PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<英雄譚の始まり>ルカとレクラの農業体験

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その少女、別人
「成長が目に見えてきたわね」
 青い髪の少女は、そう呟く。少女の前にあるのはゼロ・クールと呼ばれるものだ。
 魔法使いと呼ばれている職人達の手で作られたしもべ人形であり、用途としては主に戦闘用。
 少女の目の前にあるのも、その戦闘用の1つだった。なんとなく秘宝種のそれにも似ているようにも見えるが、もしかするとその素にあったものであるのかもしれない。
 そう、此処はプリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)と呼ばれる美しい商店街であり、少女はそこの職人である「魔法使い」なのだ。
 しかし、少女は少しばかり不満そうではあった。何故か? その理由は簡単で、ゼロ・クールの機能にあったのだ。
 もう少し能力を上げられるはずなのに、どうにも何かが足りない気がするのだ。
 それでも、現時点で出来るだけのことはしている。
「レクラ。貴方は足りないのは何処だと思う?」
「それを判断するための材料が不足しています。」
「そうかもね。足りないものだらけ。だから、試行錯誤するしかない」
「今回も、依頼を出すのですか?」
「ふふ、そうだね。でもね、今回は少し違うアプローチをしてみようと思う」
 少女はそう言って笑う。その姿は……何処かの誰かに似ているようで。しかし、全くの別人である。

●ルカとサンゴ
 R.O.Oには電脳廃棄都市ORphan(Other R.O.O phantom)と呼ばれる空間が存在して居る。それはネクストで語られる伝説都市である。
 ROO内に発生した大規模なバグによって生じた存在の集合体であり、バグデータ達の拠点となっている。その地へはネクスト各地より至ることが出来るのだ。
 そのORphan内部より『境界<ロストシティ>』と呼ばれる異世界への渡航が可能となっていることが確認された。
 混沌世界をR.O.Oが取り込んだ際に同時に『解明されていない土地(果ての迷宮)』を取り込んだことによってデータ欠損、不足データが発生し正常な実装が出来ずに廃棄されたものであるようだ。
『境界』という特異的な性質であるが故に、現実世界にもリンクしていたその空間において『ライブノベル』に綴られた世界を救う事に至ったイレギュラーズはその際に、一人の『パラディーゾ』より物語の欠片を譲り受けた。
 それこそがコレまで培われた『境界への親和性』――『境界深度』を駆使することで現実世界より渡航可能となった異世界。
 密接に混沌とリンクし、混沌の有り得たかも知れない世界として分離されたその地は、気付いた頃には混沌に飲み込まれて仕舞うであろう。
 境界図書館の館長を務めるクレカの故郷であり、混沌世界からすれば随分と遠い昔の出来事であり、本来ならば終ってしまった物語の別の側面でもある。
 魔王を倒し、『レガド・イルシオン』の建国の祖となった男『アイオン』とその仲間達が『勇者』と呼ばれることのなかった『IFの物語』。
 そして、そんな世界のプリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)の1つの店……「青の珊瑚礁」で、1人の魔法使いの少女が集まった面々の前に立っていた。
「会うのは3回目だけど。なんだか受け入れたような顔になってきた。これはこれで不思議な気分」
 その少女はもう死んだはずの少女……「覇竜侵食」事件で出会った少女、サンゴによく似ていた。
 しかし、あの狂気は感じない……よく似ているだけの別人であるのは確かだろう。
「私はサンゴ。この『青い珊瑚礁』の職人。今日、貴方たちに頼みたい仕事っていうのは他でもない」
「農作業だ」
 『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)はサンゴの言葉を引き継ぎ、そう説明する。
 農作業。そう聞くとなんだか不思議な気分になる者もいるだろう。
 しかし、これはルカの提案なのだ。
「レクラの成長を促すには、色んな方向からのアプローチも必要だろ。だから今回は農作業ってわけだ。あれはあれで身体の使い方も学べるしな」
 そして、そういうのに丁度良い場所があるという。
 此処から少し離れた平原にある枝豆畑。酒のみのおつまみにもなるその枝豆畑だが、いつ何が襲ってくるかも分からない。なので、その枝豆を収穫してくるというのが今回の仕事、なのだが。
「ところで随分都合よく畑があったもんだが。誰のなんだ?」
「私の」
「ん?」
「私の。好きなの。枝豆」
「お、おう。そうか……」
「収穫したら食べていいよ。レクラの勉強代」
 なるほど、どうやら今回の仕事は夏にピッタリと言えそうだ……!

