PandoraPartyProject

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Grand Battle

「誠、俄かには信じようもない事態ではあるが――」
 居並ぶ三貴族を前に国王――フォルデルマン二世は重く口を開いた。
「どうやら、我が国は……いや、この世界は滅亡の間際にあるらしい」
 フォルデルマン二世伝承国王は、巧妙にして硬軟使い分ける政治手腕に定評のある人物だ。
「『それは確かに俄かには信じ難い話ではあるが、手をこまねいて受け入れられる話でもない』」
 伝承という国柄、歳相応に考え方は古い部分こそあるものの、素早く確実な判断力は健在であり、それは今回の事態に十分生きていた。
「『彼等』の言を信じないのは簡単だが、信じようと信じまいと嵐は来る。
 状況上、主戦場が大陸の中心に近い砂嵐や我が国の領内になるならば……
 当然我等は総力を挙げてこれを迎え撃たねばなるまいな?」
 彼は砂嵐との動乱の際に領内で格別の仕事を見せた冒険者達の事を良く覚えている。
 彼等の活躍はその後も各地で目覚ましく、北は鋼鉄、東は神光まで。八面六臂のその姿はまさに『召し抱えたい』だった。
「御意に。既に万全に準備は整えております、陛下」
 伝承最強の騎士と名高いザーズウォルカを傍らに置いたレイガルテが恭しくそう言った。
「何処の何とも知れぬ終焉とやらに我が国を荒らされるのは憤懣やるかたないですからな。
 痴れ者共は、このザーズウォルカの槍にて、すぐに我が国を脅かした無謀を後悔する事になりましょうが」
「お任せ下さい、レイガルテ様!」
「ええ、ええ。物事の道理を躾けてやりますとも。
 うふふ。捕まえたらどんな風にして差し上げようかしら、ね。オウェードさん」
「……は、はい! そ、それはもうお嬢様のお気に召すままに! であります!」
 ザーズウォルカに対抗するかのように取り敢えず騎士を連れてきた、といった所なのだろうが。
 リーゼロッテの流し目にオウェード=ランドマスター(p3p009184)の背筋がガチガチに伸びた。
 ……と、言ってもこのオウェードは『本人』ではない。当然ながらR.O.Oにおける彼である。
「お二方共、くれぐれも油断はなさいませんように」
 混沌の彼よりは幾分か鋭い眼光でガブリエルが窘めた。
「敵は終焉を名乗るのです。そう一筋縄でいく相手ではない。それは良くご存知の筈だ」
「フン」とレイガルテが鼻を鳴らす。
「言ったであろう。準備は万端に抜かりなく、だ。獅子は鼠を狩るにも全力を尽くすもの。
 ファーレル伯、フィルティス男爵には既に先陣を命じておる。
 連中も武門の誇りにかけてここぞの奮闘を見せるだろうよ!」

『航海』艦隊は既に出撃の準備を整えている。
 忙しなく飛び交う怒号にも似た気合いの声の只中で、唯一人だけ余裕を纏う男が居た。
「いやあ、困ったね! どうもこの世界は滅びてしまうらしい!」
『海賊提督』の異名を持つドレイクは言葉とは裏腹に実に気楽な調子である。
 国や世界の存亡をかけて未知なる終焉に挑もうとするには余りにも『軽い』。
 普通なら国と艦隊の運命を双肩に背負おうと言うなら、どんな傑物でも緊張は免れまいに――
「……提督らしいって言えばらしいけどな。本番はもうちょっと気合い入れて下さいよぉ」
「まぁ、こういうお人だ。今に始まった話でなし」
 ドレイクの麾下として艦長を務める海洋士官二人、ファクルとゼニガタが何とも言えない顔で天を仰いだ。
 大きな戦いの前は何時でもこうである。
 ドレイクは決して気負わない。そして同時にどんな状況も勝ち抜いてきた。
 航海の主力艦隊は他にも無敵艦隊が存在するが、今回の戦いでも競い合うように莫大な戦果を挙げるのは想像するに難くなかった。
 王女エリザベス以外には決して傅かない海の支配者は恐れを知らない。
 まるで口笛でも吹きそうな面持ちで撫でつける潮風を愉しんでいた。
『まるで、大切なものを奪われなかったこの世界なら、誰にも負けないとでも言わんばかりである』。
「バルタザ――――ルッ!」
「へいへい、キャプテン。もう準備は出来てるよ」
 船の上から戻ってきた返事にドレイクはにっと笑って敬礼をした。
「では、諸君! 何とも戦いの日和じゃあないか! この素晴らしき海に互いの幸運を祈るとしよう!」

 大樹ファルカウ。翡翠の中枢である。
「……は? どの面を下げてこの翡翠に? 人間の冒険者の男」
 この日、『客』を出迎えたドラマ・ゲツク(p3p000172)の声色はまさに氷点下のようであった。
「この翡翠は平和と静寂を愛する私達の領域ですが?
 喧噪と混乱をまき散らし、あまつさえ幼気な少女に壁ドンならぬ樹ドン等を繰り返す。
 やる事為す事不適切、やる事為す事有害図書な無法者の来る所ではありませんが?
 静かな日常に波風を加え、危ない所から助けてくれたりして、たまに子供みたいに笑ったりして――
 また来ると云いながら、数年間全く音沙汰も無い。責任感が全くない!
 己の発言を顧みない者が足を踏み入れて良い場所ではありませんが???」
 当然と言えば当然の不満をまき散らすドラマは言うまでも無く『R.O.Oの彼女』である。
 そして、もう一人。
「ふふん。あまつさえ女性連れとは、不品行ここに極まれりですね!」
「え、え? わ、私……なのだわ?」
 眉を酷く顰めた彼女の見る少女――華蓮・ナーサリー・瑞稀も又、同じである。
「え、えっと……そうじゃなくて、私はたまたま砂漠の近くでその、レオンさんに助けて貰って……
 また助けられちゃったっていうか、王子様みたいでカッコよかったのだわ……
 じゃなくて! 会ったのは偶然で危ないからって連れてきて貰っただけで……」
 ごにょごにょと言い訳じみて必死でレオンを庇う華蓮に翡翠の国主であるリュミエがぼそっと呟いた。
「男っていつもそう」
 ……状況は要するに『そういう事』なのだが。
 この現場の最大の特徴は、
「……おい、レオン。お前物凄くややこしい因縁作ってねぇか?」
「知らねぇよ。俺は『華蓮』を『今回』助けただけだ。
 こっちの俺が何したかなんて想像も――いや、つくけどさ。つくけど俺は何もしてねぇよ」
 小声でやり取りをするディルクとレオンに『中の人』が居る事だ。
 練達からSOSを受けた彼等は今一度ネクストを訪れ、決戦に備える事になった。
 彼等が翡翠に足を向けたのは、
「……大体、オマエが来たいって言ったんだろうが。何でだよ、このクソアウェーに」
「そりゃあ……気になる女が居たら来るだろう。幾ら作り物って言ったって……
 リュミエがどうにかなるってのはエッフェンベルグには見過ごせねえだろ」
 翡翠はイレギュラーズの活躍によりその気になっていたのだが、ディルクとしては心配だったという事だ。
 結果は杞憂だった所か、要らない地雷を踏んでご覧の有様といった風情なのだが。
「特にそこの赤毛の男。何処と無く『奴』に似ている赤毛の男。
 貴方のような男が居るから、翡翠は(以下略)」
 人違いなのだが、まぁ似たようなものである――

「さァて、売られた喧嘩は買うしかねェな?」
 一方で『人違い』では無い方――
『砂嵐の』ディルク・レイス・エッフェンベルグはすっかり戦支度を整えていた。
 終焉獣の出現により現状で最大の被害を受けているのは大陸でも中央部に当たる砂嵐の領内である。
 先の伝承での戦いでは彼等はイレギュラーズ――プレイヤーの敵となる立場ではあったが、こうなればそれも関係の無い話だ。
「準備は出来てますよ。滅茶苦茶にぶっ殺してやりましょうよ」
「ああ。最高に暴れてこい、ルカ」
 獰猛に牙を剥くルカ・ガンビーノ(p3p007268)の背中をディルクが軽く叩いた。
「てめぇらも支度は出来てんだろうな?」
「うぃっす! バッチリです! 『凶』いつでもやれるそーです!」
「支度は出来ている。蜃気楼のような敵でも射抜いて見せるさ」
 水を向けられた黎 冰星(p3p008546)、ラダ・ジグリ(p3p000271)が胸を張った。
 砂嵐は砂漠の民である。砂漠は過酷で生命を育む事は無い。
 故に彼等は獰猛に連帯する。『眼には眼を、歯には歯を』。
 単純明快なルールは『砂嵐に手を出したクソ野郎』を絶対に許さない!
「……」
 一方で猛々しい彼等とは一線を画し、不安そうな視線をディルクに投げるのはエルス・ティーネ(p3p007325)である。
 ディルクの気まぐれで助けられた少女はお留守番。出来る事なら彼に危ない事をして欲しくはない。
「あん? また余計な事考えてやがるな?」
「ふぁ!?」
 頭に乱暴に手を置かれ、髪の毛をぐしゃぐしゃにされたエルス情けない声を『上げさせられた』。
 いつもそうである。彼には『させられる』のである。
「つまんねぇ心配するんじゃねえよ――」
 ディルクは当然のように言うだけだ。
「――テメェの『ご主人様』は世界一強ェんだ。笑って見とけ」

『竜の領域』。元・人類未踏の場所――
「どう思う? おじ様」
 終焉の獣の足跡を半眼で眺めながら、珱 琉珂は傍らのベルゼー・グラトニオスに問い掛けた。
「んー?」
「どうもこれはヤバイみたいな気がするわよ。
 ……なーんか『ゲームみたいで』あんまり実感はないんだけど、ね。
『竜の領域』に来た人間達が騒いでる。彼等がその気なら、きっと何かが起きるのは間違いないわ」
「そうか」
「……興味なさそうねぇ」
「無い訳でもないんだけどねェ」
 ベルゼーの覇気の無さに琉珂は溜息を吐いた。
 しかし、それも仕方ないと言える。
『仮に竜王(ベルゼー)が覇気等出そうものなら終焉よりそっちの方が心配だ』。
「今回に限っては手を貸してやろうかと思うんだけど、反対する?」
「いいや、しないよ。私も必要な範囲でなら――構わない」
「珍しい!」
 目を丸くした琉珂にベルゼーは何とも言えない顔をした。
「……今回ばっかりはねぇ、身内の匂いがするって言うか」
「身内? 匂い?」
「……んー、いや気にしないで。終焉獣って焼いて食ったら旨いかも知れないしね」


※各地で準備が進んでいます。『ダブルフォルト・エンバーミング』が開始しようとしています!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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