シナリオ詳細
<クロトの災禍>燃え上がる怒り
オープニング
●
近い将来、世界は滅亡する。
信託の少女は確かにそう言った。
外れることがない彼女の……ざんげの神託が観測した。
無辜なる混沌は超終局型確定未来――通称<D>の発生により、その消滅が確定した……と。
滅びはこの世界にあるいかなる存在であれ、逃れることはできない。
例え、他の世界から召喚された来訪者……旅人であってでも。
何人たりとも逃れることのできない状況の中、イレギュラーズは滅びを蓄積する魔種を退けていく。
中には冠位魔種(オールドセブン)と呼ばれる恐るべき存在もあったが、イレギュラーズはそれらも1体ずつ討ち倒す。
それも残るは2体、そして、原初の魔種のみ。
未来を変える為には、イレギュラーズは戦い続ける他ないのだ。
●
新たに入った不穏な事件。
その情報を得るべく、イレギュラーズは深緑、大樹ファルカウへと向かう。
「皆様、お疲れ様です」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は各地の事件解決に奔走するメンバー達を労う。
だが、依頼の話となれば、アクアベルも神妙な顔にならざるを得ない。
何せ、世界の危機という状況が徐々に色濃くなり始めているのだから。
「終焉(ラスト・ラスト)と呼ばれる『影の領域』の動きが活発になったそうです」
その情報がもたらされたのは、終焉の監視者『クォ・ヴァディス』から。
なんでも、終焉と隣接するラサ、深緑、覇竜へと終焉獣が姿を見せ始めたのだという。
「一度に周辺国に現れ始めた終焉獣……早めに退けたいところです」
今回、アクアベルが依頼するのは深緑に現れた終焉獣討伐。
「現場は迷宮森林西部……メーデイアと呼ばれる領域です」
ここは大樹ファルカウから距離がある上、迷宮森林で特に奥まった場所。
普段なら、幻想種であれば迷うことがないはずだったのだが、状況の変化によってか幻想種の行方不明事件も多発しているという。
どうやら、森林警備隊の一隊がこの領域で消息を絶ってしまったらしい。
なんとか危機から脱した小隊員からもたらされた情報であり、彼らによるといまだ小隊長以下数名がメーデイアの一区画に取り残されているそうだ。
「危機を察して救援を予備に戻った小隊員の皆さんの気持ちは察するに余りあります」
小隊長や同僚を残して逃げるしかなかった状況。
彼らの心境を慮るなら、警備隊の面々を全力で救出したい。
戻ってきた小隊員の情報によると、まず、各地で見られる終焉獣らしき姿があった。
確認したのは、四肢のない浮遊する胴体のような個体。
そして、これまでに確認されていない筋肉隆々の人型個体が2体だ。
ただ、敵対勢力はそれだけではない。
逃げ帰った小隊員は、灰の香りが漂う中、赤い焔を思わせる幻影を見たという。
「炎を纏った大樹が『ファルカウの怒りだ』と告げたのだとか……」
それは、以前現れた大樹の嘆きを思わせる敵とのこと。
異様なまでに憤るそれらは止めることすら難しいと、小隊員は語ったという。
「できる限りの情報は纏めておきましたので、どうか彼らを助けてあげてください」
アクアベルは参加を決めたメンバーへと資料を渡し、迷宮森林の奥へと送り出すのである。
●
迷宮森林西部……メーデイア。
イレギュラーズは普段の森の雰囲気が保たれた限界ギリギリの場所まで、戻った小隊員達には案内を頼む。
以後は残ったその小隊員達を目印にしながら、一行は問題の領域へと踏み込む。
メンバー達は様々な手を駆使し、取り残されている警備隊を捜索する。
そして、発見したメンバー達は2勢力に挟まれた警備隊の面々を発見することに。
まずは、漆黒の体躯を持つ終焉獣。
2種3体が存在し、片方は四肢が焼失した黒い胴体の見た目をしていた。
もう1種は2体おり、筋肉隆々の見た目をした個体だ。
それらは何れも滅びのアークを纏っており、周囲を侵食する力を持つ。
空間を侵食して神の国を築こうとするのもそうだが、警備隊が異言を話すもの(ゼノグロシアン)とさせられる可能性がある。
そして、別勢力は大樹の憤怒と呼称される存在。
動き出した樹木が赤い焔を纏っており、灰のようなにおいが周囲に漂っている。
それらは暴走しているのか、警備隊の呼びかけにも一切応えることなく、無差別に襲い掛かっていたようだ。
「ううっ……」
劣勢におかれた小隊長ラウル以下、小隊員達も持てる力を振り絞って矢や風魔法を放ち、精霊の力を借りて戦っていたが、かなり消耗して苦しい様子。