GMコメント

町の外の枝豆畑に行って、思う存分収穫しましょう。
収穫後は枝豆パーティーです。
おおよそのパートとしては「枝豆収穫」「枝豆パーティー」となるでしょう。
枝豆の収穫は実際の収穫、そして収穫中の護衛など役割を分けることもできます。
結構のんびりとしたシナリオですので、レクラとたっぷり仲良くなれそうですね!

●『ゼロ・クール『A-00ア号』』レクラ・エイワース
ゼロ・クールの1体。鎧騎士のような外見で長剣を持っています。
今回は新体験となりそうですね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <英雄譚の始まり>ルカとレクラの農業体験完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
秦・鈴花(p3p010358)
未来を背負う者
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

リプレイ

●枝豆畑
「ゼロ・クールのためには、いろんなデータ取りというかいろんな体験が必要……外見は人形みたいだけど、ゴーレムとかみたいにつくられる時に知識とかがプリセットされてるわけじゃなくて、そのあたりは秘宝種みたいな他の種族と同じなんだね」
「ある知識はあります。ない知識はありません」
「そっかー」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)のそんな声が、枝豆畑に響く。
「だったら、いろんな体験のお手伝い! 農作業……剣を鍬にとか、平和な時にありそうな感じだしね。枝豆を枝ごと切って収穫するのもいいし、小さな鞘ごとに切っていくのもいいし、どっちも剣を振るのとはちょっと違った動きになるよね。こまごまとした作業、いい刺激になるかな?」
 そう、今日の仕事は『ゼロ・クール『A-00ア号』』レクラ・エイワースを連れての枝豆収穫だ。
「サンゴさんの枝豆畑で収穫だー! よーし頑張るよ!」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も楽しそうにそう声をあげる。
「こちらの世界の枝豆もおいしいんだろうなぁ……楽しみ! レクラさんもよろしくねー!」
「はい。よろしくお願いします」
「まさかサンゴが畑持ってるたぁな……顔はサンゴだが相賀のじーさんみてぇなやつだ。もしかしたらサンゴも畑持ってたかも知れねえが」
 もしかすると、そうだったかもしれない。今となっては確認しようもないことかもしれないが……『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は、そんなことを考える。
「枝豆が好きだからって畑まで作るか? なんというか、筋金入りだな。ところでその足りない物って愛とか勇気とかのスピリット的なにかだったりしない? まあそんなのあったとしても能力は変わらないか」
「その情報については登録されていません」
 『狂言回し』回言 世界(p3p007315)にレクラはそう真面目に答えるが、実際愛や勇気というものがレクラにあるかは不明だ。
「枝豆! サンゴ様は枝豆がすきなのですね? では、たくさんたくさん持って帰りましょう。レクラ様は枝豆すきですか? レクラ様はどんなごはんがすきですか?」
「嗜好に関する情報は有していません」
 『大切な人を想う』ニル(p3p009185)ともそう言い合うレクラだが、レクラがそう言うからには本当にないのだろうとニルは思う。それ自体は、理解できない話ではなかったからだ。
「うほほーい! 枝豆じゃーい! もうそろ夏も終わっちゃうけどやっぱりこれだよねー。おかーさんのおつまみの枝豆食べ過ぎて怒られるのはいつものことなのだぜ。えっだまめ! えっだまめ!」
「またまた異世界! って意気込んだのにまさか枝豆収穫だなんて、異世界も幅広いのねぇ。まぁそうね、でも農作業が勉強になるっていうのにはアタシも同意かも。種を植え、水をやり、それを食べようとする虫や鳥と戦って、そうして育った作物を収穫して、またその種を植える。そういうのが「生命」ってものなのよね」
「……りんりんが珍しくルカせんぱいいるのに真面目な顔してる」
 『宝食姫』月瑠(p3p010361)が『未来を背負う者』秦・鈴花(p3p010358)にそんなツッコミを入れると、鈴花が「はあ?」と声をあげる。
「……なによゆえその顔。アタシだって顔がいい男の前でも正気でいられるくらいには成長したんだか――ビール!? ルカと!? ハァそんなの今すぐ秒で収穫も終わらせるし横に座っただけで初回1500Gだけど次からご指名で6桁G飛んでいかない!? だっだだ大丈夫!?」
「店ならいざしらず、プライベートで金取りゃしねえよ。ま、鈴花なら店に来ても安くしておくけどな」
「と思ったらやっぱりだめかー。いつものりんりんだ。あんしんした。収穫だけなら変なことにはならないと思うけど頑張ってねー。ルカせんぱいもりんりんが変な事しないか見ててね。もうちょっと変だけど」
「見ておくのは良いけどなぁ月瑠……。鈴花のやつ、俺が関わると余計おかしくなるからな……」
 ルカも混ざりワイワイとやっているのを余所に、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)も畑を見つめる。
「農作業って……陸ならではの事……上手く働けるか分からないけど……僕も……やってみたい……えだ豆も……どんな形で……どんな味の食べ物なのかも知りたいし……レクラも……一緒にやろ……新しい体験……皆と一緒にしたい……もし……戦闘になった時は……一緒に頑張ろ……?」
「はい、最善を尽くします」
 そんなことを言っていると、鈴花がズンズンとやってくる。
「うるさーい! とにかく枝豆収穫するわよレクラ!」
「よし、じゃあレクラも収穫してみるか」
 そんな風に鈴花とルカにレクラが連れられていくが……とにかく、枝豆の収穫開始である。

