何も一日二日で行けるような魔王城でもない、ここを放置していると眼前のモンスターを相手にしながら挟み撃ちを受ける可能性もある。憂いを断つ為にまずはここの攻略を勧めるよ」
 ダークホールドは遠巻きに見れば悪くない砦だが、辺鄙な場所に造られただけの事はあり、軍事知識に優れる者であれば急造や見せかけ、ランドマーク程度のものでしかないと理解るだろう。
「偵察隊の情報によると、ここにも僕たちのゼロ・クールを利用する奴らがいるみたいだ。本当にいい迷惑だよ、あいつらを造るのも楽じゃないのに……。作戦の流れは君たちに任せるが、できればこれも回収しておいてほしい。正直な所ね、ルグィンさんの所のゼロ・クールじゃないかと思ってるんだよ。あそこのゼロ・クールはやたら戦闘用に調整されている事が多いしね」
 寄生型終焉獣はゼロ・クールのコアに寄生し、意のままに動かす事ができる邪悪な生命体だ。コアを破壊するしかないという苦渋の決断を乗り越えてきたイレギュラーズには今『死せる星のエイドス』がある。奇跡には代償が伴うが、取れる選択肢は多い方が良いだろう。

●ダークホールド
「エラー 座標を確認できませんでした」
 胸元のプレートにドレッドノートと刻まれたゼロ・クールが砦の中を歩き回る。魔王軍は先の戦いでこの少女を手に入れる為に多大な犠牲を払う事になったが、最終的には魔王軍が押し切る事に成功し、一つの村を滅ぼした。ダークホールドの砦は遠征より戻ってきた終焉獣の休息地の役割も果たしていたようで、様々なモンスターが手負いの形となっている。
「ふん、この馬鹿力が。キマイラとバーサーカーの部隊は貴様のせいでほぼ壊滅だ。何日ここで補充を待つハメになるか理解らぬが、それまでしっかり警備を行ってもらうぞ」
「はい、私ことドレッドノートは戦闘用に出力を増大させており、35時間28分前にセルンの村で行われた戦闘においてキマイラ4匹とバーサーカー8人を排除する事ができました。これらは四天王を名乗る者の配下であると考える事が妥当です。警備を行う事は可能です。しかしこの座標はデータベースに登録されておらず、警備ルートに問題が発生する可能性が」
 二足歩行の悪魔のような姿をした終焉獣がドレッドノートを小突く。寄生型終焉獣によってこちらの命令に従うようになったが、相変わらず何を言っているのか理解らない。この戦いのパワーバランスを大きく変える切り札である事に間違いはないのだが、彼らとしては自分たちの力より、この鋼鉄の化け物と寄生型終焉獣が信頼されている事に腹を立てていた。
「ゲヒェヒェヒェ! ジェラシーはみっともない! みっともない!」
「他者に寄生する事でしか己の武を示せぬ畜生めが……!」

GMコメント

●目標
【必須】ダークホールドの陥落
【努力】ゼロ・クールの回収

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 現場に到着するタイミング、攻略作戦はイレギュラーズに一任されます。
 昼間は敵の傷が癒えていません。
 夜間は奇襲や隠密に適しているでしょう。

●敵
 ザルコー将軍
 悪魔のような姿の終焉獣です。
 武人の気質を持っていますが、味方には成り得ないでしょう。

 LB03号ドレッドノート
 ダークホールドの攻略を困難なものにする最大の要因です。
 とある魔法使いによって造られた強力な戦闘用ゼロ・クールです。
 ちょっとおばかな女の子。寄生されています。

 ザルコー部隊 数不明
 ダークホールドを守っていると思われる終焉獣です。
 手負いのようで、数以外は問題にはならないでしょう。

  • <伝承の旅路>ダークホールド攻城戦完了
  • GM名星乃らいと
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月11日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
雨紅(p3p008287)
愛星
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ

●暗黒要塞を討て
「この世界の現状を打破するには西に行くしかないだろうな。砦を構える、即ちここは要所だ」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)がサハイェル砂漠の遥か彼方、其処に構えているであろう魔王城の方角を眺める。プーレルジールの世界を滅ぼさんとする魔王、そして四天王は倒すべき敵だ。だが、敵方もそう簡単には通過させてはくれないようで、ダークホールドなる要塞がイレギュラーズの行く手を阻もうとしていた。
「……さて、城攻めか。とある一説では攻める側は守る側の三倍の戦力が必要だという」
「見積もりとしては悪くないわ。鉄帝での辛さを加味すると、倍はあっても困らないんだけど。幸い相手は傷病兵と軋轢とがあるから、付け入る隙はあるわね」
 『狂言回し』回言 世界(p3p007315)と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は今回の作戦、目標を綿密に分析する。戦国の世に生まれてこそいないものの、日本という国は城を中心として数々の武将が争った地でもある。そんな骨の折れる行為を8人で行う事は、一般人であれば狂気の沙汰であるが、世界はイレギュラーズだ。そしてイレギュラーズとはこのような狂気の沙汰を平然と成功させるのが仕事である。難儀な事だと世界は司書との対話を切り上げた。
 イーリンにしても数々の実体験、そしてライブラリアンの知識がこの戦いのハードさを導き出す。襲撃時刻を選べる立場でありながら、定石を外した晴天の下での犯行。だがこれで良いのだ。神がそれを望まれる。
「タノモー! いやー、正面から乗り込んで攻城戦は燃えるシチュエーションだね!」
 このような見えている実利を、投げ捨てる事に喜びを見出す人種も存在する。『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がそれであり、鉄帝人らしい気質だと誰もが思う所だ。鉄帝国の歴史に夜戦や奇襲がなかった訳ではないだろうが、彼らが好んで行う戦いとはこのような形が主だろう。その気質が幻想との戦争を長引かせ、上手くかわされ続けているのだが。
 『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)はイグナートと対照的な心持ちであった。魔王軍との戦いの影にはゼロ・クールが付きまとう。助けられなかった命も多い。ある者は使い捨ての機械人形というが、雨紅にとっては守るべき存在だ。そして、何より戦闘用に造られた自分にとっては奇妙な親近感すら覚える。
 イレギュラーズは今までコアを破壊するしかないという悲劇的な方法しか取れなかった。しかし今は違う。掴み取った小さな奇跡、それが誰かを救えるのならば、今一度、舞おうではないか。
「これ以上、失わせはしません」
 『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)が静かに思考する。ゼロ・クールを利用する魔王軍、終焉獣に寄生させる目的は単なる戦力増強に留まっているのだろうか。闇雲に使い潰すだけではない気がする。だが、理解っている事はある。これは許してはならない事象である。
「とはいえ、どうも、あちらの勢力の中でも、中枢と末端で、その意図が共有されているのか、はかりかねるところもありますが」
 ゼロ・クールは雨紅のように戦闘に特化した存在だ。これを味方に引き込むだけでもシンプルに優位に立つことができるが、下手に知性が芽生えた魔王軍の場合は、その新参者をよく思わない勢力もあるのだろう。どうにも、上手く事が進んでいない、とグリーフは敵方の事情を読んだ。
 死せる星のエイドス。星の少女ステラより齎された奇跡の欠片。『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)は『忍者人形』芍灼(p3p011289)が握りしめる欠片を見つめていた。リスクこそあれど、取れる選択肢は多い方が良い。枝分かれする無数の道、其の先に苦痛や後悔、破滅が待っていたとしても星が照らす道を信じて進もう。素晴らしい未来を歩む為には、眼前の拠点を制圧するよりない。困難は承知の上、だがやり遂げてみせよう。
「それがしは……何度も寄生されたゼロ・クール殿を助けようと試みました。その結果は皆様と同様の結果かと思われまする。ドレッドノートの製作者であるルグィン殿とは何度か依頼を受けた関係ゆえ、此度こそは救い出して見せたいのです」
 芍灼はこれまでに何度も苦しい結果を強いられてきた。ゼロ・クールの救出に奔走し、藻掻き、足掻いた。死せる星のエイドスがある今、己が運命を燃やす時は、今。
「俺たちも同じ気持ちだよ。可能性を放棄する事はない、芍灼さん。正しく勝利しよう」
 イズマがファミリアーを飛ばしながら芍灼に同調した。正しい勝利、それは誰も悲しまない結末だ。バッドエンドは創作、芸術の中でのみ評価されるべきである。一体のゼロ・クールが破壊されようが救われようが、プーレルジールは何も変わらない。それでも、イレギュラーズは決意する。

