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クレマァダ=コン=モスカのぺいゆによる4人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
●いつもここから、いつもここへ
一人は、異世界からの旅人で。
一人は、この世界の海の御子で。
一人は、盗賊で。
交わりそうにない三人が交わったのが、三人の始まりだった。
はじめの頃は、帰る場所と呼べるものがなくて。
それじゃあと、三人でシャイネンナハトを過ごしたのが旅人の書庫だった。
その次にここで集まったシャイネンナハトには、一人が減って、一人が増えて。
三人には違いないけれど。その一人も海の祭司長で、御子の妹ではあったけれど。まだ埋められない、埋まらないものがあった。
そして、今年のシャイネンナハト。
あれから世界も、三人も変わった。
世界は何度も滅びの危機にあってすっかり落ち着かない。
旅人イーリンは立場を得た。
御子カタラァナの妹クレマァダは大人になった。
盗賊エマはほどほど変わらないようでいて、やはりたくさんのことが変わった。
そんな三人は、それぞれにパーティーをする相手がいて、もう今年のシャイネンナハトには集まれないだろうと。それくらいで綻ぶ友情ではないけれど、何となくそんな気がして約束はしなかった。
それが。
「「「あ」」」
二次会を抜け出した三人が集まったのは、結局この始まりの書庫だった。
雑然と積まれた本の中、暖炉に火を入れて三人で飲み直す。
「何だエマ、そのマグカップは」
「ひひ……もうお酒はやめてるんですよ。二年くらいになりますか、ね――」
はた、とエマの言葉が止まる。エマは酔っていないはずだ、なのに。
「……もうちょっと、付き合ってよ。一緒に飲もうよエマ」
――ああ、なんて。
既に酔いが回って、頬を赤らめて笑う彼女は。まるで、ここにはいないあの子そのものではないか。
「やっと飲めるようになったんだから~!」
「だ、だめです酔いすぎで……イーリンさんからも何か」
助けを求められたイーリンはしかし、二人のやり取りをぼんやりと眺めるばかりで。
その口角が、勝手に上がる。
『輝かしい夜にそんなヘの字口は似合わないよ?』
裡から『聞こえた』、波濤(カタラァナ)の声。思わず視線を上げると、あの頃と全く変わらない少女が嬉しそうに笑っていた。その子が無邪気な悪戯のように、イーリンの口角を引っ張り上げている。
彼女のことは、波濤を宿すイーリンにしか見えないらしい。
突然のことに、少しだけ驚きはしたけれど。
(……なんだ。皆、ここにいるんだ)
世界がどれほど変わって。人がどれほど変わって。
それら全てが、いつかは何かの終わりを迎えるのだとしても。
僕達はいずれまた、ここに帰ってくるのだろうから。
※SS担当:旭吉