●枝豆だ!
「よし、じゃあレクラも収穫してみるか。鎧着たまんまだとやりにくいかも知れねえから、邪魔なら脱いでも構わねえぞ。今日は護衛もいるしな」
 そう言いながら、まずはルカがお手本を見せていく。
「枝豆の収穫はそんなに難しくねえ。基本的には根ごと抜くか、地面スレスレの場所で刃物で切り取るかだな。ハサミを持ってきたから使っても構わねえぜ。枝豆がなってる房部分を切り取ると鮮度が落ちるらしいから、食う直前まで切り取らねえ方が良い……ハサミの使い方がわからねえようなら教えてやる」
 ルカのイケメンな行動は各方面で何かしらの青春を作っていそうな気もするが、さておいて。
「ここに指を入れて、こんな感じだ」
 とにかく、ルカの教え方は丁寧だ。何も知らなくとも出来るようにしっかりと考えられている。
「こういう日用品を使う事もそんなにねえのかも知れねえな」
「そうね! 株ごと引っこ抜くやり方もあるけど、今回はハサミで茎を切っていきましょうか」
 鈴花も言いながらレクラに枝豆のことを教えていく。
「この部分が枝豆で、中の豆を食べるのよってあー! 鞘を切らない! えーとね、この袋ごと茹でたりするから――ってあー! えーとギリギリぶちっとやると、茎から切り離した瞬間から鮮度が落ちちゃうの。なので、と葉や茎をある程度残した束の状態でカット!」
「鮮度は大切ですね」
「そうよ。こうすれば料理する直前に切り離して新鮮なまま食べられるわ。これも今まで覇竜で色んな作物を工夫して育てたり、ギフトで枝豆が言ってくれたことなんだけどね。切った茎だってまた伸びるのよ、生き物って頑丈なんだもの!」
「枝豆は生物でしょうか」
「どうなのルカ!?」
「難しい問題だな」
 生物の定義についての疑問は諸説あって中々難しい問題である。さておこう。
 ちなみに月瑠は何処に行ったのか? 実は収穫ではなく護衛をしていた。
「わたしは収穫中の護衛でもしてるよ。皆に収穫楽しんでほしいしね。決して楽して枝豆が食べたいわけではないのです。ほんとです」
 ということらしい。飛行して空から警戒する役だが、あまり派手に飛ぶと何が来るか分からないので気をつけながら……ではある。
「まー、変なものは襲ってこないでしょ! エダマメイーターワイバーンとか! とか言ってたらほんとに来るなー!この枝豆はわたしたちのだぞ!」
 何やらフラグを立てながら変なワイバーンをおびき寄せてしまっている月瑠だが、なんだかんだどうにかなっている。
「枝豆はぜーったい渡さないからね!」
 なるほど、ちゃんと仕事をしている。立派な護衛と言える月瑠だが……警戒の合間にレクラを引っ張ってきておしゃべりもしていた。
「レクラはなんで枝豆好きなの?」
「私はそういう嗜好はありません」
「あ、サンゴのほうだっけ。ちなみにわたしは枝豆も好きだけど宝石はもっと好きです。でも好きなものを自分の手で作りたいっていう気持ちはよくわかるな。わたしも自分で見つけた宝石はいつもより美味しい気がするし!」
「宝石は食べ物ではありません」
「食べ物だよ! ね、ルカせんぱい!」
「どうだろうなあ」
 今日もルカが大変であるが、さておいてレインもゆったりと枝豆の収穫に励んでいた。
「これが……えだ豆……葉っぱ……意外と大きい……この……トゲトゲしてて……ゆらゆらした形のが食べられる所なんだね……これは…どう取るんだろ……このトゲトゲゆらゆらを1つずつ取るのかな……それとも…全部引き抜くの……? レクラ……分かる……? もし、引き抜く物だったら…一緒に引っ張ってみようか……」
「はい、先程学習しました。こうです」
「そうなんだね……どう扱うのか……勉強……皆の真似もする……」
 なんとも真面目なレインだが、レクラだけではなくレインにとっても新しい体験だ。
「陸の土……不思議な感触と匂い……わ……ニュルニュルしたのが出てきた……」
 ミミズである。こちらの世界でもミミズは同じであるようだ。
「頭を出してないけど……土に隠れてるから、小さいチンアナゴみたいだ……触っても大丈夫なものなのかな……レクラ……手を出して……このニュルニュルあげる……」
