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竜過ぎ去りてⅢ

「――成程」
 リュミエ・フル・フォーレ(p3n000092)の側で心配そうに眉を顰めたフランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)は嘆息する。
 ローレットの情報屋として活動するアンテローゼの司教は『練達を襲った竜が深緑を目指した』と言う情報を捨て置く訳にはいかなかった。
「そんなに悠長に構えていられるの? リュミエ」
「いえ……ですが、直ぐに何らかの対処を出来るわけではないでしょう」
 肩を竦めるリュミエにフランツェルは「そうだけど」と唇を尖らせる。
 混沌全土を騒がせた竜種の襲来。次は何処だと言わんばかりに各国が対策を講じる中、最も『次に何かが起こる場所』と目された深緑はある意味で悠長過ぎるほどに平穏を過ごしていた。
 リュミエの言う通り、直ぐに対処を行える問題ではない。そもそも、この国はローレットやラサとの友誼は存在するが閉鎖的だ。
 各国が兵を派遣しようとも直ぐに受け入れることは共同体に住まう幻想種たちには難しいだろう。
「リュミエ様、皆をお連れしました」
 ルドラ・ヘス(p3n000085)が背後を振り返りリュミエに報告する。
「行き成りの呼び出し、驚きましたが妻と共に参じました。リュミエ殿」
「ええ。リュミエ様のお呼びだもの。何か、この森に危機が生じたのでしょう。
 我等、霊樹『アキレアス』を守るアマギの民は貴女様の力になりましょう」
 妻に肘で突かれながらも堂々と名乗るオボロ・アマギに微笑むシャムス・アマギは力強く告げる。
 シャムスは『外』との交流のためにとラサとの交易に長けたアトワール・ラリー・アバークロンビーにこの場への出席を求めていた。
「ラサからこちらに使者が送られるであろうという話は聞いたよ。
 数日以内にリュミエ様の許に使者が訪れるなら、この地まで案内しても?」
「ええ、お願いいたします。外の方にとってこの迷宮森林は越える事も難しい場所でしょうから」
 アトワール曰く、ラサは深緑との友誼の為に救援を申し出るだろうとの事だ。
 ラサであれば問題なくその申し入れを受けることが出来る。僅かに緊張を滲ませるクエル・チア・レテートは「お母様がお認めであらばよろしいのですが」と呟いた。
「外の者を受け入れる、というのに未だ不安を覚える同胞は少なくはありません。
 お母様がお認めになった『隣人』であろうとも……妹君での一件で心に傷を負ったものは多く居るのです」
「ええ。クエル……けれど、ファルカウを守るためですもの。
 全てを受け入れるのではありません。我等がファルカウの為となる範囲での事です」
 クエルは首を振った。母と呼んだリュミエの気持ちが固まっているならば致し方ない。
 霊樹と呼ばれたファルカウを支えし存在の守護者。古の魔術を用いてそれらを慈しむ者たち程、外に対しては懐疑的なのだ。
「心配しなくって良いわよ、クエル。
 外に関してはアンテローゼとイルスが何とかするから!」
「巻き込むな」
「え?」
「……確かに拠点であった練達はあのような状況だけれどね。
 竜種は研究の管轄外なんだ。力にはなれやしないよフランツェル」
 首を振ったイルス・フォル・リエーネにフランツェルは「妖精郷での一件も尾を引くかもしれないわ」と囁いた。
「妖精郷を襲った脅威は『タータリクス』たち錬金術師よ。魔種ブルーベルは妖精郷の秘宝を盗みに来ただけであの時は明確な敵対者じゃなかったわ。
 けれどね、その秘宝をブルーベルが『悪意或る誰か』に渡してたら? 深緑はどんな目に合うかしら」
「……ああ、そうだね」
 妖精女王を愛した魔種タータリクスの愛ゆえの行動に乗じたクオン・フユツキとブルーベルは火事場泥棒でしかなかった。
 妖精を傷つける目的でもなければ、その後の動向さえ不明なのだ。だが――その際に奪われた『冬の王の力』と『秘宝』が再度、何らかに利用されたならば?
「気をつけておこう。ひとまずは竜への対策で良いのかな?」
「ええ。気をつけるのは竜でしょう。……何か、不安がありますか?」
 リュミエに問われたイルスは「いや、ここ最近、妙に寒くて眠いだけだ。きっと風邪だね」と首を振ったのだった。

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