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シナリオ詳細

<渦巻く因果>廃棄を願う人形

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゼロ・クール
 それは、人々を助けるべくある人形。
 それは、『心なし』という意味持つ人形。
 それは、人々のための犠牲になる人形。
 それは、人の形をした人ならざる道具。

 ――何故、ゼロ・クールたちが作られるようになったのか。

 それは、人々のため。
 それは、人々が虐殺されてしまったから。
 それは、人々の生活を豊かにし、人々の命を護るため。
 それは、虐殺されて数を減らした人々の心の穴を埋めるため。

 この世界は混沌世界よりも人が少ない。それは少しプーレルジールを過ごしてみれば解ることだ。店主……と思いきやゼロ・クールだった、なんて体験をした者もいることだろう。それほどまでに人間の数は少なく、そうして今なお減少の一斗を辿っている。
 その人間たちを護るため、人々の生活をサポートするため、『魔法使い』たちの手によって生み出されたのがゼロ・クールだとされている。
 ゼロ・クールたちは人間たちのために働く。多くは人間を護るための戦士人形として。
 ――では、戦えなくなったり、用途を終えて用済みになったり、魔法使いたちが『失敗作』とみなしたゼロ・クールたちはどうなるのだろうか。

 ――――
 ――

「ジュゼッペ様、私のことを廃棄してください」
「お断りだ」
「どうしてですか、ジュゼッペ様」
「この問答は飽きたよ。やめなさい、ウーヌス」
 これ以上は話すなと言うように、ウーヌスのマスター――アトリエの主『魔法使い』ジュゼッペ・フォンタナは作業を切り上げ、席を立った。その背は「ついてくるな」とも告げており、ジュゼッペとの付き合いが長いウーヌスはその場に佇んで自身の胸元のコアへとそっと指を伸ばした。
(何故ですか、ジュゼッペ様。何故私を廃棄してくださらないのですか)
 それは幾度も彼に投げかけていた言葉。
 ジジ、と記憶領域にノイズが走る。
 この身はもう、初めてのゼロ・クールの稼働に「動いた!」と喜んだジュゼッペの表情を思い出せないのに。記憶が、破損している。メンテナンスをしてもらっていて正常なのに、動きが鈍い。だからウーヌスは廃棄を願い出ているのに。
(ジュゼッペ様、私は――)
 ウーヌスはひとり、アトリエから出ていった。

●アトリエ・コンフィー
「ごきげんよう、ミーリアです。ミーリアは皆様のお役に立つ勉強中の身ですので至らぬ点は多くありますが、どうぞご容赦ください」
 人に寄り添うゼロ・クールを作る、『ジュゼッペのアトリエ』のジュゼッペ製。最新個体のミーリアは、アトリエ・コンフィーでジュゼッペのプログラミングに添った動きで綺麗に頭を下げた。
「ミーリア様、お困り事でしょうか?」
 首を傾げたのは、丁度アトリエ・コンフィーを訪っていたニル(p3p009185)だ。はいと顎を引いたミーリアは少し間を置いて、それからゆっくりと真っ直ぐに前方を見た。
「ミーリアと探しモノをしてほしいのです」
「生き物、ですか? それとも……」
「『ゼロ・クール』です」
 ミーリアが少し辿々しく説明するのは、ミーリアの先輩にあたるゼロ・クール、ウーヌスのことだ。ミーリアよりもずっとずっと前の個体で、誰かがマスターになる訳ではなくジュゼッペがマスターなのだそうだ。
 ウーヌスは家の中の――ジュゼッペの身の回りのことをするのが役目で、ミーリアが稼働した時から一度も外へ行っていない。
 それなのに、そのウーヌスが突然居なくなった。
 ジュゼッペは周囲のアトリエを周り、ウーヌスを探しに出て行ってしまった。彼も気が動転しているのだろう、アトリエ・コンフィーに依頼を出してはいない。
「……ミーリアは、ジュゼッペ様の命令もなく、此処へ来ました」
 故にミーリアには迷いがあり、言葉が辿々しい。
 主の命令にない行動をするなんて、間違っている。
 そう理解してはいるが、ジュゼッペの助けになりたかった。
「これは紛れもなくエラーです。けれどミーリアは、」
「はい。ウーヌス様を探しましょう」
 最後まで言わせず、ニルはぎゅうとミーリアの手を握った。
 皆で探せばきっと大丈夫ですよ、と笑って。

 ――ミーリアは廃棄になっても、ジュゼッペ様の笑顔を守りたいのです。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 いなくなってしまった『ウーヌス』を探しましょう。