イレギュラーズ一行は彼らを救援すべく、その戦いの中へと身を投じていくのだった。
- <クロトの災禍>燃え上がる怒り完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年10月12日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
迷宮森林の奥で消息を絶ったという森林警備隊。
その捜索の為、数人の警備隊に連れられたイレギュラーズの一隊が西部メーデイアと呼ばれる区画へ足を向ける。
「あらあら……なかなか元気な子たちがいるわねぇ。全く、何度も何度も、飽きないものねぇ……」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は今回の事件について、呆れを隠さない。
「ふむ? 滅びの眷属達だけならともかく、ファルカウの眷属らしき存在か」
『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)が今回立ち向かうべく相手について話すと、皆それぞれ自らの考えを語り出す
「怠惰と憤怒が終わったと思ったらコレか。森林警備隊も心休まるヒマがないわね」
偽名を司書という黒衣にモノトーンのマントとロングブーツを着用した『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は、あるいはそれが敵の狙いなのかと推察する。
「大樹の憤怒……? 大樹の嘆きとまた違うのか?」
「終焉獣ノ勢力ハトモカク。大樹ノ憤怒ト言ノハ、ドウ言ッタ存在ナノデショウネ?」
そんな司書さんに続き、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)が呼びかけると、相槌を打つように『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)が疑問を投げかける。
それに答えられる者はイレギュラーズにいなかったが、練達生まれの『新たな可能性』レイテ・コロン(p3p011010)が深緑の事情は知らないと前置きして。
「それでも森林と一緒に生きていく幻想種の人達を樹々が襲うって事が、どれだけ異常事態かって位は解るよ」
その意見に同意しながらも、ヴァイスはとはいえと続ける。
「向こうからこちらに手出しし続けている以上、私たちも迎撃せざるを得ないし」
ヴァイスの言うように話が通じればいいのだが、言葉が分かる程度ではどうにもならない。
なんとも、物事とはままならないものだ。
「それも、深緑に現れた終焉獣のせいだろう……!」
大樹の憤怒という存在もそうだが、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)それ以上にそれらが現れる要因になったと思しき終焉獣を敵視する。
「終焉獣が、暴れたから……深緑の樹まで、怒りだしちゃった、の?」
このままでは、森が滅茶苦茶になると『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)は嘆く。
アクアが言うように、早くそれらを……大樹の憤怒に終焉獣を止めねばならない。
●
途中まで案内してくれた警備隊数名を残し、イレギュラーズ一行はメーデイアへと突入する。
幻想種ですら迷ってしまうというこのメーデイアの状況は漂う灰の香りのせいなのか、はたまた時折ちらつく紅い焔のせいなのか……。
茂る樹々の中を、イズマは透視によって見通す。
メンバーがあちらこちらの探索を続ける中で、矢や風が飛ぶ音が聞こえてくる。
それらはメーデイアの外で待つ警備隊らの所属するラウル小隊で間違いない。
対するは、複数の黒い巨躯を持つ終焉獣。
それと別に、燃え上がる複数の樹木が。
「色んなパターンの大樹の嘆きをみたから違いがわかんねぇ……」
この樹木こそ大樹の憤怒なのかとサイズは確信するも、なぜか首を振る。
ただ、そいつにレイテなどは驚いていて。
「燃えてる? 状態とか何が起きてるんだコレ??」
観測端末は幻想種の領域では火が忌まれるはずだと話す一方で、自ら炎を纏う樹々は燃える灰のような臭いも感じて。
「アノ樹々達ハ自ラ、或いハ何者カノ怒リノ炎デ、ソノ身ヲ燃ヤスシテイルノデショウカ?」
敵ながらも悼ましいと語るも、観測端末はすぐさま森林警備隊を援護すべく、治癒を為の言葉を紡ぐ。
