PandoraPartyProject

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ダークグレイの暴雨

 インディゴ・ブルーの空に星は無く。質量を増した分厚い雲が視界に広がった。
 時折窓を揺らす風に木々の葉が擦れる音が聞こえる。
 強い風に空き缶が転がっていった。

 燈堂暁月は自宅のリビングでテレビのニュースを眺めている。
 映し出されるのは日本地図と台風の予想図。『現代に住む日本人』が見慣れた画面だろう。
「まぁ、この世界に現代に住む日本人なんてものは存在しないんだけどねぇ」
 無辜なる混沌に召喚されてきた者達の中には、この世界の在り方に目を背け耳を塞いだ人々がいた。
 特に現代日本かやってきた人々は練達の中に自分達の住み慣れた街を作った。
 それが、再現性東京。
 希望ヶ浜と呼ばれる街は現代日本という『日常』を守る為に、モンスターや超能力者といった彼等にとっての『非日常』を許容しない。
 自分達の現実では有り得ない事象を作り物だと思い込んだり、見なかった事にするのだ。
 その彼等の日常を守るのがイレギュラーズや祓い屋である暁月に課せられた役目。
 テレビの中の天気図も現代日本を模すことで安心感を得るためのものだ。

 リモコンを押して、チャンネルを変える。
 女子高生の足が大きく映し出され、暁月は溜息を吐いた。
「これ、うちの生徒じゃないのか? まさか盗撮じゃないだろうな」
 よくあるニュース番組の光景に暁月は教師目線で眉を寄せる。
「おはようございます」
 襖を開けて『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)が入って来た。
 既に陽は暮れて朝の挨拶をするような時間ではないが、今日初めて顔を見たのだから是非も無い。
「おはよう、廻。今回はちょっと重かったね」
「そうですね。季節の変わり目もあって、いつもより寝込んじゃいました。すみません」
 普段よりも生気の無い笑顔を見せる廻は暁月の隣に座る。
 先日、イレギュラーズの祓い屋入門に同行した廻は掃除屋としてその能力を使ったのだ。
 廻が使う『思食み』と呼ばれる掃除の能力は、全てを一瞬にして飲み込み消し去ったり、元に戻したりする大変便利なものだが、その代償は酷く重い。
 飲み込んだ夜妖の属性や強さ、修復する戦場の大きさにも左右される。
 これは夜妖憑きである廻に混ざっている夜妖『獏』の能力なのだ。
 されど、その能力を使うには共存代償をより多く必要とする。
 廻の共存代償は――『生命力』そのものだった。
 自身で賄える内は問題無いが、能力を使えば他者からそれを貰わなければならない。
 血や体液を通して得られる生命力の吸収。吸血鬼や夢魔に近い夜妖、それが『獏』だった。
 ともすれば、悪性怪異として処分されかねない廻を、暁月は自身がその代償を払うことで手元に置いているのだ。

 暁月は廻の顔を覗き込んだ。目を離すとすぐ無理をする癖がある廻に懐疑的な視線を送る。
「……えっと。大丈夫ですよ?」
「廻の大丈夫は、信用ならないからね」
 暁月は廻の額に掌を当てて熱を測った。僅かに暁月の体温より熱い。
「微熱、まだあるじゃないか」
「大丈夫ですよ。それに体育祭もありますし。抜けられませんよ!」
 アメジストの瞳がキラキラと輝いている。頑張るつもりらしい。

 しかし――
「残念。体育祭は中止だよ」
「え? 何でですか? 僕は大丈夫ですよ!?」
「台風だよ。台風」
 女子高生の足からチャンネルを変える暁月。
 画面には紫色のスーツを来た顔色の悪そうな男性が映り込む。
『台風の日は体育祭がサボれて好きです』
「このニュースに映ってるのって……」
「皆まで言うな。あの人はああいう人だ」
 希望ヶ浜学園校長であるところの無名偲・無意式はニュースキャスターの問いかけに、本当か冗談か分からない様な事を答えていた。
「……というわけで、体育祭は台風で中止だよ」
「そんな!? どうして……」
 天候をある程度整備された練達のドーム内で、突如発生した台風という自然現象。
 これが、本当に海を渡ってくる台風とよばれるものなのだとしたら、練達はおろか幻想や海洋にも被害が及ぶだろう。そんな事になれば先に情報が入ってくる。

「つまりだ。これは――夜妖の仕業なんだよ」


*希望ヶ浜に台風の夜妖がやってきました!


*カムイグラ限定クエスト黄龍ノ試練が発生しています!
*カムイグラ全体シナリオ『<傾月の京>』で発生した捕虜判定は此方で確認できます。
*カムイグラの一角で死牡丹 梅泉の目撃情報が発生しています――

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