ギルドスレッド スレッドの一部のみを抽出して表示しています。 鉄帝喫茶「ビスマルク」 【SpiegelⅡ】機神胎動 【フロイライン・ファウスト】 エッダ・フロールリジ (p3p006270) [2020-11-01 19:25:06] 簡単なことであります。 慣れろ。 それがここで生きて行くコツであります。----------------------------------------------------------- ゼシュテルは、縦に長い国だ。 しかも四方を他国に囲まれ争いが絶えない。 土壌はやせ細り、南部ではある程度の自給も出来るが、北方に上がれば上がるほどそれも厳しくなってくる。 冬は寒く、鉄騎種と言えども暖を取らねば命に係わる。 頑強な種族であればこそ、この地に根付いた。 頑強な種族であればこそ、自給でも貿易でもない第三の選択肢――即ち掠奪を生活の糧に出来る。 頑強な種族であればこそ、少しでもこの生活を良くしようと戦い続けられる。 それは大いなる矛盾であるが、もはや止められるものではない。 そうであれども、そこにはやはり何かしらのルールは存在するのだ。「……迷っているのでありますかねえ」 赤煉瓦色の石畳を爪先でこつこつ叩いて、彼女――エッダ・フロールリジはこめかみを掻いた。 待ち合わせたはずの少女がいつまで経っても来ないからだ。 わりときっちりした印象の子だったから、まさか寝坊などではないはず。「……探しに行くでありますか」 そう独り言ちると、背筋を伸ばして手を目の前で組み、ピッピと歩き出した。 既にもうそれなりに寒くなって来た。フロールリジは幻想に程近い領邦の為、それでもまだ冬支度手前と言ったところである。彼女の顔を目にして、子供や若者は興味津々に、ある程度年配の者は若干の怯えを目に宿しつつも目礼をする。それに対して全て礼を返していては日が暮れてしまうので程ほどに留めるが、唇の端をわずかに上げて威圧感を与えないようにしていた。 赤煉瓦の道は次第に途切れがちになる。 華やかな表通りを抜けて裏通りを進んでいく。 空中庭園からフロールリジに直接来たとして、中央から待ち合わせ場所まで近道で来ようとすればそこを通るであろうという――薄暗くて、石畳は割れていて、道端で人が酒を飲んで寝ているような通りに、果たして目当てのものはあった。 少女は、数人の男たちに通せんぼをされている。 200cmはゆうに超えようとしている男の腕はその身の丈を超えるほどの巨大さであったり、180cmほどではあるが脚はゴリゴリに改造してあったり、見た通りの闘技者くずれであることが見て取れた。 それに対して、取り囲まれた小柄な少女が怯えるそぶりを僅かとも見せていないのが男たちの癪に触っていたようだった。それはそうだろう。いざ戦えばどちらが強いか、傍からみたエッダの目にはまざまざと良く分かるのだが――そういうものがわからない者が、こういうことをする。 はあ。と一息、溜息を吐く。 目を伏せ、上げた。 相変わらず眠たげな半目をしているが、その瞳には隠しきれない感情が籠っていた。 苛立ちと、そして怒り。 塵が。 塵めらがなぜ生きているのか。 塵を見る目で、かつかつと少女へ近づく。「おい」 その男たちは、下の方から聞こえる女の声に、馬鹿にしたような顔をして振り向いた。 そして即座にその表情は凍り付くことになる。 女の両腕は、顔に現れ切らないその激情を表すようにもうもうと蒸気を吐き出していた。内燃機関が嫁動し、いまにもはち切れそうになっている。 牙を剥くような口の形は、返答をひとつ間違えば喉笛を噛みちぎらんばかりだった。「それは、私の客だ」「うわ……」「え、エーデルガルト様……」「も、申し訳ありませんっ!!!」 三々五々。 男達は、尻もちを付いたりしながら無惨に逃げ散っていく。その背を無意識に追いそうになり、いかんいかんとエッダはかぶりを振った。 展開していた腕部装甲がばしゅん、と余熱を吐き出しながら閉じ、ふぅ……と細く長い息を吐いた。 きっと、彼女は、招いた私を気遣い極力手を出さずに済ませていてくれたのだろう。ならば、遅参は問うまい。「改めて、シュピーゲル嬢。ようこそ鉄帝へ。 ……ああいうのは次からノしていいでありますよ」 そう言うと、しずしずとカーテシーをした。-----------------------------------------------------------------●参加者向けハンドアウト あなたは、エッダに頼み、鉄帝国内で自分のメンテナンスの為の部品を求めに来ました。 彼女はそれを了承し、一族の領邦に招聘しました。 彼女は、どうやら今すごく怒っていたようです。 →詳細検索 キーワード キャラクターID 検索する 【フロイライン・ファウスト】 エッダ・フロールリジ (p3p006270) [2020-12-11 19:48:20] 貴女は、闘うものである己に誇りを抱いているように感じましたが。そこに楽しさは介在しないのでありますか?(ふっと、意外そうな声で言った キャラクターを選択してください。 « first ‹ prev 1 next › last » 戻る
