PandoraPartyProject

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最強を騙る

 近い将来、世界が滅亡する。
 それは、イレギュラーズとして呼ばれたものであるならば、聞いたことがある言葉。
 神託の乙女より告げられし、絶対に外れない『神託』。
 超終局型確定未来――通称<D>の発生による、あらゆる世界の破滅。
 イレギュラーズたちは、それを回避するために、これまで戦い続けてきた。
 滅びを齎さんとする魔を、冠位魔種と呼ばれる者達とも激闘を繰り広げ、残る七罪は残り二柱。
 滅びを覆さんとする戦いは続き、しかし滅びの気配はまだ消えない。
 戦いはまだ続く――あなたたちの、戦いは。

 玉座の中心に、全身鎧の男が座っている。その傍らには、古びていながらも、どこか恐ろしい気配を持つ巨大な魔剣がある。
『全剣王!』
 誰もがその名を讃えるだろう。全剣王と呼ばれた男は、その無造作に刈られた髪を力強くなでた。男が睥睨するその先は、謁見の間である。そこには、有象無象の『人型であることのみを共通点とした異形』たちが、千とも、万ともの数ほどに、侍、控えていた。
「謳え」
『全剣王!』
「謳うがいい」
『全剣王よ!』
 熱狂のように、異形たちが吠える。
『全剣王よ! 最強の名を恣にした、我らが王!』
 全剣王は、その片手を無造作に上げた。すると、熱狂のままにごうごうと唸っていた怪物たちは、ぴたりとその動きを制した。全剣王の命である。従わぬものはここにはいない。
「好い。さて、残滓どもよ。我が最強の残滓より生まれた、『不毀の軍勢』どもよ。
 終局的破滅は近い。如何にイレギュラーが足掻こうとも、この未来は変えられまい。
 何故か――最強たる、オレがいるからである」
 おうおう、と軍勢は吠えた。
廃棄世界の間抜けどもも何やら動いているようだが、所詮は塵芥よ。
 さて、時はきた、と言っておこうか。不毀の軍勢よ。貴様らはその最強の名の赴くまま、世界を蹂躙せよ。
 まずは――あの不毛の砂漠を、その足跡のもとに踏み鳴らせ」
『王よ! 最強の王よ! 仰せのままに!』
 ――軍勢は、歓喜のままに王命を承る。
 ラサにて、新たなる敵性存在、『不毀の軍勢』が姿を現したのは、この王命のすぐ後の事となる――。


「全剣王、ですか」
 そう言ったのは、ラド・バウ闘士であるメルティ・メーテリア(p3n000303)だ。その言葉に頷いたのは、珱・琉珂 (p3n000246)である。
「どうも、そう言っていたらしいの。『我ら全剣王の斗である』って」
 『終焉の監視者(クォ・ヴァディス)』たちの拠点とする建造物の一つ。ラサの砂漠、『南部砂漠コンシレラ』に存在するその場所で、二人は顔を突き合わせていた。
 というのも、ラサに突如として『不毀の軍勢』を名乗る人型異形の敵性存在が現れたのだという。
 そして、彼らが共通して口にする言葉が、『我らは最強』という驕りと、『我らは全剣王の斗である』という言葉であったのだ。
「心当たりがあるの?」
「というか、鉄帝の出身者は知っているかもしれません。
 『全剣王(すべてのつるぎおさめしおう)』。ぜんけんおう、とも呼びますが、彼は鉄帝において伝説上の人物です。
 生涯不敗にして最強の皇帝。この世に生まれ落ちしその瞬間から一切の存在に敗北を喫することはなく、世に存在するすべての武・魔・防の技術を修め己が力とした、つまり『全剣の王』。一説によれば、鉄帝の建国王ともいわれています。
 鉄帝のものなら、きっと一生に一度は夢見る『生涯不敗』の称号を持つ唯一の存在。という、おとぎ話です」
「おとぎ話、なの?」
 琉珂が目を丸くするのへ、メルティはクスリと笑った。
「そうですよ。生涯不敗なんてのは不可能ですし、帝位を退いているのならば、つまりどこかで負けているはずなのです。
 にもかかわらず、彼は姿を消した。負けた記録も、死んだ記録もない。だから、おとぎ話です。が――」
 ううん、とメルティは唸った。
「そっかー。魔のものならば、ありえなくもない、ですね」
 どこからキラキラした瞳で、メルティは言う。なるほど、頭が鉄帝である。きっと「斬りあい(おはなし)」したいなー、と思っているに違いない――と、琉珂は思った。
「全剣王の目的はよくわからないけれど、不毀の軍勢は戦力として強力で、生半可な戦士じゃ相手にもならないのは事実なの」
「となると、やはりここは鉄帝式で行きましょう。最強には最強をぶつけるんです。つまり、ローレット・イレギュラーズの皆さんを」
 そうメルティが言うのへ、琉珂は頷いた。
「皆には、苦労かけるわよね……」
「そうですね。ですけれど、ローレットの皆さんが最大戦力であることは、事実なのですから」
 メルティの言葉に、琉珂はもう一度頷いた。
 世界は激動の渦の中にあり、そしてローレット・イレギュラーズの助けを、必要としている。
 これは、目を背けようのない、現実に違いなかった。

 ※ラサ、深緑、覇竜それぞれに新たな敵の存在が確認されました!
 ※ラサにて出現した不毀の軍勢の迎撃作戦が開始されています!

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

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