●ダークホールドの戦い
 無数のファミリアーがダークホールドに飛び交っている。手練のウィザードであればこれが敵方の偵察隊と気付く所であるが、幸いにしてその関心はないようであった。むしろ、やけに鳥や野猫が多いと感じていても負傷した兵士の治療が急務であり、これを追い払おうとする余力すら其処にはないようであった。
「正門は典型的な形ですね。此処まで無警戒ですと最も良い時間に来れたのでしょう。では、雨紅さんはお気をつけて」
「ええ、それでは失礼致します」
 上空からの侵入を考慮されていないダークホールドにグリーフが入り込み、解錠を行った。これほど大胆なルートを選ぼうとも、まるでもぬけの殻のように静まり返っている。やはり形式だけの砦のようで、プーレルジールの人類側がここに攻め入る事など夢にも思っていないのだろう。宿泊施設程度の扱いだ。
 内部こそ一応の見回りなどが行われているかもしれないが、この調子ではそれも下っ端に強いる雑務レベルだ。雨紅の単独潜入が露見する事はまずあり得ない。
「こ、こんなパターンは想定外ね。ノーガードすぎて罠を疑ってしまうわ」
 イーリンが唖然としている。この建造物のアドバンテージ、地の利をジャイアントスイングしながら背負い投げを行いうっちゃりのパワーボムで投げ捨てたかのような始末だ。自分ならあの櫓に弓兵を2,3は配置する。そして襲撃を告げる為に鐘などを広場に設置するだろう……特別講師として雇ってもらいたいぐらいだ。
「罠に関しては大丈夫そうだ。あちら側に穴があったが……」
 慎重に罠の対処を行おうとしていた世界が戻ってくる。
「穴? そうか、無防備に見せて落とし穴で仕留める手口ね。原始的だけど効果的よね、どんなタイプの殺傷装置だったの?」
「いや、言わせないでくれ。二度と近づきたくない。……ちなみに男女共用だろう、紙はないから自分で準備する必要があるぞ」
 イーリンは頭を抱えた。知力の限りを尽くすコンクエストは臨めそうにない。

「宣戦布告だ、ザルコー将軍! この砦をもらいに来たぞ。今から攻め落としてやる!」
「私はンクルス・クー!ダークホールドを落としに来たよ!砦の統括者のザルコー将軍!私と勝負だー!!!出てこーい!」
 イズマとンクルスの宣戦布告がかぶった。若干の気まずさが残ったが、伝えたい事は伝わっただろう。特に、指揮官の名前が2度も大声で響けば、どれほど戦いを舐め腐った集団でも只事ではないと気付くだろう。
「ここを頂く……? 俺は遠慮するかな」
 世界はいったい何を見たというのか。それは兎も角、負傷兵という事を考慮しても重すぎる腰がようやくあがったようであった。
「このような場所まで来るとは……人間どもが大きく出たものだ。だが、我々が疲弊している時を突くとは。行き当たりばったりの計画ではないな?」
 赤い肌、二本の角を生やした悪魔が要塞より現れる。彼がザルコー将軍だろう。取り巻きもそれなりの数がいたが、全人員は投入されていないようだ。何か想定外の事が起きている。
「なァんでこっちが通行止めなんだよ! クソ便所を通るしかねえじゃねえか!」
「おいふざけるな! 看板だけで良いだろ! 有刺鉄線を張るバカがいるか!」
「俺じゃねえよ! 急がねえとザルコー様にぶん殴られるぞ!」
 要塞の中は混沌としている。雨紅ほどの腕前であればこの程度の潜入作戦は、武力で圧倒できたかもしれない。だが途中のアドリブで予期せぬ結果を齎してはよろしくない。雨紅は事前に準備していた足止め計画に従事していた。
「心中察するわ」
「ま、それじゃそろそろ始めようか! 偵察とか罠対処に息を潜めてたらチッソクしちゃいそうだったよ!」
 イグナートの陽気な声は強い闘志を帯びている。ザルコーの取り巻きはイグナートを危険人物と定め、包囲するように動き始めた。
「後は只殴り合うのみ! 正面から堂々とが一番良い! 何か忘れている気がするけど!」
 ンクルスがザルコーに殴りかかろうとしたが、突然にして強烈な銃弾の雨がンクルスを掠めた。
「うわわっ!?」
「敵対的存在を確認しました。フォースライフルは目標に命中せず、エネルギーチャージに時間を要します」
「何が目標に命中せずだ、私のキマイラに好き放題に風穴を空けたくせに」
 ドレッドノートと思われるゼロ・クールが要塞の壁を次々と粉砕しながら姿を現した。それは想像以上に巨大で、イズマとイグナートが手を広げて並んだ程の横幅を持つ、鋼鉄の要塞に身を包んだような少女と言う他に表しようがなかった。ファミリアーが事前に姿を確認できなかったのはダークホールドの最深部か何処かで肩が壁にでも引っかかり、動けなくなっていたのだろう。
「何事かと思えば出口が生成されたようで……。強敵のようですが、私達は負けませんよ」
 雨紅がドレッドノートの突き崩した壁から脱出し、イレギュラーズと合流する。周囲にはドレッドノートに轢き潰されたゴブリンの死骸が転がっている。これを制御する方も大変な話だ、とイズマは呆れたが、これで役者は揃った。

