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ギルドスレッド

鉄帝喫茶「ビスマルク」

【SpiegelⅡ】機神胎動

 簡単なことであります。
 慣れろ。
 それがここで生きて行くコツであります。

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 ゼシュテルは、縦に長い国だ。
 しかも四方を他国に囲まれ争いが絶えない。
 土壌はやせ細り、南部ではある程度の自給も出来るが、北方に上がれば上がるほどそれも厳しくなってくる。
 冬は寒く、鉄騎種と言えども暖を取らねば命に係わる。
 頑強な種族であればこそ、この地に根付いた。
 頑強な種族であればこそ、自給でも貿易でもない第三の選択肢――即ち掠奪を生活の糧に出来る。
 頑強な種族であればこそ、少しでもこの生活を良くしようと戦い続けられる。
 それは大いなる矛盾であるが、もはや止められるものではない。
 そうであれども、そこにはやはり何かしらのルールは存在するのだ。

「……迷っているのでありますかねえ」
 赤煉瓦色の石畳を爪先でこつこつ叩いて、彼女――エッダ・フロールリジはこめかみを掻いた。
 待ち合わせたはずの少女がいつまで経っても来ないからだ。
 わりときっちりした印象の子だったから、まさか寝坊などではないはず。
「……探しに行くでありますか」
 そう独り言ちると、背筋を伸ばして手を目の前で組み、ピッピと歩き出した。
 既にもうそれなりに寒くなって来た。フロールリジは幻想に程近い領邦の為、それでもまだ冬支度手前と言ったところである。彼女の顔を目にして、子供や若者は興味津々に、ある程度年配の者は若干の怯えを目に宿しつつも目礼をする。それに対して全て礼を返していては日が暮れてしまうので程ほどに留めるが、唇の端をわずかに上げて威圧感を与えないようにしていた。
 赤煉瓦の道は次第に途切れがちになる。
 華やかな表通りを抜けて裏通りを進んでいく。
 空中庭園からフロールリジに直接来たとして、中央から待ち合わせ場所まで近道で来ようとすればそこを通るであろうという――薄暗くて、石畳は割れていて、道端で人が酒を飲んで寝ているような通りに、果たして目当てのものはあった。
 少女は、数人の男たちに通せんぼをされている。
 200cmはゆうに超えようとしている男の腕はその身の丈を超えるほどの巨大さであったり、180cmほどではあるが脚はゴリゴリに改造してあったり、見た通りの闘技者くずれであることが見て取れた。
 それに対して、取り囲まれた小柄な少女が怯えるそぶりを僅かとも見せていないのが男たちの癪に触っていたようだった。それはそうだろう。いざ戦えばどちらが強いか、傍からみたエッダの目にはまざまざと良く分かるのだが――そういうものがわからない者が、こういうことをする。
 はあ。と一息、溜息を吐く。
 目を伏せ、上げた。
 相変わらず眠たげな半目をしているが、その瞳には隠しきれない感情が籠っていた。
 苛立ちと、そして怒り。
 塵が。
 塵めらがなぜ生きているのか。
 塵を見る目で、かつかつと少女へ近づく。
「おい」
 その男たちは、下の方から聞こえる女の声に、馬鹿にしたような顔をして振り向いた。
 そして即座にその表情は凍り付くことになる。
 女の両腕は、顔に現れ切らないその激情を表すようにもうもうと蒸気を吐き出していた。内燃機関が嫁動し、いまにもはち切れそうになっている。
 牙を剥くような口の形は、返答をひとつ間違えば喉笛を噛みちぎらんばかりだった。
「それは、私の客だ」
「うわ……」
「え、エーデルガルト様……」
「も、申し訳ありませんっ!!!」
 三々五々。
 男達は、尻もちを付いたりしながら無惨に逃げ散っていく。その背を無意識に追いそうになり、いかんいかんとエッダはかぶりを振った。
 展開していた腕部装甲がばしゅん、と余熱を吐き出しながら閉じ、ふぅ……と細く長い息を吐いた。
 きっと、彼女は、招いた私を気遣い極力手を出さずに済ませていてくれたのだろう。ならば、遅参は問うまい。
「改めて、シュピーゲル嬢。ようこそ鉄帝へ。
 ……ああいうのは次からノしていいでありますよ」

 そう言うと、しずしずとカーテシーをした。

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●参加者向けハンドアウト
 あなたは、エッダに頼み、鉄帝国内で自分のメンテナンスの為の部品を求めに来ました。
 彼女はそれを了承し、一族の領邦に招聘しました。
 彼女は、どうやら今すごく怒っていたようです。

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ふーん、炉心でありますか。
それなら練達よりも……こっちこっち。
(ごしゃっと山に手を突っ込む。通常ならば手を切りそうで躊躇するだろうが、鉄騎種……ことに彼女の鉄腕にとっては何ほどでもないようだった)
……ゼシュテルの国土は、古い遺跡の上に成り立っているであります。それらはとても古く、人々の記憶にも残っていない。
一体これらがどういうものだったのか……誰にも分から、ずっ
(えいしょ、と気の抜けた掛け声と共に、おそらく何かの核であろう箱状の部品、塊めいたもの、コードがたくさん生えてるもの、などを引っ張り出している)
……確かなのは、そこに我らの想像など及びもつかない超文明があった、ということであります。
……!
(引っ張り出された品々に、目が釘付けとなる)
これは……
(瞬間、光環がほどけて光の粒子となり、並べられたそれらへと纏わりついていく。更には翼状のものに付いていた宝石のようなものからも光の粒子が湧き出して追加されていく)
基礎理論は違うようですがアプローチの方向性としては似ている機構……。
(少女の瞳に幾つもの記号が流れては消えていく)
……(何がどうなってるのか相変わらずわからん、と思って見ながら)
使えそうでありますか?
……不明です。
(一通り調べ終えたのか、粒子が少女の元に戻っていき、光環も再度出現する)
しかし、このまま使うことはできないと推測できます。
詳しく調べるには練達の研究室に持ち込む必要は有りそうです……。
……おい、これ全部買うでありますよ。
金? 今キャッシュ無いから後で……
……相変わらず五月蝿いな老いぼれ。
担保にこれ置いてくから黙って持って行かせろ。
(つかつかと歩み寄ると懐から取り出した巾着を押し付けた。
それを受け取った店主らしい男は、中身を見ていやこれは困るとか何とか言っているが、ムシしてシュピーゲルの元に戻って来た)

……ほんじゃまあ、行くでありますか。
あ、でも運ぶのどうする? これ。手分けして担げるでありますかね。
…………。
(表情が乏しいその顔が、しかし、今この瞬間だけは分かりやすく驚いた顔をした)
え……あ。か、買った、ですか……?
全部……?
(どう考えても安くは無いだろう、と。いや、そもそもそこまでしてくれるとは思考の埒外だったのだろう)
ええ。
……いらなかったでありますか?
(麻紐で荷物をぐるぐると縛りつけながら)
い、いえ。
いります。
いるですけども……。
(わたわたと、慌てた様子。手伝おうとするも、梱包の方法など知らず、やはりわたわたと無駄に義手を動かすばかり)
えいしょ。(がっしょんとかつぐ。

……貴女は、言ったでしょう。
助けてと……
いや、言葉では言わなかったでありますが。
少なくとも自分にはそう見えたであります。

助ける理由は、それで十分であります。
(そう言って、わたわた手を動かす彼女の鼻を指で摘むと、がしょがしょ音を立てて梯子を登って行った
うゆ……
(摘ままれた鼻をおさえる。
不合理のようにも感じたが、道理のようにも感じた)
……。
(「どうして助けたのかって? この前エールを奢ってくれたろ? 助ける理由は、それで十分だよ」
今は居ない誰かの言葉を思い出す。何故だかそれが今に重なって見えた)
……。
(と、そこで自分がぼうっとしてることに気付き、慌てて続くように梯子を登った)
(頭の上の跳ね戸を押し上げて地上に出ると、泥の粉末を吸い込んでけほけほ言っている。
相変わらずそのあたりはしんと静かで、周りの仕掛けさえ知らなければ――あるいは見えなければ――町からほんの少し外れたのどかな緑地にも見えただろう)

(はぁやれやれ、とぼやくように言いながら首を振ってエッダは歩き出した。
荷物は全部自分で背負ったまま、当たり前のように、道を歩んで行こうとしている)
あ……ま、待ってください。
(遅れて登りきった少女は、その背中を追いかけて)
もつですよ。それに、おかねも……。
払いたいでありますか?