●目的
 ウーヌスの保護

●失敗条件
 ウーヌスの機能停止 or ミーリアの機能停止

●シナリオについて
 前半はウーヌスの捜索。しっかりとした捜索を行った場合、後半でウーヌスが発見されるでしょう。
 捜索は二段階行われます。『ウーヌスの居所』を見つけられた場合、そこでやっと『ウーヌスの捜索』となります。皆さんは何故ウーヌスが居なくなったのかも知らないはずです。不測の事態が起きる可能性もあります。様々な可能性に備えてください。

 常に全員でまとまって行動をしない場合、ミーリアが誰の側にいるかを『同行者が』プレイングに記載ください。
 また上記の場合において、各自の連絡手段等が不確かである場合、『人形の墓場』へたどり着けない可能性があります。(他の人がそこへ行ったことを知る手段がないため)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●フィールド:プーレルジール『人形の墓場』
 ギャルリ・ド・プリエの外にある、通称『人形の墓場』と呼ばれている処分場です。コアが砕かれたゼロ・クールたちが山積みになっています。
 基本的にはコアが砕かれてゼロ・クールたちは機能を停止しているはず、なのですが――

●『寄生終焉獣』 ✕ 30体
 滅びのアークによって造り上げられたモンスター。寄生終焉獣とはスライムのような姿をしており、人の形をしている者に取り憑く習性があります。
 スライム状、もしくは人形たちに寄生した状態で現れます。スライム状の場合はゼロ・クールやイレギュラーズたちに寄生しようとします。(ですがそこまで強い個体ではないため、イレギュラーズに寄生しても体の主導権が奪えず『次の宿』を探しに出ていきます。)どちらであろうともPCたちには数は不明状態ですが、『出てこなくなるまで倒せばいい』です。数は有限なのですから。
 人間に寄生した場合は不殺で倒せますが、意識を失うことが出来ないゼロ・クールに寄生した場合は『コアの破壊』でしか倒せません。コアが破壊されると終焉獣もともに死亡します。

・廃棄された人形たち
 基本的にはコアを破壊されて廃棄されているはずなのですが、破壊が甘くまだ稼働できる個体もいる――いた、ようです。そのゼロ・クールたちが『寄生終焉獣』に寄生されて動き出します。
【動き出すことも、タイミングも、PCたちは知りません。】
 終焉獣に寄生されたゼロ・クールたちは通常時よりも強くなります。お手伝い型なら戦闘型並、戦闘型ならそれ以上、です。

●『ゼロ・クール』ウーヌス
 魔法使いと呼ばれている職人達の手で作られたしもべ人形です。
 ジュゼッペの一号機。型落ちも型落ち。やれることは少なく、ポンコツと呼んでいい人形です。
 ジュゼッペに作られてからずっと、彼の身の回りの世話をしています。ですが、コアは段々とくすんで煌めきを失い、ぼんやりとしている時間も多いです。廃棄を何度も願い出ていますが、何故かジュゼッペからの許可が降りません。
「何故でしょう。私にはわかりません」

 自ら廃棄を願い、廃棄場に行きました。
 探しに来た、連れ戻しに来た気配を察すると逃げます。
 無理やり連れ戻すことは保護したことになるのでしょうか。ジュゼッペの元へ戻したとしても、数日後にまた同じ行動をとるでしょう。

●『ゼロ・クール』ミーリア
 魔法使いと呼ばれている職人達の手で作られたしもべ人形です。
 ジュゼッペ製の最新個体。多くの場合戦士として利用されることが多いのですが、ジュゼッペは『人に寄り添うもの』を好みます。人々の生活を助けるお手伝い人形となるべく、調整中。魔法(プログラミング)された知識はあるものの、まだまだです。
 ウーヌスのことは頼りになる先輩だと感じています。
 ミーリアにはミーリアが自由にできるお金があるので、それを持ってアトリエ・コンフィーへと依頼に来ました。(後からちゃんジュゼッペが支払います。)同行しています。
 寄生された人形が目の前で破壊されても、ミーリアはそれが『正しい』と思います。そうプログラミングされているので。自分が寄生されてもウーヌスが寄生されても、破壊が正しいです。ですがウーヌスが寄生されて壊されたらミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアはミーリアは……警告。重大なエラーが発生しコアに負荷がかかりました。ただちにマスター・ジュゼッペの元へ連れて行ってください。白紙化(リセット)の必要があります。

●EXプレイング
 開放してあります。文字数が欲しい時に活用ください。
 此度、関係者の採用はいたしません。

 それでは、アトリエ・コンフィーのお手伝いさん、宜しくお願い致します。

  • <渦巻く因果>廃棄を願う人形完了
  • GM名壱花
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年09月29日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
武器商人(p3p001107)
闇之雲
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

リプレイ

●足取りを追って
「ミーリア殿、そんな悲しそうな顔をせんで下さい」
「……ミーリアは、悲しそうな顔をしていましたか?」
『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)の言葉に、エラーでしょうかとミーリアは頬に触れた。指先への感触はいつもと変わらず、ミーリアは首を傾げる。
「エラーじゃない。当たり前のことだ」
 案ずることも、悲しむことも。ミーリアは間違った行いをしていないと『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)が告げた。
「でもミーリアは命令を……」
「あなたのご主人様ったら慌てて飛び出していっちゃったんでしょう?」
 それはそれだけジュゼッペがゼロ・クールたちを大切にしている証左でもある。善い造り手に作られて彼等は幸せなことだろうと思うと同時に、大切にされているからこそミーリアは助けを求めに来られたのではないかと『この手を貴女に』タイム(p3p007854)は思った。主人の命令もなく最善を選択できたのはとても良いことであって、間違いなんかではない。
(そりゃあ、ただの物ではないだろうよ)
 職人である『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)には、ジュゼッペに感ずるものがあった。自分が作った物。それは物ではあるが、我が子に等しい。ただの物だ商品だと宣う職人も居るが、錬にはジュゼッペの行動から彼が同類だと感ぜられたのだ。
「ふふ、大正解。その気持ち、実はとっても大事なことなの」
「そう……なのでしょうか。ジュゼッペ様に怒られませんか?」
「ジュゼッペ様なら、きっとだいじょうぶですよ。とってもとってもやさしいひと、とニルは思っています」
 ジュゼッペがミーリアたちによくしてくれていることを『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)は知っている。そうでなければ初めてのお使いの付き添いや、クッキー作りを一緒にしてやって欲しいだなんて言わないはずだ。
 ミーリアの手をぎゅうと握ったままニルが告げると、ミーリアが瞬いた。それがホッとしたような表情に見え、ニルは後押しをするように笑みを見せた。大丈夫、きっと大丈夫ですよ。
「怒られたとしてもおじさんたちが一緒に怒られてやるさ」
 なあとヤツェクが仲間たちへと視線を向ければ、居合わせたイレギュラーズたちはみな顎を引いた。
「さっさと探して、皆でまたクッキー食べようじゃないか。大丈夫、おじさんたちは様々な事件を解決してきたのだから」
「はい。ミーリアも、皆様とまた、クッキーを食べたいです」
(元気が出てきたようだな)
 ミーリアの表情はきっとずっと変わってはいない。けれども『金庫破り』サンディ・カルタ(p3p000438)はそう思い、しっかりと見つけてやらねばと心を新たにした。
 さて。ウーヌスを探すに当たって必要なのは、ウーヌスの情報だろう。ウーヌスが何故出ていったかまでの情報が知れたら良いとサンディは思ったが、ミーリアは首を振った。知っていればきっと、ミーリアはアトリエ・コンフィーに向かわずに自力で探そうとしていただろう。
「ミーリア君、ウーヌス君の見た目を教えてくれる?」
「はい。ウーヌスは、ミーリアと同じくらいです。ジュゼッペ様は特別な指定がない限りはそのように作られます」
『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)に問われ、ミーリアがスラスラと答える。大きさはミーリアと同じくらいで、装いは給仕者のような――ほぼミーリアと変わらない――半ズボンのメイドのような装いである。
「ユグム様も同じ大きさでしたね」
 ユグムは少年っぽく調整されてはいたが、ミーリアの創造主であるジュゼッペは基本的に、依頼主からの指定が無い限り女性や男性と取れる見た目を作らない。そのため、見た目の年齢もどちらとも取れるミーリアのサイズとなるのだろう。
「盗まれたというか、誘拐されたなんて事はないのかな? 希少なのは間違いないから金目当てなんて事もあるよね?」
 そう問うた『黒撃』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)に、ミーリアはふるりと首を振った。
「ミーリアたちゼロ・クールは珍しい物ではありません」
 しもべ人形たちはこの世界にはたくさん居る。減ってしまった人々のために働き、そして消費されていく『物』だ。
「じゃあ誘拐の線はないのか」
 けれどイグナートの目から見てもミーリアという人形は人の善性しか知ら無さそうだ。ヤマシイことをしそうな人物が居たら目をつけておこうと密かに思い、「オレたちが絶対見つけてやるから、心配しすぎないでよ」とミーリアの頭をワシワシと撫でてやった。『そういうこと』はイグナートたちが気をつければいいことだ。
「なんだかよく分からないけど、頼られたなら応えなきゃね!」
 快活に笑った『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)がパンと拳を合わせ、一行はアトリエ・コンフィーを後にしたのだった。

