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シナリオ詳細

エルフレイデン砦の陥落

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●怪王種の襲来
 鉄帝北部に存在するエルフレイデン砦は長らく魔物との戦いに身を投じていた。
 皇帝敗北のあの混乱の中でさえ、である。
 そんな砦の指揮官ジグベルトはついに、敗北を悟り撤退を開始していた。
 副官が叫ぶ。
「これまで抑えきれていた魔物たちが、なぜこうも突然凶暴化を!」
 それに対し、ジグベルトの答えはひとつだった。
「怪王種(アロンゲノム)だ!」

 特別強大なクマの如きモンスター『ロックベア』。その突然変異とでもいうべき存在が現れ、警戒していた兵たちをなぎ払ったのは早朝のことであった。
 指揮官ジグベルトは即刻兵を集め対抗したが、レベルの低い兵をどれだけぶつけたところで圧倒的戦力差は埋まらない。敗北を悟ったジグベルトは早々に作戦を退却へと移したのであった。
「怪王種……か。終焉獣が出てくるほどの世の中になったんだし、この程度は起きて当然、だったかもしれないね」
 話を聞いたローレット・イレギュラーズのカルネは、エルフレイデン砦からやや離れた簡易拠点の中で腕を組んでいた。
 そして、耳馴染みのない者に向けて説明を始めるのだった。
「怪王種(アロンゲノム)――別名アークモンスター。滅びのアークによって発生するモンスターの異常進化体のことだよ。
 この個体が現れると、他のモンスターに対しても突然変異を誘発するようようになる。つまり、動物やモンスター版の魔種(反転現象)、ってところかな……。
 ジグベルトさんの部隊は、このロックベア変異体たちの奥により強力なモンスターの気配を確認してる。
 おそらくはそれが今回の怪王種になるだろうね」

 作戦会議の末、今回の怪王種には『デストルクトール』という個体識別名が与えられた。
 デストルクトールはロックベアから変異した怪王種。その能力はおそらくロックベアの延長上にあるものと思われるが、強さは桁違いとなるだろう。
「ロックベアというのは元々クマのようなモンスターで、硬い表皮装甲と怪力、そして鋭い爪を武器にしたモンスターだったんだ。
 冬眠から覚める季節になると場合によってはエサを求めて人里を襲うから、このエルフレイデン砦での防衛が行われていたんだね。
 この場合のエサは……人間も含まれている」
 重く沈んだ口調で言うカルネ。砦で倒されてしまった兵たちは、今頃変異したロックベアたちやデストルクトールによって食われてしまっていることだろう。
 せめて骨だけでも拾ってやらねば……という気持ちと同時に、砦が彼らデストルクトールによってなかば占領状態になっているという事実を思い起こさせる。

「まずは、砦周辺に展開しているであろうロックベア変異体を倒し、砦内部へと突入する。この場合砦を活用するようなことは、デストルクトールたちはしないはず。いくら怪王種といっても、知能がそこまで高くなったケースは見てないからね。
 だから、重要になるのは砦内部でのデストルクトールとの戦いだ」
 怪力や防御力、そして鋭い爪はもちろんのこと、怪王種となったデストルクトールは恐ろしい攻撃方法を備えているとみて間違いない。
 どのような攻撃が繰り出されるか未知数だが、硬い防御と強力な攻撃を備えて挑む必要はあるとみていいだろう。
「怪王種はとても厄介な敵だ。それに、この砦が落とされたってことは人里にも被害が及ぶようになるはず。それは何としても止めなくちゃならない。
 皆で、この砦を取り返そう!」

GMコメント

●シチュエーション
 モンスターによって陥落してしまったエルフレイデン砦を取り返すため、少数精鋭で怪王種デストルクトールの群れへと挑みます。

●フィールドデータ
 エルフレイデン砦が舞台となります。
 指揮官ジグベルトを始め多くの兵は負傷し戦いに参加できなくなっていますが、後詰めの兵として構えていてくれています。
 また、指揮官から最短の攻略ルートを教わっているため迷う心配も無いでしょう。

●エネミーデータ
・ロックベア変異体
 堅い装甲と鋭い爪を持ったクマ型のモンスターです。
 砦の兵たちにとっては強敵でしたが、今のローレット・イレギュラーズにとってはそう倒すことは難しい敵ではありません。
 現在は砦周辺に展開して倒した兵の死体などを回収しています。
 群れを作り多数存在していますが、ここは一気に蹴散らして砦を目指しましょう。

・デストルクトール
 今回群れを変異させた怪王種です。
 通常個体であるロックベアを元としているためそう極端な変化はおこしていませんが、強敵であることは間違いありません。
 地面を殴りつけての全体攻撃や建物を破壊するレベルの攻撃などが予想されています。

●味方NPC
・カルネ
 流石に百戦錬磨になりつつあるベテランのイレギュラーズです。
 情報にも精通しており今回の案内も行ってくれます。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • エルフレイデン砦の陥落完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
芍灼(p3p011289)
忍者人形

サポートNPC一覧(1人)

カルネ(p3n000010)
自由な冒険

リプレイ


 空を飛ぶ一羽の鴉が砦の上を旋回飛行している。
 しばらくの飛行を終えたところで、鴉はゆっくりと主の元へともどって身体を傾けた。
 ここはエルフレイデン砦。長らく魔物から町を守ってきた鉄帝国の砦である。
 今この場所を支配しているのは、その魔物ではあるのだが。

「ふむ……知能は動物並、といったところかな」
 戻ってきたファミリアーをバトラーに預け、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は車椅子の背もたれに身体をもたれさせた。
「どういうことなのでござるか? 動物並みだとどう違うのでござる?」
 質問を投げかける『忍者人形』芍灼(p3p011289)に、ピッと指を立ててみせるシャルロッテ。
「いいかい。まず場所は砦だ。『砦を奪われる』というのは、『砦の機能を利用される』ことに等しい。ただしこれは人間が相手の場合に限るし、砦の扱いを知っている、あるいは考えつく知恵のある者に限る。つまり?」
「動物に支配されたとて砦の利点は生かされない!」
「その通り。怪王種には知恵をもつパターンもあると聞いたことがあるけれど、今回はラッキーだったね」
「怪王種……そういえば、終焉獣や肉腫や狂王種なんてものもいるとききますが、たったの数年でぽんぽんと新種が出過ぎにござらんか!? カルネ殿!?」
 バッと振り向いてみると、カルネが肩をすくめて苦笑してみせた。
「逆だね。この数年で『おとぎばなし』でしかなかった魔種を現実に引きずり出して、かつ信じられてすら怪しかった『終焉獣』の存在までたどり着いた。前人未踏や人類初の出来事を立て続けにおこしているんだよ」
「それはすごいことなのでござるか?」
「だね。ただ怪王種に関しては観測されてからこっち出現することの少なかった種類だから……忘れてても仕方ない、かな」
 苦笑を続けるカルネ。
 怪王種はいわゆる『動物版の反転』であるという。このパターンは他の種族にないケースだ。
「それにしても、アロンゲノムが普通に出てくる状況になるなんてちょっと世も末だね」
 状況をよく理解できている『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はといえば、同じように肩をすくめて苦笑した。
 そう、なにせ終焉獣がラスト・ラストから飛び出してくるようなご時世である。それだけこの世界に滅びのアークが蔓延しつつある――ひいては滅びの時が迫りつつあるということなのだろうか。
「だからこそ、オイラ達ががんばらないとね!」
「うん、その通りだね!」
 その一方。『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は依頼の資料をぱらぱらと捲りながら息をついた。
「新皇帝に係る一連の騒動中も、魔物と戦い続けていた事には素直に感服いたします。
 それゆえに、魔物に攻め落とされてしまった事が残念でなりません」
 かの大事件の中でも戦い続けたと言うことは、大寒波や魔種が跋扈する中でも防衛を続けられたということだ。それだけの戦力があったというべきなのか、それだけの犠牲が払われたというべきなのか。
「獣の巣にするには砦ももったいないですし、人里近くに居座られるのも迷惑ですので、
早々に撃退しましょう」
 瑠璃の言葉にこくんと頷く『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
 兜によってくぐもった声で、『またわけのわからない怪物が増えましたね』と呟く。
「確か、内部の情報は指揮官であるジグベルトさんから聞いていたのでしたね」
 自分もその場にいたのだから間違いない。というより、砦はかなりシンプルな構造をしているので裏手から攻めるのはそう難しくないという話であった。
 もし相手が籠城作戦などとれたなら話は別だが、変異種のロックベアたちならば、あとは戦力だけの問題なのだと。
「なーんか最近、こういうトコに縁があるわね?」
 砦を遠目に眺めながら呟く『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)。
「お陰で大きい喧嘩が益々得意になっちゃいそうだわ。早いところ小物を蹴散らして、本命のところに行くとしましょうか」
 見て、とゼファーが指をさすと、砦の外側をうろうろと歩くロックベア変異種の姿がある。
 接近は気付かれるものと想定して、とにかく素早く攻め込んでいくのが良いだろう。
「今は巧遅よりも拙速と見たわ!」
「確かに、その通りね」
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)と『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が頷きをもってそれに答える。
「というより、クマを見てたら色々嫌なことを思い出してきたわ」
 野生の熊による人里への被害は毎年少なくないと聞くが、それが変異したクマ型モンスターの群れと怪王種となれば話はもっと大きくなる。最悪大虐殺だ。
 そうならないためにも――。
「しっかり連中を滅ぼしましょう」

●ロックベア変異体
 通常のロックベアはビギナー冒険者が若干苦労する程度のモンスターである。
 主に山に生息し、時折エサの少ない季節になると人里に降りてくるため討伐依頼が出ることがあるといわれ、堅い外皮と屈強な肉体ゆえに倒すには一定以上の火力がいるとも言われていた。
 が、その変異体は砦が落とされたことからも分かるとおり強力だ。並の人間たちでは太刀打ちできないだろう。
 並の人間たちなら、ば。

「場は整えるから、それぞれ好き放題に暴れたまえよ」
 シャルロッテはバトラーとメイドからなるレギオンを従えつつ、そのように仲間に声をかけた。
 クェーサードクトリン、タクト・オブ・グレイゴースト、加えて英雄奇譚ラグナロク、殲滅兵団、そしてクェーサーアナライズ。
 シャルロッテは基本的に支援に特化したイレギュラーズなのである。
 それでもやはり戦闘はするということで、戦闘人形部隊であるレギオンを引き連れ車椅子を走らせ始める。
 それを追い越して走り出したのは、支援を受けたゼファーだった。
「食用が旺盛なのは結構なこと。でも、残念。欲しがりが過ぎる悪い子は直ぐにお仕置きされちゃうんですから」
 ただでさえ人喰い熊など恐ろしいのに、ロックベア変異種に対して物怖じナシで突っ込んでいくゼファー。
 対するロックベアはゼファーをエサの一つとすべく鋭い爪で斬りかかった。
 顔面を狙う爪――をスライディングで回避するゼファー。
 そのまま槍を軸にしてカーブをかけると、素早くロックベアの背後へと回り込んだ。
 背中をがら空きにしたロックベアに槍による突き刺しを喰らわせる。岩のように堅い外皮を、しかしゼファーの槍は貫いた。
 痛みに声をあげるロックベア。
 周囲のロックベアがその様子に異常を察知し、ゼファーへと遅いかかる。
 が、その状況を上手に利用したのはオリーブだった。いや、利用という言い方は違うだろう。
 この場合は連携だ。何も言わずとも、イレギュラーズはその百戦錬磨のランダムマッチアップで連携の術をこころえているのだ。
「掃射撃を始めます」
 回りに聞こえるように言ってからクロスボウを取り出すオリーブ。
 オリーブはクロスボウでの射撃とは思えないほどの凄まじいリロード速度で次々にロックベアを射撃。
 ゼファーを取り囲もうと集まってきたロックベアはその射撃を喰らって次々によろめいた。
 倒しきるにはまた足りない……が、それならばまた撃てば良い話。
「撃ち続けます。攻撃を」
「任せて」
 イナリは自身に『フェイク・ザ・パンドラ』『狂イ梅、毒泉』の付与を行うと、『神幸~病~』の術を発動させた。
 つまりどういうことかと言えば、奇跡のような力を自らに降臨させ、『御神渡り』という異界の神事を再現したのである。
 攻撃のタイミングを予測して飛び退いたゼファーと入れ替わるようにして飛び込んだイナリ。ダンッ、と地面を踏みならしたと同時に周囲に木の葉が舞い散った。
 いや、舞い散ったように見えたのはイナリの起こした再現神事に対する空間の乱れと錯覚だったのだろうか。
 周囲のロックベアたちはイナリの攻撃をくらって激しい【退化】状態へと落とし込まれる。
「人間を喰ったなら、喰われる覚悟もあるわよね! 今夜はジビエ、熊鍋かしらね!」
 そうなればもはやこちらのもの。瑠璃は『忍法霞斬』を握って飛び出し、『ジャミル・タクティール』を発動させた。
 単分子ワイヤーが縦横無尽に走り、ロックベアだけをとらえてその腕や脚を切り裂いて行く。
 弱体化した彼らにトドメをさすなど造作も無いことである。
「どうやら、騒ぎを聞きつけたロックベアが砦から出てきたようですね。好都合では?」
 言われて見れば、確かに砦内部にいたであろうロックベアたちが外側へと出てくる様子が見える。
 砦の出口は撤退時を想定してあえて細く作られている。
 そこに集まるようにどすどすと足音をたて出てきたロックベアたちは、格好の的と言ってよかった。
 いつでも仲間を守れるように陣取るヴェルーリアと、前に出て範囲攻撃魔法の準備にかかるアクセル。
「防御はおねがいね。さあ、いくよ……!」
 アクセルがバッと『雲海鯨の歌』を振りかざす。それはオーケストラの前に立つ指揮者のそれによく似ていた。
 事実彼がその魔法杖を振れば、五線譜の光が流れオーケストラのような音楽と共に閃光が放たれる。
 閃光は音楽の爆発となってロックベアたちを包み込み、激しい痺れや乱れという隙に繋がる。
「今だよ!」
 そこで動き出したのはカルネと芍灼だった。
 芍灼は忍者刀を、カルネは銃を手にそれぞれ配置につくと、カルネの援護射撃が始まる。
 防御の弱ったロックベアの脚や腕に集中的に射撃をあたえ足止めを狙うカルネ。
 その一方で、芍灼は忍者刀でもってロックベアの首筋や脇腹といった急所になるような場所を狙って斬り付けていく。
 集団の内側に飛び込み敵だけを切り裂いて駆け抜けるその姿は、忍者人形の面目躍如といった所か。
「蹴散らしまする!」
 ギュンと独楽のように回転する芍灼の斬撃が、ロックベアたちを血祭りにあげていく。

