PandoraPartyProject

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六天覇道(アイドル活動)

イラストSS

 鉄帝国に聖夜がやってきた。
 とある事件を発端に、今この国はバラバラに分断され、多くの命が喪われていた。
 少し前までは気軽に出かけられていたというのに、今は家から出るだけでも命の危険にさらされる。否、家の中にいても安全とは言えなくなってしまったのだ。
 今日を生きていくことに必死で『楽しい』という感情など過去に置いてきてしまった。
 人々の瞳から輝きは失せ、先の見えない暗い未来を憂うことしかできなかった。

 そんな中、国を、人々の心を再度一つにするためにとあるプロジェクトが立ち上がった。人々に笑顔を、希望を持ってほしい。
 たった一日、されど一日。
 来るシャイネンナハトにそれぞれの派閥から、七人の乙女たちが集められた。

 そう、私達の歌で鉄帝国を救う為に――!!


「せーのっ!」
「「「「「「私達ーーっ!! 六天覇道でーーす!!!」」」」」」
「わーーっ!!!」
 ライトアップされた特設ステージにサンタクロースをモチーフにした赤と白のフリルたっぷりのアイドル衣装に身を包んだ乙女たちがマイクを持って立っていた。

「スティアだよ! 今日はみんなに元気になってもらいたいから、頑張るね!」
 帝政派、スティアが花丸満点の笑顔で手を振れば彼女の笑顔に癒され、歓声が上がる。
「リースリットです。こういった催しは慣れていないのですが……頑張りますね」
 正直、歌って踊るということに戸惑いを感じてはいるが、人々に少しでも希望を与えたい。ポラリス・ユニオン所属、リースリットがはにかめば、魅了された客が胸の辺りを押さえた。
「焔だよ! 辛いことばかりだけど……みんなが前を向けるように今日は……あっ、ジェックちゃん。そこだとよく見えないよ! 前で歌って踊った方が楽しいよ!」
「そうですよ、お仕事頑張るって決めたじゃないですか。ほらスマイルスマイル」
「もうやだ助けて!!!!!!!!」
 ラド・バウのアイドルたる焔と革命派のドラマが及び腰になっているアーカーシュのアイドル(ではないが)ジェックを引っ張り上げる。ドラマ自体決して乗り気ではないのだが、仕事は仕事。引き受けたからには全力でやり切るのが彼女だ。三人のコントのようなやり取りに観客席に笑い声が溢れかえる。
「アイドル? は、慣れていないけど……ま、任せられた以上は……頑張ります……!」
 ジェックと同じくアーカーシュ所属のリンディスも、可愛らしく振舞うアイドルというものに慣れておらず、気恥しさから頬を赤く染めている。それでも頑張るという彼女の健気さに「頑張れー!」と応援の声が飛んできた。
「大丈夫よ、リンディス。あたしがついてるから」
 緊張しているリンディスの手を取ったのは銀の森からやってきたリアだ。僅かに震えている手を柔らかく握りこめば、リンディスがほっとしたように安堵の笑みを見せた。
 二人のやり取りの尊さに「尊い……」と号泣した者が出て、彼方此方から嗚咽が漏れていた。
「さて、前座はこの位にして……そろそろ始めよっか?」
 スティアが切り出し、残りの六人は頷いた。厳密にいえばジェックだけは「本当に……?」という顔をしていたが、焔とドラマに引っ張り出され頷くしかなかったのだが。
「それじゃいくわよ!」
 リアが手をあげ、それを合図に会場に明るいメロディーが流れ始める。
「聞いてください『ロマンティック×ドラマティック』」
 


 これは一夜だけの夢のような時間、時計の針が進んで十二時が過ぎれば溶けてしまう魔法のような幻のステージである。
 それでも屹度、彼女達の歌は、踊りは、笑顔は。
 間違いなく多くの者の心に刻まれ、未来を照らす希望の灯(ともしび)となったのだ。


 ※SS担当者:白

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