 ギャルリ・ド・プリエは地下へと繋がっていくダンジョンに出来た美しい回廊だ。故に内部は入り組んでおり、イレギュラーズたちは三班に別れて行動することにした。
「足で稼ぐしかなさそうだね」
 地下であるギャルリ・ド・プリエでは広域俯瞰で広い視野を持つことは出来ない。『闇之雲』武器商人(p3p001107)は肩を竦め、式神を飛ばそうとしていた錬も顎を引いた。
「捜査の基本は現場から、だな。ジュゼッペのアトリエへ行ってみよう」
「そうね。ウーヌスの匂いを追わせるためにも、何かウーヌスの持ち物があればいいけど」
「それがダメなら周辺の聞き込みね!」
 喚び出した犬のファミリアーに匂いを憶えさせたいタイムへ、京が明るく笑う。ダメな時は片っ端からとすぐに思える、彼女の前向きさは眩しい。
 そうして武器商人、錬、タイム、京の四名はジュゼッペのアトリエと向かったのだが――
「ダメね、鍵が掛かっているわ」
「まあ、そりゃそうか」
「案外しっかりとしている子だねぇ」
 ジュゼッペのアトリエにはしっかりと施錠がされていた。ジュゼッペが飛び出してしまった以上留守番をしていなくてはいけないミーリアだったが、自身も外へと出るためにミーリアはちゃんと戸締まりをしていったようだ。
「ジュゼッペは職人だもんな」
 そこにはきっと図案に図面や制作中の物であったり、他者に見られたり盗まれたくない物が溢れているはずだ。当人の了承を得ずに家探しして良い場所ではないことに、錬は遅れて気がついた。
「じゃ、数撃ちゃ当たる戦法でいきましょうか!」
 京が笑って、各々見かけた人々へと声を掛けていくこととなった。武器商人と錬の式神のほんの僅かに高い位置からの視点は、ウーヌス以外の人を探す点で少し役に立ったようだ。
(これは結構時間が掛かりそう、ね。他の皆はどうかな)
 タイムの手元のアレクシアのファミリアーはピィと鳴いて知らせていないため、アレクシアへ預けたファミリアーへと意識を向けてみてもまだ情報はなかった。

 ニルとタイムへとファミリアーを一羽ずつ預けたアレクシアの両肩には、ニルとタイムのファミリアーが良い子に止まっている。何か情報を掴んだらファミリアーをピィと鳴かせ、相手側のファミリアーへと五感を向けて情報を得るためである。ニルとタイム間では行えないが、アレクシアが情報を得られれば伝える事が可能だ。
「ウーヌスの動機が知れればまだ良いんだろうけどな」
 まだ他班に動きがないかをアレクシアへ尋ねてから、サンディは顎へと軽く握った拳を当てた。
「植物たちも……情報が断片的すぎて……」
 そもそもの話、植物には人が定義したものがわからない。感情が分かる程度の疎通よりも精度の高い伝心で『何か通りかかった?』と尋ねて『居たよ』と返ってきても、それが人なのかそれ以外の生き物なのか人形なのかを彼等が理解はできないのだ。
「人目を忍んで動くなら、かえって道端の植物なんかのテリトリーには踏み込みやすいはずなんだけど……」
 アレクシアは道端の植物へと尋ねてみたが――『いたよー』くらいである。
「やはり足で探す他ありませんの。……そこな方、少しええですか?」
 ジュゼッペが『魔法使い』であること、そして彼の元にゼロ・クールたちが居ることを周囲に住まう人々が知らないはずがない。
「ウーヌス? ああ、ジュゼッペさんが大事にしている子だ。……お嬢さんは草むらの中で何を? あの子たちは通らないだろう。何せジュゼッペさんのところの子だからね、『お行儀が良い』」
 うちでもジュゼッペ製ゼロ・クールが手伝いをしているよと告げた犬の散歩中の男性が笑ってから何かあったのかと尋ねてくるのに、支佐手が手短に何処かに行ってしまったため探している旨を告げた。
「今は回廊内ではあまり見かけないけど、昔はよくジュゼッペさんと買い出しとかもしていたんだよ。年数も経っているからジュゼッペさんも気が気じゃないだろう」
 男性はウーヌスの姿を見てはいないが、ウーヌスがよく買い出しに出ていた店等を教え、そして知り合いにも声を掛けておくよと離れていった。ジュゼッペはそれなりに慕われているらしい。
「……こっそり人目を忍んで出ていったのかと思っていたよ」
 ウーヌスが目を盗む相手は、ジュゼッペだけでいい。事情を知らない他の人たちの前でこそこそしている方が怪しまれるから、ウーヌスは普通に道を歩いていったようだ。
「……やっぱりさっきの植物たちの情報って猫かな」
「その可能性が高いな」
 回廊は地下であるため飛空探査艇等を持ち込めなかったサンディが頷いて、この周辺で聞き込んでみようと支佐手とアレクシアへ告げた。
 ウーヌスが人目を忍んでいないのなら、必ず目撃者がいるはずだ。

「ウーヌス様とジュゼッペ様はなかよしですか?」
「……? 関係は良好だと思います。ミーリアたちはジュゼッペ様に悪意を持ちません」
「それじゃあ、えっと……」
 ニルが問えば、ミーリアは素直に答える。その姿を見て、イグナートはきょうだいのようだと微笑ましげに思った。
 ウーヌスの普段の仕事や、ミーリアがウーヌスが外へ出る所を見たことがないことは既に告げているため、ミーリアとニルの会話はジュゼッペ関連が多いようだ。
「最近はおふたりに何かありましたか?」
「いいえ。ミーリアの認識している範囲では何もありません。おふたりはとても仲が良いのです」
 時折様子が違う気がするけれど、ふたりは『何でも無い』と言うからそうなのだろうと疑うことを知らない人形――ミーリアはそう信じている。
「この辺りの治安は悪くないみたいだね」
「ニルたちは以前、こちらへクッキーの材料を買いにきたのです」
 その時に知り合いも出来たからと、ヤツェクが尋ねに行ってみようと提案したのだ。
「あれ。ここはゼロ・クールが店番をしていなかったか?」
 会話したことのある顔を見かけたら気安く声を掛けて回っていたヤツェクが、とある焼き菓子の店で足を止めた。
「おや、以前も贔屓にして貰ったことがあったのかな。うちのゼロ・クールは年季が行っててね、先日駄目になっちまったんだよ」
 店主が言うには、金勘定を間違えることがどんどんと増えていき、愛着もあるからと何度も手入れをして繋いでいたのだが――ある日ついに、コアにパキンとヒビが入って動かなくなってしまったらしい。
「……ウーヌスも、少し、そうです」
「そう、とは?」
 周囲に目を光らせることはやめずにイグナートが問えば、ミーリアは胸の上に指を添え「ウーヌスも動きが鈍くて」と答えた。ジュゼッペが手足のパーツを変えているのに、動きが鈍い。きっとウーヌスとジュゼッペにその答えが解っていて――けれどもミーリアにはまだよく解らないことだ。
「……その、『駄目』になってしまったゼロ・クールはどうなるんだ?」
「それは……」
 店主が少し言いづらそうにしているのは、ミーリアとニルが居るからだろう。
「教えてください。ニルは知りたいです」
「ミーリアも、知りたいです」
 真っ直ぐな瞳が告げてくる。店主は気まずげに首をかき、こう答えた。
「『人形の墓場』で処分するんだ」

●ひとりになりたい
 ――そこは、閑散としたところだった。
 山のように摘まれたゼロ・クール『だったもの』たちは静かで、異様で、初めてギャルリ・ド・プリエの外へと出たウーヌスを圧巻させた。
(このひとつに私はなるのですね)
 魔法使いたちに与えられた命が消えた、物言わぬゼロ・クールたち。
 自らの役目を全うし、そうして『墓場』へと連れてこられたゼロ・クールたち。
(今、どうして)
 奥へ奥へと進んでそこへ埋もれてしまおうと思っていたのに、ウーヌスの足が一度止まった。
(ジュゼッペ様……)
 ジュゼッペのことをマスターと想う思考回路は正常だ。それ故に『これはいけないこと』だと理解している。けれどももう、ウーヌスには仕方のないことなのだ。
(私の『後継とすべくミーリアを作った』のに、何故……)
 ジュゼッペがそう口にしたわけではない。けれどジュゼッペはウーヌスの仕事をミーリアに覚えさせようとしていて、ウーヌス自身もそれが効率的でいいと思っている。後はウーヌスが廃棄されればいいだけなのに、何故かジュゼッペはウーヌスを廃棄してはくれなかった。何度も提案しているのに、効率的な行動を好むはずのジュゼッペは首を縦には振ってはくれないのだ。
(ジュゼッペ様、私は……)
 いけないことだと深いところで警鐘が鳴っている。体はあまり思うように動かない。
 けれど、それでも。ウーヌスは体を軋ませながら奥へと向かい、そうしてゼロ・クールたちの山の影へと腰を降ろした。立てた膝に額をつけて目を閉じる。流れるのは静かな時間だけで、ウーヌスはただ意識が薄れて消えていく時を望んだ。
「……?」
 どれだけの時間をそうして過ごしただろうか。微かな音が聞こえた気がして、ウーヌスは顔を上げた。
 辺りを見てみる。
 けれど、何もない。
 誰かが探しに来た訳でもないようだ。
 ウーヌスは額をまた膝へ当てようとし――そうしてまた、微かな音を聞いた。
 今度はより近くで、よりはっきりと――。

●こころなし
 ギャルリ・ド・プリエの外に『人形の墓場』と呼ばれる処分場があるらしい。
 その情報はニルからアレクシアへ、アレクシアからタイムへと伝えられた。そうしてその情報からイレギュラーズたちはギャルリ・ド・プリエから出ていったゼロ・クールを見かけなかったかと尋ねて廻り、ウーヌスの目撃情報を得ることが叶った。
「すごいな……」
 最初に到着したのはサンディたちだった。積み上げられている人形たちを見て、思わず声が溢れた。
(ウーヌスはどうしてここに来たんだ?)
 ウーヌスの目的は知り得ていない。けれどもまるで死にに来たみたいだと考えかけ、かぶりを振った。
「ちょっと……気味が悪いところだね」
 アレクシアのファミリアーたちはまだタイムとニルに預けたままだ。自身への強化をこまめに掛けていては捜索への気が散るが、それでも見知らぬ場所――そして気味の悪い場所であれば慎重になるに越したことはない。
「あっ、待って。ふたりとも動かないで。何か……いるよ」
「敵ですか?」
「そうみたい。いっぱい居て、囲んでる感じ」
 抜け目なく支佐手が周囲を窺い、アレクシアもサンディも周囲への警戒を濃くする。
 ――だが、あるのは積み上げられたゼロ・クールたちだけで、それらしき姿もない。
「まさか……」
「そのまさかかも」
 視線を合わせる。――この山の中にいるのでは。
 その時、ピィと鳥の鳴き声がした。
「待たせたねぇ」
「ウーヌスは見つかった!?」
 武器商人たちが人形の墓場へとやってきた。
「まだだよ。でも周囲に敵対反応があって」
「やっかいだね! こんなところに潜む陰気な某かが居るってわけね!」
 アレクシアはすぐにファミリアーを飛ばそうとしたが、それはタイムが止める。やることを多くすれば、それだけ気が散漫になる。アレクシアは敵対反応を察知しているわけだからそちらに集中した方がいい。代わりに錬が自由に飛ばせるようになった式神を飛ばし、武器商人が高所からの広い視野を持ち、京も視野で周囲を見ながらも仲間たちを守れるように警戒する。
「何か動いたね」
 武器商人が指をさすのはすぐ傍らの人形の山。
「向こうにも何かいるな」
 錬は少し離れた場所へと指をさす。
「小さい音が固まって、大きく……」
 京の声に、一同はハッとした。
 ――いけない!
 周囲のゼロ・クールたちの山が崩れ、イレギュラーズたちへと襲いかかってくる。
「――居た!」
 けれどもその向こうで、誰かが慌てて駆けていく。その姿へタイムが指を指すと、「ここはわしが」と支佐手が崩れ落ちてくる人形たちを避けて奥へと駆けていく。
「アレクシアも行ってくれ!」
 あの人影がウーヌスなら、ウーヌスは人が来たと解っても危険が訪れるまで隠れていたことになる。説得が必要であろうことを察し、サンディがアレクシアの背中を押した。
「此処はちょっと危険みたいだからさ」
 崩れてきたゼロ・クールたちの山から逃れたサンディたちの前で、カタカタと体を揺らしてゼロ・クールたちが動き出す。
「どうしてゼロ・クールたちが」
「でもどうやら戦うしかなさそうだね」
 息を飲むタイムと、不敵に笑う武器商人。
「ここはアタシたちに任せてちょうだい!」
 京が拳を打ち鳴らし、その横をアレクシアは駆けていった。
 こんな危ないところに、ウーヌスをひとりにさせることなんてできない!

「ウーヌス様はどうしてここに……?」
 人形たちの山を見上げたニルから自然と溢れた言葉に、何となく解るらしいヤツェクはかつてゼロ・クールとして動いていた人形たちの山へと目を向けた。
(寂しいところだ。『死にに来た』んだろうな……)
「ここに……ウーヌスが?」
「ミーリア、オレからはなれないようにね!」
「はい、イグナート様。ミーリアは、」
 ウーヌスを見かけても駆け寄らないと道中約束したことを復唱しようとしたミーリアの声は、何かが崩れる大きな音で途切れた。
「のんびり離している暇はなさそうだな」
「ミーリア様、ニルの前へ出ないようにしてください!」
 ガラガラガラと崩れるような音は、ガシャンガシャンと何かを砕くような音へと変わっている。仲間たちが戦闘するような何かが起きたのだろうと、イグナートが真っ先に駆け、ヤツェクもニルもその後へと続いた。

