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シナリオ詳細

<英雄譚の始まり>異界の地にて故郷を想えば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●異世界からの旅人

 ねえ、先輩たち。

 本当に、元の世界に帰れるのだとして、先輩たちは帰りたい?

 あたし? あたしは――

●『帰る』ということ
『異世界プレールジール』――混沌世界に隣接する混沌とは異なる世界。
 そこは何故か後に勇者王と呼ばれる青年やその仲間達が『魔王』を討伐しなかったという『IF』
 混沌よりも遥かに早く、世界の滅亡が迫るそんな混沌の『もしも』であった。
 幻想という国が生まれる随分と前。
 アイオンがいるということを考えればちょうど建国の前日譚とでも呼ぶべき時間軸。
 そこは国家として統一されていないからこその牧歌的な平野が続いている。
 ほんのりと黄昏がかる草原の景色は胸の奥に言い知れぬ寂寥とも感傷ともいえる感覚を覚えさせるか。
 イレギュラーズはその中を馬車に乗って揺られていた。
 元々は御者でもあるゼロ・クールを鍛えてほしいとの魔法使いの依頼を受けた一同は訓練を終えた帰途に着いている。
 疲労感というほどの疲労感もなく、ぼんやりと馬車に揺られる――そんな中。
「そうだ、先輩達。せっかくだから、少し話でもしようよ」
 ガタガタと揺れる馬車の荷台でクリーム色にも似た金髪の女性が笑いかけてくる。
 少女と女性の間、少しだけ笑って見せながら彼女は佐熊 凛桜(p3n000220)と名乗った。
 希望ヶ浜学園の大学部に所属する彼女は、異世界の地球から来たというイレギュラーズだ。
 凛桜の住む地球は正しく再現性東京によく似た世界であり、彼女はそこに住む平凡な女子高生だったという。
「混沌によく似ているけど混沌と違う世界……もしかしたら、元の世界に戻れるヒントがあるかもしれないって話だよね」
 そう口火を切った彼女は笑みをたたえたままに重ねて問いかけてくる。
「ねえ、先輩たち。もしもこの世界を探索して魔王とやらを倒して、混沌で原罪?を倒せたとして。
 その先で、本当に元の世界に帰れるのだとして、先輩たちは帰りたい?」
 穏やかなようでいて、どこか迷うような瞳で、少女と女性の間、僅かなモラトリアムの娘は問いかける。
「あたし? あたしはね――わかんないんだ。あたしのいた世界は、すごい平和だった。
 夜妖がいない再現性東京みたいな感じでさ……穏やかで平凡で、ちょっぴり息苦しいこともあるけど、自由でもあって」
 混沌よりも、ずっと安全だ――とそう言いつつも、凛桜はどこか遠い瞳でいる。
「そりゃあ、最初はね、戻れるものなら戻りたかったんだよ? 戻った時の為に希望ヶ浜で高校を出たわけだからね。
 ――でもさ、最近、ふと思ったんだよね……あたしは、『高校を出るぐらい長い間、この世界で生きているんだって』」
 彼女が何を言わんとしているのか、それでも十分わかる者もいるだろうか。
「もし仮に元の世界に帰れるんだとして、だよ? いつ、どのタイミングで帰るっていうんだろう。
 同じくらい時間が経った時? あたしたちが向こうから消えたタイミング?
 あたしでも3、4年くらいは経ってるわけで……もし仮に、同じくらい時間が経っていたとしたら。
 あたしは向こうからすると行方不明になって3、4年も経ってるわけだよね」
 ぼんやりと、流れる時でも眺めるように外を見ながら、凛桜は続けた。
「……探してくれてるのならまだいいよ。もしかしたら、そのせいでいざこざが合って、漸く新しい道を歩き始めてるかも。
 逆に、あたしが消えた時と同じ時に帰ったとしてだよ?
 向こうにいる同じ年の友人や、それ以外の家族よりも3,4年分長く生きてることになるわけで。
 ……あたしはその違和感に耐えれる気がしないんだ。
 そんなことを考えたら、本当に帰れるとして、帰るのが正しいのか分からなくなっちゃったんだ」
 そこまで言うと、凛桜はもう一度こちらに視線を向けた。
「ねえ、先輩たち。先輩たちは、元の世界に帰れるとして、帰りたい? 教えてほしいんだ。
 純種の人達も……お友達や、恋人とかがそうだとして――後は……そうだね。
 このプレールジールに取り残されてしまって、数年が経ったと仮定してさ」
 これはちょっとした世間話。
 それでも、君達へと問いかける――『本当に帰れるとしたら、或いは知り合いや大切な人が帰ることを選ぶのなら、どうしたいかと』
 そう問いかける、ただの世間話だ。
 深く考えて、これから先の自分を見つめ直すのもいいだろうし、そこまで深く考えず、感じたままに答えるのもいいだろう。
 凛桜もきっと、ただ聞きたいだけ――程度の、そんな感覚のように思えた。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 早速始めましょう

●オーダー
凛桜に自分の考えを話す

●リプレイ状況
 少しずつ慣れてきたプレールジール世界探索。
 皆さんは希望ヶ浜学園の生徒である佐熊凛桜と一緒に偶然ながら探索することになりました。
 本来の目的は魔法使いからの要請でゼロ・クールの訓練をしてほしい、という物でしたが、それはもう解決した物とします。

 訓練からの帰りがけ、黄昏の草原を走る馬車の中で凛桜から皆さんは『元の世界に帰れるとして、帰りたい?』と問いかけられました。

 旅人であれば、帰りたいかどうか、それにその先まで思っていることを話してみましょう。

 純種であればお友達や恋人、家族といった人で旅人がいるのなら、その時が来たら自分がどうしたいかを。
 あるいはこのプレールジールに取り残されて、数年が経ったと仮定して帰りたいかどうかを想像してみるのもいいかもしれません。

 とはいえ、雑談です。
 深く考えて話しても良いでしょうし、深く考えずに話してもいいでしょう。

●NPCデータ
・佐熊 凛桜
 希望ヶ浜学園に所属する大学生、イレギュラーズ。
 オタクにも優しいギャル系お姉さん。ROO事件にも参加していました。
 ある程度の死線を潜り抜けこそしましたが、まだまだ皆さんの方が死線の数も多いので、
 イレギュラーズの皆さんの事は全員『先輩』として敬意を示しています。

 凛桜自身の元の世界に帰りたいかどうか、はオープニングの通り『わからない』です。

 もし帰れるとしても、元の世界とこっちがどれだけ時間の差があるのか、向こうに残っている人たちがどういう反応をしているのか分からない。
 もしも探しているのなら、帰りたいという気持ちもないわけではない。
 逆に、やっと自分のことを区切りをつけることができた後なら、今更戻るのは誰も幸せにならないからやりたくない、といった具合。

 皆さんならどう思うのかを知りたい、程度のニュアンスです。
 本気で考えるも良し、雑談程度の気軽さの感覚で答えるのも良さそうです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <英雄譚の始まり>異界の地にて故郷を想えば完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月06日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトスはぶっ飛ばす
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女
トール=アシェンプテル(p3p010816)
男の矜持

サポートNPC一覧(1人)

佐熊 凛桜(p3n000220)

リプレイ


 黄昏の橙に彩られた地平線を馬車は行く。
 まず口火を切ったのは『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)であった。
「俺は帰る。息子に、梨尾に会わないといけないんだ」
 ぎゅっと手を握り締める。
「俺の世界は色んな所から侵略者が来る地球で、俺も侵略者に造られた生物兵器だったんだが……
 色々あって元がついて、同じ元生物兵器を養子として迎える事になった」
 混沌に来て、全てを思い出した。
 小さな、最愛の息子。たった数年の親子だった。
 それでも、大切な思い出だった。
 たった数年、たった数年にさせられて、俺は新たな敵に洗脳される羽目になって。
「……梨尾が、終わらせてくれたんだ、洗脳された俺を」
 声に漏らす。
 覚えている、忘れられるはずのないその瞬間の事を、覚えている。
 大きくなった姿、ウェールよりも強くなったことへの喜び。
 痛みを忘れて呼ぼうとした名前は呼べなくて、それでも伸ばした手に、これがあった。
 可能性を貯める銀色の懐中時計は、その時のかけがえのないものだ。
 涙ながらの声、『さようなら、パパ』って、俺を抱きしめたあの子の温もりを思い出せる。
「だから、絶対に帰る。
 沢山のごめんとありがとう、梨尾と今度こそ名前を呼ぶ為に
 もう一度懐中時計を贈るために、絶対に帰って離れていた分も梨尾の事を見守るために。
 どんなに時間差があろうと、もしも梨尾が死んでいたとしても父親として帰って名前を呼びに行く。
 そうしないと俺は胸を張って生きることができなくなるから」
「……そっか。そんなに思われている息子さんは幸せだね。うん、それなら絶対に戻るべきだよ」
 そう言って凛桜は頷いて見せる。


「ふむ、タイミング云々は考えた事もなかったな……確かに時間のズレが起こりそうか。
 言う通り召喚当時の可能性もあるが、もしかすると今よりも未来になるかも知れないかもな。ゾッとする話だ」
 そう頷きながら『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)はそれでも、と語る。
 振り返れば、本当に長い道のりだった。
「だがな、俺にとっては此処は外国と変わらないんだ。
 無論、だからどうでもいいし滅びれば良いって訳じゃないぞ?
 愛着はあるし、友人も居るんだから見捨てる選択肢は元からある訳ない。
 それでもここで一生を終えたいとは思わない。ここはあくまでも遠くの地で、故郷とはかけ離れているから」
「外国……そっか、そう考えれば、そうなのかな……」
 ぽつりと凛桜が呟くのを聞きながら、マカライトは続けていく。
「……それに、死ぬ時は故郷の土に埋まりたいんだ」
 邪神憑きになり、人とは言えぬようになっても変わらず接してくれた多くの人がいた。
 そう言った人々が眠る故郷で、最期を迎えたいと、そう思う。
「まぁ、老衰で死ねないから結局戦って死ぬことになる訳だが……その時まで家と仲間の墓を磨いてやらないといけない。
 だからどんな時間に戻されても帰るんだ。戻るのが時の経った今でも未来であっても、『己』が生まれて育った故郷には変わらんからな」
「……うん、その話は分かるよ。言われてみると、あたしも故郷の土で眠りたい……かも」
「まぁ、流石に恐竜のいるような過去に戻されるのは勘弁願いたいな」
 そう言って頷いた凛桜に、そう言ってやれば、彼女が少し驚いた後、思わず噴き出したように小さく笑った。


「俺も元の世界に戻るつもりだ」
 続けて『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)もそう語る。
 混沌もそうではあるが、それ以前に元の世界にはまだ見てない場所がたくさん残っているはずだった。
 まだ見ぬ景色を、各地の遺跡を洞窟を駆け巡るのが好きだった。
 未知を探索し、既知になっていく過程が好きだった。
 そこには束縛もしがらみもないから――そして、何より。
「俺をこんな格好にした呪いについてもっと調べたいんだ」
「先輩は元々その姿じゃなかったんだね……」
「あぁ、元は普通に人間だった。でもある時、宝石の呪いでこんな姿になってしまった。
 誰がどういう目的でかけたものなのか…それが分かれば元に戻る手がかりになるだろうからな」
(……でも、改めて帰るときのことを聞かれると色々考えてしまうな。
 元の世界と違ってこっちでは色んな奴らと繋がりを持った。
 イレギュラーズの仲間とか、希望ヶ浜の奴らとか、アーカーシュのゴーレムとか……)
 実家にいた頃の社交と言えば、それは政治が絡むもので、冒険していた頃に至っては独り旅立った。
 そう言う意味では、誰かと普通に仲良くなるというのは、混沌に来てから経験したことの木もする。
「……仲良くなった奴らと離れ離れになると考えるとなんだか寂しい気もしてくるな。
 まあ、だからといってこっちに残るって選択肢は取らないと思う。
 例え住んでる世界が違っても育んだ絆はきっと消えない……って、なんだかそんな気がするからな」
「……すごいね、先輩は」
 少しばかり首を傾げ考えていたライが顔を上げてみれば、そう言って凛桜が目を瞠って感心していた。


「異世界プーレルジール……異なる世界と繋がった……となったら、旅人たちの元の世界の事を考えちゃうのも無理ない事よね」
 そう語る『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は問われた事を思い直して、振り返る。
 言われてみれば、沢山の大事な人達のために、自分の為に駆け抜けるのが精いっぱいで、そんなことに想いを馳せる余裕はなかった。
「元の世界に帰れるとしたら、かあ……」
 改めて、想い浮かべてみる。
 懐かしい故郷、魔女たちが夜毎ほうきに跨り夜空を駆ける、少し平和とは言い難かったけれど、昼は穏やかな再現性東京とも似たあの世界を。
「わたしの故郷はね、あなたと似たような、再現性東京みたいな街なの
 ただ、空は魔女達が飛び交い、夜には魔物が現れる……ちょっと平和とは言い難い世界かも?
 わたしはそこでは名家と呼ばれる家の生まれだったんだけど……いや、これは蛇足ね」
 ぽつりぽつりとそう語ってみせれば、少しだけ凛桜の表情には驚いたようにも興味深そうにも見える揺れがあった。
(故郷では生まれに反して落ちこぼれだった。家からの重圧と、力不足に悩む日々だったから……)
「こほん。まあそれはさておいて! 帰りたいか、って聞かれたら、今の所はノーだわ」
 軽く咳払いをして言った言葉に凛桜は「どうして」とでも問いたそうに見えた。
「だって、この世界に来てからいろんな人に出会った。
 大事な人達と出会ったの。仲の良い友達。目標にしたい人。
 それに姉妹……うん、血の繋がりは無くても、本当の姉妹のように大切な人達。
 それから、ずっと傍に居るって約束した人も……そんな人達を置いて元の世界に帰る気にはなれないもの」
「……そう、だよね」
「もちろん、そういった人達で帰りたいって言うなら、それは止めたりはしないけどね。
 ちょっと寂しいけど……元の世界に大切な人や、大切なものがある人だって居るでしょうから……」
 仲の良い友達の一人であるトールを少しだけ見てからそう言えば。
「どうせなら、みんなの世界とも自由に行き来出来るようになればいいのにね。
 ……それはそれで、世界によっては大混乱になっちゃうから良くないかしら?」
「ふふ、そうだね。あたしの世界でも大混乱になりそうだね……微妙に受け入れそうなところもあるけど」
 冗談めかして言った言葉に、凛桜が頷きながら小さく笑った。


「……私は一日でも早く戻りたいなと思っています」
 そう『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は言う。
 そっとボロボロになった輝剣の柄に触れてから。
「私は一国の女王に仕える近衛騎士だったので、物心ついた頃から近衛としての生活をしていましたし……それから――」
 少しばかり目を閉じて、その女性の事を思い浮かべてみる。
「なんだ、ようやく戻ったか。人手が欲しかったところだ、手伝え」
 感動とは無縁の、いつものような天上天下唯我独尊を絵に描いたような自信満々の笑みと共に声をかけられる気がする。
(あの頃は女王様が世界の全てだった。
 それを態度に示すことも口に出すことも無かったけど、家族みたいだと思ってた)
 主従とはかけ離れた感情をおくびにでも出せば、それをネタにどんな無理難題を命じられるか分からない――少なくともトールはそう思う。
(……そういえば、それも気になるんだ)
 14歳の時、『今日からキミは私に仕える騎士だ。今はそれだけを考えて生きろ』と女王様に言われて、その通りに生きてきた。
 よくよく振り返っても、トールの記憶はそこから始まっている。
 その理由を、何故か彼女が知っている気がしていた。
 女王という立場であることを差し引いても、彼女は何かを隠しているんじゃないかと、トールはそう思うのだ。
「でもその前に、何処かにいるはずの家族を探して、まずはゆっくり話して、お互いの事を知りたいです。
 そして、元の世界に戻って女王様に聞きたいことがあるんです」
 前者は、この世界に訪れているある3人の事だ。
 トールの事を『弟』と呼んだ彼らは、練達での遭遇の後、動きを見せない。
「私は自分のことを知るためにも元の世界に戻らないといけないのです」
「……目的があるんだったら、戻りたい、戻るべきだっていうのはその通りだね」
 こくりと、凛桜がそう頷いた。


「……さて。俺はどう言えばいいのか」
 各々の思いを聞きながら、『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は小さくそう呟いた。
「お前達には故郷がある訳だ。俺は、はるか昔に置いてきてしまったらしい。
 もう手の届かない過去、そこが俺の帰るべきだった場所なのだろうか」
 静かにブランシュは語る。暫し目を伏せて、ゆっくりと、その瞳を凛桜に向けた。
「そうだな。俺の――エルフレームシリーズの話をしよう。
 魔種殲滅兵器エルフレームシリーズ。それが俺の存在理由らしい。
 その昔もその昔だ。それこそこのプレールジールと同じ時代だったのかもしれない。
 一人の科学者が『家族を魔種に殺された』と復讐を誓って、俺たち7機を作り出した」
 だがそれはおかしな話だ。彼のいた往時、魔種は御伽噺の存在であったはずだ。
「それでも頑なに魔種だけを殺す兵器を作り続けた。
 ありもしない架空の存在を殺すと言ってるようなものだ。狂気の産物だよ」
 紆余曲折の果てに眠りに着き、戻るべき場所を遠い過去にしてブランシュは目を覚ます。
 秘宝種――レガシーゼロとして。
「最終的には、1機が魔種に反転した事により、俺以外の6機が呼び声に答えたようだ。
 人間として生きている証だと、その反転した奴は言った。
 その理論でいうのなら、俺は人間ではなくゼロ・クールと同じ機械な訳だ」
 ニヒルに笑うように語れば、ブランシュはざっと周囲を見やる。
「そんな俺とは違いお前たちは人間な訳だが、帰るべき思い出があるのだろう。
 だとするならば、此処を故郷とするよりはあるべき場所に帰った方がいいと俺は思う。
 この混沌より平和だった思い出があるのならば。逆に、悲惨だった者はこの場に留まればいい。
 悲劇が起きたとしても、もうそれ以上の悲劇は無い。後は上を向くだけだろう」
「……平和かどうか、か。そんなこと物差しで考えたことも無かったな。
 じゃあ、先輩は? 先輩はどうなんだろう?」
「俺か? 俺は今も生きるべき理由を探し続けてるよ。帰る場所も無いのだから」
「……あたしが言うのも変だけど、見つかると良いね」


「元の世界…そうですね、私自身、元の世界と明確に言えるような帰る場所という物があるかと問われると曖昧な気がします。
 いくつもの世界を渡り歩いて成長の兆しが見えなくなったらそれを刈り取ることを何回もしておりましたからね、基本的に私は孤独な無為の神です」
 そう語った『心よ、友に届いているか』水天宮 妙見子(p3p010644)に凛桜が驚いたように目を瞠る。
「先輩はすごい神様なんだね……」
「そうでしょうか? 私本来の在り方はそういうものですし……お気になさらず私のお話を聞いてくださいましね」
 首を傾げつつ言えば、凛桜が少しばかり緊張しているように見えた。
「……強いて言うなら失った友人がいた世界に戻れるなら少し戻ってみたいと思わなくはないです。
 ですがそれは一時的な慰めにしかならないとも思っております。
 今更終わったこと嘆くよりも未来を護るために今を戦うことが大事だって……この世界に来てから学んだことなんです」
 妙見子は少しだけ周囲に視線を向けて、改めて凛桜の方に戻す。
「私はこちら側に来てから大切なものを作り過ぎた気がします。
 ここにいるトール様やセレナ様、ブランシュ様もそうです……ずっと一緒に居たいと思った方々がたくさん……数えきれないほどにいらっしゃいます。
 それにね、私誓ったんです。この世界を、この世界を愛している人たちのために護りたいと。
 雪が解けた春の日に誓ったのです。だからきっと今は元の世界に帰るという選択肢は私の中ではありません」
「やっぱり、そうだよね。大切な思い出があると、どちらかと離れるのは……」
「凛桜様は迷ってらっしゃるんですよね?
 元居た世界に大事な家族やご友人がいらっしゃるのなら尚更迷うことも多いでしょう」
 妙見子は凛桜の手を取り、真っすぐに視線を向けた。
「今はまだ迷っていたっていいのです」
 時間はまだあるのだと、戻ることのできる可能性も含めて、まだ見えて来たばかりのことだ。
 悩む期間は、まだあるはずだから。
「何を選んだとしても私もここにいる皆さんも誰も貴女を責めたりしませんよ。
 どうか気を落とさないでくださいませね」
「……ありがとう、先輩」
 そう語った少女はどこか心のつっかえが緩んだように見えた。


「私は旅人ではないですが、私の好きな人が旅人です。
 彼もまた再現性東京に似た世界から来たそうなのですが、もしも彼が元いた世界に帰るというのであれば私にはそれを止めることはできません」
 そう話を始めた『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)に凛桜が興味深そうに身を乗り出した気がする。
「彼には元いた世界に家族がいて、そこには彼の好きなものもあるから。それに……」
「それに?」
「私は彼のことが好きだけど彼にとって私はただの友達でしかないので……」
 続けた言葉に凛桜の表情が先程までとも微妙に色の違うものになる。
 まるで恋バナを聞きたがる年相応の女の子のようにみえた。
「でも、彼が元いた世界に帰るならその方が幸せなのかもしれません。
 もしも彼が私のことを好きだったら、元いた世界に帰るかどうか余計に悩んで苦しむことになりますから」
「そうかな……そうかも……うぅん……あたしじゃ返答できない話だね……」
「ええと、私がプレールジールに取り残されて数年経っていた場合ですか?
 その場合、私は帰りますよ。幻想種は長命なので数年程度ではあまり変わりません。周りの人が変わっていたとしても私が私であることに変わりはないですし、戻ったことで以前のような関係が維持できない相手とは距離を置くようにしますけど」
 空気を変えるように、リディアはそう話を続けていく。
「どんなに考えても他人の心は測りきれるものではないですから、
 あまり思い悩んでも結局は実際に帰ってみないとわからないと思いますよ」
「……そう、だね。それは、その通りだと思う」
「それ機会を逃して後悔するよりは過ごしやすい元いた世界で生活環境を再構築するまでの時間を我慢するほうが後悔は少なそうな気がしますよ?」
 リディアはそう続けるものだ。
 機会というのは常にあるのではないのだからと。
「それに、元いた世界の人にまた会いたくはないですか? 一緒に過ごしたいとは思いませんか?」
「また会いたい人、かぁ。そうだね、両親になら、もう一度……お別れも言えなかったから会いたいね……」
 そう、彼女が頷いたのを見て、リディアは笑みをこぼす。
「……おや? もう着くみたいだね。先輩たち、ありがとう。
 まだすぐには決められないけど、うん。有意義なお話が聞けて満足だよ」
 何ともなし外を見た凛桜がそう言って微笑むのとさほどの差もなく、ゼロ・クールから到着を知らされた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ

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