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シナリオ詳細

近所迷惑な剣士達

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●修練も時間を考えて
 鉄帝……ゼシュテル鉄帝国。
 無辜なる混沌の『大陸』北部に位置するこの地は、機械生命体の末裔とされる『鉄騎種(オールドワン)』が主となって支配する地。
 ――武力こそ全て。
 鉄帝の人々は、血気盛んな国民性でも知られる。
 非常に分かりやすい性格の者も多い鉄騎種の人々は、己の力を磨くことに余念がない。
「どりゃああああああっ!!」
「きええええええええ!!」
 裂帛の気合を込めた叫びを上げ、長身の剣士達が刃を交える。
 鍛錬とはいえ、真剣勝負。
 自身の命を賭して戦うからこそ、一瞬も気を抜くことが出来ない。
 しかし――。
「あんた達、いっつもいっつもうるさいのよ!!」
「一体、何時だと思ってんの!?」
 その場に駆け込んできたのは、近隣に住む主婦達。
 実は、数人の剣士が日がな一日集まって己の技量を磨いていていたのは、住宅街のど真ん中にある建物の修練場だ。
 それだけならよいのだが、夜も更けているのに大声で叫んでいるから近隣住人は堪らない。
「それがどうした」
 その主婦達の前へと進み出たのは、この場で最も強い大剣使い、アルノーである。
 主婦達とて鉄騎種であり、そんじゃそこらの者には負けない程度の戦いの心得は持っているが、目の前の大男から感じる気迫には気後れしてしまっていたようだ。
「文句があるなら力で示せ。それが鉄帝のルールだろう?」
 アルノーの言葉が全てというわけでもないが、実際力ある者が権力を握る国だ。主婦達も承知しているからこそ、強くは出られない。
 主婦達はこの剣士達をねじ伏せる事のできる者を探すべく、この場は引き下がることにしたのだった。

●迷惑はいけないと思います
 一方、幻想のローレットでは。
 そんな鉄帝での苦情が依頼という形で、依頼に並ぶ。
「人様に迷惑をかけるのは、いけないことなのです……」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が頬を膨らませつつ、依頼に興味を持ったイレギュラーズ達へと説明を始める。
 鉄帝の住宅街の一角にある建物内で、朝から晩まで代わる代わる剣を持った男達が修行の為にと剣を交えていると言う。
 彼らは朝から晩まで気合を入った叫び声を上げ、激しい剣戟音を響かせている。
 いくら血気盛んな者の多い鉄騎種達とはいえ、住宅地で平穏に暮らす住人達にとっては迷惑極まりない状況だ。
「住人達では抑えられないこの剣士さん達を、懲らしめてほしいのです」
 主にこの修練場とでも言うべき場所を、7人の剣士が入れ替わり利用しているとのこと。
 中でも、アルノーという名の大剣使いはかなりの手練とのこと。
 依頼経験を少しずつ積んでいるとはいえ、イレギュラーズにとっても強敵に間違いないだろう。
 依頼を出している住民達も、修行を行うこと自体は否定していない。
 だが、夜遅くまで大声を上げ、金属音を上げて血腥い臭いを漂わせるのは勘弁してほしいと訴えている状況だ。
「昼間はこの剣士達も討伐依頼を受けるなどして、いないことも多いのです」
 夜は大体全員が揃って利用しているそうなので、狙うなら夜。
 昼間など、事前にその日の夜、決行することを住民に伝えてから、修練場へと向かいたい。
 修練場はとある建物内。丈夫に作られている場所で多少なら暴れても問題ないが、それなりに傷みもあって音が漏れ出しているのだろう。
 基本的には、正面から堂々とこの剣士達に戦いを挑みたい。
 狙撃なども外から出来はするが、相手の怒りを買う可能性が高く、事態収拾後に悪名がつくことも考えられるので、立ち回りは十分に考えて対応に当たりたい。
 ユリーカは建物の見取り図をイレギュラーズ達へと手渡し、依頼解決の為の参考にしてほしいと語る。
「ともあれ、迷惑な人は絶対に懲らしめてほしいのです」
 余談だが、この説明の際にぷんすかとユリーカが怒っていたのは、近所の猫のケンカが原因で眠れないことがあっているからなのだとか。

