PandoraPartyProject
星の雨が降る空
『滅びを見守る少女』ステラ――彼女は気乗りがしなかった。
自分の中に違う自分がいるような、存在しない記憶に惑わされるような、そんな気持ちにさせられるからだ。
それでも――。
「私は、滅びを見守る。それが役目だから」
ステラは宙空に腰掛けるようにふわりと足を組むと、眼下の星界獣たちに語りかける。
「今度ばかりは、準備はできているのよね?」
「ああ、準備万端。むしろ、過剰戦力とすら言えるな」
常人の倍以上の体躯を持つ人型星界獣がそんな風に答えると、後ろを振り返った。
そこにはずらりと星界獣たちが並び、出撃の時をじっと待っている。
幼体は数え切れない程おり、戦闘力に特化した生体の数もまた数え切れない。
「これを覇竜全域に、ね。確かにそこまですれば、イレギュラーズたちもそうそう手が出せなくなるだろう。我々の計画に」
頑丈そうな盾を装備した人型星界獣がそう言いながら、はるか後方を眺める。
人間からすれば、あまりに絶望的な戦力だろう。
これが今から攻め込むというのだから、同情する心すら生まれてくる。
人型星界獣は首を振り、そしてステラに向き直った。
「今回は本気のようだな」
「いつも本気よ。これまでは、思うように数が揃わなかっただけ」
ステラはつんと顎をあげ、どこか不機嫌そうに言う。
「けれど今回は違うわ。これで、『大いなるもの』を呼び出せる」
絶望の代名詞。滅びの実行者。すべてを喰らうもの。最強の星界獣。通称、『大いなるもの』。
その力はあまりにも絶大で、誰にも止めることができない。
Bad End 8として知られるステラですら、その端末に過ぎないというのだから。
「それが済んじまったら、さすがのイレギュラーズ連中も手が出せないってわけか。痺れるねえ」
両手を大砲にした人型星界獣が肩をすくめて言えば、隣でゆっくりと魔術を組んでいた人型星界獣が『確かに』と呟いた。
「『大いなるもの』は人の手でどうにかできるような存在じゃない。いわば歩く災害だ」
「そう、ね……」
ステラは足を組み直して遠くを見つめた。
「この世界も滅びるんだわ。やっと――」
目を、細める。
「苦しくて、つらくて、嫌なことばかりのこの世界。もう生まれてこないようにしてあげる。みんなみんな、救ってあげる」
この世界はつらいことばかりだ。
生きていれば、それだけで苦難ばかりがふりかかる。
ならばいっそ、すべてを滅ぼして消し去ってしまえば良い。
もう誰も生まれてこなければ、誰も悲しむことはない。
それがステラの、せめてもの優しさであった。
※『終焉』勢力は、未だ世界中にて活動を続けているようです……
※『バグ・ホール』の発生と共に混沌中で魔種による事件と甚大な被害が蔓延しつつあるようです……
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