●デストルクトール
 怪王種となったロックベア、その個体名は『デストルクトール』。
 誰が名乗ったわけでもなく、砦の指揮官ジグベルトがそう名前を付けたのである。
 詰まりは、ネームドモンスター。
 知能はロックベア程度からそう変わっていないとはいえ、デストルクトールの脅威は凄まじいものなのだ。

 砦へと進む。前衛を務めるのはゼファーだ。
「さてさて、外で待ち構えてても出てこないからどんな様子かと思ってきてみたら……」
 砦の中は死屍累々。その中心に、デストルクトールとおぼしき巨大なロックベアがひとり悠然と足っていた。
 己が絶対的強者となったことに対する優越か、あるいは余裕か。
 ゼファーの姿をみとめても遅いかかる様子はない。ただ、かかってこいとばかりに視線を向けるのみだ。
「だったら、応えてあげましょうか」
 ゼファーは思い切りデストルクトールへと突撃。
 対するデストルクトールは爪による強烈な斬撃を繰り出してくる。
 それを回避――しようとしてゼファーは咄嗟に防御へきりかえた。
 ガキンと槍の柄にぶつかるデストルクトールの爪。
 衝撃でゼファーまでもが飛ばされそうになるが、それはなんとかこらえる。
 じぃんと腕にしびれが走るのを感じ、この敵が『それ相応の』攻撃能力を有していると肌で感じるのだった。
「デストルクトールの攻撃は私以外じゃろくに受けられない。なんとか耐え凌ぐから、その間に攻撃をとにかく集中させて頂戴」
「了解しました」
 瑠璃は中距離に位置取りをすると、『ソニック・インベイジョン』のスキルを発動させた。
 ワイヤーで繋がった忍者刀が次々に放たれ、デストルクトールの急所とおぼしき場所へと刺さっていく。
 いや、刺さっていくというより、その硬い外皮を少しずつ削っていくといった方が正しいだろう。一発で刺し殺させてくれるほど柔い相手ではないということか。
「ですが、確実にヒビは入っている」
 デストルクトールの岩のごとき外皮に確かにはいったヒビを見て、瑠璃は仲間へ呼びかけた。
「一斉攻撃を」
「了解した。すこし、離れていてもらえるかな」
 瑠璃の攻撃が凄まじい衝撃となってはしり、デストルクトールを砦の壁に叩きつけたその瞬間、シャルロッテはバトラーやメイド、そしてレギオンたちに向けて一斉攻撃の指示を出した。
 まるでトミーガンを構えるシカゴマフィアの集団の如く一斉に銃を構えたレギオンたち。彼らの一斉攻撃は確かにデストルクトールの動きを大きく混乱させ、そして隙を作り出す。
 イナリはそのタイミングを逃さずに飛び込んでいった。
「こっちは至近距離からやらせてもらうわ!」
 イナリの取り出したのは稲荷式九式短機関銃-改。つまりは短機関銃なわけだが、それを零距離で押しつけると思い切り連射を叩き込んだ。
 穴の空いた外皮から内側へと流し込まれた銃弾が、その硬い外皮故に跳弾を起こして内部で破壊をくり返す。
 芍灼はそれを援護するように反対側から急所狙いの一撃を叩き込む。
 スニーク&ヘル――つまりは芍灼の忍者刀は破ったデストルクトールの外皮の内側、むき出しの弱点を見事に貫いたのである。