GMコメント

イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいです。

●目的
近所迷惑な剣士達の討伐

●敵……剣士7人
いずれも、鉄騎種(オールドワン)です。

○アルノー
20代後半の男性。身長2m強あります。
右腕が機械となった、金色短髪の男で、
全長2mを超える大剣を軽々と振り回します。

・渾身撃(物近単・防無)
・裂破爆砕斬(物近列・火炎)
・真空閃穿(神遠貫)

○剣士6人
10代後半~20代前半。
いずれも180cmを超える長身の者達です
アルノーと志を同じくして、剣の道を磨く者達です。
両手剣×4、片手剣二刀流×2
至近~中距離攻撃メインで攻めてきます。
両手剣使いはパワーファイターですが、
二刀使いは非常に素早く手数で攻めて来るので、
遠距離にいても油断はできません。

●状況
鉄帝内の街中、
とある建物は剣士達の修練場となっており、
彼らは朝から晩まで修行に明け暮れております。
その剣戟音や叫び声が周囲に響く為、
近隣住人がかなり迷惑しています。
建物内の部屋は25m×25m。遠距離攻撃は室内では難しいでしょう。
正面に両開きの入り口、奥側には裏口、
また、左右にそれぞれ2ヶ所ずつ窓があります。
外からでも狙うことは可能ですが、
「正々堂々と戦え」と剣士達の怒りを買う可能性も高く、名声にも影響します。
銃、魔法などで狙撃を考える方は注意が必要です。

●情報確度
A。想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。

それでは、よろしくお願いいたします。

  • 近所迷惑な剣士達完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月15日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
冬葵 D 悠凪(p3p000885)
氷晶の盾
久遠・U・レイ(p3p001071)
特異運命座標
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
クライム(p3p006190)

リプレイ

●文句があるなら力を示せ!
 鉄帝、ゼシュテル鉄帝国。
 昼間に到着したイレギュラーズ達は、目的の住宅街へと入っていく。
「夜には夜に生きるモノの流儀があるんだから、夜は静かにしてくれないと、困っちゃうよ」
 紺色の髪で左目を隠す『特異運命座標』久遠・U・レイ(p3p001071)は、今回の討伐対象に呆れを隠さない。
「純粋に強さを追い求める姿勢は称賛されるべきものだけれど、近所迷惑になっているとあっては止めざるを得ませんわね」
 赤い十字架をトレードマークとする教派「クラースナヤ・ズヴェズダー」。その司祭である『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が主観を語る。
 ヴァレーリヤも自分達イレギュラーズがこうして動くのは止む無しと考えつつ、剣士達には迷惑にならない場所で訓練してほしいと願う。
「それに、勢いと衝撃だけが力じゃないよね」
 付け加えるように告げたレイの意見に、白を基調とした和装の女性『特異運命座標』久住・舞花(p3p005056)も小さく唸って。
「『文句があるなら力で示せ』、と。悪気がある人達という訳ではなさそうだけど……」
 なるほど、ゼシュテル鉄帝国らしい話だと、舞花は納得していたようだ。
「正々堂々の勝負で、近所迷惑な夜の鍛錬を辞めて貰う……と言ってもな」
 三眼を持つ青き惑星出身の旅人、クライム(p3p006190)も状況を顧みる。
 修練場で鍛錬に励む鉄騎種達にとって、己の向上は大切なことに違いない。
 別の場所での訓練を検討、または修練場の設備改善等すれば何とでもなる話だろうが、その手間すら彼らには惜しいのだろうか。
「……言って駄目なら、殴って聞かせろ。実にシンプルだな」
「ま、俺も鍛練は否定しねぇぞ」
 クライムの言葉に、眼鏡をかけた男装の医者、『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も大いに頷いて。
「――が、御姉様方に逆らうのは良くねぇ。レディ・ファーストだ」
 主婦の皆さんの意向を叶えるべきだと、彼女もやる気を見せていたようだ。
 さて、イレギュラーズ達のが修練場周辺を通りがかると。
「どりゃああああああっ!!」
「きええええええええ!!」
 すでに中からは、刃を交える剣士達の叫びがこだましてくる。血腥い臭いが漂うのは、誰かが傷ついている証拠だろう。
 レイチェルがそっと修練場入り口に果たし状を置いた上で、一行はまず現場となる修練場周辺の住民に理解を求める。
「五月蠅くしてしまうと思うから、先に謝罪しておくね。でも、それも今日で終わらせてみせるから」
 レイは今夜の決行だと近隣住人に説明すると、よろしくお願いしますと頭を下げられていた。
 逆方向の家々には住人と同じ鉄騎種のヴァレーリヤや、『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)が剣士達へと対処を行う旨を伝えていく。
「可能性として、戦闘になると思います」
 儚げな雰囲気を抱かせる人間種の少女、『氷晶の盾』冬葵 D 悠凪(p3p000885)も住人達へと謝罪しながらこう告げた。
「あの人達の迷惑も、今夜限りにします」
 不眠症に悩むその男性は目にクマができており、涙を浮かべて彼女の手をとっていたようだ。

