PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

リインカーネイション

 波の気配が立った。静かに息を呑む、前を見る。スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は目を伏せる。
 女は天義に産まれ、そして『天義の聖職者』となった騎士の娘だ。
「長かった戦いに終止符を打つよ。ここまで来たら意地と意地のぶつかり合い……諦めずに全力でぶつかるのみ!」
 ――『聖職者』であった娘が志したのは『聖女』だった。
 父は断罪された。母は産まれた最中に死してしまった。叔母は一族を守る為に祖父をも殺した。
 残された希望(スティア)。叔母の愛情を一身に受けた育った娘は、記憶を失っても尚、この国へと戻った。

 私は絶対に護るよ。
 スティアの唇が震える。眼前のルストの唇は吊り上がった。

「二度だ」
 ルストが唇を吊り上げる。
「この二度で貴様等を殺してやろう」
 ――光る、その気配に「させないけれどね」と囁いたのは、スティアだった。
「奇跡は願うものじゃなく、自分自身で掴み取るもの。例え滅びの未来が確定していたとしても覆してみせるよ。
 だって私達は特異運命座標なのだから! お願い力を貸して、リインカーネーション! 必ず皆を守ってみせる!」

 ――わたしは。

 リインカーネイションはヴァークライトの女性が代々に受け継いできた護りの守護である指輪だ。
 早くに亡くなった母より赤子の頃から受け継いだそれは『セシリア・ヴァークライト』と同じ聖女が受け継ぐ(リインカーネイト)するものだ。
 たった一度きりの聖女の力。
「理想郷と共に朽ちてしまえ! 偽りの神!」
 波をも覆う花の息吹。眩く揺らぐ、スティアの魔力。その障壁の向こう側でルストは憤慨し、叫ぶ。
「貴様ッ――――!」
 ルスト・シファーは『聖女』と呼ばれた存在を厭うている。長い歴史を過ごしたが、それらは須く男の理想をへし折り続けた。
 彼の女の所業は、正しく聖女ではないか!
 守護の結界。リインカーネイション。指輪に罅が入る。構わない、祈れ、祈れ。願い続けろ。

「私はスティア・エイル・ヴァークライト! お前を滅する聖女だ!
 ――聖女の守護の名の元に、朽ちて散れ!」

 リインカーネイションの魔力が吹き荒れる。鮮やかな花弁の下を『ロウライト』の娘が走った。
 正義の執行は、己の義務だ。サクラ(p3p005004)は常に知っていた。
「まだ、一度だ。貴様等を喰らってやる。聖女よ、貴様の権能は此処で潰える、人など無為なる命だと完全なるこの神が証明してやろう!」
「いいや、確かに人間は完璧には程遠い不完全だ。
 だけど不完全故に、到達がない。それは限界がないという事だ! 私達は不完全故に、『人間』故に、神を超える!!」
 サクラが吼えた。スティアの祈りが周囲を包んでいる。
「祈りとは神に救いを求める行為じゃない! 己の胸の内を確かめるもの!
『神様、どうか我々の成す事を見届けてください』と願う事! それが信仰だ!」
 それが、己の在り方で、天義の在り方で、祈り全てが世界の在り方を定めたのだから。
 すらりと禍斬・月を抜き放った。
「私はイレギュラーズ、そして天義の聖騎士! ロウライトの名と責を負う者! サクラ・ロウライト!
 ――『冠位傲慢』ルスト・シファー!祈りの時だ!」
 砕け散っても構わない。力を貸して、お祖父様。
「輝け、禍斬! ――禍斬抜剣!」
 上段から叩き斬る。振り下ろした刹那、刃がぱきりと音を立てた。
「ロウライト、忌々しい騎士め!」
 ああ、そうだ。忌々しい騎士で良い、堅物で正義の執行者として知れば云い。
 正義のために光はある。正義の『遂行者』として女は立っている。
「禍斬抜剣……十字閃(クルス)!!」
 サクラの禍斬が割れた。ルストの胴に刻まれる十字。
 崩壊する世界の波に、修復を行なうルストが叫ぶ。
「『不完全』め――――!」
 波が、更に立った。スティアの祈りが包む、それだけでは足りないか――

 ※聖遺物が呼応しました――


 ※神の王国に対する攻撃が始まりました!!

 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM