PandoraPartyProject

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未来と言う現実

 幻想は湧いている。
 フォルデルマン三世の出したお触れ――勇者総選挙。
 ブレイブメダリオンを『約束の日』に最も多く所持していた者が次代の勇者として称えられる。
 その中心となるのは勿論英雄たるイレギュラーズ達である――が。
「すげぇぞ……こいつがあればきっと俺らも……!」
「魔物討伐の功があれば送られるんだってよ! 俺らも行こうぜ!!」
 この催しは必ずしもイレギュラーズ達のみが対象とは限らない。
 なんらかの理由によりメダリオンを所持していればいいのだ。元は一般の民……或いは傭兵、或いは幻想に仕える騎士であろうともその証こそが最も重要。元の身分はさして問題ではない――
 英雄たるイレギュラーズ達に続けとばかりに幻想は湧いている。
 彼らの軌跡を追うように勇者の道を目指すは『勇者候補生』と言われているのだとか。

「やれやれ……意気込むのは勇気か、それとも蛮勇でしょうか……」

 その様子を見据えるはウィルフレッド・フォン・ジーグだ。
 彼は幻想に領地を構える小領主の一人。
 ――尤も、その土地は貴族が所有するモノとしては非常に小さい。かつては広大な領地を持つ家系ではあったのだが……所属していた派閥が弱体化していくに従い、彼の家もまた同じ道を辿ってしまった。
 されど彼は家の復権を諦めてなどいない。
 少ないながらも己に忠誠を尽くす家臣たちと共に時代の趨勢を眺めていた。そして――おあつらえ向きと言ってもいい勇者総選挙が開かれれば彼としても動く好機であった。すなわち、己が家から排出された勇者がいれば――同時に家も称えられる事が見込めた。
 故に貴族の支援を持つ『勇者候補生』もいる。
 ……彼らの内どれほどが真に勇者を目指せるだけの実力を抱いているかはさておき、だが。
「……ミーミルンド卿も動いているとか。さて、どうしたものでしょうかね」
 そして彼が同時に思い浮かべるは現在の派閥の盟主。
 ――ベルナール・フォン・ミーミルンド男爵の事だ。
 彼の目的は分からぬが、なにやら怪しき動きが見え隠れしているという……勇者総選挙という催しの裏側で貴族の思惑や陰謀が渦巻く事態は、別段この国では珍しいという訳ではないが――なんとなし気になるものだ。
 己はどう動くべきか。ミーミルンド卿に追従すべきか、それとも……
「いずれにしても選ばなければ……もうあまり時はない筈。
 魔物の一斉討伐の準備が始まっている」
 瞼を閉じながら思考を。
 水面下では此度のブレイブメダリオンを配る切っ掛けとなった魔物らに対する大規模な攻勢が計画されている。そしてそれに動員されるのはイレギュラーズ――と、昨今増えている勇者候補生達も、だ。
 『勇者』を目指す多くの意志によって脅威を打倒する。
 『約束の日』までを逆算すれば……メダリオンが大きく出回るのはこれが最後になるかもしれない。
 だからこそ各地の貴族達も忙しなく動いていて――
「ウィルフレッド様、勇者候補生の件でお話が……」
「ああ、すぐ行きます」
 直後、己が側近の一人より言を受け彼は思考を中断する。
 時は近い。
 ジーグ家の為、己はどう動くべきか――まずは目前の事を一つずつ片付けて行こうと、歩を進めた。

これまでのリーグルの唄 / 再現性東京

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