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アベルのsimaによる3人ピンナップクリスマス2019(横)
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ドアを開けると、室内の温かな空気が一気に流れ込んできて寒さで強張った身体が一瞬でほぐれた気がした。
真っ先に気付いたのは七鳥・天十里だ。
きゅっと結んだ唇の口角を上げると、きらきらとした水泡を浮かべたシャンパングラスを揺らした。
「輝かんばかりの、この夜に」
髪をうなじで結って黒いスーツを着こなした今日の天十里は華やかだけれど、いつもの可愛らしい雰囲気が引き締まってなんだかいつもよりスマートだ。
「寒かっただろー? 何か飲む?」
金色に輝く液体を満たしたグラスを通して、天十里の黒がふんわりと揺れた。
壁にもたれかかっていたアベルもこちらに気付いて、ふっと微笑みを浮かべた。
「いいワインもあります。一緒にどうです」
すると、奥からやってきたシラスが颯爽と出迎えた。
「ずいぶん遅かったな。早く入れよ」
軽く笑って伸ばした、彼の手に応える。
まず目につくのはオーナメントが飾られたツリー。
グラスと料理の並んだテーブルではキャンドルが柔らかな光を作り出していた。
どこか甘い匂いが漂うのは飾られた花のせいだけではなく、存在感のある大きなケーキのせいだ。
ひときしり楽しい会話を交わした後、テーブルの端に手をついた天十里が笑顔を浮かべた。
「願いを捧ぐこの夜に、皆は一体何を祈る?」
グラスを揺らして、彼は大きな瞳を眩しそうに細めた。
「平和の訪れ、冒険の成功、それとも恋の成就とかかな?」
「恋ですか。たしかに今夜は恋人たちが二人っきりで慈しみ過ごすんでしょう。やれやれ」
アベルの皮肉気な物言いにシラスが苦笑した。
「とびっきりの甘いケーキ、それにうまい料理と酒じゃ不服かよ」
「まさか?」
「じゃあ、僕はそこに聖夜のプレゼントが加わることを祈ろうかな」
肩をすくめるアベルと、にんまりと笑う天十里。
「お楽しみ会にプレゼント交換とか子供ですか」
「そうだな、アンタよりは少し若いぜ」
「えー、とことん楽しまなきゃだろー? 僕ならいつだって聖夜のプレゼントは大歓迎だ」
「なんてこった。俺はアンタらの子守りだったのか」
わいわいがやがやとふざけながら笑い合う。
「そういや、乾杯がまだだぜ」
「早くケーキ食べたいんだろー?」
「さっさと始めますか」
合わせたグラスが澄んだ音を鳴らす。
幸福に満ちたシャイネン・ナハトの夜を、笑顔で一緒に過ごそう。
※担当『依』