PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

ヴァズの知らせ

 ラサ西部――比較的深緑近い場所に存在する『ヴァズ』は砂漠はまだ残る物の少しずつ緑が見え始める場所である。
 豊富な湧き水を湛えたオアシスを中心にラサと深緑の交易を中心に行い、幻想種との貴重な架け橋となるこの都市は旅人の休息の地であり、深緑の玄関口の一つであった。
「ぷはあー」
 水を勢いよく飲み干したのは妖精フロックス。『紆余曲折』があり何とか妖精郷からラサへと脱出した精霊種(妖精)の一人である。
「無事でよかったの! サイコーなの! 祝い酒をキメてハッピーになるの!」
「そんな場合じゃないのです!」
 エアグラスを掲げたストレリチア(p3n000129)はショックを受けたようにフロックスを見遣った。
 この交易の地、ヴァズにフロックスが何とか辿り着き森林警備を行っていた幻想種に保護されてからは話が早い。
 イレギュラーズや難を逃れた深緑の者達との合流を果たすことが出来てフロックスは先ずは一安心だと漸く翅を休めたのである。
「んふふ、それにしてもビックリしたよ。メルメルが何か咥えてたからさ!」
「そ、そうです。フロックスはパカダクラに咥えられて此処まで……」
 メルメルと呼ばれたパカダクラが「だかぁ」と相槌を返す。森の『際』と呼ぶべき国境線を散歩していた幻想種アルリア・レ・ルマールは家に帰れなくなった代わりに妖精を拾い、交易都市のヴァズへとやってきたそうだ。
 そこで情報収集に当たっていた森林警備隊のルドラ・ヘス(p3n000085)と合流し――
「それで、もう一度話を聞かせて貰っても?」
「ええ。最初から説明して欲しいの。丁度、イレギュラーズさんたちも到着する頃だから」
 アンテローゼ大聖堂から脱出を図り、命辛々外へと逃げ果せたイルス・フォル・リエーネフランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)の両名に一先ずの状況説明を行っていたらしい。
「はいです。フロックス達妖精は『深緑の異変』を感じとりました。
 女王様――ファレノプシス様は大迷宮ヘイムダリオンにも異変が感じられると、直ぐに妖精に使用を禁止したのです。
 妖精郷は元から外部との交流を必要とはしていないので、深緑が変な茨に覆われても問題は無かったですが……」
「遊びに出掛けていた妖精達が心配で、情報収集のためにフロックス、君が来たと?」
「はいです。外に出る事は出来そうになかったですが……その、魔種……ブルーベルはご存じです?」
 フロックスの問いかけにイルスとフランツェルは頷いた。怠惰の魔種、やたらと毒舌を吐く幼い少女の姿をした魔種であっただろう。
 彼女は突如として妖精郷に現れ、ファレノプシスに告げたのだという。

 ――大迷宮ヘイムダリオンの内部も『イレギュラーズの侵入を防ぐ為』にギミックが仕込まれてる。
   だから、無駄に死傷者を増やしたくないなら深緑には踏み入れないで欲しい。
   別に魔種だから信用できないならそれでいーよ。
   けど、約束してくれるなら、外への道を繋いでやる。アンタら次第って事。

「……それをブルーベルが?」
「はいです。魔種だけど……あの子は、自分のご主人様に言われた事だけしかしないですから……信頼できると女王様が……」
 現に彼女がこの地にまで辿り着いているのだからブルーベルは嘘を吐いてはいない。
 ファレノプシスは深緑に妖精が立ち入ることを禁じ、フロックスを使者として『外』へと送り出したのだろう。
「確かに、ブルーベルは勇者パーティーの一員であった魔法使い『マナセ』の作った『咎の花』を奪いはした。
 だが、それは彼女の手にはないと考えるべきだろう。『咎の花』は彼女の主人の手に渡っていると考えるべきだ」
「ええ。それに冬の王の力もブルーベルは手にしていなかったわね。確か……クオン・フユツキの手に渡っていた。
 現状でも彼女は『お遣い』をしているだけ。巻込まれた妖精郷を不憫に思って送り出したというなら……まあ、悪人ではないのでしょう」
 イルスとフランツェルの推測に首を捻っていたのはアルリアであった。ルドラはと言えば先程から腹を減らしたパカダクラ、メルメルに引っ張られ続けている。
「一先ず、ブルーベルの善悪は置いておいて、だ。
 フロックスが使った道はこれからも使用できるのだろうか?」
「あ、はいです。『往復、アタシが面倒見るとかダルいから自分でなんとかしろよな』ってブルーベルさんが安全な道を教えてくれたです!」
「……魔種の研究をしては居るのだけれど、その性根全てが悪に染まりきらない魔種を見ると何とも言えない気持ちにさえなるな」
 肩を竦めたイルスにフランツェルは何も言えずに肩を竦めた。魔種であるからには避けられぬ結末がそこにはある。
「あ、でも、大迷宮ヘイムダリオンの使用は女王様が禁止してますから……」
「一先ずは、ファレノプシス様とお話しするところから、かしら?」
 ブルーベルが道を残しているならば、其れを辿って妖精郷に入れば良い。
 イレギュラーズ側は大迷宮ヘイムダリオンの使用許可をファレノプシスに得る事で、ファルカウの麓を目指せば良い。
 国境沿いを歩き回るだけでは茨に阻まれ時間が掛かりすぎる。大迷宮ヘイムダリオンを使用することがファルカウに最も近づける策だろう。
「フロックスが出てきた場所ならメルメルと案内しようか?」
「そうして欲しいの! ……そういえば、妖精郷は被害は何か出ているの?
 みんなが無事だと嬉しいの……心配すぎてアルコールも2L位しか喉を通らないの」
 問いかけるストレリチアにフロックスはにんまりと微笑んでから「深緑に出なければ平和そのものだったです!」と告げたのだった。

 妖精郷アルヴィオンへと進む道が開かれそうです……

これまでの覇竜編深緑編

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM