PandoraPartyProject

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崩落のザックーム

 天と地が混ざり合えば、それは沈み込むように全てが落ちていく。大海のスープは全てを溶かし尽くしただの一つとなるだろう。
 戦に疲弊した大地に夥しい枯れ草の死骸が重なり合うよりも先に、踏み荒らす無法者を消し去る方がもっと良い。
 其れ等は先行きも無き希望を抱き、孤高たる世界の頂きより慟哭を上げるがだけの愚か者と成り果てるだろう。
「――待て」
 眼前の女の『口上』に対して全剣王ドゥマはげんなりとした顔を見せた。
 殊勝な態度をとったのは、邪魔立てすれば目の前の面倒な気質を有する魔女は不快感を前面に押し出すからだ。
 ドゥマと『魔女』の相性はそれ程良くはない。事を運ぶならば繊細なタッチで、それこそオルガンの鍵盤を優雅に弾き鳴らすように為し得たいと望む女と武こそ全てと誉れを振るう男は対極にあった。
「平坦に言うが良い、古代の魔女ファルカウよ」
「微睡みの揺り籠より下ろされてしまったのであれば、秒針は重なり合い、時をも切り裂く刃物となりましょう。
 ……何れ、終らねばならぬのです。この世界は戦に濡れすぎた。
 わたくし達、この世界に生きる者がこの世界の異物と成り果てたというならば、いずれ世界は崩れ落ちることでしょう。
 何と悍ましきことでしょう――
 あれとて、この世界が生み出したものに他なりません。
 わたくしたちは、全てが終るために生きている。違いはありませんわ」
 魔女ファルカウの瞳には怒気が孕まれていた。ドゥムはおとがいを撫でやってから「あれ、か」と指した。
 その先には山の如く聳え頭を垂れた『ベヒーモス』が居る。背からはぼろぼろと溢れ落ちる欠片達が各国へと移行しパンドラを喰らっている。
 だが、そうこうして居る間に危険であると認識されるあの巨体は終焉の監視者『クォ・ヴァディス』と覇竜観測所による『データ蒐集』の結果、討伐隊が組まれることだろう。
「魔女よ、貴様の千里眼でベヒーモスに何かがあったと?」
「いいえ。ですが、時間の問題でしょう。わたくしは、あの子はこの世界に生きとし生けるものへと下された審判だと思っております。
 だと、言うのに世界の選択をも否定し、新たな戦の種を植付けようとするなど、許せざる事でしょう」
 ファルカウの瞳に僅かな焔の色が灯った。聞き役に徹することのない男、全剣王ドゥマはこの嫋やかで美しい魔女の横顔を眺めながらも口を挟まない――彼女の言葉は難解だ。それでいて、口を挟む隙など与えぬほどに流暢に怒りを伝えてくる。
 ドゥマはBad End 8の中でもこの女を取り立てて重用しなくてはならない理由があった。
「魔女」
「何か?」
「ベヒーモスとやらを動かすには?」
「時間が掛かりましょう。その前に、飛び交う虫の羽を捥いでしまいたいのですわ」
「ふむ……丁度暇をして居た頃だ。手を貸してやろう。魔女よ、貴様はあのデカブツの管理を任されているのだろう」
 鼻先を鳴らしたドゥマにファルカウはせせら笑った。
 女はベヒーモスと呼ばれたこの怪物を『動かす準備』をしているらしい。
 ラサの砂漠を焦土と化し、影の領域と覇竜領域を守護せんとする無法者を消し去る算段だ。
「ええ。準備とは入念に。彼を起こすのであれば、エスコートの準備をして居なくては嫌われますわ、全剣王。
 夜闇のヴェールに微睡む子供は、腹を空かせて泣きじゃくっておりますもの。
 十分にディナーを準備して差し上げなくっては。さあ、行ってらっしゃい。わたくしの可愛い『滅石達』よ」

 ――ローレットに至急の連絡が入った。
 竜種、亜竜達の観測を行なう覇竜観測所と影の領域の観察を行って居た影の監視者『クォ・ヴァディス』に同時に敵襲があったと。


 ※『終焉』勢力は、未だ世界中にて活動を続けているようです……
 ※『バグ・ホール』の発生と共に混沌中で魔種による事件と甚大な被害が蔓延しつつあるようです……


 これはそう、全て終わりから始まる物語――  Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(??編)

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