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伝承大聖堂にて

「この国においては為政者を信頼してはいけない――ですから、何時も言っているのです。
 どうにも悍ましい話で、何とも嘆かわしい話としか言いようがありませんが」
 伝承大聖堂にて。アリシス・シーアルジア(p3p000397)は何とも昏い瞳で吐き捨てるようにそう言った。
 会話相手はイレーヌ・アルエ。伝承大司教の肩書を持つこの国の宗教指導者のトップの一人である。
「アリシス司教、余り口さがない事を言うものではありませんよ」
「御心配なく。周囲の人払いは完璧です。
 イレーヌ様が口外しなければこの位の話、どうという事にもならないでしょう」
 慇懃無礼でやや皮肉なアリシスにイレーヌは苦笑した。
 アリシスとイレーヌは『比較的考え方の近しい真っ当な聖職者』である。
 伏魔殿の如き宮中、貴族階級の権力闘争は人々の救い、心の拠り所となるべき信仰の世界にも暗い影を落としている。身内にも気を許し切れない環境は皮肉を口にしたアリシスも、苦笑いを浮かべるイレーヌも歓迎している事態ではない。唯、心底唾棄すべき現実である。
『白昼堂々と大聖堂で密談するのは荒っぽいが、マークされていない方が穴場であるというものだ』。
(まぁ――魔術探査もしておりますし、イレーヌ大司教なら多少は、ね)
 涼しい顔のアリシスとて、決して無考えにそれを口にした訳ではなかった。
 タカ派のアリシスとハト派のイレーヌは手法や主張の面では差異があるが、大本根幹に対しての問題意識では同志と言うべき存在だ。
 多少気に入らない事と、信頼出来ない事は全くの別問題である。
「……情報は確かなのですか?」
「九分九厘は。少なくとも『砂嵐』が何らかの暴挙に出る事は間違いないかと」
「……そこまでは、ね。
 でも先程の言い振りだと、おいそれと口にしない――不確定な話も見つけてはいるのでしょう?」
「このタイミングで砂嵐が動くのが自然かどうかという消去法です。勿論、証拠何て掴めていません」
「然し乍ら」とアリシスの声のトーンは冷たくなった。
「恐らくは事が始まったとて、伝承が一枚岩になる事はないでしょう。
 悍ましいならず者共に国を侵され、民を蹂躙されたとしても――です。
 軍権を、私兵を有する『彼等』は実に怠惰に、実に鈍感に遅々たる後手を打つばかりでしょうから」
 イレーヌの苦笑が深くなる。
 事態の全貌は掴めないが、楽観的な貴族の対応を待てば苦しむのは庶民である。
 伝承大教会に最低限の儀礼的な兵力は存在するが、到底派遣するような軍を持っていない。そして、仮に軍を有していたとして、これを動かすのは政治的に難解な事態を引き起こしかねないという事情もある。
 各地を領有する貴族には軍権と統治権が存在し、彼等が判断を仰ぐのは『あの』三大貴族達、ないしは国王フォルデルマン二世である――
「……では、どうしますか、アリシス司教」
「答えはイレーヌ大司教の中にもあるかと存じます」
「意見は同じ、という訳ですか」
 兵力は無い。しかしながら『信仰に厚く』富裕な貴族達は大教会に比較的多くの寄付を寄越してくる。
 これを活用すれば、正規の軍ならぬ――それより余程頼りになる『兵力』を動かす事は可能だという事だ。
「時間がありません。では、急いで。言うまでも無く――信頼に足る者のみを使うように」
「畏まりました。それから――貴女のそういう所は決して嫌いではありません」
 アリシスは理想よりも実践を尊び、イレーヌは理想家ながら現実を理解する果断な女である。
 伝承大教会の誇る、そして人気を二分する二大美人――
 女傑才媛の協力体制はこの国を密やかなに下支えする実に貴重な大駒に違いない。


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