 日は沈み、街に夜の帳が降りる。
「おおおおおおぉぉぉ!!」
「ぜやあああああああっ!!」
 相変わらず、けたたましい声が聞こえてくる修練場へ、イレギュラーズ達は正面入り口を開けて。
「たのもー!」
 銀の長髪からアホ毛を揺らす『Hi-ord Wavered』ルア=フォス=ニア(p3p004868)が明るい声で中にいる剣士達へと呼びかける。
 まるで、悠凪が言うところの道場破りといった様相だ。
「果たし状を置いていったのは貴様等か」
 剣士の1人、身長が最も高い短い金髪の男。
 右腕が機械となったアルノーは、入ってきたイレギュラーズ達へと言い放つ。
「どうも初めまして。我々はローレットに所属するイレギュラーズです。貴方達の起こす騒音問題へ対処する為に、派遣されました」
 その戦いの前にと、オリーブが顔まで覆う兜の下からくぐもった声で自分達の素性を明かして。
「ご近所の方が迷惑していますの。夜間は訓練を控えていただくか、もしくは修練場の補修を行い騒音対策と悪臭対策を十分に施していただけませんかしら?」
「これ等を行えない場合は、退去して貰う事になります」
 さらに、ヴァレーリヤが要求を剣士達へと伝え、オリーブが制裁内容を告げる。
 しかし、剣士達の答えは、否だ。
「近所迷惑だという住人達の訴えは理解した。……だが、なぜ俺達が弱者の要望に応えねばならん」
 あくまで、強者の論理が絶対だというスタンスを、アルノーを始め剣士達は崩さない。
「なら、鉄帝らしく戦闘の結果でもって決めることと致しますわっ! 私達が勝ったら、言うことを聞きなさーーい!!」
 説得が通じないと分かれば、ヴァレーリヤは声を荒げて戦いを申し込む。
「強くなったり、日々進歩するのはとても理解できる感情ですし、生きているうちに誰かに迷惑をかけるのも人生の中ではあることなのでしょう」
 悠凪は剣士達の……鉄騎のルールというものに、真っ向から反論して。
「ですが、それを強くない奴の言葉は聞かないとするのは間違っています」
 話は平行線。両者の意見は交わることがない。
 そこで、レイが1つ溜息をついて。
「それより、周りを睡眠不足にさせて、自分達だけ強くなろうなんて卑怯なんじゃないの?」
「……何?」
 剣士達がレイの言葉に眉を吊り上げたのを見て、舞花は小さく首を振って身構える。
「『文句があるなら力で示せ』――。そちらの流儀に則らせていただくとしましょう」
 イレギュラーズ達が他人に雇われてここを訪れている点は、剣士達も気にかけていない様子。それもあって、舞花は仲間と同じく、ただ相手に力で対することにする。
「鍛錬も大切だ。如何にも鉄帝らしい。だからこそ、此処はお前等のルールで戦おう」
 クライムも同意して、二振りの刀に手をかけていた。
 すると、準備運動をしていたニアも拳銃型の武器を取り出して。
「『文句があるなら力で示せ』。うむ、その通りにしてやろうではないか」
 関節を鳴らす小柄なニアへ、血の気の多い剣士達は鼻で笑って殺気を放って刃を抜く。
「じゃ、改めて勝負を挑ませてもらおうか」
 自分達を強者と認めさせ、要求を呑ませる。
 レイチェルは果たし状どおり小細工なしに正々堂々と戦いを挑むと、剣士達もまた己の獲物を握ってイレギュラーズ達へと向かってきたのだった。

