PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<渦巻く因果>廃棄場の戦い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 混沌世界より新たに渡航可能になった異世界プーレルジール。イレギュラーズは、そこではアトリエ・コンフィーに勤めるお手伝いさんとして日々訪れる様々な依頼をこなしつつ、どのような世界なのか調査を続けていた。
 プリエの回廊と呼ばれるその場所は、そのアトリエ・コンフィーがある場所であり、多くのゼロ・クールと呼ばれるしもべ人形をつくる魔法使いたちの拠点となっている。
「よーし、そっち持ってくれー」
「オッケー。いくぞー」
 プリエの回廊の一角で、二人の若い魔法使いがなにやら作業をしていました。二人はゼロ・クールを挟むように立ってそれぞれで頭と足を掴み、ブランコのようにゆらゆらと揺らすと「せーの」と声を合わせて手を放す。
 すると、当然だがゼロ・クールは放物線を描きながら飛んでいき、その先にあった大穴に落ちていく。ぴくりとも動かず、ぐしゃりと音を立てて頭から落ちたようだがそれもそのはず。
 このゼロ・クールは長い間稼働しており先日遂に経年劣化によって修復不能なまでに壊れてしまったのだ。
 ここはゼロ・クールの廃棄場。同じように壊れて使い物にならなくなったゼロ・クールが山のように打ち捨てられている。
「これで最後だな」
「ん? なんか変な気配が……?」
 二人の魔法使いはゼロ・クール製作とは別に、材料費や生活費を稼ぐためにこうしてゼロ・クール廃棄の仕事を定期的に請け負っていたのだが、その日の仕事を終えたその時、片方の魔法使いがなにやら違和感を覚えた。
 それは瞬く間に背筋の凍るような恐ろしい気配へと変わり、もう一人の方もその気配に気づいたようだ。二人で気配の出どころを探っていると、大穴の底からがちゃがちゃと何かが動く音が聞こえてきた。最初は聞き間違いかと思うほどに小さかったそれは、徐々に大きくなりすぐに何かが動いていると確信した二人は、恐る恐るといった様子で縁から穴の中を覗いてみた。
「あ、あれは!?」
「や、やべぇよ! 早くここから逃げなきゃ!」
 機能停止し廃棄されたゼロ・クール。本来、二度と動くことがないはずのそれらが再び動き出し、穴の底から這い上がろうとしていたのだ。
 二人の魔法使いは尋常ならざるその光景に恐怖し、一目散に逃げだすとアトリエ・コンフィーへと駆けこむのだった。


 なにやらいつもにも増して慌ただしい気配が漂うアトリエ・コンフィーの中を歩き、受付を行っているゼロ・クールのギーコへと声を掛ける。
「いらっしゃいませ。依頼の受注ですね、少々お待ちください」
 依頼を受けに来たことを告げつつ、何かあったのかと尋ねてみればギーコは幾つかの依頼情報を提示しながら説明してくれた。
「本日、各地で同時多発的に様々な事件が起きているようです。四天王の配下を名乗る者による襲撃や、ゼロ・クールの暴走など……。被害規模が大きいものもあるようで、皆さん殺気立っておられるようですね」
 と言いながら、ギーコは依頼の一つを指し示す。どうやらこの依頼を受けて欲しいという事らしい。
 内容は、ゼロ・クールの廃棄場で暴走状態にある廃棄ゼロ・クールの破壊。
 今はまだ廃棄場を封鎖し施設内に押し留めているため被害はほとんど出ていないものの、封鎖も長くは持たずやがて溢れ出てくるだろうとのことだった。
 廃棄場はプリエの回廊近くにあり、廃棄ゼロ・クールが溢れれば間違いなく被害が出ることが予想される。
 事は急を要すると理解するとその依頼を受けることを告げ、同じ依頼を受けたイレギュラーズと共に件の廃棄場へと向かうのだった。

GMコメント

●ご挨拶
当シナリオのマスターを務めます、東雲東です。
よろしくお願い致します。

●目標
 1.ゼロ・クールキメラの討伐
 2.廃棄ゼロ・クールの漏出阻止

●ロケーションなど
 プリエの回廊近くにある壊れたゼロ・クールの廃棄場が今回の戦場となります。
 廃棄場、といってもダンジョン内に出来ていた大穴とその周辺の開けた一帯を柵で囲っただけのもので、その大穴の中に壊れて動かなくなったゼロ・クールを捨てています。
 異変を早期に発見でき現在は封鎖状態となっているため内部に民間人はいませんが、動き出した廃棄ゼロ・クールが次々と大穴から這い出しています。
 なお、大穴に落ちないように注意する必要はありますが、それ以外で戦闘の障害になるものはありません。

●エネミー
・廃棄ゼロ・クール×不明
 壊れて捨てられたゼロ・クールでしたが、寄生型の終焉獣に寄生されて動き出しました。
 戦闘用や作業用の人型だけでなく、愛玩用の動物型など様々なタイプのゼロ・クールが大量にいます。
 元々壊れているため、戦闘力はそれほどではないようですが、数が多くこれらが一斉に廃棄場の外へ出てしまうと大きな被害が予測されるため、廃棄場内に押し留める必要があります。
 なお、コアを破壊すれば寄生している終焉獣も死亡し、活動を停止させることが出来ます。
 既に廃棄されているゼロ・クールであるため、遠慮する必要はありません。

・ゼロ・クールキメラ
 廃棄ゼロ・クールの一部が集まり、巨大な一個体となった存在です。
 壊れたパーツを互いに補い合うように接続し、無数の手足や頭をもつ怪物と言っていい姿をしています。
 上記の廃棄ゼロ・クールに寄生する終焉獣はあくまでも末端であり、ゼロ・クールキメラのコアに宿る本体を撃破しなければ無尽蔵に湧き出てきます。
 逆に言えば、この個体さえ倒してしまえば全ての廃棄ゼロ・クールは沈黙することでしょう。
 ゼロ・クールキメラの中心にある、終焉獣本体が寄生した廃棄ゼロ・クールがキメラの核となっており、これを破壊することで討伐が出来ます。
 能力傾向としては、物理攻撃力、EXAが高い半面、防技や反応のが低い近接ファイタータイプのようですが、無数の手足を器用に使ったアクロバティックな動きをしてくる可能性があります。
 また、一部攻撃では【乱れ系列】、【出血系列】、【足止系列】といったBSを付与する可能性があるようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <渦巻く因果>廃棄場の戦い完了
  • GM名東雲東
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
Lily Aileen Lane(p3p002187)
100点満点
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
芍灼(p3p011289)
忍者人形

リプレイ


 依頼を受けたイレギュラーズが現場へと駆け付けると、廃棄場と書かれたプレートの奥に建てられた柵の内側から異様な音が響いていた。
 錆びた金属同士が擦れるような不快な音は、終焉獣に寄生されて動き出したゼロ・クールたちが蠢いているということなのだろう。
「話には聞いていましたが、やはりかなりの数がいるようですね」
「外に出さないように気を付けつつ、手早く中核を倒さないとだな」
 眷属とした二匹の鳥を上空に飛ばし、その視界を借りて廃棄場の内部を確認した『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)に続き、魔法によって上空から見下ろす視野を得ていた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が瞼を開きながら答える。
「結構広がってるみたいだし、俺たちも散らばった方がよさそうか」
「倒すべき敵の位置は分かっているでござる。そちらは任せてくだされ!」
 イズマと同じように上空から見下ろしていた『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)と『忍者人形』芍灼(p3p011289)も状況を理解するとそれぞれに考えを話していく。
「よし。じゃあ、出入口付近は俺が、遠くはバクルドが動きながら、大穴の近くはグリーフってな感じで行くか」
「俺は構わんぞ」
「私もです」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が偵察の情報を整理した上で配置を決めていけば、バクルドとグリーフも異存はないと頷く。
「攻撃は私たちで臨機応変にいくとしようか」
「任せてほしいのです」
「廃棄場の外に出る前に何としても倒しきりましょう」
 『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が視線を向ければ、『ささやかな祈り』Lily Aileen Lane(p3p002187)もやる気を見せている。
 仲間たちの気持ちを代弁するかのように『導きの双閃』ルーキス・ファウン(p3p008870)が締めくくると、イレギュラーズは固く閉ざされた扉を開き廃棄場の中へと足を踏み入れた。