「おんし! ウーヌス殿で違いありませんかの!」
 落ち着いて話したかった支佐手だったが、事態が事態だ。慌てた様子で駆けていくゼロ・クール――ミーリアから得た情報と一致しているためウーヌスで間違いないだろう――を追いかけながら声を掛けた。この様子では、この場に入ってからの会話は聞かれているだろう。
 背後から「ゼロ・クールたちが動き出した」と声が聞こえ、ウーヌスが振り返る。
「っと」
 その拍子に体勢を崩したウーヌスが転びそうになるのを、支佐手は間一髪で支えた。
 次の瞬間、何かが支佐手へ飛来する。
「ウーヌス君、支佐手君! 無事!?」
 それを滑り込んだアレクシアがかばう。効果時間が短いため切れる寸前だったが、機動力を上げておいて助かった。
「わ。なんだろうこれ、粘液……? あっ、もしかして……!」
 ――スライム状の終焉獣。それに遭遇したことがあるアレクシアはすぐに大きな声を発して仲間たちへ知らせる。それは人や物に憑くもので、イレギュラーズであればまだいいが、ゼロ・クールに取り憑いた場合どうしようもならないことを。
「厄介な相手ね! でもアタシが相手よ!」
「終焉獣って直接破壊して来るものばかりと思っていたが、寄生なんて変わり種もいるとはな」
 ガシャンと京がゼロ・クールだった人形を破壊し、急いで逃れようとじわりと滲んだスライムへと錬の式符が飛んだ。
「支佐手君、向こう側にも居るよ」
「アレクシア殿、ウーヌス殿をお任せします」
「うん、任せて! ウーヌス君、守るから動かないでね!」
 ウーヌスが走ってしまったから、支佐手とアレクシアは孤立している。仲間たちは襲いかかってくる終焉獣たちを払いながらも近寄ってきてくれているようだが、その間も支佐手やアレクシアに終焉獣が迫っている。
「わ、私のせい、で」
 ウーヌスは震えた。ミーリアよりも感情があるような様子に、アレクシアは大丈夫だよと声を重ねる。
「私たちはね、強いんだ。それはきっと、ジュゼッペさんも一緒」
「ジュゼッペ様も……?」
「君を大切にしてくれているんでしょ? ミーリア君に聞いたよ。私達は何かを守るためになら、どれだけだって強くなれるんだ」
 ジュゼッペは沢山考えて、ウーヌスとともに長く暮らせるようにとしてくれている。それなのに、ウーヌスは――。
「おんしは何故、廃棄を望んどられるんです?」
 襲いかかってきた廃棄ゼロ・クールを剣で切り捨てた支佐手が、ここに来たということはそういうことでしょうと告げた。
「……ジュゼッペ様が私を廃棄してくださらないから……」
 何故廃棄してくれないのかわからないと、か細い声が震えた。ウーヌスには出来ることが段々と少なってきていて、さっきだって昔のウーヌスなら普通に立ち止まれたのに転んで支佐手に支えられた。パーツも全て新しくしてもらっているのに動けなくて、その度にジュゼッペが悲しそうな顔をするのに。
「ジュゼッペ殿の事を詳しくは知りませんが……わしには何となく分かります」
「……私にも解るよ。迷惑を掛けたくなくて、枷になってて……でも離れられない気持ちも、手を伸ばしてくれる人の気持ちも」
「何故、ですか?」
「家族だから、ではないでしょうか」
「家族……」
「おんしはジュゼッペ殿の初めての子供です。可愛くないわけが無いでしょう」

