PandoraPartyProject

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『通行手形』

「これが通行手形――スか」
 そう呟いたのは佐藤 美咲(p3p009818)であった。フォルトゥーナでの活動を行っていた彼女はローレットに届けられたアドラステイア中層への『通行手形』を不思議そうに見詰めている。
 バスチアン、スニーアの両名との交渉を成し遂げたイレギュラーズ達によってアドラステイアでの活動の幅が広がったと言うことだ。
「早く届けてくれるんだね。……縁故を結んだ、と言って貰えたことは良かった。顔馴染みにさえなっておけば中層での活動も効率的になりそうだし」
「まあ、こっちは『土地勘のあるコ』も手に入れたわけですが」
 Я・E・D(p3p009532)に頷いてからコラバポス 夏子(p3p000808)はくるりと振り返った。
 藍色の眸の少女はどこか緊張したように俯き加減でローレットの敷居を跨ぐ。
 彼女を見遣ってから背筋をぴんと伸ばしたのはアドラステイアでは魔女とさえ呼ばれたラヴィネイルであった。
「『プリンシバル』レミーア……」
 レミーア・スティレットロと呼ばれる少女はアドラステイアの聖銃士の中でも更には名誉あるティーチャー候補に数えられる『プリンシバル』の少女――だった。
 だった、と言うのは簡単な話だ。彼女はあの都市で疑問を抱いてしまったのだ。

 ――イコルを呑んだ子供達は何処に消えるの?
 ――ティーチャーになると喜んだプリシンバル達がファルマコンへの謁見に行って帰ってこない。

 前者は『イコル』と呼ばれた錠剤がアドラステイアでは『聖獣』と呼ばれた存在に転じる可能性をイレギュラーズ達は掴んでいる。
 そして、後者の側も焦臭い。ファルマコンが存在するというならば、それとの謁見語のプリンシバル達が姿を消したのには何か理由があるはずだ。
 その疑問に答え、手を差し伸べたイレギュラーズ達は組織『新世界』の一人、ミハエル・スニーアの指示に従い『蜜蜂』と呼ばれた特殊部隊の彼女を連れ出した。
 アドラステイアには無数の『目』がある。スニーアの元へとイレギュラーズを誘った彼女はそれが少しでも露見すれば魔女裁判で魔女の烙印を押され断罪されたことだろう。
「レミーアちゃんだけじゃない。沢山の子供が、日常茶飯事で断罪されてるワケだ」
「何とも言いがたい場所ッスね。それが罷り通る……それだけ洗脳がキツいのか、それとも――」
 唸る美咲に「中層に行けば、少しは状況が改善されるかも知れないんでしょう?」とЯ・E・Dは問う。
「そうスね。目標は存在するとされたファルマコンの撃破。直ぐに上層に攻め入ることは出来ないなら中層を攻略することを目的にすれば良い」
 例えば、オンネリネンの本拠地も中層だ。
 其れ等を一つずつ潰し、最後はファルマコンと呼ばれた偽りの神の元へと坂を登り切れば良い。

 天義と呼ばれた国は、歪な形をしている。
 行き過ぎた信仰の中に毒を孕んだ。無数の断罪の雨を降らせ、それが間違いであると突きつけられた民の心は酷く軋んだだろう。
 故に、この国には親を殺された子供が、信じるものさえ喪った子供が、身を寄せ合って暮らしている。
 其れ等の心の傷を直ぐに修復することが出来ない。だが、アドラステイアと呼ばれた国を許すわけには行かない。
 偽りの神を信仰し、急造する聖獣と呼ばれた存在。まだ全容の知れぬ偽りの神『ファルマコン』の真実を掴むまで、アドラステイアの闇は蠢き続ける。
 中層への進行はまだ足掛かりでしかない。
 だが――ティーチャーやマザー、聖銃士らの拠点が無数に存在するその場所を攻略することさえ出来れば。

「……ファルマコンに会える、か」

 呟く夏子にレミーアは「本当に存在しているのですか」と不安げに問いかけた。
 彼女達の神は、どのような姿をしているか――存在している、と言われたそれは果たして。

これまでの覇竜アドラステイア

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