(歩きながらその返答を貰って、ぴたと止まった
わかってるよ、という顔と、させないよ、という顔を半分ずつ込めたような表情をしておる)
47
……うゆ。
(正直言って手持ちはない。しかし、このまま甘えたままでいいのか判断ついていない様子で)
このめまでは、エッダに悪いのでは、と……。
(つかつかと歩み寄る。
重たい荷物を持っているので、そう色々なことは出来ない。
ふむ、と迷った上で、左手に荷物を持ち、鋼の右手で彼女の義手を握った。
かりそめとはいえ、何だか少し、同じものになれている気がした)
 ただの助けではなく。
 ……貴女は、同胞が欲しかったのでありましょう?
 なら、これくらいさせるでありますよ。
貴女が困っていたので、私は助けました。
いずれ私が困った時、貴女が助けて下さい。
同胞というのは、そういうものです。
(握られた義手を見つめ、そしてエッダを見る。センサーが反応し、感圧計の数値が電気信号に変換されてパラメーターとして認識される。ただそれだけ。ただそれだけの事だ)
了解。
以降、エッダを、同胞と……そう、認識して、します。
ゆえ、ゆえ……。
(だから言葉が震えたのは一種のバグだと認識する)
エッダが困ったら必ず助けるです。
それは重畳。
……ところでよ。
貴女の住まい、どこでありますか?
(よっこらしょ、と自分の身丈ほどありそうな包みを担ぎなおしながら)
(目をぱちくり)
すまい……?
(頭を傾げて)
研究所は、練達にあるです。
いや、そうではなく……いや、研究所、というのに自室とか、そういうものはあるのでありますよな?
じしつ……(思案する様子を見せて)
調整室というものがありますな。
…………
アインスデクスマ・ズィーベンタウンゼントアハトフンダートアインウント・フェアシュピーゲル。

貴女は、己をどう定義しているのですか?
いえ……
貴女は、この混沌なる世で、己が何になれれば良いと思っているでありますか?
シュピは……
(一瞬困惑した表情をして)

アインスデクスマ・ズィーベンタウンゼントアハトフンダートアインウント・フェアシュピーゲル。
全高142.45㎝
体重53㎏
分類超微細機械工学技術発展型人形端末
火薬類非搭載軽量化モデル
(己の緒元をスラスラと淀みなく言っていく少女。しかし、正しい答えとは言えない。ただ、わかる単語を並べているだけのこと)

……敵を処理する事以外に何をするですか?
(何を知りたいのか、何をきかれてるのか、本気で理解していない表情であった)
何って……
そうでありますな。
飯を食ったり酒を飲んだり風呂に入ったり……
武術の鍛練……

後は……
そうでありますな。
自分は実はけっこう本を読むであります。
己の部屋で。

……そういうのは、己のスペックとはまた別に、”己がしたいこと”でもあります。
できることとしたいことの総体が己を形作るのだと、自分は思っているであります。

その……調整室と仕事を行き来するのが、貴女のしたい事……ということでありますか?
生命維持としての欲求は備わっております。

敵を処置する事には万全な整備、調整が必要となります。
ゆえ、ゆえ、任務と調整室の往復は不可避です。
(ズレた答え。『欲求』に対することは生命維持として、『望み』という意味では明後日の方向への応答。そう、彼女は『望み』という概念を自身の中に持っていないのだ。だからこそ『必要』という言葉に応答が収束し、敵の処理という『製造目的』に帰結する)
…………

フラウ。
先ほどの約束、今、使ってもいいでありますか?

(心細そうな彼女を助けたいと思った。
そうして今、決定的な矛盾に行き当たった。
彼女はなるほど、“それ”が何なのか知らないのだ。
きっと思い違いかも知れないし、もしかしたら余計なお世話かも知れない。
彼女は真実、兵器のままでいたいのかも知れない。
だからこれは、自分のわがままなのだ。
自分はもともと、誰かに乞われて戦う者ではない故に)

任務と、調整室のほかに……週、いえ月に一度で良いであります。
自分と、お茶でも飲みましょう。
お茶、ですか?
(ぱちくりと瞬きして)
はい。
シュピは問題ありません。
担当官にスケジュール調整をお願いしてみます。
お茶……
まあ、自分は酒の方が好きでありますが。
貴女は茶の方が都合が良いでありましょう?

