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シナリオ詳細

<信なる凱旋>獣か人か、あるいは騎士か

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 駆ける馬上より放つ赤騎士の剣が、次々と血しぶきをあげていく。
 取り囲んでいたはずのウィンスレイ教会騎士団の劣勢は、もはや決定的なものとなっていた。
「一体なんなんだ、あの騎士は……!」
 騎士団長キュリウスが叫び、剣を放つ、馬上より飛び降りた赤騎士は紅蓮の焔を纏い、キュリウスの剣と己の剣をぶつけ合った。
「ぐう……! 魔力放出量が違い過ぎる……!」
 押されそうになる……が、それでも耐えた。なぜならば。
「諦めてはいけません!」
 純粋なる黒衣に身を包んだ女、『星光騎士』アンバー・キリードーンが駆けつけ、光の斬撃を放ったためである。
 斬撃を交わすように飛び退く赤騎士。
 対するキュリウスはがくりと膝をついてしまった。
「キュリウスさん! 大丈夫ですか!?」
 駆け寄る……いや、駆け寄ろうとするアンバー。しかし、彼女は自らの足が進まないことに気がついていた。
「なっ――」
 見下ろす。
 そこにあったのは、自分の足では無かった。
 意識がぼやけていき、自らを規定できなくなっていく。足は闇の焔に覆われ始め、滅びの力が満ちていく。
「これは、滅びのアーク……この赤騎士の力!?」
 アンバーの目の前で、キュリウスもまた滅びの力に包まれていった。
 その姿は人間のようでいて、もはやそうではない。
 二足歩行する狼とでも呼ぼうか。その姿と纏う気配は、終焉獣のそれ。
「すみません……ピリア、さん……後は……」
 アンバーの意識もまた溶けていく。
 彼女の姿ももはや、終焉獣のそれに変わっていた。


 ウィンスレイ教会騎士団が襲撃を受けたというニュースがローレットへと齎され、同時にウィンスレイ領より救援の依頼が舞い込んだ。
 そのニュースに驚いたのはピリア(p3p010939)だった。
 こくりと頷く情報屋。
 彼は天義を中心に活動するアンドレイという男で、周辺の騎士団について詳しいことで知られていた。
「赤騎士――それはルストの権能によって作り出された怪物だ。ヤツは焔を纏った赤い騎士だが、人々の姿を終焉獣まがいの存在へと変化させる力を持っている。
 ウィンスレイ教会騎士団はヤツに敗北し、終焉獣もどきへと変えられてしまった。救援に駆けつけていた騎士アンバーもだ」
「アンバーさんが……!?」
 自らの友が怪物に変わってしまったという事実に、ぞくりを背筋を震わせるピリア。
 情報屋はサッと手を翳す。
「だが諦めるのはまだ早い! この赤騎士を倒すことができれば、終焉獣もどきへと変えられた人々を元に戻すことができる。完全に終焉獣へと変化してしまうまでに……だが」
 ならば、急がねばなるまい。
 天義の勇敢な騎士たちが倒され、怪物へと変わってしまうなど……止めなくてはならない!
「急いで、ピリアさんたちを助けるの……!」

GMコメント

●シチュエーション
 ウィンスレイ教会騎士団、および『星光騎士』アンバー・キリードーンが、赤騎士の能力によって終焉獣もどきへと変えられてしまいました。
 完全な終焉獣へと変わってしまう前に赤騎士を倒すことができれば、元に戻すことが出来ます。
 ウィンスレイ領からの依頼を受け、あなたは赤騎士へと挑むこととなりました。

●フィールド
 ウィンスレイ領住宅街。
 建物が並び、民家や店があります。
 住民の多くも赤騎士によって終焉獣もどきに変えられてしまっています。

●エネミー
・フレイムマン×多数
 赤騎士によって終焉獣もどきに変えられてしまった住民たちです。
 炎に包まれた人間めいた姿をしていますが、戦闘力は低くこちらを取り囲んで集中攻撃をする程度のことしかできないでしょう。
 ですが放置すれば当然この先の戦いが圧倒的に不利になってしまうので、ここで倒しておかなければなりません。
 まずは町に到着し、彼らと戦うことになるでしょう。
※このモンスターを倒したとしても、後に赤騎士を倒せれば無事に元に戻るものとします。

・フレイムナイト×複数
 赤騎士によって終焉獣もどきに変えられてしまったウィンスレイ教会騎士団とアンバーです。
 住民たちと異なり、剣で武装したワーウルフのようなフォルムをしています。
 戦闘力も高く、油断できない敵です。
※このモンスターを倒したとしても、後に赤騎士を倒せれば無事に元に戻るものとします。