「今だ!」
 カルネの叫びに応じて、ヴェルーリアと共に一斉攻撃が行われる。
 レギオン、少し飛び退いたイナリ、そしてカルネ、ヴェルーリアによる扇状に囲んでの一斉射撃はデストルクトールを確かに追い詰めた……ように見えた。
「グオオ……!」
 それでも死なぬデストルクトール。咆哮をあげるとその場の大気を切り裂くように腕を振るった。直後に衝撃。凄まじい広範囲に向けて衝撃が放たれ、カルネたちは纏めて吹き飛ばされたのだった。
「こんな攻撃方法もあったなんて……!」
「未知の敵です。何をしてきてもおかしくない」
 オリーブがそれに応じつつ再び射撃体勢に入る。
「しかし、血が出るなら、殺せます」
 彼が行ったのはクロスボウによる狙撃。
 そう、ただの狙撃だ。その狙撃一発が、これまでデストルクトールに浴びせてきた数多のBSを固定させる。固定したそれらのBSは、つまりは爆弾のようなものだ。
「アクセルさんっ」
「うん!」
 アクセルは魔法杖を振り込み、うちに込められた呪殺の力を解放する。
 弾丸のように打ち込まれた呪殺弾はデストルクトールの内側で膨らみ、そして――文字通りに爆発した。
 ドパンと音をたて、デストルクトールは上半身を喪失したのだった。


「今回は偶々砦だった、ってだけですけれど。其れなりに賢い連中が現れないことを祈るほか無いわね」
 ゼファーの呟きに、シャルロッテが「そうだね」と頷きを返す。
「他の皆は?」
「負傷者の手当と、埋葬……かな」
 応えたのはカルネだった。
「一緒にどうかな。僕も手伝いに行こうと思うんだ」

 イナリと芍灼はとりもどした砦の医務室に入り、負傷した兵の治療に当たっていた。
「すまない。医療チームもデストルクトールの群れにやられてしまってな……」
 申し訳なさそうに治療を受ける指揮官ジグベルト。
「仕方ないわ。砦が落とされたんだもの」
「そうでござる。もし動けない方がいらっしゃいましたら、それがしが運ぶでござるよ」
 芍灼の申し出に、ジグベルトは『かたじけない』と頭を下げるのだった。

 アクセルやヴェルーリアたちは砦に残された遺体の回収に当たっていた。
 損壊の激しいものも多く、身元の確認に難儀したが……。
「この方の名前はボルドス。こちらは――」
 瑠璃が死体から情報を読み取ることで身元の確認を行ってくれていた。おかげで遺体をしっかりと回収し、そして埋葬することができた。
 借りてきた道具で埋葬をある程度まで終え、息をつくオリーブ。
「これだけの方が、亡くなられたのですね……」
 死者は戻らない。それがこの世界のルールだ。だが逆に言えば、今いる兵たちは生き残ったと言える。彼らはこれからもこの砦に残り、町を、人々を守り続けるのだろう。
 数々の墓標を、胸の奥にしまいながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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