「要りません」
「そっか……」
 レインはミミズを土の中に戻すが、また何か見つけたようだ。
「あれ……これ……なんだろ……葉っぱの裏に……茶色の……見た事のない生き物……なのかな……カサカサで……虫みたいで……真ん中に切り込みがある……カニとかみたいに……脱皮したのかな……」
 セミの抜け殻だ。夏の思い出と言えるだろう。
「これは動かないから…部屋に飾るのに取っておく……陸の記念……」
 そんな様子を見ながら、世界は護衛をしていた。まさかエダマメワイバーンがまた現れるとも思えないが。
「ただ周囲を見てるだけで仕事になるなんて万々歳じゃないか。あとは何も起きなければ楽ができるな。どうせ大したことなんて起こらないだろ」
「わー、またエダマメイーターワイバーンがー!」
 そんなことがありつつも、世界は簡易式召喚陣で精霊を召喚していた。数は正義だからな、とのことらしい。
 守られている中でニルも収穫に勤しんでいる。
「ニルは収穫がんばります。他の人と手分けしてプチプチもいで籠へ入れます!」
 真面目だ。とても真面目なニルは、それだけで癒しだろう。運搬を手伝っているアクセルもニコニコ顔だ。
「色が緑じゃなくなったものは、そっとしておくのです。枝豆は、大豆にももやしにもなるって聞きました。このままおいておくと大豆になるのです。大豆もいっぱいいっぱい食べ方があるのです。いつか大豆も、レクラ様と食べれたらいいですね!」
「提案は記録しておきます」
「はい!」
「うんうん、順調だね」
 ヨゾラも言いながら、ハサミで収穫していく。
(株ごと引き抜く方法もあるらしいけど、他の人の畑だから)
 中々に手慣れているヨゾラにニルが「おおー」と感心したような声もあげている。
「レクラさんの収穫は良い感じに進んでる……ね」
 頷くヨゾラは、枝豆を収穫しながらふと思う。
「おいしそうな枝豆……枝豆を育てるのもいいのかもなぁ。今回は僕等が来たけど、サンゴさん達もたまに収穫に来るのかな?」
(護衛担当の仲間がいるから安心だけど僕のファミリアーに畑の外にいてもらって周囲偵察はしておこう。畑に猫が入って良いかわからないからね)
 そうして枝豆をしっかりとサンゴの下へ持って帰ったら、調理の時間である。
「枝豆はおいしくいただくよ! 塩ゆでが基本になると思うけど、塩抜きでゆでてつぶしてお砂糖を混ぜてずんだ餡にしたり、それをお餅(あったら)にかけてずんだ餅とか。ミルクに混ぜてシェイク風とか。そういうのをするヒトがいたらお手伝いするよ! なめらかさと粒感を残す絶妙なバランスを目指すね……!」
「ニルは、ずんだもち、食べたことないので気になります。枝豆って、おかずだと思っていたのですが、お菓子にもなるのてすね。茹でてすりつぶすのですね。薄皮を除くの、がんばります!」
「はい、お餅」
「あるんだ……! そういえば、ゼロ・クール……レクラって食べ物食べれるの?」
「そういう機能はあるわ」
 そう言って何処かに行くサンゴをアクセルとニルは見送るが、まだ「こちらのサンゴ」の性格は掴み切れていない。
「そうそう、酒を飲めるやつ全員分の麦酒は用意しておいたぜ」
 ルカも言いながら麦酒……つまりビールを取り出している。
「枝豆は色んな食い方があるが、麦酒のつまみとしちゃあ王道は塩ゆでだな。房から切り取って塩ゆでにする……これだけでたまらねえ一品になるんだから大した食いもんだ」
「しかし、枝豆料理なんてバリエーションに乏しいと思っていたが……茹でる、焼く、揚げる、潰してずんだにすると色々あるもんなんだな。まあ結局全て枝豆だから緑一色だけど」
 世界も言いながらルカとは別の塩加減で茹でていた。
「個人的にはやはりシンプルに塩茹でが一番だな。食べやすい大きさにほんのりとした塩味、あれはもう天然のスナック菓子と言っても過言ではないだろう。……なに? 甘い物好きなんだからずんだじゃないのかって? もちろん普通に好きだがそれはそれ、これはこれってやつさ」