 扉が開いた音にゼロ・クールたちの首が一斉に動きイレギュラーズたちへ視線を向ける。不気味な光景ではあるが、イレギュラーズが怯むことはない。
 先陣を切るバクルドは、柵沿いに廃棄場の外周部を駆けながら腕を伸ばすと、機械義手の一部が展開していく。そこに装填された無数の鉄球は電気によって磁石となっており、磁力の反発を利用し散弾のように放つことが出来るのだ。
「今度こそ悪用されないようにきっちり片付けんとな」
 義手の機構を作動させると、飛び出した鉄球が広がり廃棄場内に散らばるゼロ・クールたちに襲い掛かる。鉄球はゼロ・クールの外装を貫き、体内奥深くへ食い込むだけではない。
 付与された磁力によって金属パーツに干渉してその動きを鈍らせるのだ。
「行け! こちらは受け持つ!」
 続く汰磨羈がその言葉と共に放ったのは絶対零度の魔力砲だ。迸る膨大な魔力による一撃は、多くのゼロ・クールを纏めて飲み込み氷像へと姿を変えて砕け散っていく。
 運よく耐えきることが出来た個体も少数ながらいたようだが、重力の軛より解き放たれ吹き飛ばされていく。
 それらが景気よく二度三度と繰り返されることで、イレギュラーズの前は大きく開くことになれば、終焉獣の中核たるキメラへと向かうことも容易となるだろう。
「行くぞ!」
「分かりました!」
「あちらはそれがしたちで抑えまする!」
 空間が開いたとはいえそれは一時の事。すぐに次のゼロ・クールが群がって塞がれてしまうだろう。そうなる前に、イズマを先頭にルーキスと芍灼が続き、大穴から今にも這い出そうとしているキメラへと向かっていく。
「ぶはははッ! お前さんたちの相手はこの俺だ、外には絶対に行かせねぇ!」
 三人の背中を見送りつつゴリョウがどっしりと構えると、地面に大盾を打ち付けゼロ・クールたちに睨みを利かせる。大きな声と鋭い眼光、そして重々しい所作と全身せ威圧感を発するゴリョウには、ゼロ・クールたちも脅威を感じたのかもしれない。
 近くのゼロ・クールが一斉に視線を向けると、ぎぎぎと嫌な音をたてながらゴリョウへと襲い掛かった。
「効くかァッ!」
 群がるゼロ・クールに押し潰されたかに見えたゴリョウだが、その堅牢な守りを突破することは廃棄されたゼロ・クール程度に出来るはずもない。
 逆に集まったゼロ・クールは恰好の餌食となる。咆哮と共に黒い衝撃が広がり、纏めて吹き飛ばされていく。
 吹き飛ばされたゼロ・クールはまだ動ける個体も多いようではあるが、その体を蝕むように錆が広がっていき、コアに刻まれた理性回路が狂わされたのか動きも足取りも覚束なくなっている。
 そうして動きの鈍ったところに、魔力の奔流が襲い掛かり纏めて薙ぎ払っていった。
「わぁー、キリがないですねぇ」
「緊張感がねぇなオイ」
 砲撃はゴリョウが応援に呼んでいたヨウエンによるものである。
 ヨウエン本人的には大変だと感じているのだろうが、のんびりとした口調からはそれが全く感じられゴリョウは思わず苦笑する。
 とはいえ、これで正規の出入口付近に群がっていたゼロ・クールは大部分が機能停止に追い込まれたことだろう。
「安らかな眠りについていた彼らをこのように無理やり目覚めさせるとは……!」
 終焉獣の行いに対して静かに怒りを燃やすグリーフは、キメラへ向かったイズマたちと共に前進すると廃棄場中央にある大穴の付近に立っていた。
 その胸元で妖しく煌めく赤い宝石の魔性によるものか、それとも亡者の如き生への執着か。敵陣の只中にいるグリーフへゼロ・クールたちが向かっていく。
 だが、その手足がグリーフに届くことはない。グリーフを中心に地面へと広がる深き闇より伸びる、幾つもの漆黒の腕が呪縛となってその前進を阻むのだ。
「これ以上は出させないのです」
 足止めを行っているグリーフの頭上を一つの影が飛び越えていく。
 背中の翼を広げたLilyは、大穴の直上までくると二つの棺の蓋を開ける。その中に納められていたのは遺体ではなくガトリング。
 二つのガトリングの銃口を下へと向けたまま引き金を引き、銃弾の雨を降らせて壁面を這い上がろうとしているゼロ・クールたちを纏めて蹂躙していく。
「元が壊れかけだから押し戻すことそのものは苦労しねぇが如何せん量が多いな」
 廃棄場内各地でイレギュラーズたちがゼロ・クールの進出を防ぐために戦っている。
 バクルドは外周を移動しながら外へ向かおうとするゼロ・クールを鉄球で撃ち抜いていくが、半分ほど進んだ辺りでその数の多さにぼやきたくなってしまうのも無理はないだろう。
 ぼやきつつも戦場の趨勢はしっかりと把握している。ゼロ・クールの一部が柵を壊して外へ出ようとしていることを察知すると、すかさず機械腕の出力を引き上げた。
 唸りを上げ雷光を放つ機構によって生み出された磁力がバクルドの足元で爆発的に広がると、その衝撃に押し出されたバクルド自身は目にも止まらぬ速さでゼロ・クールの一団の下へと到達し、勢いそのままに殴り飛ばす。
 ボウリングのピンのように派手に殴り飛ばされたゼロ・クールは、もう二度と動き出すことはないだろう。
 残ったゼロ・クールも凍てつく輝きを放ちながら閃く剣に切り刻まれ、ライフルの切り詰められた銃身から放たれる弾丸に貫かれていく。
「このまま押し込んでいくぞ!」
 ゴリョウが吹き飛ばしたゼロ・クールの一体に狙いを定めると右手を伸ばす。
 その先には白銀に煌めく水の手が浮かんでおり、汰磨羈の握り潰す動作に連動しゼロ・クールを握り潰す。
 掴まれたゼロ・クールは逃げようと暴れ出すがもう遅い。外装から徐々に霊力へと変換されていくのだ。左右の手でそうしてゼロ・クールを分解し、己の中へと取り込んでいけば再び砲撃に十分なだけの霊力が溜まる。
 そうして吸収と砲撃を繰り返しながらゼロ・クールの数を減らしていくのだ。
「せめて安らかに……」
 こうしてゼロ・クールが襲い掛かってくるのは彼らの意思ではない。
 寄生型の終焉獣が核の代わりとなって無理やり動かしているにすぎないのだ。だからこそ、グリーフは眠っていたところを利用されたゼロ・クールたちに同情を禁じ得ない。
 終焉獣への怒りとゼロ・クールたちへの憐憫。複数の感情が入り交じる複雑な表情を浮かべながらも、もう二度とこのようなことに利用されないようにと、その想いを力へと変え解き放つことでゼロ・クールたちの身体を貫きくと、その後には火焔が花吹雪となって舞い散り彼らへの葬花となるのだった。


