PandoraPartyProject
赤く泣いた海の上で
赤く泣いた海の上で
空が赤く泣いている。
砲弾と血と高波と、誰かの悲鳴のなかで。
私は彼らを慰める烏賊を、もはやもたない。
――海豹艦隊司令官ゼニガタ。
空が割れ、波は茹だり、塵と残さず消えた仲間達を悼む暇も無く戦いは続く。
ドレイクやオクト、渦潮姫やミロワールが加わり一時は希望を見せたこの戦いも、渦潮姫やミロワールの重傷、ブルーオーシャンの小破やアルバニアの本格参戦などのニュースに刻々と塗り変わっていく。
その中でも皆の心に希望の光を点したカタラァナの歌は余りに鮮やかだったが――
どうあれ、限界は近く。ここリヴァイアサン胴体エリアもまた、窮地に立たされつつあった。
「いくら立て直してもキリがない。このままじゃあ艦隊がもちませんよ」
「いいから動ける連中をかき集めろ! 撤退なんか出来る状況じゃねえ!」
リヴァイアサンから流れ出た大量の血をモンスターに変え、自らもまた巨大な怪物の核となった『流氷のマリア』。
捨て身ともいうべきこの反撃は海軍攻撃部隊をあえてすりぬけ、後衛に撤退していた負傷兵だらけの部隊を直撃させるという極めて緊急性の高い攻撃がおこなわれれいた。
船舶型、高高度飛行型、潜水型といった特殊なブラッドガーディアンによる強襲を、本来負傷兵を治癒するはずだった兵士たちが必死に対応している。
一方で前衛部隊もまた激しい攻撃をうけていた。マリーを取り込んだあまりにも巨大なモンスター、クイーン・アイスガーディアンの肩や胸、腰や足から大量の砲台が出現。冷気による砲撃が全方位に向けて発射されていく。
砲撃は船を凍らせ、海を凍らせ、赤く染まった海水から新たなブラッドガーディアンをいくつも新規生成させていく。
破れかぶれに暴れて一人でも道連れにしようというのだろう。
次々に巻き起こる爆発や衝撃の中、アーリア・スピリッツ(p3p004400)とヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は飛びかかるブラッドガーディアンを打撃や魔法によって迎撃していた。
「これじゃあリヴァイアサンに近づけないわねぇ」
「けどこれ以上戦える戦力なんて……」
「それでも戦うしかねーぞ! オイラととーちゃんのとっかりパワーをみせてやるぜー!」
絶望が迫るなか、それでも立ち上がらんとするワモン・C・デルモンテ(p3p007195)たち。
と、その時。
彼女たちの頭上を無数の砲弾が通過。迫るブラッドガーディアンたちへと着弾し、激しい爆煙を広げていく。
と同時に、盛大なオーケストラ演奏がアーリアたちの背を押した。
振り返ればそう、彼女たちの勇姿が目に入るだろう。
「ウィーク海賊団再結成ライブ――ってね!」
海賊船の上で腕を組み、部下達にさらなる砲撃をかけさせる海洋王国客員提督ヨナ・ウェンズデー。
「スレイプニル号、参戦! 気合いを見せな、『海の向こう』が待ってるよ!」
肩を並べた船の上、『赤髭王』バルバロッサ(p3n000137)は腕を組んで笑っている。
「アルセリア号、参陣っと。ったく、敵はアルバニアだけじゃあなかったのか? こんなデケえヘビ野郎がいるとは聞いてねえぞ?」
その周囲には無数の黒光りした鋼鉄の戦艦が並び、歯車大聖堂によくにた砲台が次々と火を噴いていく。
デッキで敬礼する軍人ボリスラフ。
「よもや出遅れるとは。お待たせしました。鉄帝軍特別編成海軍部隊、『新生ブラックハ――』」
「『クラースナヤ・ズヴェズダーによる赤き救災号』参陣である!!!!!!」
杖を振りかざし、陽光を頭で照り返す老人が誰よりも大声で叫んだ。
「ダニイールさん! 落ち着いて! そんな名前の船では――」
「ええい黙れ、密偵の罪を免除したのだ、戦艦名のひとつやふたつ!」
後ろから羽交い締めにして首を振るイヴァン。
「貴様も軍人ならば腹をくくるのだ!」
「軍人ではありません! 今は!」
「どちらでもよい! 今こそ恩義に報いるとき。聖句を唱えよ、我ら義によって参陣する! 同志ヴァレーリヤよ、貴様だけに戦わせはせん!」
イヴァンを払いのけ声を張り上げるダニイール。
そんな彼らの後ろから。
オーケストラ演奏で味方の士気を高め、備え付けた高級な魔術砲台によってブラッドガーディアンたちへ砲撃を加える民間戦や豪華客船たち。
そのデッキには、レナード&レジーナ・クラーク。エドワード・クラーク、パール・クラークがそれぞれ姿を見せていた。
「スターライトジェミニ号、参陣だよ」
「デイジー、あなたの功績を積み上げるのは癪だけど、ここは協力させてもらうわよ」
「ゴールデンパール号参陣。まあ……命を助けられたのは事実だもの、ね」
「ナイトオブテンタクル号参陣。デイジー。私たちはどうやら貴女に負けたようだ。もはや認めるしかないでしょう」
穏やかな口調で、しかしよく通る声で語るエドワード。抜いた剣をブラッドガーディアン軍に、そしてリヴァイアサンへと向ける。
「魔にあてられていたとはいえ、なぜああまで狂ってしまったのか分かりました。みんな、貴女と張り合いたかった。貴女の横にいたかった。それが間違った足の引っ張り合いを産んだけれど……この『嫉妬』は大切なものだ」
「悔しいから前へ行く。妬ましいから成長する。僕たちはそうやってここまできた」
「その力、財産、人脈。全て使って見せてつけてあげるわ。私たちは『置いて行かれやしない』ってことをね」
駆けつけたのはなにも彼らの艦隊だけではない。無数の民間船が即席の武装をして終結。その先頭には堂々とポルードイ家の紋章が輝いていた。
「ファルケ・ファラン・ポルードイ及び対リヴァイアサン臨時艦隊。王国軍窮地の知らせをうけ参上致しました」
「なんて規模だ。これを全部……?」
「まって、民間船の中に混じってるあの船って……お父様!」
傷だらけの船のまわりで戦っていたレイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)とイリス・アトラクトス(p3p000883)は、ファルケの連れた兵の規模をみて驚きを隠せない様子だった。
「ああ……」
帽子を深く被り直しエルネスト・アトラクトスはごく小さく笑った。
「……いやさ、我ながら良くもここまで出涸らしのポンコツばかり集めたものだ。
修理中、旧式、商船の臨時改造、海洋王国の船の一切合切、たったの一つもまともな戦艦等無い。
文字通り、これで万策尽きたが『無いよりマシ』でも。計算外なら喜べるだろう?」
ファルケはレイヴンたちの顔をみて、小さく頷く。
「……地下に潜った兵力をかき集めるのに時間がかかってしまいました。ですが、ここからです」
「……ほう」
目を細め、くすくすと笑デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)。
そして、巨大な赤き巨人へと振り返った。
「どうじゃ? 持たざる者には妬ましかろう」
両手を広げ、ふわりと浮かび上がり、自らの背景に広がる無限にも思えるほどの仲間達を示した。
積み重ねた絆が力となり。
積み上げた想いが希望をつなぐ。
力は無い。驚くほどに無いが、彼等は確かに共にある。
これはイレギュラーズという存在が作り出した、いわば希望の軍隊である。
「ゆくぞ皆の者。――青を征する時ぞ!」
※民間団体、私掠船、鉄帝軍特殊部隊が増援として加わりました!
連合艦隊の攻撃力が増幅します!