PandoraPartyProject
タオルケットをいつまでも
少年の名前はエヴァ。兄想いのエヴァ。
白いシーツと暖かい毛布の間から顔を出して、風になびくレースのカーテンから覗く白くてきらきらした朝日と、開いた窓から飛び込んでくる小鳥のさえずりに『おはよう』をする。
よく磨かれた綺麗なフローリングタイルと、オシャレな模様の入ったベージュの壁紙。美しい蝶が棚の上へとまって、まるでダンスを踊るようにまわっている。
エヴァは蝶たちのダンスにくすくすと笑いながら、部屋の洗面台に立った。
鏡がひとつ。その下には銀色のケースが二つ。
ichor(イコル)という字と一緒に自分の名前が刻まれたケースを手に取り、中から赤い錠剤をひとつ取り出した。
光がキラキラと反射するほど綺麗に磨かれたコップに、精霊が踊り出すくらい綺麗な水を水道から注いで、錠剤を水で飲み込んだ。
ふわあ、と身体が温かく、そして軽くなる。
空はもっと青く。
雲はもっと白く。
世界はもっともっと、綺麗になっていく。
心の中にあったモヤモヤしたものやとげとげしたものを、妖精達が箒ではいて捨ててしまったみたいに。
「起きてたのか。おはよう、エヴァ」
声がした方へ振り返ると兄がベッドから起きた所だった。
エヴァは火にかけたアイスクリームのようにとろけた笑みで。
「おはよう、お兄ちゃん! 今日もいい朝だね」
これはある少年達のおはなし。
天義(ネメシス)からはなれ真なる神ファルマコン様を信仰する真なる民の街。
――独立都市アドラステイアの物語。
さあ、あなたもあの壁の向こうへ。
ファーザー・バイラムの管理する実験区画フォルトゥーナへようこそ。
*アドラステイアの実験区画フォルトゥーナへの潜入調査依頼が舞い込みました……。