 ゼロ・クールに宿る終焉獣はあくまでも末端。かりに倒したとしても、本体が滅びない限りいくらでも湧いてくる。その連鎖を止めるべく、ルーキスは空を駆けていた。
「俺が相手になりますよ!」
 感情の昂りに呼応して響く鼓動。それは戦場へと広がり自らへと注意を引きつける。それは、終焉獣の中核たるキメラも例外ではなかった。
 百足のように幾つも映えている手足を動かしてその巨体を方向転換させると、近くにいた別のゼロ・クールをおもむろに鷲掴みにして投げつけてきた。
「はぁあああっ!」
 幸いにも投げ飛ばされたゼロ・クールにはそこまで勢いはなく、回避しても廃棄場の外まで飛んでいくことはないだろう。
 重心を操作して落下しながらそれを避けていくと、ルーキスはキメラを間合いに捉え体を縦に回転させながら二刀を振り抜く。
 鬼の如き膂力から放たれるその振り下ろしは、キメラを形づくるゼロ・クールたちの残骸を纏めて粉砕するほどであり、砕けた音がまるで悲鳴のように響き渡る。
 痛烈な一撃に中の終焉獣が怒ったのか、反撃に無数の腕を固めて作られた拳が振り下ろされた。
「そうはさせない」
 その拳を止めたのはイズマだった。
 地面を叩き鳴らした音に魔力を乗せ、集まりつつあったゼロ・クールをまとめて吹き飛ばすことで無用な横槍を封じたイズマは、狙いをキメラのみに絞って術式を編み上げていたのだ。
 引き抜かれた細剣の切っ先より放たれた極低温の魔力砲は、キメラの拳が振るわれるよりも速くそれを消滅させたのだった。
「中には届きそうにないでござるな。まずは外を削るところから始めましょうぞ」
 物理的な衝撃となるほどの発声でイズマと同じようにゼロ・クールを吹き飛ばした芍灼は、そう分析するとキメラ目掛けて駆ける。
 そのまま懐まで潜り込むと冷徹に煌めく剣を抜き、乱舞させることでキメラの身体を構成するゼロ・クールの身体を突き次と斬り裂き、砕いていくのだ。
「核の場所は胴体の奥深くです!」
「どうやらそうみたいだな、集中して狙っていくぞ!」
「了解でござる!」
 無数のゼロ・クールを集め無理やり繋ぎ合わせているためか、キメラの動きは全体的に鈍い。だが、瞬発力はそれなりにあるようで、ぐっと力を溜めるようなしぐさを見せると、百足のような手足を使って飛蝗のように飛び跳ねルーキスへと襲い掛かってきた。
 その衝撃に吹き飛ばされつつも、受け身を取って素早く戦線に復帰すると再び接近。
 瑠璃雛菊と白百合。銘と同じ花の意匠が施された二振りの刀を、自らの肉体さえ傷つけるほどの力で鋭く二度振るうと、キメラの身体を蹴ってそのまま再び宙へと飛び上がっていく。
 そこに追撃を仕掛けるイズマは不退転の決意によって力を振り絞り、極冷の砲撃術式を間断なく編み上げて容赦なく撃ち抜いていけば、一撃ごとにキメラの体積が明らかに減っていった。
 さらに、跳んでいったキメラを追って駆ける芍灼も合流し、再びその足元で鋭い乱撃を浴びせ着実にキメラの力を削いでいく。