●力は存分に示すべく
 修練場で始まる、イレギュラーズ達と鉄騎の剣士達の戦い。
「でりゃああああああっ!!」
「うおおおおおっ!!」
 吠える剣士達に対して、悠凪は召喚したアンデッドのなりそこないで自らの盾を覆って。
(あまり好きではありませんが、ここは彼らの流儀に乗っ取ることにしましょう)
 彼女が向かうは、一番の巨漢であるアルノーの前だ。
「強いという事なら、私のような小娘一人くらいすぐにひねれるのでしょう?」
「ならば望みどおり、ひねってみせよう」
 思惑通りにアルノーの注意を引いた悠凪はしばし、殴り合いで我慢比べを行う。
 一方で、他のメンバー達は向かい来るアルノー以外の剣士のうち、両手剣持ち1人へと攻撃を集中させて。
「俺はレイチェル=ベルンシュタイン。魔術師だが、殴り合いも好きでなァ。相手、してもらおうか」
 名乗りを上げたレイチェルが距離をとりつつ、狙い定めた敵の足元に緋色の光を帯びた魔術式を展開する。
 そして、そこから発する闇が相手の体を引き裂いていった。
 オリーブも他の両手剣持ちや二刀流が斬りかかってくるのを一端やり過ごし、レイチェルが攻撃する両手剣持ちへと自身の両手剣クレイモアで切りかかっていく。
 この戦いの機先を制したい舞花もまた、斬魔刀で別の両手剣持ちへと斬りかかる。
 連続して攻撃を受ける両手剣持ちも黙っておらず、その大きな刃でイレギュラーズ達を叩き切ろうと真横に薙ぎ払う。
 レイはその一撃をやり過ごしつつ、軽やかにステップを踏む。
 殺気を織り交ぜ、レイは巨大な戦鎌を振り払って相手の体を傷つけていく。
 回復役としての立ち回りを考えるヴァレーリヤもまた、初撃だけは魔術戦用メイス「憤怒のセルギー」で殴りかかる。
 数の利をより揺るがぬものとする為に。そう考えるニアもまたよろける敵へと迫って。
「汝、見せしめ代わりに吹き飛ぶが良い!」
 ニアは集中した後、その両手剣持ちの周囲に時流を乱す嵐を巻き起こす。
 それに煽られた敵目掛け、クライムが白と黒の刃を煌かせて続き、刃をそれぞれ振り払っていく。
 相手は鉄騎種とあって、タフだと感じるクライム。
 しかしながら、イレギュラーズ達の攻撃を連続して叩きこまれ、すでに、その両手剣持ちの足取りはふらふらになっていたようだ。