「貴方たちはゼロ・クールをどうするつもりなのですか? 手に余る代物にしか見えないのですが」
 グリーフが閃光を放ちながら生き残ったゴブリン部隊を処理する。格下ともなればロクな情報が与えられていない事は容易に想像できるが、返ってくる言葉も想像通りに知性の乏しい、聞くに堪えない罵詈雑言であった。
「わかりました、もう聞きません」
 ソウルストライクの一撃が分隊長と思われるゴブリンの頭を破壊した。
「お疲れの所に悪いが、卑怯とは言ってくれるなよ?」
「戦いにその二文字は無い。在るのは信念、正義と正義のぶつかり合いだ」
 イズマの殲光砲魔神とザルコーの波動が激突する。これまでの侵攻はほぼザルコーによる手柄のようなもので、イズマと拮抗する力量がそれを物語っている。イグナートの暴力、グリーフの制圧力に彼の配下は為す術もない状態だ。
「フォースライフルに出力異常が検知されました。ヘルファイア・バーナーを使用します」
 ドレッドノートの両手首に備え付けられた砲門から勢いよく火炎が放射される。
「アッツイ! 万が一に備えてちょっとくらい壊しても大丈夫じゃないかナ!?」
「何だこのびっくりメカは……。待ってろ、回復するぞ」
 何が飛び出してくるか予想もつかない敵にイグナートは良い反応を見せ、紙一重で世界の治癒術の許容範囲内に収まる熱傷に留めた。
「自爆装置がついててもおかしくないレベルよ、これ」
「演技でもない事を言わないでくだされイーリン殿! ドレッドノート殿はルグィン殿が我が子のように可愛がっている姉妹……あ! どうせ姉妹じゃないとか訂正するのでござろう!」
「その質問にはお答えできます。私ことLB03号ドレッドノートは単独および少数での拠点制圧をコンセプトに製造されたゼロ・クールです。製造にかかるコストは一般的なゼロ・クールの3倍強ほど増加しており、自爆装置は費用対効果の面でオミットされております。しかし、腹部プラズマキャノンは自爆同様のエネルギーを放出する事が可能です。この回答はお役に立ちましたか?」
 芍灼はその後に姉妹という概念を予想通り却下された。
「お役に立ちましたか、じゃないのよ! あんた次それ撃つ時は許可を取りなさい!」
「フィードバックに感謝します!」
 ドレッドノートはこちらに従順な反応を見せる一方でやっている事は効率的な破壊だ。寄生型終焉獣によって行動が致命的なエラーを起こしている状態である。プラズマキャノンで吹き飛ばされたイーリンは正門の壁に激突したが、それで火がついたのか絶海拳を繰り出す。手を抜ける相手ではなく、ここにいる誰もが、雑に殴っても死なないと判断する所である。
 雨紅の舞が次々と敵兵を仕留め、ザルコーへと迫る。
「お覚悟を。容赦は出来ません」
「やはり割に合わない任務であった、か」
 元々手負いであったザルコーはイズマ、ンクルスの猛攻を凌ぎ切る事はできず、あっさりと刑天の矛先に穿たれた。指揮官が倒れ、あってないような士気は地に落ちた。戦いは決したように思えた。最大の脅威、不沈艦ドレッドノートを残して。
「ドレッドノートさんは、意識はあるのですね」
 グリーフがルーンシールドを展開し、腹部から放たれる怪光線を中和する。意識というキーワードに関して、芍灼の想像通りの回答がグリーフに返ってくる上に、ルーンの盾を突破できないと見るや、ドレッドノートの肩に備え付けられていた回転式機関銃がグリーフの身を傷つける。
「そう簡単に討たれる身ではありませんが……多彩な方ですね」
「あれだけごちゃごちゃと武器がついていると、日常生活が大変そうだよね」
 ンクルスが率直な感想を述べる。
「いや、普段からあんな武装をしている訳ではないと思うが……断定はできないか」

「ドレッドノート殿……ロッソ殿のロッソは赤の意味もあるとお聞きしたのでレッド殿とお呼びしましょうか」
「はい、私はレッドという愛称で呼ばれる事とします。しかし、正式名称はLB03号ドレッドノートである事に留意して下さい」
 フレンドリイな回答に反して、やっている事は火炎放射と機銃掃射だ。
「話を聞いてあげてください、ドレッドノート様」
「言ってる事とやってる事がチグハグだよ!」
 雨紅の槍が炎を振り払う。発生源こそ恐ろしい物だが、それは炎を使った演舞のように美しかった。
「それがしは何度も無力感に晒されてきました。決められた結末に従い、罪なきゼロ・クールを破壊する事がイレギュラーズの仕事とは到底思えないのでございまする。それがしは今度こそ、この未来を変えてみせます。死せる星のエイドス。これが起こす奇跡の代償が、文字通りに死だとしてもそれがしは躊躇しないでしょう」
 芍灼の周囲に小さな光の粒子が集まる。プーレルジールの地でイレギュラーズがパンドラの箱を開けた事はない。だが、何かが起こる。
「悔いの残らぬよう、お祈り致します」
「ゼロ・クール一人を助けるなんてそう困難な話でもないはずだ。俺は信じているぞ」
「これで駄目だったら不良品よね。労災だって降りちゃうと思うわ」

「ちょっとドレッドノートちゃんじっとしてて! ほら、こっちを見るー!! あれ、芍灼さんの方を見てた方が良いんだっけ!」
 空気を読まずデーモンバスターなる大斧を振り回すドレッドノートを、ンクルスがなんとか羽交い締めにして止めている。体格差的には親子のようなもので、大斧同様にンクルスも振り回されているが。
「警告、貴方は危険な体勢を取っています。速やかに離れてください」
「むりだからー! なんでこんな大きいの!? 成長期!?」

「奇跡を起こせずして何がイレギュラーズでありましょうか! それがしの命を燃やすは今!! うおぉおおおおおおおーっ!!」

 小さな光は滅する事なく輝きを増し、留まる事なく加速する。
 やがて光の柱となり周囲を包み込む。それはプーレルジールの地に突き刺さる光槍のようであった。

●ひかりのゆめ
「まあ、報告は以上だ。俺も説明が得意な方ではないから、これで失礼する」
 ダークホールドは陥落し、持ち主の下へドレッドノートは届けられた。
「こんなもの盗まれないで欲しいわ。あと肩幅はどうにかしないとアトリエの通路も危ないわよ」
「脱出ルートを選定していたらアレでしたからね……。しかし、私達はやるべき事をやりました」
 ドレッドノートと芍灼は動かない。だが、今までの戦いと一つ違う点として、彼女らは寝息を立てている。
 少なくとも半日以上は起きないだろうと世界は推測した。目が覚めれば、二人は再び魔王軍との戦いが待っている。同じ夢を見ているのだろうか、ゼロ・クールも夢を見るのだろうか。らしくない事を考えたものだと世界は自嘲した。

「貴方はンクルス様と違った形で危険を冒しました。データベースにはありませんが、あのような行為は避けるべきでしょう」
「危険を承知で行わなければいけない事もあるのです、レッド殿」
「フィードバックをありがとうございます。また『感謝』という概念を貴方に伝える事が妥当と思われます。いくつかの適切と思われるキーワードから選んで見る事にします」
 芍灼は相変わらず融通の効かない姉妹だな、と傍らの少女の頭をなでた。

「ありがとう」

成否

大成功

MVP

芍灼(p3p011289)
忍者人形

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!
星明かりは巡り、一つの運命を輝く道へと流転させます。

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