「――ウーヌス!!」

 ウーヌスが視界に入った途端、ミーリアが叫んだ。
 ずっとずっと大人しかったミーリアが叫んだことに、ニルはとても驚いた。
「ウーヌス、何をしているのですか! ジュゼッペ様が悲しんでいます! ウーヌスのせいです!」
 ミーリアはずっと、考えていたのだろう。
 たくさんのどうしてと何故とわからないを抱えて、ウーヌスの顔を見たらなんて言ってやろうかと考えて――彼がゼロ・クールじゃなかったらきっと、大粒の涙を零していただろう。
「ほれ、おんしのもうひとりの家族のお迎えです」
 ウーヌスと叫ぶミーリアは、言いつけを守ってニルよりも前にはいかない。けれども声は、伸ばした手は、ウーヌスにしっかりと『帰ってきて』を告げている。
「ミーリアは、ウーヌスに側にいてほしいです。もっともっとたくさんのことを教えてほしいです! だからジュゼッペ様の命令もなく探しに出ました。間違っていますか? この行動はエラーですか?」
「いや、それでいい!」
 様々な物を投げながら、サンディが爽やかに笑った。
 本来『サンディ・カルタ』は死ぬつもりの相手を止めなんてしない。けれどミーリアが『いてほしい』と望んでいる。ならば怪盗として、消える命を盗んでやらねばなるまい!
「ねえウーヌス、ミーリアってすっごくいい子だね!」
 自分が怒られてもいいからって、『お手伝いさん』たちを呼んできたんだよ。
 できるだけ終焉獣たちを引き寄せながらイグナートが笑えば、ウーヌスから驚いた気配をアレクシアは感じ取った。
(気の毒ではあるね。道具としての役割を全う出来ないのは辛かろう)
 道具としてウーヌスが役に立てないことは、この少ない時間を見ただけでもわかることだ。ミーリアをどの方向からでも守れるように3m以内に収まり続けている武器商人は終焉獣を引き付けながらそう思う。
(だぁれ? 『心なし』なんて名付けた人は)
 仲間へ回復の光を降り注ぎながら、タイムはミーリアとウーヌスを見ていた。ふたりにはこんなにも感情があるじゃない。ふたりはきっと否定するだろうけれど、タイムには心がないようには思えない。
 ジュゼッペがウーヌスを思っていて、ウーヌスもジュゼッペを思っていて、ミーリアだってふたりを思っている。心あってのことだろうに。
「わ、私は……」
「アンタ、自分で自分の事を自由にしていい立場じゃないでしょ?」
 京の言葉に、ウーヌスが大きく震えた。その姿を見て何人かが京を諫める。言葉が強すぎて、そして額面通りに受け取るゼロ・クールたちへの説得には不向きだ。
 けれど京は姿勢で全てを示すだろう。
 戦うこと。守ること。どうしてイレギュラーズたちが戦っているのか、どうしてウーヌスは守られているのか。誰もウーヌスが喪われることを臨んでは居ないことを。
「きりがないな!」
「全部倒してしまえばいいだけでしょ!」
 錬の声に応じ、京が笑った。

「ウーヌス様!」
 ウーヌスに駆け寄りたかったのはミーリアだけではない。戦いに集中しようとぐっと我慢していたニルは、アレクシアが「敵性存在はもういないみたい」と告げた途端にミーリアの手を引いて駆け出した。
 ニルの言いたいことは、ミーリアが言った。同じことを思っていたことが嬉しくて、少し誇らしい。だから、ちゃんとミーリアを家族の元へ届けてあげなくてはならない。
「ウーヌス!」
「ミーリア、私は……ごめん、なさい」
 様々なことに対しての謝罪は、イレギュラーズにもミーリアにも伝わったことだろう。
「ですが、私はもう、本当に……役にはたてなくて」
「それの何がいけないんだ?」
「えっ」
 心底不思議そうなイグナートの言葉に、ウーヌスが驚いた。
「ジュゼッペ殿にとってのおんしの価値は、役に立つ立たんではないと、そう思うのです」
「でも、私の存在意義は」
「新しい存在意義を探せばイイと思うよ? 別に最初から最後まで同じ存在意義でやって行かなきゃならないルールも無いよね?」
「ですが」
 けれど、ゼロ・クールとはそういう物なのだ。人の役にたたねばとウーヌスが言葉をつまらせる。
「キミのマスターは『人に寄り添うもの』を作り出すジュゼッペの旦那だ」
 なれば『役に立つ』ということは、行動で示すものだけではないのではないだろうか。武器商人の言葉に、タイムも大きく頷いた。
「ジュゼッペさんもゼロ・クール……ううん、ウーヌス、あなたに寄り添いたいんじゃないかな。ちょっと不器用で言葉足らずな所があるみたいだけどね」
「キミが己の作り手を尊ぶのであれば、そのコンセプトに則って最期まで傍に居ておやり」
「今日はひとまず帰らない?」
「ジュゼッペは仕事を放り出してアンタを探しているようだぞ」
 ヤツェクがそう言って、ぽかんと口の開いたウーヌスの口へとジュゼッペの好きなチョコチップクッキーを放り込む。情報の礼にと購入したものだ。
「むぐ……もぐ。……あの、ジュゼッペ様が?」
「そう、あのジュゼッペが、だ。
 ……アンタたちはもっと話し合った方がいい。ダチのおれからのアドバイスだ」
「お話し合い、ミーリアも同席します。ミーリアを仲間はずれにしないでください」
「ミーリア……」
 ミーリアが伸ばした手を見てウーヌスは手を伸ばし――躊躇うように途中で止めた。まだ、迷っているのだろう。本当にいいのだろうか、と。きっとずっと、ウーヌスは悩んでしまう。それは変わらない。けれど。
「ウーヌス様、おうちに帰りましょう」
 ニルがウーヌスの手を取って、ミーリアの手をぎゅっと握らせる。
 かぞくの元へ、帰りましょう。

成否

成功

MVP

アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
蒼穹の魔女

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした、アトリエ・コンフィーのお手伝いさんたち。

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