慣れろ。
それがここで生きて行くコツであります。
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ゼシュテルは、縦に長い国だ。
しかも四方を他国に囲まれ争いが絶えない。
土壌はやせ細り、南部ではある程度の自給も出来るが、北方に上がれば上がるほどそれも厳しくなってくる。
冬は寒く、鉄騎種と言えども暖を取らねば命に係わる。
頑強な種族であればこそ、この地に根付いた。
頑強な種族であればこそ、自給でも貿易でもない第三の選択肢――即ち掠奪を生活の糧に出来る。
頑強な種族であればこそ、少しでもこの生活を良くしようと戦い続けられる。
それは大いなる矛盾であるが、もはや止められるものではない。
そうであれども、そこにはやはり何かしらのルールは存在するのだ。
「……迷っているのでありますかねえ」
赤煉瓦色の石畳を爪先でこつこつ叩いて、彼女――エッダ・フロールリジはこめかみを掻いた。
待ち合わせたはずの少女がいつまで経っても来ないからだ。
わりときっちりした印象の子だったから、まさか寝坊などではないはず。
「……探しに行くでありますか」
そう独り言ちると、背筋を伸ばして手を目の前で組み、ピッピと歩き出した。
既にもうそれなりに寒くなって来た。フロールリジは幻想に程近い領邦の為、それでもまだ冬支度手前と言ったところである。彼女の顔を目にして、子供や若者は興味津々に、ある程度年配の者は若干の怯えを目に宿しつつも目礼をする。それに対して全て礼を返していては日が暮れてしまうので程ほどに留めるが、唇の端をわずかに上げて威圧感を与えないようにしていた。
赤煉瓦の道は次第に途切れがちになる。
華やかな表通りを抜けて裏通りを進んでいく。
空中庭園からフロールリジに直接来たとして、中央から待ち合わせ場所まで近道で来ようとすればそこを通るであろうという――薄暗くて、石畳は割れていて、道端で人が酒を飲んで寝ているような通りに、果たして目当てのものはあった。
少女は、数人の男たちに通せんぼをされている。
200cmはゆうに超えようとしている男の腕はその身の丈を超えるほどの巨大さであったり、180cmほどではあるが脚はゴリゴリに改造してあったり、見た通りの闘技者くずれであることが見て取れた。
それに対して、取り囲まれた小柄な少女が怯えるそぶりを僅かとも見せていないのが男たちの癪に触っていたようだった。それはそうだろう。いざ戦えばどちらが強いか、傍からみたエッダの目にはまざまざと良く分かるのだが――そういうものがわからない者が、こういうことをする。
はあ。と一息、溜息を吐く。
目を伏せ、上げた。
相変わらず眠たげな半目をしているが、その瞳には隠しきれない感情が籠っていた。
苛立ちと、そして怒り。
塵が。
塵めらがなぜ生きているのか。
塵を見る目で、かつかつと少女へ近づく。
「おい」
その男たちは、下の方から聞こえる女の声に、馬鹿にしたような顔をして振り向いた。
そして即座にその表情は凍り付くことになる。
女の両腕は、顔に現れ切らないその激情を表すようにもうもうと蒸気を吐き出していた。内燃機関が嫁動し、いまにもはち切れそうになっている。
牙を剥くような口の形は、返答をひとつ間違えば喉笛を噛みちぎらんばかりだった。
「それは、私の客だ」
「うわ……」
「え、エーデルガルト様……」
「も、申し訳ありませんっ!!!」
三々五々。
男達は、尻もちを付いたりしながら無惨に逃げ散っていく。その背を無意識に追いそうになり、いかんいかんとエッダはかぶりを振った。
展開していた腕部装甲がばしゅん、と余熱を吐き出しながら閉じ、ふぅ……と細く長い息を吐いた。
きっと、彼女は、招いた私を気遣い極力手を出さずに済ませていてくれたのだろう。ならば、遅参は問うまい。
「改めて、シュピーゲル嬢。ようこそ鉄帝へ。
……ああいうのは次からノしていいでありますよ」
そう言うと、しずしずとカーテシーをした。
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●参加者向けハンドアウト
あなたは、エッダに頼み、鉄帝国内で自分のメンテナンスの為の部品を求めに来ました。
彼女はそれを了承し、一族の領邦に招聘しました。
彼女は、どうやら今すごく怒っていたようです。