 さて、鈴花は何をやっているのか?
「茹で枝豆から焼き、さらに焼いた枝豆をニンニクと唐辛子とオイルで炒めたペペロンチーノ風まで! すりつぶして冷たいポタージュにしたり、ニルたちが食べたがってるずんだ餅もやってみましょ、ほらゆえ潰すの手伝って!」
「んお? りんりんなになにー? 枝豆をつぶせばいいの? 任せといてー! 最後のもう一仕事だー! これもすべて美味しいご褒美のために!」
 さて、そうして出来たホカホカの枝豆料理はどれも美味しそうで、レインは「わあ」と感嘆の声をあげる。
「ホカホカで熱いえだ豆…どうやって食べるんだろ……熱くて触れない……」
 けれど、熱いなら冷ませばいい。結構すぐに熱は冷めてくる。
「押すと口の中にポンポン入ってくる……あ……押し過ぎると飛び出す……1つ落としちゃった……」
 中々上手く食べられないようだが、これは慣れの問題だ。
「レクラも食べてみて……食べれなくても……押して出すの……楽しいよ……えだ豆……小さくて……ほんのり甘くて……僕でも食べやすい……結構好きかも……これなら……たくさん食べれそう……」
「はい。よかったですね」
「食べる時はいただきますって言うのよレクラ!」
 そんなレクラに鈴花が食育をしようとしているが月瑠が隣で野生児に戻っている。
「うひょー! いっただきまーす!」
「あれですね」
「あれはだめよ! こらっ、ゆえ!」
 一心不乱に枝豆を食べる月瑠は、もうハムスターの如くだ。
「お酒はまだまだ飲めないけどお酒がなくても枝豆は美味しい! あ、ビールを飲むりんりんとルカせんぱいにお酌をしてあげよう。いつもおかーさんにやってるからね。わたしはプロだよプロ。みよ! このいい感じの泡!」
「お、上手えじゃねえか月瑠」
「ウッ今日もルカの顔がいい……」
「鈴花はなんか呼んだか? ん、違うのか?」
「もーこっち見るな! 嘘そっぽは向くな! ううビールは苦いし――あら? い、意外といけるかも?」
「どっちだよ」
 言いながらルカは鈴花の作ったペペロンチーノを一口食べる。
「へぇ、こりゃ美味い。鈴花、お前料理上手だな。麦酒にも合うしこりゃあたまらねえ」
「ヴァー!」
「りんりんが壊れた!」
「レクラ、お前は酒はいけるのか?」
 アフターフォローは無しである。さておいて。
「いけるなら飲んでみろ。それか生まれたばっかりだから未成年扱いなのか? ま、どっちにしても枝豆は食えるだろ。食器使えるか? 使えねえなら食わしてやるぞ。ほら、アーン」
「りんりんが飛んだ!」
 何やら後方で凄いことになっているが、ルカは気にしていない。慣れだろうか?
「塩茹でにしたの、焼いたの。皮ごと唐辛子とかとつけているのとか、皮をむいてごはんやつみれに入っているのとか。いろんなものがあるのは、わくわくしますね」
 ニルも微笑みながら皆で用意した枝豆料理をつまんでいく。
「ごはんは大事なものです。ニルは、本当はごはんを食べなくても大丈夫、なのですけど。こうやってみなさまとごはんを食べるのが、すきなのです。レクラ様もごはん、すきですか?」
「その情報はありません」
「すきなひとのすきなもの。一緒に食べれるのはうれしいくてあたたかくなります。レクラ様とサンゴ様が一緒に枝豆たくさんたくさん食べれたらいいなって。ニルは思うのですよ」
「その提案については、記録しておきます」
「はい!」
 そんなニルたちを見守りながら、世界とヨゾラも枝豆をつまむ。
「うん、うまいな」
「おいしい枝豆、楽しい思い出……いいものだね」
 ヨゾラは「サンゴさんやレクラさんに幸あれ」と願う。
「労働の後の一杯! 残暑の暑さにもぴったりだね!」
 アクセルもプハー、と麦酒を楽しむ。その姿は、まさに理想の楽しみ方だろう。
 レクラとサンゴがそういう風になるのかは分からないが……幸あれと願うのは、きっと当然のことなのだろう。

成否

成功

MVP

月瑠(p3p010361)
未来を背負う者

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM