PandoraPartyProject

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鋼鉄内乱フルメタル・バトルロア

 砂鉄煙る、青い青い空の下。
 吹きすさぶ風にローブをなびかせて、一人の男がゆっくりと目を開く。
 すべてを埋め尽くすような砂煙のなか、男は――。
 ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズは――ローブを天高く脱ぎ捨てた。
「さあ、歯車仕掛けの内乱(バトルロア)を始めようか」
 甘く囁く声に応じて、彼の背後……深い砂煙が一瞬にして晴れ上がる。
 そこへ現れたのは歯車仕掛けの巨大な大聖堂。
 機動要塞ギアバジリカ初号機である。
『エクスギア、発棺準備!』
 巨大な大聖堂の中を大小様々複雑怪奇な歯車構造が稼働、連動、大駆動。
 折り重なった無数の金属音の連鎖の末に、アームクレーンによって運ばれた棺型の砲弾が巨大チャンバーへと次々にセットされる。
 それを多う黄金の筒状カバーがスライド。送り出された棺がロックされ、発射可能状態を示す青いシグナルランプを点灯させた。
『エクスギア発棺準備良し!』
『出撃せよ――ゼシュテリウスの戦士達よ!』
 コントロールデッキに開いた祭壇型操作パネルの中央。透明カバーの開いた赤く大きなボタンを殴るように叩き押す。
 すると広域マイクで放たれる命令に応じるように、ギアバジリカの砲塔のひとつがもちあがった。
 祈るように冷静な女性の電子音が棺内部へとコールされる。砲身の先。螺旋状の溝がほられた大きな穴の向こうは晴れ渡る青空だ。
 ――発棺シーケンス開始。
 ――発棺まで3
 ――2
 ――1
 ――hallelujah
 固定具が外され、棺が猛烈なジェット噴射を開始。火花をちらし溝に沿った螺旋を描いたきりもみ回転で大空へと飛び立った。
 計八発の棺型砲弾をが空を舞う。
 否、砲弾ではない。
 空中で棺四方より槍状の翼を十字展開したそれは流星の如きジェット噴射で長い長い放物線を描き、敵地のど真ん中に突き刺さる。
 アスファルトに穴を開け刺さった巨大な十字架エクスギア
 そのハッチを蹴り開けて、一人の男が現れる。
「世界は黒き影に脅かされている――」
 黒き鉄帝軍服。手にかざすはレーザー放射装置。
「願い(WISH)は悪しき歪み(DARK†WISH)に変わり、人々は笑顔を、明日を、未来と青き空を忘れようとしている。
 いざ戦え! この世に願い(WISH)を取り戻すべく! この世に未来を勝ち取るべく!
 我らが軍閥――ゼシュテリウスへ、集え!」
 彼はヴェルスを支援する鉄帝将校ショッケン・ハイドリヒ。
 無論到着した仲間達は彼だけではない。
 隣の棺を押し開き――。
「願い(WISH)とは儚く脆い。叶わぬ願い(WISH)が闇(DARK†WISH)に染まるならば、その闇を今一度払おう。同志たちよ!」
 愛と怒りと悲しみの聖女、アナスタシアが登場!
 残りの棺が次々に開いていく。
「私達はただの人間です。全てを救うことは出来ない。……だが、今目の前に居るシャドウレギオンを救うことはできる!」
 忠実なる戦士、ボリスラフ!
「慈悲深き主よ、どうかご加護を。俺はどうなっても構わない。どうか、この子だけ――いや、ゼシュテリウスの仲間達を頼むぜ神様っ」
 運命に翻弄されし元スパイ、イヴァン!
「潮時ってやつさ。俺が死んだら、嫁と娘が路頭に迷っちまうからな」
 モリブデン警備隊長、ニキータ!
「俺は砂嵐出身の商人を偽って鋼鉄で内乱を起こそうと計画しショッケンやアナスタシアの間で暗躍していた気がしたがそんなことはなかったぜ! これから宜しくな!」
 闇じゃない商人、ハイエナ!
「勝ったら祝杯負けたら反省杯! 出撃前にはもちろん景気づけに一升いただきま――ヴォロ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛」
 虹色の司祭、ヴァレーリヤ!
「ギルオス! ギルオスギルオスぎるおおおおすぅぅぅうあああああああああん! あぁっああああああぁスーハースーハー! スーハースーハー! いい空気だなぁ! ギルオスパンツコレクションが神々しい光を放っているぞ! この道が破滅に繋がっていようとも一向に構わぬ。パンツへの信仰を理由に迫害されるのならば、ギルオス殿と共に殉教する覚悟よ!」
 こうして揃った八人の戦士達。
 シャドーレギオンの軍勢に取り囲まれるも、全員一斉に身構える。
 先頭を切ってアルキメデスレーザーを発射するショッケン。
「ゆくぞ同志達よ! シャドーレギオンの闇を打ち払い、WISHを取り戻した彼らを仲間に加えるのだ!」



イベント《Genius Game Next》 クリア評価値がA(最大S+)――
 update:2.0 エリアデータをRapid Origin Onlineにインストールします。
 ――――『『フルメタル・バトルロア』がインストールされました』


 舞台はRapid Origin Online仮想世界ネクスト。練達における混沌法則解明計画の一端である仮想世界構築計画ことProjectIDEA。その制作中に起きた不明なバグによって混沌とは似て非なる世界ネクストが生まれてしまった。
 練達三塔はバグの影響を受けて歪んだ仮想世界の探索および調査、そして意識ごと囚われた研究員たちの救出を目的にローレットへと依頼を発し、ギルドのイレギュラーズたちは己のアバターを通しROOへとログインしていった。
 そんな彼らへと課せられた第一のイベント『Genius Game Next』。そのクリアによって、ROO2.0へとアップデート。『竜の領域』や『ヒイズル』といった新エリアが次々と解放されていった。
 そんな中で現れた第二のイベント。
 それが、『鋼鉄内戦<フルメタルバトルロア>』である。

「なあ、本当にこんなデカブツで国中を歩き回る必要あったのか? 目立ちすぎるだろ」
 蒸気の噴き出す音と熱。巨大な強化ガラスに覆われたチャペル型コントロールデッキの中心で、ヴェルスは深く腕組みをしていた。
 ガッシュンと音を立てて開くデッキ出入り口の扉。
 あちこち傷だらけになって包帯をまいたショッケンが現れ、『当然ですとも!』と声を荒げた。
「ヴェルス殿、あなたは次期皇帝候補とも名高い名士。顔も割れれば名前も知れる。
 そんなあなたが皇帝暗殺の容疑者となっては、鋼鉄帝国のファイターたちがどうでるかおわかりでしょう!」
「どうでるって?」
 玉座風の椅子に座り、トントンとひじかけを指で叩くヴェルス。
「決まっています! 戦いを挑むのです!
 既に鋼鉄国の各所では軍閥が形勢され妥当ヴェルスに燃えております!
 なぜならば、皇帝暗殺の犯人を倒せばそれすなわち次代皇帝と同義!」
「同義かねぇ……?」
「少なくとも、皇帝暗殺のおりヴェルス殿はご自宅で寝ておられた。それも一人で」
「……」
「皇帝を暗殺できるほどの猛者となれば鋼鉄国でも指折り。ヴェルス殿、ザーバ殿、ガイウス殿と数えられますが……ガイウス殿は当時闘技場で多くの観客のもと試合を行いザーバ殿は伝承王国との国境戦線で多くの部下と共に戦っておられた。そもそもですな、ヴェルス殿は現皇帝ブランド陛下に匹敵するファイターとしての自覚を持ってこの国の様々な――」
「あー、わかった。もういい。わかったから」
 ヴェルスは額に手を当て、お節介焼きのショッケンの言葉をとめた。
「ですから、こうしてクラースナヤ・ズヴェズダーと共同軍閥をつくり、機動要塞ギアバジリカまで動かしたのです!」
「まあまあ、そう怒鳴りつけるもんじゃあない。ちゃあんとわかってるさ、ヴェルスの坊やは」
 再びひらく扉から、金装飾のついた法衣の老人が現れる。
 クラースナヤ・ズヴェズダーのトップにして大司教ヴァルフォロメイである。
 ヴァルフォロメイは聖書でトントンと肩を叩きながら豪快に笑った。
「敵が山ほど出来る。あえて目立って引き寄せる。で、作った軍閥で全員ぶっ倒す。シンプルじゃあないか。それに――」
 笑顔のまま、目に英智の光をもやすヴァルフォロメイ。
「いまこの国のあちこちでシャドーレギオンが現れてる。願い(WISH)を歪められDARK†WISHに変えられた連中さ。
 うちの司教が試しに殴り倒してみたんだが、どうもぶっ倒せばWISHを取り戻せる――つまりは正気に戻せるらしい」
「身の潔白を証明するために敵対軍閥を倒して周り、同時にシャドーレギオンも倒して仲間に加えていく……か。オーケー」
 ヴェルスは肘掛けを叩いて立ち上がると、前方をつよく指さした。
「進路そのまま。まずは腕試しといこうか」

 ――新イベント『鋼鉄内乱フルメタル・バトルロア』解禁!
 ――移動要塞ギアバジリカに乗り込み、DARK†WISHに歪められたシャドーレギオンたちと戦おう!
 ――さあ、今すぐギアバジリカに乗り込め!

これまでのリーグルの唄(幻想編) / 再現性東京 / R.O.O

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