「敵を退け、森林警備隊もこの森も守るぞ!」
保護結界を展開し終え、ドレイク『チャド』へと騎乗したイズマが叫ぶと、サイズが納得しないのか小さく嘆息して。
「まあ、どちらにせよイレギュラーズとして、アークサイドの敵は倒さなければならないからな、頑張るか」
「まずは、終焉獣の勢力を優先して排除しよう」
前に向かってアタッカーとなることを明言した一嘉。
大樹の憤怒が目を引くが、真っ黒な巨体の終焉獣、怠惰の胴体1体に、憤怒の筋肉2体は見過ごせぬ相手だ。
「終焉獣は、全部殺して、しまわないと……この世界は、壊させない……!」
続き、アクアがイレギュラーズとしてそれらに立ち向かう強い意志を示す。
「滅びの前では全て同じかしら、いいえ私はそうは思わない。……暴きましょう」
終焉獣と大樹の憤怒は同質の存在か、それとも……。
イーリンはいつものように、戦いに先立って告げる。
「神がそれを望まれる」
●
敵対勢力が暴れる中で、観測端末は急ぎ、森林警備隊を手当てする。
終焉獣による浸食も受けていたと思われる彼らだ。
観測端末もそれを察して彼らの恐怖を打ち払い、正常な状態へと戻していく。
「ラウルさん、皆さんも久しぶり。大丈夫か!?」
「イレギュラーズ……本当にすまない」
ドレイクで飛び込んできたイズマの呼びかけに、ラウル小隊長は申し訳なさそうに頭を下げる。
「……よくここまで耐えたな、おかげで間に合った! 後は俺達が何とかするから、皆さんは合流して安静にしてくれ」
この場から逃れた3名もメーデイアの外に待機して仲間の帰還を待っていることをイズマが伝えれば、ラウルの顔にようやく笑顔が浮かぶ。
この場にいる警備隊7名に統率を活かしてチャドに乗せる傍ら、イズマもまたライフアクセラレーションで癒しを与えていた。
「お待たせ、負傷者の搬送を優先して。敵は全て私達が受け持つわ、後は任せて」
後光を発し、天眼を働かせるイーリンが速やかにこの場から離脱するよう警備隊へと伝える。
そうして、軽く相手の挙動や、警戒ポイントを聞いた上で、イーリンは率先して前に出る。
森で暴れる敵対勢力は2勢力3種。
終焉獣、胴体……怠惰の胴体は瘴気、筋肉……憤怒の筋肉は闇のオーラ。
そして、大樹の憤怒は焔だけでなく、直接の攻撃に気を付けるようラウルは彼女へと告げる。
ともあれ、終焉獣……特に胴体を最優先で引き付けるべきと判断したイーリンは、紫苑の魔眼で敵を睨みつける。
「…………!」
声すら発さぬ胴体と筋肉はイーリンに注意を向け、ラウルの注意した瘴気を発してくる。
筋肉もまた闇のオーラを纏って拳を振りかざしてくる。
しばらく、イーリンも抑えつけることで、相手の滅びのアークを削ろうと企図していた。
イーリンがチームのメイン盾役となるのであれば、レイテがサブの盾役となる。
その引き付ける相手は大樹の憤怒だ。
「終焉獣を倒しきるまでは……」
できるなら、レイテが期待するように乱戦状態となればいいのだが、警備隊に向いていた攻撃がこちらへと来ており、現状は期待薄だ。
ただ、それならそれで、レイテは終焉獣を巻き込まぬよう離れた場所から大樹を誘う。
中衛に位置取る観測端末は戦況の把握に努める。
戦いが始まった直後ではあったが、盾役となって
まずは盾役となることで敵が群がっていたイーリンやレイテを支えるべく、天使の歌を響かせていた。
「さてディスペアーよ。絶望の大剣の力、希望を切り開く為に使わせて貰うぞ」
一嘉は手にする大剣に一言告げ、一気に終焉獣の群れへと切り込む。
恵まれた肉体もあって、難なく絶望の大剣を振り回す一嘉。
その彼をもってしても見上げんばかりの体躯を持つ相手に、乱撃を浴びせかけてどす黒い血を流させていた。
そこに、サイズはまだ距離を詰められずにいたのか、用途不明ユニット【魔砲】から魔力ビームを発して巨躯の終焉獣を撃ち抜いていく。
さらに終焉獣へと近づきつつ、サイズは胴体に狙いを定めて次なる一撃に備えていた。
「敵を倒していくわ」
宣言するヴァイスも攻撃役として、胴体へと立ち向かう。
チートコードを使ってから己を戦いに最適化した態勢をとるヴァイス。
手数はそれなりにあるとヴァイスは把握してはいる。
できるだけ手早く倒していきたいが……、無理は禁物だ。
周囲に紫色の帳を降ろすヴァイスは盾役となっている者を避け、終焉獣のみに不吉をもたらし、終わりに誘う。
(終焉獣の事だから何かをされる前に何とかする必要がある、かな?)
アクアも攻撃が途切れぬよう、仲間に合わせて終焉獣から討伐にかかり、まずは影の手で攻め立てる。
アクアの手に籠められた得体のしれない邪悪が棒立ちの胴体を狂わせようとする。
序盤は順調な出だしで、イレギュラーズは攻勢に出る。
ただ、終焉獣も大樹の憤怒も、これで済まないような不気味さを感じさせていた。
●
イズマのドレイク、チャドに森林警備隊7人が乗ってメーデイアから離れる。
ある程度まではイズマも同行していたが、彼はチャドを警備隊に託して待機する3人との合流を促し、彼は1人急いで戦地へと舞い戻る。
「俺達は勿論、動物や植物だって今を生き続けてる。それを無理やり食い荒らす者共を許してはおけない!」
世界を食らう終焉獣を強く敵視し、イズマはソリッド・シナジーで戦闘態勢を整え、敵陣を堕天の輝きで照らす。
一時的なものだろうが、終焉獣の体の一部が石となれば、それだけで動きを止めることができる。
ただ、終焉獣の攻撃は苛烈であり、広範囲に発する黒い瘴気がこちらの戦意を奪ってくる。
それだけでない。体にも様々な変調をもたらすのが厄介だ。
胴体はほぼ動かず、瘴気を発し続けてこちらを食らう気のようである。怠惰という名がこれほど合う敵もなかなかいないだろう。
その胴体を合わせ、イーリンは猛然と振るわれる憤怒の筋肉の拳を受け止める。
ただでさえ威力ある一撃だが、闇のオーラを纏うことで威力は倍増する。
イーリンは淡々とそれらを受けてはいたが、時にあやかし狐の語りで状態を整え、さらに福音を紡ぐことで自身に癒しをもたらす。
負担の大きなイーリンを支えるべく、観測端末は一時的に盾役を代行することも。
内より出る炎で終焉獣を引き付ける観測端末。
一時防御集中しながら回復役も続け、天使の歌を響かせて大樹を抑えるレイテもカバー。
皆の態勢が整えば、観測端末は再び回復役に専念する。
そうする間にも、攻撃役が怠惰の胴体を追い込む。
その巨体がぐらぐらと揺らぎ始めており、今にも倒れそうな状態であったが、さらなる瘴気を発してこちらの体力を奪い取ろうとしてくる。
合わせて、その瘴気は自身を強化する効果もあるらしい。
黒水晶ノ槍を伸ばすアクアが手堅くその強化を打ち消していた。
アクアはメンバー達の攻撃が続く間に態勢を整え直し、タイミングを見定めて神秘の力を込めた右腕で殴りつける。
相手が黒い瘴気ならば、こちらは漆黒の炎を纏わせた一撃。
胴体はついに倒れていき、地面に落ちることなく虚空に消えていく。
仲間達が順調に攻めるのを横目で見ていたレイテは依然、名乗りを上げて何かを呟く大樹を押さえつける。
レイテもイモータリティで自己回復もしていたが、観測端末の癒しも届いており、タンクとして戦線を支える。
レイテは茨の鎧を纏い、少しずつ大樹にも傷を与え、仲間達が残る憤怒の筋肉2体を討伐するのを待つ。
その筋肉はイーリンが引き付け続ける。
大樹までカバーするのを意識しつつ、筋肉を抑えるイーリンだが。
滅びのアークによる攻撃とあって、旅人の自分にどのような影響が出るかとつぶさに確認することに。
ただ、その前に攻撃役が筋肉2体を一気に攻め落としにかかっていて。
うまく仲間達がそれぞれの役割を果たす中で、一嘉の斬撃で黒い血を流す筋肉1体へとサイズが仕掛ける。
サイズは時折号令を上げてチームの戦線維持に努めていたが、好機と判断すれば、率先して黒い顎をけしかける。
サイズの発したそれが鋭い牙を筋肉へと突き立てていく。
強靭な肉体ではあるようだが、度重なるイレギュラーズの攻撃に耐えられなかったのか、顎に食われて筋肉は姿を消していく。
もう1体にも攻撃が集まるが、不意に抑えから外れた筋肉が猛然とヴァイスへと襲い掛かる。
盾役メンバーがそいつを抑えようとする中、ヴァイスは身を引こうとする。
再び拳を叩き込んできた筋肉をイーリンが押さえつける。
小さく安堵の息を漏らしたヴァイスだが、さらに儀礼短剣で屈強な体を刻む。
「さて、と。帰ってくれないかしら?」
筋肉の背後に魔空間を展開したヴァイスはそこに敵を呑み込ませて。
次の瞬間、何か砕ける音がその内部で響く。
筋肉はそこから抜け出せぬまま果ててしまった。
終焉獣を全て倒せば、後は荒ぶる大樹の憤怒の対処。
(一応、大樹達の反応は見たい所だな)
一嘉もそうだが、皆、大樹がなぜ攻撃的になっているのか気になっていた様子。
しかしながら、終焉獣を倒しても、燃え上がる大樹は止まらず枝や根を鋭く突き出し、あるいはこちらを絡めとろうとしてくる。
滅びの眷属がいたから、警備隊もお構いなしに纏めて排除に動いたのかとも一嘉は考えたのだが。
「この大樹達にそういったものは全く関係がないのか?」
小声で聞こえてくる大樹の声。
『ファルカウは怒っている……』
『我々が……守らねば』
それらが炎を纏わせ攻撃してくるのを、サイズは耐性もあってやり過ごそうとする。
(アークが何かしら悪影響与えてるらしいけど……)
やはり、サイズもそれに若干の懸念もありながらも、黒い顎を発していく。
「終焉獣のせいでこんなに怒ってるんだよ、ね?」
すぐに頭を冷やさせようと、アクアは少し離れた位置から霧氷魔を展開する。
「でも、本当に怒ってるだけ、なのかな……終焉獣の影響とか、受けてたりしない?」
「植物にとって致命的なはずの炎を纏い、灰のような臭いを発している……」
凍り付く大樹を見ながら疑問を口にするアクアへ、一嘉が呟きつつ考察しながらも、大剣で敵陣に乱撃を浴びせかけていく。
すかさず、自らに魔神を降ろしたイズマが膨大な魔力を放射して撃ち抜いた大樹1体を倒してしまう。
残りは再びイーリンが引き付ける。
「私達への対応は変わらない……」
警備隊の呼びかけにも答えぬ大樹達は変わらず怒りを訴えるのみ。
盾役から攻撃に転じたレイテが飛行し、立体的な攻めで敵を撃ち抜き、完全に沈黙させる。
疲弊するメンバーを観測端末が天使の声を響かせ、福音をもたらして癒す中、イズマの呼びかけによってチャドに乗って戻ってきたラウルら森林警備隊が水を用意して大樹へと浴びせかけてみる。
これで、大樹の憤怒の焔を鎮められればと思うが、残念ながら鎮まることもない。
「…………」
終焉獣はともかく、大樹に呼び掛ける言葉がアクアには見つからない。
仲間のサポートもあり、体力を減らすことなく立ち回り続けていたアクアは無言でその根を砲撃で叩き折り、1体を倒す。
「ごめんなさいね、眠って頂戴」
倒すしかないと判断したヴァイスは儀礼短剣で邪魔な枝根を切り裂き、再度展開した魔空間に大樹を突っ込ませてその体を破壊していく。
「すまないが、これもオレ達の仕事だ」
一言謝罪した一嘉は大きく振るった大剣で大樹の体を大きく切り裂く。
流れ出る樹液を止めることができず、大樹は瞬く間に力を失い、完全に動きを停止したのだった。
●
全ての敵を倒し、イレギュラーズは森の中で事後処理に当たる。
サイズは倒した大樹の憤怒の解析を進めていた。
深緑特化、非戦時に役立つよう立ち回るサイズは、ここで情報を得られなければ何になると躍起になっていた様子。
それらからできる限り多くの情報を得ようとしていたが、感じるのは内から湧き出す怒りばかり。
『ファルカウの怒りを知れ……』
『我らはファルカウを守らねばならぬ……』
「なるほど、ね」
やはり、サイズはそれらと大樹の嘆きとの差異をほとんど感じない。
ある意味で同等の存在なのではないかと推察していたようだ。
合流した森林警備隊とは、イズマや観測端末が中心となって手当てする。
こちらの事の顛末を伝えた後で、何が起きたのかをラウル達にも尋ねる。
「一体どうなっているのか……」
応えるラウルの視線の先にあるのは、終焉と呼ばれる地域だ。
「これは、今後、面倒な事態が起きるかも知れないな」
大樹の憤怒に終焉獣……。
一嘉はこれらが何かの前触れなのだと感じ取っていたようだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは終焉獣、大樹の憤怒と討伐したあなたへお送りします。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<クロトの災禍>のシナリオをお届けします。
ついに、終焉(ラスト・ラスト)の領域がお目見えとなりそうですが、まずはその周囲の国に及ぶ被害を食い止める必要がありそうです。
●概要
深緑の迷宮森林へと姿を見せる終焉獣の対処に当たります。
いつも通り、各地の浸食に当たる終焉獣に対し、新たに現れる大樹の憤怒。
憤る大樹の憤怒は無差別に攻撃してくるようです。
それらを殲滅、撃退することで森に静寂を取り戻していただきますよう願います。
●敵
大きく2勢力3種が存在。
警備隊が多少傷つけてくれていますが、いずれもまだまだ万全に近い状況のようです。
〇終焉獣×3体
滅びのアークそのもので作られた獣達。
姿は様々ですが、漆黒の体躯をしたものが多いようです。
・怠惰の胴体×1体
全長5~6m。頭と四肢がぼやけており、地面をホバリングするように移動します。見たところ、動きは鈍いようです。
黒い瘴気を発して相手の気力、エネルギーを奪い、異常をもたらし、さらに存在まで食らおうとしてきます。同時に、相手を浸食する効果もあるようです。
・憤怒の筋肉×2体
全長3m程度で人型です。
全身真っ黒な体躯ですが、発達した筋肉で戦場を立ち回り、強力な一撃を叩き込んできます。
終焉獣らしく、全身を闇のオーラで包んでから解き放つことで近場を侵食することもあるようです。
〇大樹の憤怒×4体
全長6~7m程度、動き出した樹木が赤い焔を纏っています。
根を使った広範囲の突き出し、絡ませてからの締め付け。枝を使った薙ぎ払い、槍のごとき突き出しなど使用します。
●NPC:森林警備隊×7人
異変を察して偵察に来ていた弓の名手ラウルを中心とした小隊です。
小隊員は弓、風魔法、風精霊を操ることができます。
領域に取り残された者達は何れも上記の敵との交戦によってかなり傷ついています。
なお、上記とは別の3人が救援へと戻った上で途中まで案内してくれており、問題の領域手前で待機して小隊長らが戻るのを待っています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いします。
Tweet