PandoraPartyProject

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逢はむとぞ思ふ

 胡乱な夢を見た。とても懐かしい匂いを感じる様な。
 とてもとても――胡乱な夢を見た。

 ――これ以上はまずい。あの者は打ち倒さねばならん。
 ――勝機が薄いのは百も承知。しかし誰かがやらねば豊穣の未来は……

 それは『彼』に宿る記憶からして――はて一体どれほど前の事であろうか。
 十や二十では足りぬ程の以前。
 しかし忘却される事なき記憶の雫。

 ――やはり決行だ! 今宵逆賊となろうと、成さねばならん事がある!
 ――然り、然り! 我らが豊穣の大地の為に!

 かつての友ら。かつての誓い。
 自らの肉体も精神も非常に若く瑞々しい頃であった――あの時代。

 ――ははは無論だ! 皆でまた出会い、宴を楽しもう!
 ――酒を飲む楽しみを今一度! 僕達はまた必ず出会えると!
 ――然らば行こうか! 豊穣の地の未来はこの先にあり!

 人には誰しも過去がある。
 過去があり、現へ続き、未来へ繋がる。
 その一幕が瞼の裏に映っている――ただそれだけの事で。
「む……むっ?」
 同時。『彼』は目覚める。
 穏やかな晴れ模様の日差しが頬に掛かっており――
 感じる熱で夢見心地の世界から覚めたか。
「どうかされましたか――玄武様」
「うむ、うむ……いや久しい夢を見ただけの事よ……うむ」
 その夢を見ていた彼の名は『黒天』玄武(p3n000194)
 この国に在りし『四神』の一柱にて豊穣の中でも北部の地を司る大精霊である――そんな彼に声をかけたのは、玄武を奉る牛宿大寺の地にて住まう民の一人だ。
 寝ぼけ眼。こする様に指を指し伸ばして。
 背筋を伸ばさんとすれば――次なる瞬間にはいつもなる彼が現れる。
「う~~む! 良い天気じゃ!! 今日も今日とて穏やかで何よりじゃのう!!
 こんな日はぱぁあああありぃ日和じゃ、そうは思わんか!!」
「またですか玄武様! この前も『ぱぁーりぃ』したばかりじゃないですか!!」
「何を言う! ぱぁりぃは幾らやっても良いものじゃ!!
 楽しみは生きておる内に存分に楽しむべきもの!!
 それに今日は神使の面々が足を運んでくれる予定であったろう? 準備せねば――!!」
 陽気にして祭り好き。それが玄武の在り様。
 豊穣郷、牛宿大寺なる地にて彼は常に在り続ける。
 愛しき豊穣の子らを見据え続ける様に……
 そして今日はこの後イレギュラーズ……いや、この国ではイレギュラーズの事は『神使』と呼称されるが、とにかく一部の神使達が己の下へと訪れてくれるらしい。誰かが会いに来てくれると言うのはまっこと嬉しい事である――それに丁度彼らには『相談』したい事もあったのだ。

「楽しみじゃのう! さぁさ酒に魚にあれやそれ! 用意しておかねばの――!」

 彼は楽しむ。この一時を。己が生きているこの日々の刹那を。
 もし例え。逢いたいと願っても逢えなくなる様な事が起こったとしても。
 未練も無念も未来へなど持っていかぬ為に……

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