 バケモノじみた姿と動きを見せるキメラだが、廃棄されたものを寄せ集めただけであり歴戦のイレギュラーズにしてみれば脅威とはなり得ない。
 激しい戦いが続くも、趨勢がイレギュラーズ側に傾き始めると決着の時はそう間を置かずにやってきた。
「そこまでにして貰おうか?」
「これ以上の狼藉は禁止だ。疾く、逝くがいい!」
 廃棄場に散らばるゼロ・クールたちの処理があらかた終わると、ゴリョウが鋭い眼光と共に強烈な殺気を放つと、それを察知したのか一瞬だけキメラの動きが止まり、ゴリョウの方へと向き直ろうとした。
 その隙を見逃さず汰磨羈の放った白き閃光がキメラの無数に生えた手足を消し飛ばすと、イレギュラーズは一斉に攻めかかる。
「往生際の悪いヤツだな」
 手足を失ったキメラは体の再構築を行い、球状になってそれを耐え凌ぐつもりのようだ。しかし、その程度で止められるほどイレギュラーズは甘くない。
 磁力によって飛ばされた無数の鉄球と、その中心を打ち抜く一発の銃弾。これにより球体の表面に大きな亀裂が走る。
「墓荒らしなんて無粋な真似は二度とさせるものか!」
「っ! あれが核でござるな!」
 疾駆するイズマが思いの丈を叫びながら細剣を振るうと、その衝撃によって更に亀裂が広がり球の一部が粉砕される。そして、他とは明らかに違う滅びの気配を漂わせた禍々しいゼロ・クールが遂に表出したのだ。
 こうなれば狙うべきものは分かり切っている。イズマに続いてキメラに迫っていた芍灼が大きく跳躍すると、両手で握りしめた剣をその個体へ深々と突き立てる。
 悲鳴を上げるかのように激しく振るえるキメラだが、もはや手遅れだろう。
「お休みなさいでしt……です」
 芍灼がキメラを蹴って後方へと飛び退くのを確認してから、上空にいたLilyはガトリングの銃口から魔力を解き放つ。
 Lilyが持つ全ての魔力を注ぎ込んだ全身全霊の二つの奔流が一つに合わさり、極大の閃光となってキメラの中心を打ち抜いたのだ。
 爆裂が轟き巻き起こった粉塵が晴れた後には、その余波によって散乱した壊れたゼロ・クールの残骸が散らばるのみだった。


 キメラの討伐に成功し依頼を達成したイレギュラーズたちだったが、どうにもそのまま買える気にはなれなかった。求められて生み出され、主に尽くして役目を全うしたゼロ・クールたちの最期がこれでいいのか。
 そんな考えを抱く者が多かったのだ。イレギュラーズは誰からともなく戦場に散らばるゼロ・クールの残骸を集めると、飛行出来る者がそれらを穴の底へと持っていく。
 最後にゴリョウが鎮魂を願う石碑を立てれば、それは廃棄などという無機質なものではなく、れっきとした埋葬と呼べるものになる。

貴方達の眠る場所を。
眠り行く貴方達を。
その色を、声を。
私は、刻みます。

 大穴の前で膝をつき指を組み合わせて瞑目したグリーフがそんな祈りを捧げていると、「ありがとう」と小さくだが確かに聞こえた。
 それは終焉獣から解き放ってくれたことに対してか、それとも丁寧に埋葬してくれたことに対してか。或いはその両方か。間違いないのは、これでゼロ・クールたちの心が救われたという事だろう。



「これで依頼は達成だ。戦って腹が減っただろ、食え食え!」
 アトリエ・コンフィーへと戻ってきたイレギュラーズはゼロ・クールの扱いに関して思うところがあるようで、依頼達成を素直に喜べず複雑な表情を見せる者が多くいたのだが、そんな微妙な空気を払拭しようとあえてゴリョウが明るく振る舞い、自慢の手料理を並べていく。
 そんなゴリョウの気遣いにイレギュラーズたちはそれぞれの想いを抱えつつも、ひとまずは一件落着と表面上は笑顔を浮かべる。
 そんな中で手早く食事を済ませるとゴリョウにご馳走様と告げてからその場を離れた人物がいた。
「すまない、ちょっといいでござるか?」
 芍灼はプリエの回廊に住まう人々にどうしても聞いておきたかったことがあったのだ。
 今回訪れた廃棄場。ああいったものが普遍的に存在するのか?
 秘宝種ということもあってか、ゼロ・クールに親近感を覚えている芍灼は、ゼロ・クールたちの扱いが雑であるのではないかと感じていた。
 プーレルジールの人々はこのことに関してどのように思っているのだろうか。問いかけてみると、その答えは様々だった。
 所詮は道具にすぎず、役目を終えたら廃棄すると迷わず断言する者もいれば、家族の一員として丁寧に埋葬してあげるのだという者いる。
 個人の価値観は様々だが、廃棄場そのものはなんら珍しものではなく前者の答えに近い考えのものが一定数存在することは確かだ。
 こうした価値観の違いは、イレギュラーズがプーレルジールとは異なる世界から来たことにも起因するのだろう。
 プーレルジールは混沌とは異なる世界なのだ。芍灼に限らず、この一件を経てイレギュラーズはそれを強く認識するのだった。

成否

成功

MVP

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途

状態異常

なし

あとがき

大変長らくお待たせいたしました。
色々と思うところはあるかもしれませんが、依頼は無事に達成し一件落着です。
お疲れさまでした。

PAGETOPPAGEBOTTOM