・フレイムナイト・キュリウス
 騎士団長キュリウスが赤騎士によって終焉獣もどきに変えられてしまった姿です。
 赤騎士は姿を消し、このキュリウスに乗り移っているようです。
 つまりこのフレイムナイト・キュリウスを倒すことが、人々を救う手段となるということです。
※このモンスターを倒したとしても、後に赤騎士を倒せれば無事に元に戻るものとします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <信なる凱旋>獣か人か、あるいは騎士か完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
一条 夢心地(p3p008344)
殿
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
ピリア(p3p010939)
欠けない月

リプレイ


 仲間たちが屋根を走り空を飛びファミリアーを飛ばすそのさなか、ウィンスレイの町の大通りを走る『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の姿があった。
「罪なき人々を怪物に変えて争いの道具にしようとするなんて許せない! 絶対にその思惑は阻止してみせるよ!」
 蒼き光を携えた聖杖、ネフシュタンを握りしめ、目の奥に決意の光をたたえる。
「それが天義の聖職者としての責務だから……」
 そんなスティアの隣を走る『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。彼女が何か言おうとしたところで、飛行していた『殿』一条 夢心地(p3p008344)がスタンと着地し合流した。
「騎士たちのおおよその方角が分かったのじゃ」
「うん。私も方角だけならなんとか」
 スティアは精霊たちに呼びかけて強力な終焉獣のいる方角を訪ねていたが、精霊たちは終焉獣もどきの登場に混乱したり恐れたり、逃げてしまったりとかなり混乱した状況にあったようだった。それでも仲間たちの調査結果を合わせることでおおよその方角だけは分かったらしく、大通りをまっすぐに突っ切っていけばたどり着けることが判明していた。
「遂行者勢力も随分とふざけたモノを送り込んできてくれたな。こんな企み、俺達が全て挫いてやる」
 ファミリアーを撃墜されないよう戻し、走るスティアたちに加わる『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
 彼は先行するように加速すると、屋根の上へと跳躍し飛び乗った。
「まずは先行してフレイムマンたちを攻撃する。一緒に来るか、ヒーロー!?」
「ああ!」
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が叫ぶ。
「赤騎士――これ以上、お前たちに奪わせてたまるものかッ!」
 彼がオプションユニットを召喚すると、彼の体を纏う形でコンバットスーツにパワーアーマーが装着されていく。
 胸のクリアパーツの内側でZの文字がギラリと光り、武蔵はその赤いマフラーを今一度靡かせた。

 話によれば、フレイムマンやフレイムナイトたちは『まだ』終焉獣にはなりきっていないという。
「まだ間に合う、か。状況は良いとは言えねェが、そこは幸いだったな……」
 走りながら顔をしかめる『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)。
 特にフレイムナイトに変えられてしまったアンバーとは浅からぬ仲だ。神の国での中のこととはいえ、一度は先輩と呼ばれた身。捨て置けるわけが、もちろんない。
 それは『欠けない月』ピリア(p3p010939)も同じだ。
「アンバーさん、アンバーさんが……ピリアのおともだちみたいに、いなく……うっ」
 走りながらも、ピリアはぽろぽろと涙をこぼしている。
「大丈夫。まだ間に合うわ」
 そんな彼女の背に、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)がそっと手を当てる。
(アンバーちゃんは、私と、メディカと、一緒に戦ってくれた子。あの子の星の輝きは、これからの天義になくてはならない)
 こくりと頷き、「助けましょ」と優しく声をかける。
 ピリアは涙をすこしだけ乱暴に拭って、頷いた。
「うん、まだだもん! まだまにあうもん! いそがなきゃ!」
「その調子よ。じゃあいつもの調子で」
 むん! と気合いを入れ直すピリア。アーリアは目を細めて微笑んだ。


 終焉獣もどきとかしたフレイムマンたちは、有り体にって困惑していた。
 自我を失い怪物として作り直された彼らにはしかし、これといって目的がないのだ。
 しいてあげるならば、この場所を狙う存在に挑みかかり防衛することなのだg――。
「鳴神抜刀流」
 射程範囲外。はるかはるか遠くから、それは聞こえ、走り、抜刀し、走り抜け。
「――太刀之事始『一閃』」
 フレイムマンがまだ何もしていない間に、エーレンの剣がフレイムマンの腕を切断して落としてしまった。
 ごとりと倒れて動かなくなるフレイムマン。腕はくっつき直したが、それ以上の動きは無いようだ。
「どう倒しても赤き騎士さえ倒せば元に戻るという話は本当のようだな。よし――」
 エーレンはつかみかかろうとするフレイムマンから跳躍によって距離を取り、壁を蹴って反転すると自らの周囲へと回転斬りを繰り出した。
「鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』!」
 ようやく対応を始めるフレイムマンたち。
 駆けつけたゼフィラが神気閃光を放ち攻撃を開始すると同時に、ムサシがディフェンダー・ファンネルを展開した。
「行け! ディフェンダー・ファンネルッ!」
 背部に接続されていたファンネルユニット四枚が飛翔。
 突然のことに驚き振り向くフレイムマンたちがファンネルユニットをたたき落とそうとするも、光線が放たれ彼らを四方八方から撃ち抜く方が早かった。
 ユニットがムサシのもとへともどり、背部へとガシャンと装着される。
「サプレッション・ユニット、展開!」
 籠手とレーザー警棒を抜くムサシ。パワーアーマー腕部に装着されていたビームソード発射装置と合体したそれは、遅いかかってくるフレイムマンたちをひと薙ぎにして振り払った。
「敵が集まってきたであります――ピリアさん、今です!」
 後方からタイミングを見計らっていたピリアはうんと頷いて両手を翳した。
「ワールドエンド・ルナティック! おめめぐるぐるになっちゃえ!」
 装備していた槍をぐるんと回し、オパールの煌めきを纏った矛先から魔法の光線が放たれる。
 光線はフレイムマンの一体に直撃。そこから爆発するように広がった煌めきによってフレイムマンたちは錯乱し、中には頭をボンッと爆発させて倒れる個体も現れた。ピリアの付与した【狂気】効果の発動である。
 ハッとして回りを見回すピリア。
 建物の影から、路地の向こうから。
 次々とフレイムマンが現れ駆け寄ってくる。
「数が増えてきたの……!」
 槍を構えて勇ましく眉をつりあげるピリア。
 が、そんな彼女を庇うようにスティアが前へと出た。
「なら、私の出番だね」
 戦いの気配を察し密集してきたフレイムマンたち。今こそスティアの力である『福音』を放つ時だ。
 魔力を旋律に変えて鳴らすというその術は、ゴォンという鐘の音にも似てフレイムマンたちの間に響き渡った。
 音から魔力に再変換されたそれは彼らの脳へと侵入し、スティアへの執着を沸き立たせる。
 目の色をかえたかのようにスティアに密集するフレイムマン。彼らの武器は棍棒やナタや包丁といった庶民的なものだが、攻撃方法は限られている。
 スティアは同時に『天華』の術を発動。
 彼女を中心とした球形の結界に阻まれ、フレイムマンの繰り出した包丁ががきんと弾かれた。内側でふわふわと浮かぶ羽根のようなエフェクトがまるでスノードームだ。
「私ごと撃って。大丈夫だから!」
 杖を握りそう叫ぶスティア。
 キドーはマジかよと思いながらもまずは『ワイルドハント』を行使することにした。
 死後この狩猟団に加わることを対価として召喚される妖精の狩猟団。勇猛な猟師。八本足の馬。黒い犬。その全てがフレイムマンたちへと遅いかかり、スティアの結界を破ろうと必死だった彼らは見事に黒い犬に食らいつかれ、引き倒される。殆ど一方的なまでの襲撃だ。戦力差は圧倒的である。
「ちょいと痛いだろうが我慢してもらうぜ!」
 スティアの影響を逃れたフレイムマンがキドーめがけて走ってくるが、キドーは抜いたククリナイフで相手の棍棒を受け流した。
 そのまま相手の背後に回り込み、背中を派手に切り裂いて行く。
 吹き上がるのは血ではなく、闇色の炎だ。本当にひとではなくなってしまっているのだろう。元が人だと思うとやりづらいが、今は割り切るしかない。とにかくここを突破し、赤き騎士を討たねばならないのだ。
「では遠慮無くやらせてもらうのじゃ。夢心地ビーーーーム!」
 夢心地が両手を額にあて、謎のビームを発射。光線はスティアを軽くかすめる位置を通り抜けてフレイムマンたちを撃ち抜いていく。スティアに当てなかったのは、ブレイク効果を配慮してのことである。
 あまりのダメージにフレイムマンたちが吹き飛んでいき、残る僅かなフレイムマンたちのうち数体が起き上がる。味方に庇われた個体だろう。
 そのうち一体だけはスティアの【怒り】効果をレジストしていたようで、夢心地へとナタを手に突っ込んでくる。
「むっ――!」
 刀に手をかけ、抜刀。
 その動きによって相手のナタを弾くと、返す刀で相手の胸を袈裟斬りにした。
「もっと撃っても大丈夫だよ?」
 スティアから声がかかり、アーリアがそれなら……と胸の谷間から小瓶を取り出した。小瓶に軽く口づけをすると、蓋を開いて手袋の上へと垂らす。
 湧き上がる甘い香りは酒のそれだが、同時に魔女の齎す魔法の発動でもあった。
 発動した魔法は『パラリジ・ブランの雨』。
 琥珀色の雷撃がフレイムマンたちの間に走り、スティアのスノードームを中心により鮮烈な花火ができあがった。
 それでも倒しきれない個体がいるだろうと念押ししたアーリアは、手袋をそと口元へと寄せた。
 まるで誰かに耳打ちするかのような姿勢で、何かを囁く。
 距離が遠いにもかかわらず、それはフレイムマンたちの耳元で囁かれた。甘く蕩けるようなアーリアの囁きが、彼らの脳を破壊する。
「「――ッ!」」
 悲鳴のような声をあげて次々に倒れるフレイムマンたち。あとに残ったのは杖を垂直に立てて祈るような姿勢をとったスティアただ一人であった。
「……巻き込むことはないって解ってはいても、撃ち込んだ中心からスティアちゃんがぴんぴんして出てくるの結構衝撃的よねぇ、うん」
「これで皆を守れてるんだから、大事なことだよ」
「本当にね」
 さくんと刀を鞘に戻すエーレン。
「フレイムナイト……赤き騎士はこの先だ。急ごう!」


 ゆらり――と影が動く。
 闇色の焔に包まれたその姿は、鎧を纏った騎士にも、炎で象られたワーウフルにも見える。
 剣を携えたまま、しかし呆然と立ち尽くす姿には奇妙な困惑があった。
 だが、それもついさっきまでだ。
 こちらに近づく一団に、振り返る。
 先頭をゆくスティアが、杖を翳した。
「見つけたよ。キュリウスさん。それに、騎士団の皆……」
「――!!」
 炎が燃え上がるような声を出し、フレイムナイトの一人が斬りかかる。
 杖を水平に翳し防御したスティアは、再び『福音』を発動させた。
 フレイムマンほど容易くというわけにはいかないが、それなりの数のフレイムナイトがスティアの術中へとはまり攻撃を仕掛けてくる。
 結界の内側から呼びかけるスティア。
「人々を守る為の力をこんな事に使っても良いの?
 今から私達が助けるから少しでも抗って欲しい!
 その力は民達を守る為に使うものだから!」
 ギギッ――とフレイムナイトの動きが鈍った。
 偶然か?
 いや違うとスティアは確信した。ウィンスレイ教会騎士団の誇りと魂が、スティアの呼びかけに応えようとしているのだ。
 しかし赤騎士の力のほうが勝っているのか、それでも振り上げた剣を叩きつけてくる。
 フレイムナイトの一人の剣がスティアの結界を破壊し、続けて繰り出された剣が神秘の炎を纏って彼女の腕を切りつける。
 だが問題無い。そうした備えもしてこそのタンクだ。『星天』の術式を発動させたスティアは自らの魔力を解放。優しい光が天使の羽根のように散ると、彼女の腕の傷を治癒していった。
「大丈夫、私達が貴女をちゃんと「騎士」に元に戻す
 少しだけ痛いけれど、我慢してちょうだいね!」
 アーリアが先ほどフレイムマンたちに浴びせたものと同じ魔術を行使した。
 激しく荒れ狂う琥珀色の雷撃。
 しかしフレイムナイトの一体はそれを剣によって受け流し、アーリアへと向き直る。
 直接的に斬りかかるフレイムナイトの剣には星の輝きが見て取れた。
「これは――」
 アーリアは相手の攻撃を素早く回避。
 そしてピリアに向けて叫んだ。
「ピリアちゃん! この子がアンバーちゃんよ!」
「アンバーさん!」
 ピリアは槍を手にフレイムマンへと対峙する。
 友達と対峙することに、あるいはこの槍を突きつけてしまうことに、手が震え頬に涙が伝う。だが……ピリアは知っているのだ。アンバーが神の国から逃れられたその決意を、流した涙の意味を、共に交わした友情を。
「いたいけど、ちょっとだけ、ごめんなさいなの!」
 槍と剣が、ぶつかり合う。
 幾度もぶつかり合い火花が散るが、それでも止まらずピリアはアンバーとおぼしきフレイムナイトをマークした。
 星の輝きを纏った剣戟がピリアを切り裂き、血を吹き上げさせる。
 対抗して口にした治癒の歌がオパールの煌めきとなって傷口へと吸い込まれていき、痛みと傷を中和する。
 一進一退だ。実力は互角といってもいいだろう。
 しかしだからこそ……。
「キュリウスに集中できる!」
 ゼフィラが義手を発行させ治癒の魔法を唱えフォローする中、エーレンが走る。
「ここが分水嶺だ、気張るぞヒーロー!」
 狙うはキュリウス。それを守るように二人のフレイムナイトが剣を構えるが、エーレンは構わず突っ込んで剣を抜いた。
「鳴神抜刀流・衰滅之手引『散華』!」
 一度は回転斬りという形で披露された『散華』だが、今度は騎士たちの間を風のようにジグザグにすり抜け斬り付けるという神業を見せた。
 がくりとよろめく騎士たち。
「ディフェンダー・ファンネルッ――ブレイ・ブレイザー!」
 ムサシはファンネルユニットを展開してフレイムナイトたちへ多角的な攻撃を仕掛けると、マフラーを抜いてそれを焔の剣へと変化させた。
 斬りかかる二人のフレイムナイトの攻撃をギリギリでかわし、キュリウスへと肉薄するムサシ。ブレイ・ブレイザーの焔でできた刀身が、キュリウスのそれと交わり激しい火花と散らした。
「この地に住まう人々を救うために戦った貴方達を死なせないためにも…ここから一歩も下がるわけには……いかないでありますっ!!!」
 途端。クワッとキュリウスの口が開いた。口といってもワーウルフめいたシルエットの頭で開かれた大口だ。そこから焔の渦が吐き出される。
「ぬおお! 麿の丁髷が!」
 夢心地が頭で攻撃を受けようとしたらしく、燃えさかる丁髷を手でぱたぱたはらっている。
「おのれアフロになったらどうしてくれる。成敗!」
 夢心地は刀を握りしめフレイムナイト・キュリウスへと斬りかかった。
 今まさにムサシと剣をぶつけ合っている最中だ。その中に斬りかかれば隙が生まれるのは道理。フレイムナイト・キュリウスの背が切り裂かれ焔が血のように吹き上がる。
「おうおう赤騎士さんよう!!ウチのかわいい後輩のアンバーに何してくれんだアァ〜〜〜〜ン!?!?!? テメェ死んだぞオラ!!!」
 とどめとばかりにキドーはスリングに入れた小石をぐるぐると回し、そして放った。
 通称『メガリスの礫』。働きに応じた財宝を対価に小鬼と契約を結んだというそれは、空中で膨れ上がり巨石となってフレイムナイト・キュリウスへと激突した。
「がっ……!?」
 声が漏れ、吹き飛ぶフレイムナイト・キュリウス。
 彼は地面をごろごろと転がり、そのさなかに彼を纏っていた闇色の焔が溶けて消えた。
 するとどうだろう。回りのフレイムナイトたちも、ピリアが戦っていたフレイムナイト・アンバーからも焔が溶け落ち、彼らががくりと膝をつく。
「間に合った……か」
 キドーはフウと息をつき、額に浮かんだ汗を拭ったのだった。

 住民たちに怪我はなかった。騎士団の働きによって建物の中に避難していた彼らは赤騎士の襲撃時に怪我をするということはなく、怪我をしていたのはその時に戦っていた騎士たちだけだ。スティアたちがフレイムマンだった時につけた傷は、焔と共に綺麗さっぱり無くなっていた。
 スティアは怪我をした騎士の治療にあたり、ゼフィラもそれを手伝いながらインタビューを試みる。
 一方で……。
「……へっ! 全く、手間のかかる後輩だなあテメェはよ! オラッサッサと次行くぞ」
 キドーは座り込むアンバーの肩をぽんと叩いた。
「センパイ……」
「まあでも、アイツに挨拶してからでもいいぜ」
 顎で示すと、ピリアが駆け寄ってくる所だった。
 ぴょんととびつき、抱きつくピリア。
 それに押されてどさりと倒れたアンバーがわけもわからずピリアの背に手を回すと、ピリアから流れた涙がアンバーの頬にかかった。


「ごめんなさい、ピリアさん、私……」
「ううん……」
 首を振り、そして怪我の手当をしなくちゃねと起き上がるピリア。
 二人は手を繋ぎ、笑い合うのだった。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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