「おおおおおおっ!!」
「だりゃああああああああっ!!」
 これも作戦とばかりに、大声で叫ぶ剣士達へと仕掛けるイレギュラーズ達。
 その後、メンバー達は初撃で狙った両手剣持ちから離れ、他の剣士達の相手へと回っていく。
 レイは素早く別の両手剣持ちへとターゲットを変え、殺気交じりに戦鎌を重さと遠心力を生かして斬撃を見舞う。
 機動力をもって攻めくる二刀流を、クライムは相手どって。
「手数と破壊力でどちらが上か、勝負しようじゃないか」
 相手も望むところと口元を吊り上げ、2人は刃を重ね合わせる。
 もう1人の二刀流剣士にはオリーブがクレイモアで斬りかかり、修練場の隅へと追い詰めようとしていたようだ。
 そして、両手剣持ち別の2人に、舞花、ニアが迫る。
 舞花が斬魔刀で一太刀浴びせ、そいつの注意を引いて。
「あなたの相手は私がします。さあ――、存分に剣を交えましょうか」
 そちらに視線を向けていたフリーの両手剣持ちにはニアが当たり、壁際へと誘う。
「汝の相手は儂がしてやろう。それとも、タイマンは怖いか?」
「よかろう」
 挑発して相手の注意を引いたニアは、してやったりといった態度で交戦していく。
 こうして、イレギュラーズ達は限られた修練場のスペースに散開し、各剣士達を相手取る作戦を展開する。
 最初、メンバー達が狙った両手剣持ちには、この場に残っていたレイチェルが相手取って。
「……他の援護には行かせねぇよ。俺が相手だ」
 そう告げた敵に対して告げるレイチェル目掛け、相手は距離を詰めて斬りかかってくる。
 自らの肉が裂かれて血が飛んでも、彼女は笑みを浮かべて。
「ククク……斬られるのも悪くねぇ、血が滾る。俺が勝ったらなァ……俺の言う事、聞けよ?」
 ただ、相手はすでに体力的に厳しい状態。
 それを見て、レイチェルはそいつの周囲を深き闇で包み込む。
 できるだけ、致命傷を避けるよう配慮したレイチェルの一撃によって闇に包まれたそいつは、がっくりと気を失って倒れてしまう。
 息があることを確認したレイチェルは、周囲で戦う仲間の援護へと動く。
 予め、練られた作戦であることは明白であり、アルノーもイレギュラーズ達の戦法に小さく唸る。
 そのアルノーの抑えを……、最も負担が大きい部分を請け負っていたのは悠凪はというと。
「そらそらぁっ!」
 アルノーの大剣は悠凪を叩きつけるが、彼女も盾役を担うに当たり、クラスやエスプリの調整、スキルでの強化と万全の状態でこの作戦に臨んでいる。
 どこまで持つか、気力と根気の勝負。
 後は合間を見て、悠凪は構える大盾「ゼシュテルの壁」でアルノーを殴りつけていく。
 互いに力を見せ付けるのが目的だが、真剣勝負。本気で戦うからこそ相手に傷をつけるし、血を飛び散る。
 ヴァレーリヤもメイスで殴りかかり、攻撃支援を行う。
 だが、徐々に仲間の傷が深まると、ヴァレーリヤも治癒魔術の行使に注力し始めていたようだ。
 残るアルノー以外の剣士は、5人。
 中でも、低身長を活かし、相手を翻弄しながら燃え上がる炎を叩き込むニアが手早く両手剣持ちを追い込む。
 彼女は敢えて壁を背に戦うことで自身の相手を遮蔽物として利用し、他メンバーの相手から飛ぶ斬撃などをうまくやり過ごしていたのだ。
「うむ、丁度良い肉盾じゃな」
 ニアは相手の大剣を持つ腕をいなし、真下から胴目掛けて異能の炎を浴びせかけると、そいつは意識を失って後方へと卒倒していった。
 近場の舞花も、相手する両手持ちを追い込んでいる。
 相手の重い斬撃に身構えながらも、彼女は相手の動きに無意識で反応し、痺れを与えながらも一撃で敵を切り崩す。
 大柄な相手を倒しても気を抜くことなく、舞花は仲間の支援へと向かう。
 こちらは、部屋の隅へと二刀流を追い込んでいたオリーブ。
 ほとんどのメンバーにとって剣士達は大柄な相手だが、同じ鉄騎種のオリーブからすれば、やや小さい相手ですらある。
 素早く手数で襲い来る相手へ、オリーブは強烈な一撃を叩き込み、相手の態勢を大きく乱す。
 彼はその上で剣の柄頭の部分で相手のアゴを強く突き、昏倒させる。しばらくその剣士は起き上がっては来られないだろう。
 もう1体の二刀流と対するクライムは至近から攻撃し、相手と刃を重ねていた。
 敵をしっかりとマークをして相手にしていたが、徐々に仲間達が自身の相手を打ち倒して救援にやってくる。
 二刀流が両手の刃を振り払った瞬間、相手の間合いに踏み込んだクライムも『天穿ち』を真横に振るってそいつを切り伏せた。
 血を迸らせた二刀流剣士は一声呻き、気を失ったようだ。
 そして、両手剣持ちと最後まで交戦していたレイは軽やかにステップを踏みながら、相手を攻め立てていく。
 トリッキーな動きに加えて大鎌相手とあって、敵剣士もかなり戦いづらそうな感がある。
「見た目で侮ってはダメって、習ったよね?」
 微笑むレイに気を取られた剣士が頬を赤く染めるが、彼女はお構いなしに至近距離へと躍り込んで持ち手部分で殴りかかる。
 刃でなくとも、その重さで威力は十分。
 レイの一撃を受け、その両手剣剣士もまた修練仲間と同様に地を這っていった。
 これで、立っている剣士はアルノーだけ。
「どうした、威勢だけか!?」
 敵の大剣での斬撃に耐える悠凪だが、疲弊状況はかなり大きい。
 レイチェルが早くから治癒魔術で支援してくれてはいるが、それでも悠凪は激しく胸を上下させている。
 殴り合いの我慢比べはアルノーに分があったようだ。タイマンでかつ回復支援があっても、1人で抑えるには厳しい相手だったようだ。
 だが、そこに続々と他剣士を倒したメンバーが駆けつける。
 舞花が悠凪をカバーするように、アルノーの動きに合わせて集中からの斬撃を見舞う。
「手当てしますわ!」
 深手を負う悠凪に、ヴァレーリヤが治癒力重視で癒しの魔術を施す。
 さらにオリーブが肉弾戦を仕掛けていき、クライムも仲間の数で一気にアルノーを押し切るべく「地砕き」で斬りかかる。
「くっ……」
 その一撃で、構えを砕かれたアルノー。
「勢いだけが力じゃないって、言ったよね?」
 すかさず、レイが至近距離からサイズで多段牽制を行ってアルノーの足を止めると、ニアが背後から燃え上がる炎の力を浴びせかけた。
「今になって後悔しても、遅いぞ?」
 一気に敵が増え、さすがのアルノーも剣を持つ手に力が入らなくなってきたようだ。
「うおおおおおおおおっ!」
 だが、気力を振り絞り、アルノーは強引に力でイレギュラーズ達をねじ伏せよう2mを超える大剣を叩き付けてくる。
 舞花もそいつを押さえ込もうとするが、やはり単純な力比べではアルノーの方が上だ。
 このままでは、押し切られてしまうと思われたその時。
 なんとか仲間の術のおかげもあって持ち直した悠凪が再度アルノーへと張り付き、自らの盾で相手の顔面を殴り倒す。
「ぐ……、あぁっ……」
 ついに、アルノーの体躯が大きく揺らぎ、重い音を立てて修練場の床へと転がったのだった。

●力に屈したならば
 剣士達を全員倒し、ニアは大きくふんぞり返って。
「ほれ、儂等の勝ちじゃ。言う事を聞いて貰うぞ」
「ああ、負けは負けだからな」
 この場は屈したアルノーだが、いつかリベンジしたいと告げる。
 もちろん、この場は敗者として、イレギュラーズ達の要望に全面的に応える様子だ。
「勝利しても……、落とし処は難しいものね」
 どうしたものかと、舞花は考える。
 まず、ここでの夜間の修練は控えてもらうとして。
 住民達の苦情と真摯に向き合い、修練場の修復、移転について検討して欲しいとアルノーへと要望を出す。
「自分が同行しましょう。同じ鉄騎種であれば、話もしやすいでしょう」
 オリーブが剣士と周辺住人の仲介をしつつ、結果報告を行う形で事態は収まりをみせた。

 程なく、あちこち傷んだ修練場の解体が決まり、住民から苦情のでない集落端の辺鄙な場所へ修練場は移された。
 住民達の安眠は約束されたものの。この一件で逆にアルノー達の知名度が上がり、修練場の利用者が増えたのは別の話である。

成否

成功

MVP

久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏

状態異常

なし

あとがき

今回はお疲れ様でした。
盾となっていた仲間を果敢に庇いに入った貴方へ、
MVPをお送りしたいと思います。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!

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