無駄な時間を。
無駄な時間を過ごすのでありますよ、フロイライン。
アルコールの摂取は問題ありませぬ。
ナノマシンにより毒素は速やかに最適化されますので。

むだな、時間、ですか……?
(首を傾げて)
最適化されてしまうのでありますか。
(少し残念そうな声)

……そう、無駄な時間であります。
アインスデクスマ・ズィーベンタウンゼントアハトフンダートアインウント・フェアシュピーゲル。
無駄な時間は、実は大事なものでありますよ。
ここだけの話――人間というのは、これのために戦っているのであります。

最適化するのは、あまりよくないのですか?
(残念そうな声に、なんとなく思って)

無駄な時間のために、戦う……とは。
一体……。
それは、それは……どうして、です?
いえ、良いのですが……では、酩酊なども味わえないでありましょう?
それと同じであります。
無駄な時間というのは、必要に迫られたものではない時間。
ストレスを負わなくて良い時間であり、つまり――
平和な時間でありますな。
判断機能を著しく落とす状態でありますな?
それと同じ、
へい、わ、な時間……
(少女は考えている。難しいと断じることは容易い、が、それを良しとしないのが彼女の性分であった)
平和な時間は、良いものなのです?
今……。
(今に意識を落とす。改めて自身を走査する)

異常はありません。
各部平常運用に支障なく。
ナノマシンの循環量も規定値内。
精神抑制及び促進処置なし。
非常に安定している状態だと自己判断します。
はい。
戦闘機動に移行した場合でも、スペック通りのレスポンスが期待できると自負します。
(むふんと、どことなく胸を張って)
貴女はきっと、そう言うでありますよな。

……平和とは。
自分にとっては、でありますよ?
いつでも刃を抜ける最高の臨戦態勢のまま――
いつまでも刃を抜かなくて良い時間のことであります。
……わからないでありますかね?

……つまり。
刃を抜けるか、刃を抜きたいか。
そういう違いであります。
……。
(思案する)

……刃を、ですか。
抜かなくても良い……
抜けるのに……

それが、平和……
察するに、貴女は戦いに赴く自分というものを肯定的に捉えていますね。

いえ、良いのです。それは良い。
自分とてそうであります。

しかしそれと、戦が起こらないことを是とする心は矛盾しない……と自分は思うのであります。そこに平和の本質があると、自分は思っているであります。
肯定的、ですか?
(首を傾げて)
シュピはその為に設計(デザイン)されました。ゆえ、ゆえ。

矛盾……しない。
二つは両立できる、と。
できるであります。

……この自分ですらそうなのでありますから。
闘いは好きでありますし、何なら命のやりとりすら好ましい。
しかしそうであってすら平和は貴いと思うのであります。
……なんか回りくどくなってしまったでありますな。
自分でも多分、よくわかっていないのであります。

闘うのは楽しい。これも真。
平和であることは楽しい。これも真。
……言葉にすれば、それだけなのでありますが。
……そう、なのですね……。
(楽しい、という言葉に、実感のない頷きを返す)
きっと、それは、
良いことなのだと、推測できます。
(推測しかできない少女は、少し、残念そうに言った)
貴女は、闘うものである己に誇りを抱いているように感じましたが。
そこに楽しさは介在しないのでありますか?
(ふっと、意外そうな声で言った
設計目的を果たすのは本機の義務です。
義務の遂行、目的の達成。
そこに感情を介入させる余地はありません。
(少なくとも少女はそう認識しているようだった。母親が言ったことだから間違いがないと言うように)
…………

なるほど。
よーぅく分かった。

(相変わらず背中にしょいっぱなしだった荷物を改めてよいしょと持ち上げると、前を向いた)

介入させて見せましょうとも。
感情の席を無理矢理に作って見せましょうとも。
自分、諦めが悪いので。
……諦めて下さいましね、シュピーゲル嬢。

(そう言うと、のしのしと買ったものを運んで歩き始めた)
……?
(どうやら自分は彼女の何かに火をつけたらしい、というニュアンスは認識したものの、一体何故そうなったかまでは理解していない)
了解。しかし、本機には「諦観」の定義はなく。今後の期待に応えるには一定の……。
(しかし、しかし、「同胞」がやる気を出していることは良いことだということだけ認識し、その後を着いていくのであった)

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